タイトル:四国のワンダーランドマスター:村井朋靖

シナリオ形態: イベント
難易度: 普通
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/03/31 22:19

●オープニング本文


 「真紅のバラと黒い棘の紋章」を旗印に、今日もまた四国の侵攻作戦を美しく進めるフィリス・フォルクード(gz0353)。
 この金髪バグアの存在を偶然の連続で知ったせいで、ついに上司から追跡を命令されちゃったUPCの調査機関に所属する諜報3人組‥‥通称『ジェントルメンブラック』。略称は『GMB』。ハンタ、トモ、ミスターMの3人は四国某所にオフィスを構え、いつものごとく珍妙不可思議な事件を追っていた。

 今回キャッチした事件もまた、実におかしな内容だった。
「ヘイ、トモ! 奥様方の井戸端会議に耳を傾けてたら、近くの山奥に一般市民をバグア信仰に目覚めさせるという謎の遊園地があると聞いたぜ! こいつはスクープだ!」
 もうどこからツッコめばいいのかわからないハンタの話を聞き、トモはガックリとうなだれる。
「オウ、ハンタ‥‥山奥に、バグアが、遊園地を作るわけないだろう、アーハァン?」
「でもよ、ミスターMも別ルートで情報をつかんでるんだぜ‥‥?」
「オウ、ハンタ! それを早く言え! さっそく作戦会議だ! ほら、こっちの椅子に座るんだ、アーハァン?!」
 同僚の変わり身の早さは異常。こいつ、絶対に俺を信用してねぇ‥‥ムカッとしたハンタは、トモが座る椅子の足を蹴り飛ばし、盛大に転ばせてから着席した。

 ミスターMは、詳細な情報を知る人物として「世界こなもん屋台チェーン」の天満橋・タケル(gz0331)をゲストとして招き入れ、謎の遊園地について話す。
「‥‥この作戦の指揮を執るのは、マッドピエロと名乗る強化人間だ。例のバグアから一般市民の洗脳をするよう、指示を受けているようだ‥‥」
 敵の目的はわかったが、それがなぜ遊園地に繋がるのか‥‥トモは首を傾げる。
 その疑問に答えるのが、タケルだった。
「けったいな作戦やで〜。俺らみたいな人間を言葉巧みに誘い出して、山奥にあるサーカスのテントみたいなとこでいろんなゲームさせるんや。みーんなで」
「そのゲームがクリアーできないと、次のエリアに進めない。まぁ、最終的には脱出できないってことになるんだが‥‥」
 ここまで説明されて、やっとトモも話の先が読めた。
「オウ、わかった! へとへとになったところでピエロが出てきて脅迫とか洗脳するってことだな、アーハァン?」
「そーゆーこっちゃ。俺も何とかしたいけど、さすがにひとりじゃ怖ーて近づけんから、ここへ相談に来たってわけや」
 みんなが状況を把握したところで、GMBは改めてタケルに協力を要請する。もちろんタケルは快諾した。
 そして秘密裏に傭兵たちを集め、一般市民を装って遊園地に潜入。相手の流儀に乗った振りをして、次々とアトラクションをクリアー。最後に登場するであろうマッドピエロを退治する‥‥という大まかな流れをトモが立案する。他の3人は大筋で合意したが、眉をひそめながら「う〜ん」と唸った。トモは「作戦に不満があるならハッキリ言え!」と詰め寄ると、静かにミスターMが口を開く。
「‥‥問題は、そのアトラクションの内容だ。かなり変わっている‥‥」
「部屋にあるきゅうりを全部食わんとあかんとか、サルが投げる皿を連続で20枚キャッチせぇとかな。バラエティー番組みたいなのが続くんやわ。これは人を選ぶで〜」
 さすがはマッドピエロ、厄介なワンダーランドを作ったものだ。
 しかし被害者が出ている以上、捨て置くわけにはいかない。トモはまた唸り始める。
「ヘイ、トモ。心配するな! どうせ全部をクリアーしても、洗脳するつもりなんだからよ。最後はピエロが出てくるってことだろ?」
「オウ、ハンタ。つまりそこを能力者さんに倒してもらうってわけか、アーハァン?」
 なるほどと納得したトモは腹を括り、この馬鹿げたアトラクションに挑む決心を固めた。

