タイトル:【東京】エミール決着戦マスター:村井朋靖

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/02/15 06:35

●オープニング本文


●決戦を前に
 エミールの指示を受けて陽動に徹したアニメ軍であったが、侵略の痕跡を残したくないUPC情報部のわがままに付き合った能力者の活躍で見事に撃破。東京近郊は何事もなかったかのような静けさを取り戻した。
 しかし、まだ気持ちを緩めてはいけない。肝心のエミールが残っている。
 UPC情報部は捕縛した部下を厳しく尋問し、やっとのことでエミールの足取りをつかんだ。なんと彼らは、東京の地下道をを使って移動しているという。
 半年前の「秋葉原解放戦線」では、人類側のレジスタンスが秋葉原への侵入に地下を利用したが、現在もキメラが徘徊しているため、UPC軍は地下道を封鎖していた。
 そこへ傭兵を派遣することはたやすいが、無用な戦闘で目的を達成できなくなることだけは避けたい。それにエミールの目指す先は、秋葉原と決まっている。大切な戦力を虎口に入れる必要はない‥‥上層部は、そう判断した。

 ならば、地上に出てきたところを叩くべし。UPC情報部は先手を打った。
 それとなく秋葉原周辺の出入りを規制し、住民に対して「エミールと遭遇した際のマニュアル」を伝授。洗脳を経験した住民は過去の記憶をたどり、どのように接すればいいかをイメージトレーニングした。無論、過去の記憶を思い出して具合の悪くなった者は、UPCで万全のケアを施している。
 本来であれば、秋葉原から住民を避難させるのがもっとも有効な手段だ。しかしエミールがもぬけの殻となった秋葉原を見た時、どんな感情を抱くのかは誰も想像できない。また、何をしでかすかも予想できない。今まで隠密裏に進めてきた作戦をぶち壊しにするような大暴れを、エミールだとやりかねない可能性が少なからず残されていた。これでは作戦に関わった傭兵たちにも申し訳が立たない。そこで苦肉の策として秋葉原に住民を残し、まるで友達のようにエミールと接してもらう方法を取ったのだ。
 とにかくエミールの前では従順であること。彼の望むことにはすべて応えるのが最良なのだが、今回は洗脳されているわけでなく、住民全員の足並みが揃うとは限らない。いかに有利な情報を持っていようとも、危険と隣り合わせである状況に変わりはないのだ。
 情報士官は住民に対し、とにかく頭を下げてお願いした。
「ひとりの犠牲も出さないためにも、全員が一致団結して時間稼ぎをしてほしい。我々も速やかに傭兵たちを派遣する」
「任せてください。今度は俺たちが、傭兵さんを助けますよ!」
 今度こそ秋葉原を守ってみせる。住民の意気は高かった。

 その頃、UPC情報部には秋葉原の事件に関わったことのある刑事、坂神・源次郎(gz0352)が到着。傭兵とのパイプ役を打診され、二つ返事で引き受けた。
「エミールには一杯食わされてるからな。今回は借りを返すぜ」
 彼は鼻息荒くバッグに手を突っ込み、再びコスプレ衣装の学生服に袖を通す。ところが連絡員は「今回はコスプレ必須じゃないですよ」と着替えを制止した。
 坂神は意見を聞くどころか、さらにスピードアップして着替えを済ませる。
「何を言ってんだ。あいつと戦う時は、これが正装だ。お前もちゃんと着替えてこい」
 よくわからない論理を振りかざす刑事に、情報士官は「はい‥‥」と答えるのがやっとだった。

●飛んで火に入る?
 陽動の成果を見込んでいたエミールは、宇宙冒険アニメ「3・2・1、玲子!」に登場する佐伯玲子を模した強化人間から「そろそろ出撃を」と促されると、大喜びで地上に上がった。
「やったね! やっと秋葉原に帰れるんだ!」
 彼のすぐ後ろを、親衛隊の『エミールイレブン』が従う。
「戻ってきましたね、エミール様!」
 こうしてエミールは、再び秋葉原の地に戻ってきた。そして住民を見つけ、早くみんなで遊ぼうと動き出す。

 しかし彼は知らなかった。自分の邪魔をする存在である傭兵たちが、すでにこの地で待ち構えていることを‥‥エミールとの決戦が、秋葉原のど真ん中で幕を開けようとしている。

