タイトル:【LP】北京伏兵殲滅・天マスター:村井朋靖

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/01/21 12:55

●オープニング本文


 北京周辺のバグア主戦力が事実上敗退したことで、日和見な者たちもバグアを見限り始めた。それは、至極単純な形となって現れる。
「祭門の連中は知らないでしょうがね」
 ある者は『UPCにうまく取り入った』別勢力への対抗意識も露に。また、別の者は自分達の安全を代償に。場所こそ違えど、もたらされた情報は概ね同様のものだった。
「‥‥『人民の海のなかに埋葬する』ですか。なるほど、ウォンとやらは勉強家ですね」
 孫少尉は呆れた様に首を振る。UPCの反攻の主力は、特殊作戦軍だ。強力な軍が去るまでは周辺に隠れひそみ、その後退を待って再び出現、八門を確保しようと言う策だったのだろう。しかし、隠れるべき人民に見放されれば、潰える策でもある。
「いずれにせよ、看過はできません。傭兵に連絡を」
 かくて、本部にまた一つ依頼が並ぶことになった。

 ウォンの用意した伏兵の士気は高い。
 再び八門を奪還するための攻撃拠点として、彼は過去に手下のバグア・陳小龍に寂れた村を丸ごと与えた。そこには十分な兵力に加え、キメラプラントも完備している。
 そして作戦遂行の時になれば、この村は本当の姿を現すのだ。痩せた土地をその背で壊し、意思を持ったかのように動き出す。そう、この村全体が作戦遂行の要と位置づけられた地上戦艦なのである。これを計画通りに実行されたなら、戦況はますます不安定になっていただろう。
 しかし、この戦艦の存在はあっけなく明るみに晒されてしまった。ここしばらくの戦況を注視し、独自の判断でバグアを見限ったある組織が保身を目的に、地上戦艦『天雷』の情報をUPC軍にリークしたからだ。
 もちろんバグア側も協力者の変化には非常に敏感で、陳も「すでに地上戦艦の存在は人間側に露見した」と判断していた。
 だが進軍しても孤立無援は火を見るよりも明らかで、自分に課せられた作戦の遂行するには難しい。そして不幸にも士気が高いことが災いし、強行出撃を進言する部下が大半を占めているという現状‥‥今さら搦め手を使う空気でもない、というのが現状である。
 指揮官は腹を括った。
「地上戦艦『天雷』、死門に向けて出撃! 全軍奮起せよ!」
 陳は村の本当の姿を晒し、手近な距離に位置する北の天津市を攻めるべく動き出した。地は震わせんばかりの戦力と、天をも貫かん士気だけを頼りに‥‥
 かくして、地上戦艦『天雷』は動き出した。

 UPC軍はすぐさま作戦本部を設置し、撃破命令を遂行せんと動き出す。
 敵が軍事的安定のある天津市を目標にしてくれたおかげで、しばらくは足止めできるだろうと判断。まずは情報をかき集める。
 さっそく偵察機から、戦艦後部に超長距離対空プロトン砲が一門あるとの報告があった。さらに戦艦上空は小型ヘルメットワームと無数のキメラが飛来し、防御を固めているという。
 村だった場所、つまり戦艦上にはゴーレムやレックスキャノン、タートルワームなどの地上兵器の姿を確認。地上戦艦で迎え撃つ敵を蹂躙するだけでなく、そういった兵器で戦艦上からも攻撃を仕掛けることができるようだ。進軍に躊躇がないことから、おそらく士気が高いと思われる。
 ある将校は嘆息した。
「八門奪還は、UPC軍の士気を高揚させた。一時的とはいえ再度の支配を許せば、すべてがマイナスにしか働かないだろう」
 彼がそう言うと、隣の男が前に出てある作戦を口にする。
「高空にて飛行状態のKVが空の敵を惑わす間に、傭兵を満載した軍用輸送機が地上戦艦に強行着陸。突入部隊は速やかに、指揮官の撃破と地上戦艦の設計図を目指します。その情報を足止めを行う地上KV部隊に伝え、駆動部分を破壊して戦艦を止める‥‥これでいかがでしょう?」
 勢い任せの相手に負けず劣らずのパワープレイだが、早期決着を目指す以上は贅沢なんて言ってられない。
 すぐさま作戦は承認され、それぞれの担当者を選出。すぐさま傭兵に説明するために走った。


