●リプレイ本文
●パーティー会場へ!
UPC沖縄軍が手配したトラックが、榊原アサキの仕掛けた罠に向かって走る。運転は杉森・あずさ(gz0330)が行い、荷台では頼れる仲間たちが戦闘の準備をしていた。
「救出作戦も念入りにしとかないとね」
バックミラーを見ながら、助手席に座る流叶・デュノフガリオ(
gb6275)に声をかけた。彼女は笑みをこぼす。
「なに、共に待つ人がいる身だ。こんな所で倒れてやる訳にも、ね」
あずさは顔を赤くして「まったくだね」と言うと、何気なく流叶の肩に手を置き「頼んだよ」と呟く。彼女はひとつ頷いた。心が悲鳴を上げそうになるのをぐっと堪え、疾風迅雷を強く握り締める。
傭兵たちが控える荷台には小型テレビが置かれ、今の状況を映していた。
ところが、肝心の人質であるミク・プロイセン(gz0005)はコクピットに用意されたお菓子やジュースに飽き、ついにはあくびをする始末。
そこはバグア軍のカメラワークが冴える。余計なことをした瞬間にゴーレムの遠景に切り替え、人間に恐怖しか与えない演出を貫いた。この涙ぐましい努力を見たファタ・モルガナ(
gc0598)は、妙に感心する。
「公開処刑とはまた‥‥古典的かつ効果的な真似をする。そして、このカメラワーク‥‥できる」
フードの切れ目から覗く瞳は、いろんな意味で本気。度重なるアサキの陰謀を阻止したミリハナク(
gc4008)もまた、似たような感性で話す。
「アサキちゃんと遊ぶのも三度目ね。また敗北を味合わせてあげますわ」
カオスで素敵な発言が続く中、ケイ・リヒャルト(
ga0598)は「華麗なダンスを見せて頂戴」と気高き猫の顔で呟く。妖艶な女性たちは出撃の時を待ちわびた。
トラックは前方に開けたアスファルト敷きの訓練所、そして軍用施設を視界に捉えた。あずさはすかさず、荷台に向かって声をかける。
「頼んだよ、みんな!」
その声と同時にトラックが急停車。傭兵たちは作戦を開始する。
敵側も即座に反応し、軍用施設の重苦しいシャッターを開いて無数のキメラを放つ。正面からだけでなく、両サイドからも敵が出てくるところを見ると、本当の目的はミクの処刑ではなさそうだ。
この光景を見た春夏秋冬 立花(
gc3009)は「よくもまぁ、これだけ集めたものですね」と言えば、ジャック・ジェリア(
gc0672)も「普通ならKVを出して何とかするところだがな」と本音を漏らす。守剣 京助(
gc0920)が「大層なお出迎えだな」と呟き、旭(
ga6764)も「悪趣味なことを‥‥だけど、それもここまでだ」とガラディーンを構えた。
役者が揃ったところで、エレシア・ハートネス(
gc3040)は運転席のあずさに声をかける。
「ん‥‥杉森はここまで連れてきてくれてありがとう‥‥帰りもよろしく‥‥」
運転手も「乗りやすいようにしとくからさ」と返すと、メンバーは覚醒という名のドレスアップをし、危険なパーティー会場に足を踏み入れた。
●無数と強敵
長髪になったファタはガトリング砲を振りかざし、テンション高めで第一声を放つ。
「レッツ、パァーリィーってねぇ!!」
さっそく制圧射撃で迫り来るキメラの足止めし、そこにミリハナクとエレシアが切り込んでいく。そしてお姉様は強化人間らしき指揮官を見つけると、さっそく口撃を始めた。
「ごきげんよう。どなたか私のエスコートをしてくださらないかしら? アサキちゃんの計画を二度潰した傭兵のひとりですから、私を倒せばご主人様が喜びますわよ」
この挑発がなければ、ミリハナクはただの敵。しかしその言葉があれば、彼女は賞金首‥‥相手はまんまと口車に乗り、ミリハナクを倒さんと襲いかかる。彼女もインフェルノを構え、敵の接近に備えた。
そこを隠密潜行を駆使して物陰に潜んでいた立花が、小銃で制圧射撃を実行。出鼻をくじく。そこで生じた隙を見逃さず、エレシアがダリアで一撃を食らわせた。