●参加者一覧

終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
西村・千佳(ga4714
22歳・♀・HA
緑川安則(ga4773
27歳・♂・BM
秋月 祐介(ga6378
29歳・♂・ER
鹿島 綾(gb4549
22歳・♀・AA
番場論子(gb4628
28歳・♀・HD
ラサ・ジェネシス(gc2273
16歳・♀・JG
D‐58(gc7846
16歳・♀・HD

●リプレイ本文

●傭兵は牙を剥く
 エミールは傭兵に先んじて、秋葉原に出現した。住民たちは「これは演技なのか?」と驚くほどの大歓迎でバグアを迎える。
 そして今は公園の野原に場所を移し、エミールは部下のイレブンに混ざって大好きなサッカーに興じた。
 一見すると無邪気な子どもだが、シュートの威力はバグア級。仕込みのゴールキーパーには「絶対にパンチングせず、タイミングをミスった振りして横っ飛びをし、好きにシュートさせろ」と伝えてある。どのみちポールが邪魔してシュートが決まらないこともあるので、結果的にうまくごまかせた。
 そんなキーパーの仕事を減らすため、ディフェンダーは必死にチャージを仕掛ける。イレブンが持つボールを奪う行為は、この場合はNGではない。むしろエミールに対して「ゲームの本気度」を示すことになる。決死の行為だけに鬼の形相になるが、それもいいアクセントになった。

 そのうち、観客が増えていく。これを手引きするのは、学生服に袖を通した坂神・源次郎(gz0352)。傭兵の登場に備え、今は息を殺している。
「こちらオジサン。所定の位置にギャラリーが到着。ド派手にやってくれ」
 無線からの指示はUPC情報部に伝えられ、すぐさま傭兵たちの登場に備える。彼らは観客の前に、演出用のスモークなどを仕込んでおいた。
「準備オッケー!」
「了解! 本当のクライマックスはこれからだ!」
 兵士が叫ぶと、勢いよくスイッチを押す。いくつもの黒き煙が、天高く伸びた。
 今回のイメージカラーは黒。傭兵たちは「エミールを追ってきた黒の軍団」という設定である。観客はここぞとばかりに「何が起こったんだ!」と不安そうに騒ぎ立てた。彼らはエミールの味方をするように仕込まれている。
「ん? 今の何?」
 さすがのエミールも試合を止め、爆破のあった場所を見やった。
 すると煙が吸い込まれた地点から、煌羅の狼を連れた銀髪の女性となった終夜・無月(ga3084)が凛とした声で言い放つ。
「この地は還して貰おう‥‥」
「面妖な地球人め! エミールイレブン、ガードフォーメーションよ!」
 玲子は宇宙探検ダガーを抜いてエミールの前に立つと、イレブンは独特の陣形で周囲を固める。
 無月がコスプレした情報部員が用意した王座に腰掛けると、新たな爆破と共に黒き魔法少女が現れた。これを演じるのは西村・千佳(ga4714)。今回は「悪堕ち魔法少女」という設定だ。
「ダークマジカル♪チカ、参上にゃ。この秋葉原は、僕たちがいただくにゃ!」
 その背後から現れたのは、陽動のアニメ軍を撃破した魔術師と女騎士のコンビである。
「マールなど、口ほどでもなかったわ。貴方は‥‥どうかしらね」
 マール顔負けの露出度を誇る「ブラックマール」を演じるのは、最近コスプレに目覚めつつある鹿島 綾(gb4549)。そして彼女のサポートを担うのが、軍団の頭脳「ユース・K・スペルキャスター」を名乗る秋月 祐介(ga6378)だ。今回も不敵な笑みを浮かべながら、悠然とエミールを見やる。
「ようこそエミール。この環境で愛する住民たちを巻き込まずに、我々だけを倒すことができるかね‥‥ククク」
 普通のバグアなら「何を言ってるんだ?」と首を傾げるが、そこはさすがのエミール。なんと部下に至るまで「なんて卑怯なことを!」と悔しがる。
 覇王たる威厳を全身から醸し出す無月は、妖艶な笑みを振り撒きながらも、冷徹さを備えた声であることを伝えた。聖剣の切っ先を地につけた状態で支え持ち、もう片方の手で頬杖を突き、悠然と脚を組む姿を見た観客は、思わずどっちが敵か忘れるほどである。
「物語を阻むのは、俺たちだけじゃない」
 この言葉と同時に、演出用の爆破が発動。敵を取り囲むかのように、四方から傭兵が現れる!
「き、奇襲よ! フォーメーション2に切り替えて!」
 玲子の判断も遅くはなかったが、それ以上に傭兵の動きは早かった。