 高空での戦闘に関しては、杉森・あずさ(gz0330)が仲間たちに情報を提供する運びとなった。
「阿修羅で空を、ね。さすがに観光気分じゃいられないから、気を引き締めていこう」
 いつかのように髪をひとつに束ねて気合を入れると、さっそくメモ帳とペンを持って情報を集めに向かう。暴走を始めた地上戦艦を止めるべく、そして後の憂いを絶つべく‥‥

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
クラリッサ・メディスン(ga0853
27歳・♀・ER
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
周防 誠(ga7131
28歳・♂・JG
飯島 修司(ga7951
36歳・♂・PN
エリアノーラ・カーゾン(ga9802
21歳・♀・GD
澄野・絣(gb3855
20歳・♀・JG
番場論子(gb4628
28歳・♀・HD
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
ジャック・ジェリア(gc0672
25歳・♂・GD

●リプレイ本文

●独特の空気?
 地上戦艦『天雷』の侵攻を防ぐべく、第一の矢が空に放たれた。
 高空部隊に与えられた任務は、KVで『天雷』に接近できる道を開き、傭兵を満載した輸送機を着陸させることである。その後は制空権を確保するために戦闘を継続し、地上戦艦の足が止まるのを信じて待つ。
 今回の作戦は、白鐘剣一郎(ga0184)の立案で行われる。まず実行されるのは、軍用輸送機を着陸させるまでのプラン。これは「プランA」と名づけられていた。
 流星皇に乗る剣一郎は各機に通信を送る。
「三重の策をもっての作戦を初手から躓くわけにはいくまい。気を引き締めていこう」
 作戦中は行動を共にするUNKNOWN(ga4276)は、独特の電子稼動音に包まれたK−111のコクピットから返答。飛び方もどこか有機的で、独特の雰囲気を放っている。
「Lady、敵機をCheck。敵指示機と艦長距離砲の向きをRedColor。輸送機と味方機はBlueColorで」
 彼が機体AIに音声指示する間、クラリッサ・メディスン(ga0853)とエリアノーラ・カーゾン(ga9802)も同じく「了解」と返す。
 このふたりの返答は、どこかニュアンスが似ていた。しいて言うなら「自戒」である。これだけのメンバーが揃って、作戦を失敗することはあり得ないのでは‥‥と、ふたりは思っていた。それでも慢心に背中を預けず、心に余裕を持って任務に挑む。