「ん‥‥姉様の背後は私が守るから大丈夫‥‥」
複数いるであろう強化人間のひとりを釘付けにしたことで、周囲のキメラたちの様子が変わった。
どうやらキメラの統率は強化人間が行っているらしく、彼らが別の作業をするとキメラは勝手に動き出すらしい。しかもミリハナクが引きつけたのは、もっとも手前にいる部隊‥‥この混乱に乗じ、巨大な亀にも接近できるはずだ。
「皆さん、行きましょう!」
旭はTW対応班に声をかけ、統率を乱したキメラを蹴散らしながら亀退治に向かった。
旭とコンビを組むのは京助だ。左に位置する亀に狙いを定めていたが、伏兵のキメラが行く手を阻み、なかなか目的地に届かない。
「いつもコーラ飲んでる俺は倒せねぇぜ!」
この障害をワルキューレを横に薙ぐことで適当にあしらい、なんとか道を開いていく。
そして、ようやく亀の足元へとたどり着いた。これは有人機だが、接近を許せばただの的。旭は容赦なく前足を狙う。
「守剣さんは右前足をっ!」
「はっ、はああああっ!」
京助は先手必勝を発動させ、相方よりも早く攻撃に転ずる。旭もそれに続いた。
亀は接近した敵を踏み潰さんと必死に足を動かすが、常に動き回るふたりに当てるのは難しい。一度だけ京助が受け流そうとした際、その圧倒的な衝撃でダメージを受けたに留まった。
敵の動きが鈍るまで存分に攻撃を仕掛け、亀が姿勢を崩したと見るや、旭は迅雷を駆使して甲羅の上に苦もなく登る。そしてゴーレムはおろか、自分たちが乗ってきたトラックをも狙える砲台を破壊すべく、猛撃の力を発揮する。
「まずは脅威の排除から、と」
亀への登頂を許せば、こうなってしまうのは火を見るよりも明らか。旭が繰り出す鋭い剣閃で砲台の根元を折り、その後は甲羅の隙間から解体するようにダメージを与えていく。
その間、京助は後足を狙い、的を絞らせないように動き続けた。
右に控える亀を相手するのは、ケイとジャック。
ケイは二丁拳銃を打ち鳴らし、ジャックはスコールでキメラに弾丸を浴びせつつ、大きな獲物へとひた走る。
そして亀を目の前にすると、ケイは影撃ちの効果を発現させた。そして貫通弾を装填した銃とエネルギーガンを二連射する。もちろん、狙いは砲台‥‥ご丁寧にも砲口内だ。
「内側が脆いのはセオリーだもの。ガンガン撃ちこんでいくわね」
ジャックもスコールで同じ場所に射撃するも、隙あらばコクピットに向かって自然体で立ち、人差し指を動かして「来いよ」と挑発する。
さすがは有人機、その姿はよく見えているらしい。亀はその自信を踏み潰さんとジャックに襲い掛かるが、それこそ彼の思う壺。彼は絶対防御を駆使し、その攻撃を無力化する。まさにガーディアンの真骨頂とも言うべき戦いの流れを序盤で作り出した。
ケイの先制攻撃の後は、しばし砲台を使おうとする仕草も見られたが、射撃を繰り返すたびにその動作は鈍った。そしてついには砲台を使うことを諦め、直接攻撃に頼るようになる。
その頃、ケイは移動と攻撃を繰り返しつつ、ジャックが挑発したあの場面を思い出す。あの時、亀はジャックの方に前足を向けた‥‥つまり操縦士はマヌケにも、自分で「どの辺にコクピットがあるのか」を教えてしまっていたのである。
それをケイが見逃すはずがなく、今度はそこへ向けて急所突きを駆使した射撃を開始した。
「亀さん‥‥遊びましょう?」
敵の悲鳴を聞くたびに、思わずサディスティックな笑みがこぼれる。ケイの攻撃は、操縦士を大いに慌てさせた。彼にしてみれば、なぜここを的確に打ち抜けるのかがわからない。その表情を想像すると、ケイはますます高揚する。
「鉛の飴玉のお味は如何? あら、もっと欲しいの?」
彼女はジャックに目配せし、おかわりを用意するよう求めた。2匹の亀との決着は近い。
●ミクを救出せよ!