●先手必勝
 北から出現した緑川安則(ga4773)は、瞬速縮地でイレブンのひとりに接近すると、流し斬りの効果を付与したイアリスで斬りつけた。
「早速、戦いといこうか」
 部下は11人と数が多いので、安則はすぐさま獣の皮膚を使って防御を固め、さらに盾を構える。
 東からは機鎧を纏う女幹部・番場論子(gb4628)が、機動力を武器に攻め立てた。目標に迫れば、すぐにミカエルを装着。竜の爪で強化された月詠の一閃を食らわせる。
「むぐわぁ!」
 彼女の動きに対応できず膝を折るイレブンに、容赦なく刀を突き立てた。
「これじゃ楽しめないわよ。もっと‥‥もっと踊りなさい」
 この非情さは、南から現れたD‐58(gc7846)も併せ持っている。彼女はパイロットスーツに身を包んだ、まるで軍のエージェントのようだ。双剣「ロートブラウ」を駆使して踊るように戦い、敵の輪の中に入ると、疾風を使って複数を相手にする準備をする。
「こっちの演出が成功してるのに、敵の士気も上がっているようですが‥‥どこまで影響しますかね」
 確かにエミール側の士気は読みづらく、気を挫くのは難しいだろう。
 しかし西から現れた怪盗は、彼らのペースを崩すのに十分なインパクトを放ちながら派手に登場した。それは「黒いチューリップ」と名乗るラサ・ジェネシス(gc2273)である。
「我が名は怪盗・黒いチューリップ。アキハバラのお宝を奪いに来た」
 公園でひときわ目立つ高い場所からの登場だからか、シルクハットの上に咲いている黒いチューリップがのどかに揺れていた。
「お前たちのレジェンドも、ここでジ・エンドだネ」
 セリフもバッチリ決まったところで、ラサもイレブン退治に参加。敵の繰り出す徒手空拳を華麗に避けつつ、自身は身の丈以上はある如来荒神を振りかざす。
「なっ、なんて獲物を使うんだ‥‥!」
「大は小を兼ねるのダヨ」
 その言葉どおり、ラサは大きく振りかぶったかと思えば、返す刀で斬り上げる。そして隙を見せるかのように立ち振る舞ったかと思えば、今度は突きを繰り出して敵を翻弄した。
 この動きはひとりでは対応できないとわかると、玲子は複数で戦うように指示を飛ばす。
「私たちのコンビプレーを見せてあげなさい!」
 秋葉原の奪還を阻む軍団の強さは折り紙つきだ。次第にイレブンは劣勢に立たされる。
 祐介は指示を下す玲子の邪魔をすべく、電波増強を駆使した知覚攻撃を繰り出した。
「我は開く、天国の扉‥‥」
 呪文の詠唱が終わるが早いか、玲子の周囲に電磁波が襲い掛かる。現代に蘇った魔術は効果絶大。
 さらにブラックマールこと綾は、ソニックブームでイレブンのフォーメーションを崩しながら、さらにその数をも減らしていく。
「あら。貴方の部下は、こんなに弱いのかしら?」
 この挑発に乗る形で、玲子はブラックマールに狙いを定めた。
 最後のアニメ幹部との戦いが始まると同時に、イレブンの統率が大きく乱れる。コンビプレイで苛烈な攻撃を仕掛けることで、最前線で戦う安則や論子たちにダメージを与えるが、その後の立ち回りが甘く隙だらけだった。
 すると安則はD‐58、論子はラサと組み、まるで「コンビプレイはこうやるんだ」と言わんばかりに攻め立てる。
「もはやイレブンというよりも、レイブン‥‥烏合の衆だな」
 安則がそう言えば、D‐58も双剣で派手な立ち回りをしつつ「なるほど」と呟き、小さく頷いた。
 ラサがユニフォームごと身体を切り裂く無情の一閃を放てば、論子は即座に竜の角を使い、超機械「魂鎮」による追撃を敢行。またひとり、確実に数を減らす。
「大人数でかかって来ようとは、貴殿の力はその程度か。残念ダナ‥‥」
「弱いから群れるの? それは弱者の美学?」
 論子の口先から漏れるのは、挑発だけでなく不敵な笑み。これを聞いたエミールは地団駄踏んで悔しがり、自らイレブンに指示を下す。
「そんなことはないよ! みんなの力を合わせたら、敵は倒せる! 椅子に座ってえらそーにしてる奴を先に倒しちゃえ! 玲子の援護もしてあげてよ!」
 エミールの指示を聞いた祐介は、無月に目配せをする。覇王はそれをキャッチし、来るべき時に備えた。
 今のイレブンは8人。そのうち5人が無月に、残りの3人が玲子のサポートに向かった。さほど機敏な動きではなかったが、コンビプレイをしていた傭兵たちは後を追わない。そこへチカが近づき、ひまわりの歌で傷を癒した。
「怪我を治すから集まってにゃ。痛いの痛いの飛んでいけ〜♪ なんちゃってにゃ」
 茶目っ気のある笑顔もまた、傭兵たちの心を癒した。また祐介も練成治療を安則と論子に飛ばし、全員で玲子の戦力を削ぎにかかる。
 無月の表情が変わらないのを見て、エミールはどこか不安になった。まるで誘っているかのように見えたからだ。
「気をつけて! あいつ、何か企んでるよ!」
 その声にふと、イレブンの足が止まった。その瞬間、ようやく気づいた。無月の周りに存在するのは、自分たちだけ‥‥
「覇王に刃を向けるとは、とても許されることではない。俺が直々に罰を下そう」
 ついに聖剣「デュランダル」が秋葉原の大地から引き抜かれたかと思えば、まさに覇王の名にふさわしい一撃を繰り出した。
「闇の十字に身を焦がすがいい‥‥!」
 無月は十字撃を地面に叩き込むと、イレブンは衝撃波によってボールのように宙に舞う。そして地面に転がると、二度と音を発さなくなった。
「み、みんなぁーーーっ!!」
 エミールの絶叫を聞いた無月は、煌羅の狼と共にゆっくりと歩み寄る。どこか哀れで道化のバグアに、終止符を打つために。

