タイトル:邪悪獣レーシング!マスター:村井朋靖

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/12/01 00:56

●オープニング本文


 四国に木枯らしが吹いた。日のあるうちはまだ暖かいが、月が昇ればあっという間に冷え込む。冬の足跡は、すぐそこに迫っているのだろうか。
 そんな寒い夜だからこそ、天満橋・タケル(gz0331)は屋台を出す。煌々と明かりを照らし、おいしい匂いで客を引き、少しでも暖まってから家路に向かってほしい。そう考えていた。
「よっ、そこのお父さん! 寒かったら、一杯やってから帰ったら? 看板はこなもん屋台になっとるけど、ツマミなら適当に作るで!」
 タケルは軽快なリズムで声をかけ、ポンポンと一升瓶を叩きながら客寄せを開始。ここはこなもん屋台。常時タコとイカはあるから、ツマミは何とかなるということか。
 通りがかったオジサンたちは足を止め、お酒を見るとお仲間に目をやって「たまにはいいか」と言いながらのれんをくぐって、ささやかな酒宴を始めた。それほど大きくない屋台だが、おいしそうな匂いと楽しそうな声に誘われて、また別のサラリーマンがご入店。今日は千客万来だったが、タケルは折を見てこう切り出す。
「みんなちゃんと家に帰したいから、日付が変わる前に店じまいやで。堪忍したってや!」
 すっかりご機嫌の酔客からは「えーっ!」と不満の声が出るが、すぐに笑いながら「わかったよ」と返す。他の客は調子よく「大将、彼女と待ち合わせしてるの? ん?」と冷やかされる一幕もあり、タケルは「ホンマ敵わんな〜」と笑ってごまかした。

 縁もたけなわという頃、お客のひとりがタケルに話しかけた。
「ところで大将、知ってる? 最近、この辺をテリトリーにしてた暴走族の連中がさ。馬と鹿に蹴られて病院送りになったんだって」
 タケルはすぐさま『バイクに乗った人間ごと突き飛ばす野生の馬と鹿がいるかどうか』を考えてみた。もちろん結論はすぐに出た。そんなのいるわきゃない。だがここは、あえて話を最後まで聞くことにした。
「ああ、それ俺も知ってる。でもその馬と鹿、族のリーダーらしき純白の特攻服を着た男のところに近づいてったって噂もあるぞ?」
「そいつが馬と鹿を手懐けてるってこと? で、そいつらが代わりに暴走行為してんだったら、何にも変わってねぇじゃん!」
 客同士の会話を聞いて、タケルはキメラの犯行であることを確信する。そして店じまいした後で、ULTに送るビデオメールを作ることを決めた。しかし「馬と鹿のキメラを手懐ける」というくだりが、どうしても引っ掛かる。もしかして、暴走族のリーダーは強敵の可能性も‥‥タケルは「えらいこっちゃ」と呟いた。

 タケルは時計の針が頂点に達する前に客を返し、食器を片付けた。そしていつものようにビデオをセッティング。録画ランプのついたカメラに向かって、『地元の暴走族をキメラで蹴散らした暴走族を倒してほしい』と訴える。
「まぁ、どうしたって馬と鹿はキメラやと思うけど‥‥親玉もなんか怪しいね。キメラの上司なんかなぁ? 被害が広がらんうちに手を打ってほしいんやわ〜」
 身振り手振りでバイクを運転する仕草を織り交ぜ、口ではウォンウォン言いながら、タケルはいつもの調子で依頼を出した。
 人間の暴走族をボコボコにしたキメラ暴走族を、能力者たちが成敗する。はたして、どんなお仕置きが待っているのだろうか?