●参加者一覧

/ 西島 百白(ga2123) / 錦織・長郎(ga8268) / アーク・ウイング(gb4432) / トゥリム(gc6022) / リル・オルキヌス(gc6894) / ティム=シルフィリア(gc6971) / 蹴球マン(gc7012

●リプレイ本文

●鬼教官、現る
 GMBの面々は例によって、集まってくれた能力者さんに解決まで丸投げするつもりだった。強化人間が相手だし、そうせざるを得ないという側面もある。
 ところが、錦織・長郎(ga8268)という鬼教官の登場で状況が一変。GMBの3人は小豆色のジャージを着せられ、まずは基礎トレーニングからみっちりやらされた。諜報活動は、体が資本である。
「ヘイ、トモ! この展開は聞いてないぜ!」
「オウ、ハンタ。Mr.ヒデローも能力者になる前は、俺たちと同じ職業だったらしいぞ、アーハァン?」
 軽快な足取りでランニングをこなしつつも、しっかり口が動いている3人。程よく怠ける連中を見て、長郎は肩をすくめながら不気味に笑った。
「くっくっくっ‥‥楽しみにしようではないかね」
 まずはバケツが一杯になるほどの汗をかかせ、その後で対策を伝授する運びとなった。

 この後、彼ならではの特訓が始まる。
 GMBは長郎が用意した市民体育館へと移動。そこには天井から縄が何本も吊るされていた。どうやら「縄の罠」を想定した予行演習らしい。
「‥‥実際に見ると、すさまじい量だ。これでも100本に満たないとは、いやはや恐れ入る‥‥」
 驚嘆とも取れるミスターMの言葉を聞くと、すかさず長郎が指導に入る。
「まずは頭を働かせるんだ。すべては観察することから始まる。敵にそのつもりがなくとも、ヒントは必ずある」
 すると案の定、トモが「正解が1本なんだから‥‥」と考えることさえも放棄するかような、身も蓋もないことを口にする。
 思わずハンタが鬼教官に代わって殴りかけたその瞬間、ある閃きが全身を駆け巡った。
「ヘイヘイ‥‥正解が1本しかないのなら、まったく同じ垂れ方してる縄は、かなりの確率でニセモノだよな?」
 それを聞いたミスターMは身を屈め、息を殺しながら縄の観察を始める。そして同じよれ方に見える縄に、ひとまず持っていた赤マジックで印をつけた。
 長郎は乾いた靴音を響かせながら近づき、彼らの観察眼を評価する。
「その通り。これを運否天賦と判断し、闇雲に引いていくのは愚の骨頂。このアトラクションのリスクは、ある程度までなら回避できる」
 トモは「なるほどー」と納得して頷く。そして残された競技も同じように多角的に見てみるが、どちらにも目立った隙がないように思える。長郎も「他は考える余地はないね」と認め、あるマシーンを用意した。
「サルときゅうりは、根性で乗り切れる。特にサルの投げる皿は、キャッチするタイミングが命。そこでバッティングマシンを使った特訓を開始する。日暮れまでキャッチし続けるんだ」
 長郎はこの日のためにマシンを改造し、小皿を飛ばせるようにした。この練習、本番と同じシチュエーションはいらない。必要なのは、落下速度とリズムを見極めること。それを達成するには、根性論を持ち出す以外にないと‥‥いうわけだ。
 この後も、夜を徹しての特訓が続く。はたしてGMBは、一花咲かせることができるのか?