 地上戦艦との距離が詰まってきた。
 招かれざる客を満載した輸送機の行く手を阻まんと、『天雷』の背から小型のヘルメットワームがキメラとともにスクランブルで上がってくる。それを契機に、続々と敵が向かってくる気配だ。
 輸送機の護衛を務める周防 誠(ga7131)は、思わず「まいったね」といつもの口癖を発する。そして同じ任務のジャック・ジェリア(gc0672)に警戒を呼びかけた。彼は「自分と同じ任務を帯びた仲間の安全を確保するのは当然のことだ」と考えている一方で、心の底ではクラリッサやエリアノーラと同じく「こっちが不利になることは絶対にないな」と感じていた。
 いよいよ敵の陣容も固まってきた。隊長機であろう本星型HWを護衛するかのように、数機の小型HWが飛び交う。さらにそれを遮るかのようにキメラの大群が配され、地上戦艦への着陸を阻止する構えである。敵は手堅く無難な陣容で挑んできた。
 この戦い、バグア軍に苦はない。むしろUPC軍の方が不利だ。なぜなら、彼らの後ろには着陸を目指す輸送機を有している。守りながら戦うことは難しい。そう誰しもが考える。
 しかし剣一郎は、その定石を覆す策の開始を宣言した。
「予定通り、プランAで行く。各機、頼んだぞ。A1は敵中突破で本星型を狙う」
 その言葉を受け、ソーニャ(gb5824)は愛機「エルシアン」を剣一郎・UNKNOWN機に近づける。
 そして3機は勢いよく飛び出し、敵陣に切り込んだ。UNKNOWNは移動と同時に、名刺代わりの対空砲で出鼻をくじく。そして剣一郎とともに剣翼で行く手を阻むキメラを容赦なく切り刻んだ。追随するエルシアンもフィンブレードで斬っていく。
「そう簡単に捉えられると思うな」
 剣一郎の自信は現実そのもの。敵は慌てて陣形を立て直す。司令塔となる本星型HWが有人機であるのは、これで明らかになった。
 相手は狙いが隊長機だとわかると、護衛とともに後退。中央突破を目指す命知らずの3機を囲まんとする。続々と現れるキメラは通り道をふさぎ、小型HWもちょっかいを出した。
 敵の動きを後ろで見ていた澄野・絣(gb3855)が、A2を決行する仲間たちに通信を入れる。
「発射準備完了。いつでもいけるわよ」
 同じ任務を手がけるクラリッサや飯島 修司(ga7951)、番場論子(gb4628)も準備万端。同時に移動を開始し、敵の混乱に乗じて、もっとも敵が密集する場所に接近する。
 それを察知したUNKNOWNは絶妙のタイミングで散開を指示し、迫り来る味方のために絶好のスペースを用意した。
 そしてA2メンバーは予定通り、K−02小型ホーミングミサイルを一斉に発射。赫映はGP−7ミサイルポッドを放つ。しかもそれは一度では終わらない。なんと弾装が空になるまで撃ちまくったのだ。
 この集中攻撃は爆破による衝撃波を飛躍的に拡大。その場にいたキメラは一瞬にして姿を消し、小型HWも尋常ではないダメージを受ける。この時の爆発は、まるで中国の空は解放に沸く市民の気持ちを祝福するかのようであった。
 ここまではいつになく華やかな展開だが、これを契機に各機の動きが変わる。
 A1は再び3機が合流し、執拗に隊長機を付け狙う。A2のメンバーはロッテを組み、ミサイルパーティーで生き残った敵の掃討を始めた。
 そして輸送機の護衛をするA3は、完全に浮き足立った敵の隙を突いて徐々に降下。ジャック機は万全を期すため、真スラスターライフルで地上から上がってくるキメラを攻撃する。エリアノーラは超長距離対空プロトン砲の監視、誠は接近するキメラたちをツングースカの弾幕で必死に止めた。
「すいませんが、道を塞がれるわけにはいかないんですよ」
 ここまでは完全に傭兵のペースだが、眼下には問題の兵器・超長距離対空プロトン砲が不気味に光っていた。