●参加者一覧

夏目 リョウ(gb2267
16歳・♂・HD
ヤナギ・エリューナク(gb5107
24歳・♂・PN
フィー(gb6429
12歳・♀・JG
メシア・ローザリア(gb6467
20歳・♀・GD
ラナ・ヴェクサー(gc1748
19歳・♀・PN
オルカ・スパイホップ(gc1882
11歳・♂・AA
ラーン=テゴス(gc4981
17歳・♀・DG
片山 琢磨(gc5322
28歳・♂・GP

●リプレイ本文

●敵も味方も?!
 敵の出現は夜‥‥依頼を受けた能力者たちは、その日の昼に準備を整える。
 正義の白きミカエルを駆り、街の警戒にあたる夏目 リョウ(gb2267)は、市民から暴走キメラの情報を収集する。ULTに解決を依頼した天満橋・タケル(gz0331)の言うとおり、夜遅くに帰宅する職業の人たちはその噂を知っていた。リョウはひとつ頷くと、美しい髪がさらりと揺れる。
「馬と鹿のキメラ獣か‥‥大方誰かが『馬鹿は迷惑』とか言ったのを、バグア星人が真に受けて勘違いしたといったところか」
 それでも迷惑になっているのは、紛れもない現実である。リョウは聞き込みを続けた。

 山に日が沈もうとする頃には、タケルの屋台の前に能力者たちが集った。
 ところが、こちらも負けじと暴走族スタイル。ヤナギ・エリューナク(gb5107)が威勢よく「夜露死苦ゥ!」と叫べば、オルカ・スパイホップ(gc1882)もリーゼントカツラに櫛を通してバイクを空ぶかし。
「KVで磨いた運転技術を見せつけちゃうよ〜! ヨロシク〜!」
「オルカ、わかってんな。ま、速攻でちょっくらヤキ入れてやらァ」
 ノッてるふたりの隣に、爆音を鳴らすリンドヴルムが『パラリラパラリラ♪』と奏でながら止まる。乗っているのはラーン=テゴス(gc4981)。レディースの登場に気合いの入った「ヨロシク〜!」で出迎えるヤナギとオルカの義兄弟。まるで彼女もその空気を楽しんでいるかのようだ。
 それを冷静に見ているのが、フィー(gb6429)とラナ・ヴェクサー(gc1748)。フィーは拳銃に貫通弾を2発とも装填し、ラナは超機械シャドウオーブを用意。
「‥‥夜は‥‥寝る時間‥‥みんな寝てる‥‥静かにしなきゃ‥‥めっ‥‥!」
 フィーがそういうと、ラナも「まったくですね」と同意する。
「暴走行為、ね‥‥無粋な上に、迷惑なキメラですこと」
 その言葉を聞いたメシア・ローザリア(gb6467)は、警察へのパトロールを要請を済ませ、話の輪に入る。
「わたくしたちは、キメラ退治を行うだけ。後は地元警察の皆様にお任せしますわよ」
 彼女は無線機を警察との連絡用に設定し、自分は片山 琢磨(gc5322)の車に同乗する旨を伝えた。ラナは自分のバイクに、フィーはオルカのバイクに乗る予定だが‥‥少年のバイクには暗剣が括りつけられている。さらに頭はリーゼント。本人もノリノリ。どこかいやーな予感が漂う。
「‥‥大丈夫‥‥たぶん‥‥」
 フィーは小さく頷いて、後部座席に乗る。彼女もまた、みんなの威勢のいい声で出迎えられた。それを見たタケルは「楽しそうやなぁ〜」と見ていると、いいタイミングでリョウが姿を現す。
「お! リョウさん、どこ行ってたんや?」
「聞き込みをしていた。俺が集めた情報ときみの提供した情報は、だいたい一致するな」
 リョウはそう言うと、峠の展望台近くにある広い駐車場に目をつけ、ここに網を張ることにした。メシアは即座に無線で警察へ連絡し、周辺の道路の封鎖などを依頼する。タケルは全員に「がんばってな!」と声援を送り、安全な場所へ退散。能力者たちはそれを見送ってから、現地へと向かう。