●恨みを買うサル
 潜入捜査の当日。長郎以外の協力者は、一般人に扮装してやってきた。
 集合場所は目的地のちょっと手前。目と鼻の先に、移動サーカスのテントを模した洗脳ハウスが立ちはだかる。その中にマッドピエロがいるのだ。
 自前の屋台を安全なところに置いて身軽になった天満橋・タケル(gz0331)は、西島 百白(ga2123)にこんな質問をされる。
「あの‥‥『一日に大量のきゅうりを食べると、河童の大群に襲撃される』って‥‥本当か?」
 いったい、これはどこで聞いた噂なのか。さすがのタケルも即答は避け、そんな話があったか考えた。
 しかし世界中を旅するこなもん屋でも、そんな噂は聞いたことがない。
「ちょっとわからんなー。でも出てくるんやったら、今日がその日ちゃう‥‥んかなぁ〜?」
「‥‥なるほど‥‥面白そう、だな‥‥」
 タケルは言葉を濁して答えたつもりだったが、百白はすっかり河童退治だと思い込んだらしい。河童が出ても出なくてもご機嫌斜めになる百白の姿を想像したのは、タケルだけではあるまい。

 GMBはうら若き少女たちをエスコートし、問題の施設へと接近。するといきなり、マッドピエロから歓迎のご挨拶があった。
「ウェルカーーーム! 四国のワンダーラーーーンド!!」
 どこかに設置してあるスピーカーの声が、静かな山の中に響く。アトラクションをクリアーできれば、ご褒美があるという点も事前に集めた情報どおり。長居は無用。さっさとクリアーして、マッドピエロを引っ張り出すだけ‥‥能力者たちは気合を入れた。
「まずは、マイブラザーのウッキーが相手するぜぇー!」
 その言葉と同時に、ゆっくりと入口がオープン。注意しながら進入すると、サルが高台の上で憎たらしい顔をしながら手を叩いてお出迎えする。
「ウキー! ウキー! ウッキッキーーー!」
 この不遜な態度に腹を立てたのが、ティム=シルフィリア(gc6971)。女性陣の先頭に立ち、キリッとした表情でウッキーくんを指差す。
「無理難題を出し、諦めの境地に達したところで誑かすとは‥‥言語道断じゃ。遊び尽くしてくれようぞ!」
 遊ぶんだか戦うんだかよくわからないが、ティムはとにかくやる気満々。手に包帯を巻いているリル・オルキヌス(gc6894)や銀髪の少女・トゥリム(gc6022)、さらにGMBやタケルも配置して万全の態勢でゲームに挑む。
「ウキー!」
 さっそく一枚が宙に放たれると、ティムが自らキャッチに向かう。
「ほっ! 思ったよりたやすいのう」
 どうやら落下点にさえ入れば、このゲームは難しくないようだ。しかしウッキーくんの投げるタイミングは一定でないため、一瞬も気を抜けない。GMBは長郎の教えに従って確実にキャッチ。タケルにもコツを教え、難なく折り返しの10枚までゲットする。
「ウッキッキー!」
 ケツを真っ赤にして騒いだかと思えば、ここでお約束のお皿じゃない何かを投げてきた。トゥリムが用心のために滑り込んで顔でキャッチ!
「い、いったぁーい! あれ、前が見えな‥‥きゃぁーっ!!」
 誰もが「ファインプレー!」と言いたかったが、トゥリムの顔にビッタリとタコが貼りついているのを見て、思わず言葉を呑む。
「あのサル、なんてもん投げてくるんや! こいつは、あとでタコ焼きにしたる!」
 ここはタコの扱いに慣れているタケルが、少女の顔から問題の物体を引っぺがす。
 そんな騒動などお構いなしに、ウッキーくんは皿を投げ続ける。リルはドキドキしながら落下物に手を出すが、キャッチの瞬間に目を瞑った。そして、そーっと目を開く。
「こ、これ‥‥お皿でしょうか‥‥?」
「オウ、リル! それは皿だ! セーフだ、アーハァン!」
 リルは危険物じゃなくて、ホッと胸を撫で下ろす。しかし安堵する彼女の横に、無情にも皿が落下。「パリーン!」という乾いた音が、むなしく周囲に響く。
「あ‥‥ご、ごめんなさい、ごめんなさい‥‥!」
「ドンマイじゃ、気にするでない!」
 ティムがすぐさまフォローを入れると、メンバーも「大丈夫!」と声をかける。今は失望する時ではない。
「わしの目をもってすれば、後は野となれ山の如しよ」
「失敗した後で『皿の破片が山の如し』とかボケたらあかんよ!」
 タケルは脊髄反射でツッコんでるうちに、第2回戦がスタート。リルの隣にアーク・ウイング(gb4432)が入り、フォローに回る。
「これに失敗したら挫けるけど‥‥洗脳するにしても脅迫するにしても、もっと効率と効果が高い方法があると思うんだよね、アーちゃんは」
 見た目以上に冷静な分析を行うアーちゃんだったが、ウッキーくんに目をつけられてからは年相応のがんばりを見せた。小皿が来れば懸命に追いかけ、危険物が来れば全力で逃げる。
 ところが、さっきのタコを見たせいか、アーちゃんは微妙な距離での回避を続けていた。サルはここぞとばかりにタコの墨入り水爆弾を投げつけ、跳ねっ返りを服に浴びせる頭脳プレイを披露する。
「あ、ああーーーっ! アーちゃんの髪に墨が‥‥」
 それでもゲームは続く。先ほどの記録を超え、一気にクリアーを目指す仲間たちからは、慰めの言葉すらない‥‥そんな折、アーちゃんの顔に黒い影が宿る。
「あのサル、今回の任務が終わったら、必ず息の根を止めてやる‥‥」
 恐怖の微笑みを浮かべたのは、ほんの一瞬だけ。すぐさまいつものアーちゃんに戻り、小皿キャッチに戻った。
 そんなアーちゃんの活躍も光り、なんとか20枚の連続キャッチを達成。マッドピエロは「しょうがねぇなぁー!」と言いながらもウッキーくんを退場させ、次なる部屋に続く扉を開く。