●各機の動き
 輸送機を保護しながらの降下が続く中、A2のメンバーは空中で必死に応戦する。
 絣はクラリッサとロッテを組み、小型HWを見つけては得意のドッグファイト。高い命中度を誇るプラズマライフルで動きを制限すると同時に、マイクロブースターを適宜使用。さらにクラリッサのアズリエルから搭載した誘導弾によるフォローも受け、相手に主導権を渡さない徹底した戦いぶりを披露する。ミサイルの融和攻撃で疲弊した小型HWには苛烈ともいえる攻撃を与え続け、いずれも墜落という名の音を上げて戦場から消えた。
「悪いけど、私の得意な距離に付き合ってもらうわよ!」
 デートの相手に選ばれたHWは残らず落とされるのだから、たまったものではない。敵も必死の抵抗を見せる。ここはうまくキメラを使って反撃の契機をつかみたいが、それを今度は修司が阻む。
 修司機は誠のゲイルIIを援護するように動き、手近な小型HWの破壊を目指す。まずはエニセイで機動を抑え込み、トドメはスナイパーライフル。誠が剣翼による援護をすれば、修司は同じ武器で回避の隙間を潰すように攻撃を仕掛ける。
「論子さん、今ならいけますよ」
 誠からの情報を受け、論子機は一気に地上戦艦への距離を詰める。
 彼女が狙うのは、超長距離対空プロトン砲。その巨大な獲物を探るエリアノーラから随時情報を受け、論子はグロームを飛ばす。
 そして十分に接近した後、空対地目標追尾システムを起動させ、パンテオンをプロトン砲に浴びせた!
「最後の咆哮を轟かせてはなりませんしね」
 彼女の気持ちを乗せたミサイルは、確実に命中。立ち上る黒煙は尋常ではないダメージを物語っている。ジャックはこれを見逃さず、ただの的と化したプロトン砲にファルコン・スナイプでロックオンし、4連キャノン砲を発射して戦火の拡大を狙った。
「一発逆転を狙ったのか知らないが、面倒なもん出してきやがって。自慢の砲台ごと吹っ飛べ!」
 この時すでに、彼らは超長距離対空プロトン砲の破壊を目指していた。よって、着陸部隊はここから離れた場所に着陸しなければならない。
 そこで誠と修司は周辺のキメラを掃除しつつ、輸送機の着陸をお膳立てする。特に誠は戦艦に肉薄し、小型ホーミングミサイルでの攻撃を敢行。さらにはプロトン砲にフレア弾を投下し、敵の混乱に拍車をかけた。
「着陸の邪魔をされるわけにはいきませんからね」
 この際、論子とエリアノーラ、そしてジャックも協力してキメラを撃破。着陸に適した場所を聞けば、すぐさまそこへ急行し、対空施設も破壊する。この手厚い援護のおかげで、輸送機は普通に着陸することに成功した。
『着陸成功。地上部隊、これより任務に就く!』
「そちらもよろしく頼みますよ」
 地上部隊からの通信に、修司は答えた。

 一方、A1作戦を遂行する3機は本星型HWとの戦闘に入っていた。
 UNKNOWNは目標の周りに控える小型HWを散らすようにエニセイで射撃。適当に散ったところを常時アリスシステムを起動させたエルシアンが一機に狙いを定め、G放電からホーミングミサイル、そしてレーザー砲を撃って損傷を与えていく。最後の一押しが必要でも、そこはK−111がフォロー。確実な撃墜を心がけた。
 護衛のHWを減らしたところで、いよいよ隊長機との決戦が幕を開ける。
 序盤は取り巻きを倒す段取りに、剣一郎の流星皇が加わる形で進行。ソーニャは飛翔能力を攻撃に回避にと活かしつつ、自分だけ突出しないように心がける。
「舞うよ、エルシアン」
 彼女の謙虚さは、この戦闘を成功させるのに必要な要素のひとつである。ところが今回だけは、別の形で作用していた。
 剣一郎とUNKNOWNのダブルエースが作る隙は決定的なものが多く、ついつい手数を増やしたくなってしまう。それを抑制するために謙虚さが必要とは、まったく予想外だった。
 しかし意味合いはどうあれ、突出すれば自らピンチを生み出す結果になるのは変わらない。作戦の進行や状況の変化に左右されず、着実に隊長機の破壊へと誘うのであった。