●一網打尽!
 四国の一大勢力となった暴走族の集会。これを発見するのは容易だ。目で見ずとも、音を聞けばわかる。あまりのやかましさに、ヤナギはタバコを手に持ち、「チッ、うるせーな!」と軽くキレた。
 この時期は夜になると気温が下がる。フィーは「‥‥さむい‥‥」と呟いた。これにカーチェイスが始まると、風に晒されてもっと寒くなる。そう、バイクは風を感じるもの‥‥ラーンはそれを知る人物でもあった。この日、彼女は疾風になれるのか。
 集会が一段落し、峠を下って暴走が開始された。もちろん先頭は、馬と鹿のキメラを従えた純白の特攻服の男である。その後を続々と族車が続いた。まるでやかましい大名行列である。
「ヒャッハー! 行こうぜー!」
 オルカが気勢を上げると、兄貴とラーンが動き出す。まずはみんなで暴走族の交通整理。本業顔負けの勢いで、ぐんぐん近づく。スピードが上がるのを肌で感じ、フィーはちょっと驚いた。
「‥‥おー‥‥はやーい‥‥」
 見た目が完全に同業者の3台は最後尾の連中を追い抜かし、前へと進む。
 この辺にいる下っ端連中は、なんとヤナギたちを「仲間だ」と本気で勘違いした。ヤナギが仲間で、ラーンがレディースやってる妹。オルカが末弟でフィーはその彼女‥‥そんな風に見えたらしい。それが幸いし、悠々と先頭付近までたどり着く。
「この先の直線までに仕事しねぇとな!」
 ヤナギは小銃を構え、リーダーに続いて走る馬のキメラに照準を定める。そして影撃ちを駆使した一撃を発射。渾身の一撃は足に命中し、周囲にいななきが響く。
「う、馬に攻撃! あいつらは敵?!」
 連中はようやく敵の接近に気づく。さすがは馬と鹿に頼る暴走族。
 フィーは小銃で威嚇射撃を行い、全体を縦列に並ぶように仕向ける。ヤナギも同様に、小銃を使って交通整理。ラーンは減速と加速を使い分け、列を揃えながら後ろへ下がった。その間、「おらおらおら、ちんたら走っていて暴走族とか言えるのか?」と挑発する。後列はメシアが琢磨の車から身を乗り出し、ガトリング砲で威嚇射撃を放った。
 徐々に隊列が整ったのを見計らい、オルカがリーダーの挑発を開始する。
「馬と鹿って繋げたらなんていうか知ってる〜? バカって言うんだよ〜! 誰かさんみたいだね! どうせそんなの引き連れてるくらいで、ぜーんぜん運転ヘタクソなんでしょ?」
 リーゼントのガキに舐められては、示しがつかない。ケタケタ笑うオルカに、リーダーは怒った。
「このガキ〜! 言わせておけば!」
「あ、怒った? ゴメンね〜、ホントのこと言って〜」
 弟の言いっぷりに、兄貴も「そんなにイジメてやンなよ」と同情のコメントを寄せる。
「ガキに負けるか、ガキにーーー!!」
「え? 自分の方が運転うまい? ホント?」
 いちいち確認するところが憎たらしい。無邪気な少年はリーダーの心を容赦なくドリフト走行。
「てめぇこそ、口だけじゃねーのかよ!」
「なら、あの峠で勝負!!」
 この先にあるという峠は、いわば連中の庭。そんなところでレースに負けるはずはないと、リーダーは一気にスピードを上げる。オルカはすぐに追った。その瞬間、リーダーとキメラの距離が離れる。今まで動かなかったリョウは、この瞬間を待っていた。そして全員の鬱憤を晴らすべく、一気にアクセルを回す!
「駆け抜けろ『騎煌』‥‥人機一体」
 みんなが手間を惜しまず暴走族を縦に並ばせたのは、リョウの騎龍突撃で一網打尽にするためだった。この衝撃波で暴走族はことごとく蹴散らされ、バランスを乱して次々と転倒。なんとか体勢を維持しても、他のバイクが滑り込んできて倒れてしまう。そんな中を白き炎が駆け抜け、状況を把握していないリーダーを追った。