●緑色の恐怖
 次の部屋は厨房付き。中央には100本以上はあろうかというきゅうりが、山のように積まれている。
 これをじーっと見る百白は「‥‥面倒だな‥‥この量は‥‥」と言いながらも、無表情のまま食べ始めた。タケルは慌てて冷蔵庫から味噌とマヨネーズを取り出し、そっと百白の隣に置く。
「‥‥タケル、これも河童を‥‥誘き出すため‥‥だ‥‥」
 とにかく無表情できゅうりを食い荒らす男の姿は、どこか心強い。その背には、緑色に染まっちゃった虎のオーラが見えなくもなかった。
 だが、すべてを彼に任せるのはよくない。リルも「体、冷やしちゃいますよ‥‥」と心配そうに見つめていた。
 そこでアーちゃんはきゅうりを一口サイズに切って、味噌と一緒に炒めるというシンプルな調理法を披露。GMBと一緒に食べ始める。
「‥‥うむ。シンプルだが、温かいというのはいいな‥‥」
 ここではミスターMがガッツリと食い、量を減らしていく。百白の勢いは止まらず、加速度的にきゅうりの数は減っていくが‥‥いずれは満腹になってしまうだろう。
 そこでトゥリムが料理を始めた。
 隠し持っていたインスタント豚汁を中華鍋に入れると、まずは大根と里芋、こんにゃくを取り除く。そして中に少量の味噌と水を加えて煮詰める。焦げないようにかき混ぜ、豚汁がドロドロになったら火を止めた。そして、できるだけ多くのきゅうりを千切りにする‥‥というところで、助太刀が入った。
「あ! それ、俺がやるからええで!」
「ありがとう。じゃあよろしく‥‥」
 本業が料理人のタケルは、千切り要員を買って出た。これを豚汁に入れて炒め、最後は大皿に盛り付けて完成。
 趣味で中華料理を作っているトゥリムオリジナルのきゅうり料理が場を盛り上げた。それでも余った分は適当に切り、ごま油やマヨネーズで和える。
「ヘイ、トモ! 本格的な中華料理の登場だぜ!」
 さらにリルが輪切りにしたきゅうりをサワークリームと塩コショウで和えたサラダを出す。極めつけは細かく切ったきゅうりをバターで炒めて、固形ブイヨンを入れて煮たものをミキサーにかけ、牛乳を加えて再度温めて作ったポタージュだ。
 ひとりで半分以上となる50本を平らげ、静かにノックダウンしてた百白もむっくり起きて、すっかり見た目の変わった料理たちを再び豪快に食べ始める。
「これなら‥‥いける‥‥が‥‥なして、きゅうり?」
 誰もが思う疑問を口にしつつも、見事ノルマを達成。次なる部屋への扉を開いた。