トラックを背に戦闘を続けていたファタは、常に亀の砲撃を警戒していた。しかし長らく射撃がなかったため、味方によってプロトン砲が無力化されたと判断し、キメラを押していく戦法にスイッチする。
ミリハナクとエレシアの美女コンビは、相手にしていた強化人間を十分に弱らせた。
敵は勝てないと判断するや、いきなり反転して戦術的撤退を試みる。別の強化人間と交代するつもりなのだろうか。ところが、背後には瞬天速で行く手を阻む立花がいた。
「やっぽ」
「ギャアァーーーッ! 出たーーーっ!」
まるでお化けを見たかのような驚かれっぷりにカチンときたのか、立花は本能的にラジエルで斬りつける。
もちろんミリハナクとエレシアもそれを見逃すはずもなく、強化人間は恐怖に顔を歪めたまま地面に伏した。
「なんて失礼な人なんでしょう、まったく!」
立花がプンプンと怒ると、周囲のキメラもなぜか後ずさり‥‥本当は指示を出す上役の撃破で怯えているだけなのだが、この流れなら勘違いされても仕方ない。
そこへミリハナクがトドメの一言を放つ。
「あなたたち、そんなところに立っていると喰い散らかされますわよ‥‥立花ちゃんに」
お姉様の口から言い放たれる挑発の意味を、キメラたちは本能的に理解したのだろうか。恐怖に震えたその瞬間、ファタがブリットストームで一網打尽にした。
「弾丸をくれてやる! どうだぁ、チキンの味がするか?!」
情けない悲鳴を上げ、キメラはばたばたと倒れていく。
倒したのはファタだが、恐れられるのは常に立花という理不尽な構図。エレシアが「ん‥‥大丈夫?」と言いながら頭を撫でるが、立花は唇を結んだまま鬼の形相で小銃を構える。
「近寄らせませんよっ! 近づいたら、ぶち抜きますよ!」
「それ、自分のセリフなのに‥‥!」
リロードするファタが必死に立花を制するが、その声は届かず。ついには「パァーリィーだからいいのです!」と言い返される始末であった。
いつの間にか、青い恐怖・立花ちゃんが先頭になり、救出班のために血路を開く。
今まで冷静に戦況を見ていたヘイル(
gc4085)はリンドヴルムに乗り、流叶に合図を送った。
「頃合いか‥‥行くぞ。目標は人質の救出。キメラの排除は二の次だ」
私物のバイクに乗る流叶は「道を開くのは、頼みます」と答えた。
ヘイルは景気よくエンジンを吹かすと、前で戦う美女軍団に道を開けるよう指示し、そのまま勢いよく飛び出す!