●馬と鹿を退治!
 この場に残った敵は、馬と鹿のキメラのみ。
 ラナは超機械で鹿の足を攻撃し、一瞬だけ戸惑わせることに成功。その隙を突いてラーンは覚醒し、リンドヴルムを装着する。さらに竜の瞳と竜の爪で攻撃面を強化、竜の鱗も駆使して万全の体制で挑む。
「鹿鍋と馬刺しの材料にしてやるぜ」
 まずは怯んだ鹿の料理を開始。刃は高速で動くチェーンソーという独特の武器を使い、攻撃を命中させる。
 ラナはバイクを、琢磨とメシアも車を降り、キメラの殲滅に動き出した。琢磨はラーンに加わり、鹿をマーシナリーナックルで殴る。
「ふっ、はぁ!」
「ケピーーーーー!」
 鹿の悲鳴が響くと、馬もピクリと体を震わせる。その反応は正しい。なぜなら、ラナとメシアが馬の命を狙っているのだから。
 メシアは影撃ちで華奢な脚を狙い、強力な一撃を食らわせる。ラナも武器をライトニングクローに持ち替え、瞬天速で一気に間合いを詰めると同じ箇所を何度も攻撃。ダメージを与えるとともに、機動力も削いでいく。キメラに指示を下すリーダーはいないが、本能的にリーダーのところへ戻ってしまうと困る。そのため、序盤は脚を狙っての攻撃に徹底した。
 馬の反撃はバックキック。しかし脚を痛めたせいか、ラナはこれを回避。一方の鹿は角があり、これを活かした攻撃を繰り出す。ラーンは攻撃を防御しきれずに、琢磨は回避に失敗してダメージを受けた。
「面倒は嫌いだ。次は一気に決める」
 琢磨の言葉に、ラーンも「同感」と答える。そして再び竜の鱗を発動させ、今度は角を折らんと剣を振り回す。その片方がポッキリと折れると、鹿は苦痛に悶えて飛び跳ねた。
「ケピ! ピピピ!」
 それを聞いたメシアは銃口を鹿に向けて攻撃し、敵を蜂の巣にする。琢磨はチャンスと見るや、疾風脚と瞬即撃を駆使して一気に決着を狙う!
「これで、終わりだ‥‥」
 道を穢すものへの鉄槌が振り下ろされると、鹿は返事代わりに断末魔の悲鳴を轟かせた。
「ピィィィーーーーーー!」
 相方の馬は、思わずそっちを向く。ラナは「2匹セットじゃなくてもバカ」と思いつつ、容赦なく首に爪を突き立てる。これを避けるほどの集中力が、馬には残っていない。その油断は、自らの命を捨ててしまった。
「ヒ! ヒヒィーーー!」
 馬と鹿は、ほぼ同時に道路へと倒れた。メシアは無線機で警察に連絡し、自分の足元に暴走族が無様に倒れていることを伝え、後の処理を任せる。そして探査の眼を駆使し、リーダーの追跡に備えた。
「終わったか‥‥先に行っているやつらを追う、ついてくるか?」
 琢磨の言葉に3人は頷き、それぞれに峠を攻める。ラーンは疾風となるべく、ほぼフルスロットルでコーナーを駆け抜けた。琢磨も麗しきレディを乗せてはいるものの、やはりレーサーの血は抑え切れずにコーナーを攻める。ここの峠もまた、武器を使わぬ戦いの場所といえるだろう。