●佐伯玲子の最期
 残された敵の数は多くないが、エミールは紛れもなくバグア。油断はできない。綾は玲子の相手をラサに任せ、エミールとの決戦に挑む。
「ここはお願いするわ!」
「了解ネ」
 安則もまた玲子に狙いを絞るも、取り巻きの3人からの反撃を考慮に入れ、ここでも獣の皮膚を発動。そしてとびっきりの挑発を放つ。
「さて、佐伯玲子。その地味な姿、忍びないな。消えてしまえ!」
 同じことを思っていた論子・ラサ・D‐58が、口を揃えて「ついに言っちゃったか‥‥」と呟いた。
 これに激昂したのは、残されたイレブン。癒えた傷がまた増える結果となったが、効果は抜群だった。その間に論子とD‐58が確実に敵を減らす。そこにチカが呪歌を奏でて玲子の行動を阻害すると、戦局は一気に傭兵へと傾いた。
「今にゃ!」
 ラサはここぞとばかりに連撃を繰り出し、さらに部位狙いで武器を叩く攻撃を仕掛けた。
「元気なお嬢さんダ‥‥だが、元気だけでは勝てないゾ」
「うっ! 怪盗め‥‥!」
 うまく宇宙探検ダガーを叩き落とすも、玲子は懐からもう1本のダガーを引き抜いて反撃。虚を突かれたラサは、不意の一撃を受けてしまう。
「これはまさに、オドロキ桃の木、残暑の日ダネ」
 D‐58が「山椒の木です」と訂正しつつ、武器を超機械に持ち替え、迅雷で距離を取りつつ攻撃を仕掛ける。
 チカは呪歌を続ける間に、安則は瞬速縮地から流し斬りへの攻撃を再び繰り出した。
「消えろ。貴様よりエミールに用があるんでな」
「言わせておけば‥‥!」
 悔しさの滲む言葉も、再度ラサの部位狙いで武器を落とされると、煙のように消えてしまう。それはまるで、彼女の命の火と同じだ。
「‥‥終わりですね」
 D‐58は万全を期すために迅雷で場所を変えて超機械で攻撃。フィニッシュは論子が、玲子の腹に刀を突き立てた‥‥かのように見えたが、実は柄による打撃だった。
「うぐっ‥‥」
「どのみち、これで終わりよ」
 これで残すはエミールのみとなった。観客はこの光景を、固唾を呑んで見守る。秋葉原・真の奪還まであと一歩。