「騎兵隊のお通りだ! 道を開けろ、雑兵ども!」
ヘイルはゴーレムまでの道を、なんと騎龍突撃で切り開かんとする。リンドヴルム前方から左右に伸びた衝撃波は、キメラたちを容赦なく切りつけていく。その後ろを流叶が懸命に追い、ミリハナクたちは弱った敵にトドメを刺した。
統率のないキメラが大半だったので、ゴーレムにたどり着くのは容易い。しかし、問題はここからだ。作戦の肝であるゴーレムに近づかれたとあれば、強化人間も黙ってはいない。結果的にヘイルと流叶は三方向からキメラに囲まれる格好となった。
「ここまでは何とか‥‥! 流叶、抜かるなよ。ここからが勝負だ」
流叶は躊躇なくバイクを乗り捨て、迅雷を駆使して一気にゴーレムのコクピットまで駆け上がる。そして疾風迅雷で束縛を破壊した。
「無事か? 大丈夫、今助けよう‥‥!」
「ミク、とっても退屈だったぉー。早く帰るぉー」
意外と元気なミクの姿を見て、流叶は安心した。そして彼女に練成治療を施し、フライングアンカーを使って地上を目指す。ようやく体を動かせるとあって、ミクも楽しげだ。
「このくらいなら、ミクもできるぉ!」
しかし、流叶の眼下は予定とは異なる展開になっていた。すでにヘイルがリンドヴルムを装着し、一歩も引かぬ決死の戦いを繰り広げているではないか。
「キメラども。こちらに来るのなら覚悟しておけ。たやすく俺を倒せると思うな」
ヘイルは凄みのある声で敵を威圧しつつ、天槍を振るって複数のキメラと戦っている。立花たち美女軍団もトラック側から迫っているため、一部が挟撃となっているのが救いだ。流叶はひとまず、ミクを安全に下ろすことに集中した。
●逃げるが勝ち!
巨大な亀を相手していたTW対応班は、いよいよ決着の時を向かえた。
旭と京助が相手する亀は痛みに耐え切れず、味方であるキメラも踏み潰しての大騒ぎも演じたが、もうそんな元気は残っていない。
今まででもっとも動きが鈍った瞬間を見定め、旭は「そろそろ終わりにしようか」と呟き、静かに剣を構えた。それを下から見ていた京助が、猛撃とソニックブームを駆使してワルキューレを振りかぶる。
「合わすぞ、旭! ぶった斬れえ!!」
「これで‥‥落ちろっ!」
上下から繰り出される斬首技で、ついに左翼の亀は大きな首を地面に落とす。
豪快なフィニッシュに満足し、京助は思わず「はっはー!」と喜びを口にする。そして旭が下りてくるのを待って、ゴーレムの足下に集まるキメラの討伐に向かった。
同じくケイとジャックはしつこく亀の足を狙い、移動そのものを不可能にした。砲台も移動もできない以上、操縦士が乗っていてもさほど意味はない。すでにこちらの亀も無力化されていた。
「俺、ケンカ弱いんだから。目的が済んだら逃げるに決まってる」
ジャックの判断は、ケイも納得済み。こちらもさっさと対応を切り替え、ゴーレムに向かうための道を開く。
ゴーレムに強行突入した傭兵を囲むキメラたちを、今度は外側から別の傭兵たち攻め立てる。もはやキメラには、状況が理解できないだろう。いくら強化人間が指揮しようとも、キメラ軍団は混乱するばかり。もはや勝負は大勢を決した。
ミクが地面に下りると、ヘイルはリンドヴルムをバイク形態に戻して迎える。
「よくここまで耐えたな。もう少し我慢してくれ。離脱を図る」
すぐさま後部座席に乗ったミクは、「おー!」と元気いっぱいに拳を突き上げた。流叶はボディーガードを発揮した状態でバイクを起こし、無線機で全員に連絡を飛ばす。
「救出成功。繰り返す、救出は成功。各員とっととずらかるように!」
この報を受け、TW対応班は包囲網の外周を攻撃を加えながら迂回。ゆっくりと落ち着いてトラックのある場所へと向かう。
美女軍団は立花とエレシアが前に立ち、脱出路を作らんと制圧射撃を実行。ヘイルと流叶、そしてミクの帰還をフォローする。そして通過したのを見送った後に、ふたりはトラックの方に向き直す。そこでも再び制圧射撃を行い、今度は味方の乗車をサポートした。
全員がトラックの荷台に乗ったことを確認し、京助があずさに声をかける。
「三十六計逃げるに如かずってな。こんなとこ、とっととおさらばだぜ」
あずさが「ごもっともだね」と言いつつ、さっさとパーティー会場を後にする。その間、荷台では旭と流叶が練成治療でみんなの傷を癒した。
ミク救出の報はUPC沖縄軍にも伝わっている。今頃は「待ってました!」とばかりに、キメラの流出を阻む戦いに挑まんと会場へ急いでいるはずだ。見事、今回の作戦は成功に終わった。