●リーダーを討伐!
 馬と鹿のキメラを撃破した頃もまだ、リーダーを先頭にしたレースは続いていた。
 オルカは本気で運転して張り合うも、要所では「やーい! ヘタクソ♪」と相手を挑発する。その様子に不安を感じたのか、フィーはしっかり運転する少年を掴んでいた。
 実はこの時すでに、リーダーは罠にハマっていた。この時、バイクの排気音は3つだけ。勝負を仕掛けたオルカとフィーが乗るバイクとリョウのAU−KV、そして自分のバイク‥‥そう、これでは数が合わない。ここにはなぜか、ヤナギのバイク音がないのだ。
 その謎は、すぐに明らかになる。少し道がなだらかになった場所から、ひょっこりとヤナギが姿を現した!
「げぇーーーっ! なんで、あいつが前に!」
 リーダーが驚くのも無理はない。ヤナギは峠攻めの直前にスッと脇道に入り、この付近にある休憩所に先回りしていたのだ。バイクは急に止まれない。急に止まっても、後ろからはオルカたちが迫る。しかもオルカのバイクには獲物が‥‥こうなると、リーダーも気が気ではない。
 そこでインサージェントを持ったリョウが機鎧排除の効果を発揮した上で、騎乗したまま竜の咆哮を繰り出した!
「なっ! そ、そっちから攻撃だと‥‥ぶげっ!!」
 この状況で攻撃を避けられるはずもなく、リーダーは地面へと転がされた。リョウは雄々しく叫ぶ。
「迷惑な暴走行為は、校則違反だ‥‥行くぞ『騎煌』、超武装変だ!」
 動きの止まった敵を退治すべく、リョウはミカエルを装着。すぐさま休憩所の小高い丘に立つ。オルカたちもバイクを降り、リーダーの包囲網を作った。
「学園特風スーパーカンパリオン‥‥授業中でも出動OK!」
「‥‥ってことなんで、ヨロシク〜!!」
 ヤンキー座りでリョウの名乗りをフォローするオルカ。さすがのヤナギも「今日のオルカ、いろいろ持ってき過ぎだよな」と言いながら、ガラティーンとエーデルワイスを構える。
 フィーは体勢が崩れているうちに、強弾撃を駆使して敵を貫通弾で狙撃。すさまじい威力の弾丸が脚に食い込むが、相手は痛がるだけ‥‥想像はしていたが、やはりリーダーの正体は強化人間だった。そうとわかれば、もう遠慮はいらない。ヤナギは武器を重ねて不気味な音を鳴らしながら、ゆっくりと敵に迫る。
「根性見せろやァ‥‥っ!」
 さっきまでは虚を突かれてばかりだから、敵さんがあれだけ驚いても仕方ない。だが、ここからは小細工なしのガチンコだ。
 ヤナギの気迫に応え、強化人間は素手で殴りかかる。しかしヤナギは爪で簡単に受け止め、そのまま直刀で円閃を繰り出した!
「歯ァ食いしばれッ」
 強烈なカウンターで身を揺らすと、オルカも背後から脚甲を活かしたケンカキックを見舞う。さらには正義に燃えるリョウが槍斧で連続の突きを放ち、あっという間に追い詰めた。
「く、くそっ! うがっ!」
 悔しさを口にする暇もなく、フィーが強弾撃を発揮しての射撃をまた命中させる。さらにオルカがサッカーボールキックで足元を狙うと、兄貴のヤナギがジャンプして剣で力強い一撃を落とした。これを食らっては命が持たないと、リーダーは意地で食い止める。
「ぐぐっ! まだだ!」
「へっ、馬と鹿がいなくて残念だな。こっちには、頼れる仲間がいるんだゼ?」
 負け惜しみではない笑みを浮かべるヤナギの後ろには、リョウが槍斧を構えて待っていた‥‥!
「き、貴様、最初から‥‥!」
「負け犬の遠吠えなら、あの世でやんなッ!」
「カンパリオンスーパーファイナルクラッシュ!」
 リョウはヤナギが避けると同時にインサージェントを振り下ろす。今度こそ一刀両断。強化人間はヤナギに言われたとおり、無言で爆発四散する。形見と言わんばかりに、彼のバイクが地面に転がっていた。

●能力者たちの集会
 キメラ対応班が到着したのは、まさにこの時。オルカが「終わったんでヨロシク〜!」と、みんなを出迎える。
 きっと今頃は暴走族の連中は警察に逮捕され、馬と鹿のキメラも順調に血抜きされているだろう。これで事件は終わった。

 琢磨は怪我をしたラーンを半ば無理やり救急セットで治療し、自らの傷も癒す。
 その間、ラーンは峠攻めのことを思い出し、「疾風になるためには、まだまだ‥‥だぜ」と呟いた。それを聞いた琢磨は「あんたもか?」とだけ返す。彼女は鼻で笑うと、通ってきた道を見つめた。

 依頼人がタケルということもあり、みんなの興味は馬肉と鹿肉へと移る。暴走族とタメを張る脚力があるなら、その身は引き締まって美味しいだろうと兄弟コンビは口を揃えた。フィーも「‥‥鹿と‥‥馬‥‥食べれる‥‥かな‥‥?」と小首を傾げるが、ラナだけは謹んで辞退する。
「‥‥あまり肉は好んで食べないので‥‥ごめんなさいね」
 するとメシアが「タケルも料理人なのだから、あなたが召し上がれるものを作りますわ」と語る。ラナは「じゃあ、そうしてもらいましょうか」と頷いた。能力者たちの集会は、宴へと変わるようである。