●プランB、発動!
 軍用輸送機の着陸を契機に、作戦は「プランB」へと移行する。B1は対艦ならびに超長距離対空プロトン砲への攻撃と破壊、B2は制空権の確保が主な目標だ。
 本星型HWはダブルエースとソーニャの猛攻を受け、すでに危機に瀕していたが、そこへジャック機までもが登場。エルシアンとジャックランタンがロッテを組み、一瞬の隙も与えまいと空を舞う。
 わずかに残った護衛の小型HWは誠と修司、そしてクラリッサと絣が相手をし、それと並行してキメラ退治も進めた。
 連携の取れた動きで敵を翻弄し、徐々に制空権までも奪わんとするKV隊。一方のバグア軍は、序盤に見せた統率力を発揮する暇もなかった。これだけ執拗に隊長機が狙われれば、もはや手の打ちようがない。行く手を阻んでいたはずのキメラも今やまばら。隊長機も護衛のHWを失い、もはや丸裸も同然だ。
 剣一郎とUNKNOWNはしばしこの場に残り、本星型HWの破壊に全力を尽くす。
「白鐘、とりあえずアレを落としておくか」
 その言葉を受けて天馬が駆け抜ければ、エルシアンもマイクロブースターを駆使して自在に空を舞う。エンブレムの文字通り、ジャックは再びファルコン・スナイプを起動させて4連キャノン砲を放った。この苛烈な攻撃を耐えられるわけもなく、ついに隊長機は黒煙と炎を巻き上げながら地上へと落ちていく。
「隊長機を落としても油断はできない。地上戦艦にいるバグアもプロトン砲もまだ健在だ。この調子で戦闘を続行しよう」
 剣一郎はメンバーにそう伝え、UNKNOWNとともにB1作戦の実行に移った。

 この頃、すでに論子とエリアノーラによってB1作戦も進んでいた。
 論子は対空砲座群をロケットランチャーで、エリアノーラはスラスターライフルで順調に破壊していく。
 そこに流星皇たちが現れた。進路はUNKNOWNがエニセイで開き、ついでに置き土産とばかりにフレア弾を投下。超長距離対空プロトン砲にまたダメージを与える。
「自慢の大砲、断たせてもらうぞ」
 剣一郎はその隙を見逃さない。PRMシステム・改を発動させて回避を向上させた上で、さらにブーストを駆使してプロトン砲の内懐へ突入する。
 ここに入られては困る‥‥敵も無理を承知で破壊の光を吐き出すが、それが流星皇に命中するはずがない。そのままVTOLで着陸・変形し、PRMシステム・改で攻撃を高めると、闇の中で機刀「獅子王」を存分に振るった!
「はああぁぁっ!」
 その一閃で根源を断たれてしまったプロトン砲は、もはや使い物にならなくなっていた。再び射出口から飛行状態で姿を現したのを確認し、さらにダメ押しでエリアノーラがVTOLで着陸。PRMシステム・改で抵抗を高めた後、バルカンやレーザーを駆使して砲座の根元を破壊した。
「これでプロトン砲に悩まされることはないわね」
 そんなエリアノーラの報告に、思わずクラリッサが「最初から心配してなかったわよ?」と本音じみた言葉を発する。彼女もまた「確かにね」と大いに頷いた。

●これ以上ない勝利
 頼みの綱だった超長距離対空プロトン砲をはじめとする対空兵器は軒並み破壊され、空を舞う敵の数も圧倒的に減った。もはや制空権の奪取は、時間の問題である。
 いくら地上戦艦『天雷』の士気が高いとはいえ、さすがにここまで拠点を破壊されれば、誰も冷静ではいられない。こうなるとキメラたちは、尻尾を巻いて逃げようとする。
 そこをクラリッサと絣、誠と修司がきっちり撃破。後の憂いを残さぬよう、最後まで気を抜かずに戦う。
「陸のみんなが戻るまでに、こっちもしっかり片付けないとね」
 そんな絣とともにドッグファイトを仕掛けるクラリッサは、PRMシステム・改を駆使して火力を強化。キメラの殲滅に尽力する。

 隊長機の撃墜、ならびに超長距離対空プロトン砲の破壊。これを成しただけでも大成功といえる。
 しかし、それに加えて小型HWの殲滅。さらには敗走するキメラの撃破‥‥もはや地上戦艦『天雷』の対空装備は、余すことなく破壊したといっても過言ではないだろう。
 もちろん制空権の確保もできた。彼らはしばし空を舞い、他の部隊がもたらす朗報を待つ。
「帰りは、驚くほど優雅な旅になりそうだな」
 修司がそういうと、ロッテを組んだ誠も「そうですね」と答えた。地上戦艦『天雷』を止めるべく放たれた第一の矢は、どうやら敵の急所に深く突き刺さったらしい。