●決戦!エミール
 覇王の戦いぶりは圧倒的だった。
 エミールに向かって悠然と歩いていたかと思えば、瞬天速を使って一気に間合いを詰め、挨拶代わりの一太刀を加える。そしてまた瞬天速でさっと引き、相手の焦りを引き出そうとした。
「お兄ちゃんかお姉ちゃんかわかんないけど、容赦しないよ!」
 無月は不意に自分の胸を見て、「そうか?」と微笑んだ。それを遮るかのように、ブラックマールのソニックブームが飛んだかと思えば、もう一振りの聖剣「デュランダル」が少年に牙を剥く。
「貴方は、何故にアニメを好んだの? 心のどこかで、その物語に憧れていた‥‥違うかしら」
 アニメに憧れるがあまり、人間を片っ端から洗脳し、思い通りの世界を作り上げたエミール。だが、今は手元に洗脳装置もなく、観客の声援もフェイク。脇を固めていた部下もすべて倒され、今は自分ひとり。さらに玲子を倒した傭兵たちもこちらに近づいている。彼を取り巻く現実は、あまりにも非情だ。
「くっ‥‥みんな邪魔しないでよね! ボクの邪魔するんじゃないっ!!」
 エミールを応援する声が街中に響く。それは少年の限界を示唆していた。綾は感情を込めずに言い放つ。
「最後のチャンスよ。立ってみせなさい。せめて‥‥主役らしく!」
 この言葉に誘発されて、エミールは自分の秘められた力を解放せんとした。おそらくは限界突破だろう。誰の目にも明らかだ。
 しかしそれでも、魔術師は対策を用意している。彼は最後まで冷静であり、最後までエミール側に主導権を握らせなかった。
「我は開く、天国の扉‥‥我は砕く、儚き幻想‥‥」
 祐介は電波増強を施した上での虚実空間を使用し、エミールのパワーアップを阻害。黒の軍団に総攻撃を指示する。
「今こそ、秋葉原の幻影を倒すんだ!」
「そ、そんなまさか‥‥!!」
 少年はこれに動揺したせいか、チカが放った呪歌の効果をもろに受けてしまい、動きを封じられてしまった。そこへラサが部位狙いで足元を狙い、さらなる妨害を狙う。
「少年、綺麗な夢でもいつか覚めるのだヨ。永遠なんて何処にもないんダ」
 地面に転がったところへ、無月による銀色の閃光が幾度となく煌く。エミールは攻撃を受けながら、なぜか楽しかった日々を思い出していた。仮初の声援に包まれながら、幸せそうに。
「そっか‥‥ボク、ここで‥‥」
 その先を言わせないとばかりに、綾は渾身の力で聖剣を握り締めた。そして両断剣・絶を刀身に施し、表情を崩さぬまま呟く。
「さようなら、エミール。貴方が主役となった物語の中で‥‥眠りなさい」
 ブラックマールの放った一撃は、エミールのすべてを打ち砕いた。綾は素早く剣を引くと、ラサはすぐに自分が羽織っていたマントで少年を覆う。
 アニメという夢を追いかけたバグアは、憧れの地で息を引き取った。秋葉原解放作戦は、ようやくその悲願を達したのである。

 論子は無線機で「終わったよ」と伝えると、観客は本当の喜びを爆発させた。これが今、秋葉原にある真実。エミールの描いた仮初は、完全に姿を消したのである。
 傭兵たちは難しい任務に協力してくれたことを感謝し、今後の秋葉原を、そして東京の復興を願った。