●暴走娘のパワープレイ
 最難関のアトラクションと思われる「縄の罠」は、最後の扉を開くたった1本を引き当てるまで終わらない。
 ここでティムは掟破りのGooDLuckを使い、次々と縄を引いていく。そんな彼女の無茶を見て、相談を始めようとしていたメンバーが揃って浮き足立った。
「ストップ、ストップ! 俺たちMr.ヒデローから特訓を受けたんだから! ちゃんと調べるまで待って!」
 ティム姐さんの活躍は、昨日までのGMBの努力を一瞬にして無駄にする決定的な行動であった。
「このわしに任せるのじゃー! えいえいえい!!」
「天井がビリビリ鳴ってるから、勢いよく引くのやめて!」
 もちろんあたりを引いているわけもなく、次々と恐怖が牙を剥く。
 トゥリムの頭上にイカの全身ぬいぐるみが落ちてくると、瞬時にかわいい宇宙人へと変身した。
 さらに、リルの体にはゴム製の爬虫類が大集合。蛙と目が合った瞬間、美しい悲鳴とともに部屋の隅で小さくなってうずくまる。
「きゃー! きゃー! きゃーーー!!」
 ティムは金だらいでしこたま頭を打ち、何もしていない百白は黙ってバケツの水を浴びた。
「あたりはまだ出てないね〜。アーちゃんもこの辺を一気にギュッと‥‥」
「ちょっと待ってって言うてるやろ! って、んがっ!!」
 制止を促すタケルの頭上にアーちゃんが受けるべきタヌキの置物が降ってきて、見事に命中。そのまま気絶してしまう。Mr.ヒデローの教えを受けたGMBも、ことごとくティムの身代わりとなってしまった。
「ちょっと、冷静にならなイカ?」
 白くて長い腕が気に入ったのか、トゥリムはそのままの格好で逃げ回っている。この状態であれば、頭もぷにぷにしてるので安全。まさに一石二鳥だ。
 リルも安全な場所にいるので、ここはティムとアーちゃんがパワープレイを炸裂させる。この後もしばし阿鼻叫喚の罰ゲーム地獄が続いた。

 結局、引いた縄の数は全部で73本。水まみれ、泥まみれ、粉まみれ‥‥そして言うまでもなく、ネタまみれ。
 ティムの幸運とは、いったい何だったのか。ずっと巻き添えを食っていたタケルは、ずっと心の底で叫んでいた。男性陣にとっては、縄の数だけ痛い思い出がある。悲しいけど、泣くに泣けない。
 そして最後の扉が開かれた時、みんなの目には怨念にも似た光が宿っていた。この恨み、晴らさでおくべきか‥‥乙女たちが負のオーラを揺らめかせ、バカ強化人間の登場を今か今かと待ちわびた。

●念願のお仕置きタイム
「イェーイ! なかなかナイスな人間じゃないか! これなら洗脳も楽しめそうだ、ヒャッハー!」
 最後の決闘場に登場した奇抜な姿のマッドピエロを見て、百白は唖然とする。目を見開き、ちょっと口が開いていた。
「‥‥ピ‥‥エ‥‥ロ‥‥? 河童じゃ‥‥ない‥‥?」
 怒って出てくるかと思えば楽しそうだし、河童かと思えばピエロだし。百白はしばし腕を組み、じっくりとその理由を考えた。
 逆に、状況が飲み込めている彼以外のメンバーはカンカン。無言で隠し持っていた武器を取り出し、さっさと覚醒する。
 トゥリムは灰色のイカちゃんのまま、ムッツリした表情で攻撃開始。リルもスズランを使って私怨に満ちた攻撃を仕掛ける。
「イカの恨みぃ‥‥!」
「蛙の恨み‥‥っ!」
 全力で攻撃を仕掛ける乙女たちを見て、ピエロは大いに戸惑う。
 しかしティム姐さんは、無理やり状況を飲み込ませようとホーリーナックルを装備しながら近づいた。
「やぁ、フルボッコタイムへようこそ。この一発はサービスだから、まずは食らって悶絶してほしい」
 怒りの鉄拳は、華奢な背骨をへし折らん勢いで繰り出された。ピエロの情けない悲鳴をみんなで最後まで聞き、ティムは続ける。
「うん、君が死ぬまで殴るのはやめない。許してくれと命乞いしても許すつもりは毛頭ない。仏の顔も三度までと言うしね」
「なっ! 縄のとこはあんたが無茶すっから仲間に被害が行ったんであって、あれは俺のせいじゃ‥‥」
 敵が言い訳をかます間に、アーちゃんはティムに練成強化を施す。さらに決戦場に繋がる道が開くまで、隠密潜行でうまく姿をくらましていた長郎が、狙撃眼を駆使した一撃を肩口に命中させた。
「むんぎゃああぁぁーーーっ!」
「さぁ、命乞い以外の注文を聞こうか。百白の準備もできたのでの‥‥」
 汚い悲鳴を轟かせるマッドピエロは、両手に持ったナイフで必死に反撃する。しかしティムの気迫が勝っているからか、ちっとも当たらない。

 ここから先は完全に、能力者によるショータイムとなった。
 トゥリムとリルは超機械によるデュエットを、ティム姐さんは弱点と呼ばれる箇所を遠慮なくドツく。
 長郎はGMBやタケルの無念を弾に込め、スナイパーライフルで着実にダメージを与えた。さらにアーちゃんは電波増強を発揮し、エネルギーガンを撃ちまくる。
 すでにピエロは戦意喪失していたが、そんな態度さえも気に食わぬとばかりに、白き猛虎と化した百白が襲いかかった!
「‥‥ああ‥‥狩りの‥‥時間か‥‥食後の‥‥運動程度には‥‥なれよ?」
「さ、さぁ、どうでしょうねぇ? う、うひひゃあーー!!」
 敵はまだ、おどけて喋る余裕があるらしい。百白は姿勢を低くし、鋭刃の効果を発揮。そのまま懐へ飛び込んでジャイアントクローで全身を切り刻む。
「ぶぼぺ! がば! ま、まだ‥‥まだ‥‥!」
 道化師も一撃食らわさんと、ジャグリングの要領でナイフを操る。百白は回転舞を駆使して、すべての攻撃を回避。ピエロをさらなる絶望へと叩き落す。
 そして最後に振り向き様に爪で一閃し、敵にトドメを刺した。崩れ落ちるピエロを見て、百白は勝利の雄叫びを響かせる。
「ガアァァァァァァ!」
 それを聞いたティムは「もう終わりか?」と言いながら、自分の肩に手をやった。
「なんとあっけない。まるで赤子の手にサブミッションをかけるくらい楽勝じゃったのう」
「オウ、そこのレディー! 奥にいたウッキーくんはどうするよ、アーハァン?」
 トモは長郎や仲間たちとともにイタズラ大好き・ウッキーくんを探し出し、決闘場の中央に叩き出す。するとトゥリムは無言で近づき、いきなりゲソアッパーを繰り出してあごを砕いた!
「ムギ! ムッキーーーーー!」
「あー、トゥリムちゃんいいなー! アーちゃんもやるー♪」
 アークのぶりっ子はここまで。ウッキーを目の前にすると、あの邪悪な表情が蘇った。
「くたばれ、サル。懺悔しろ」
「ウヒッ! ウキキ‥‥‥‥‥!!」
 底知れぬ恐怖を覚えたウッキーくんに対して、何度も何度もボディーブローを叩き込むアーちゃん。これくらいはお仕置きの範疇だと言わんばかりに、男性陣もアーちゃんの報復を静かに見守る。特に鬼教官である長郎の鋭い視線は、まさに恐怖の一言に尽きる。沈黙の恐怖にも怯えたせいか、サルはすっかりおとなしくなった。

 任務を終えたリルは、額の汗をハンカチで拭いながらふと漏らす。
「日本の遊園地って、過酷ですね‥‥」
 彼女はこれが「各地に点在するジャパニーズアトラクションのひとつ」だと思ったらしい。だとしたら、あと何人の能力者が犠牲になるのか。タケルは堪らず首を振った。
「ここだけやと思うで。たぶんやけど‥‥」
 バグアが作り出した四国のワンダーランドは、最後にいろんな恐怖を生み出して消えましたとさ。