タイトル:ウキウキモンキーショーマスター:村井朋靖

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/01/27 17:00

●オープニング本文


 地球に牙を剥くキメラたちの脅威は、たとえすばやく排除したとしても、そのいくつかは残ってしまう。
 それはずばり、人々に間接的な被害をもたらす物質や事象を指す。早い話が、『キメラの置き土産』だ。
 人知を超えた存在であるがゆえ、死してなお恐怖を残すのだろうか。人間にすれば、はた迷惑な話だ。

 能力者によって討伐されたキメラは、しかるべき機関で分析され、その貴重なデータを蓄積している。
 時として、それが大きな武器になることがある‥‥この事件は、そんな珍しい事例のひとつなのだ。


 以前、沖縄のビーチに出現したカエル型キメラ『ドロップマシンガン』を撃破する依頼が寄せられた。
 この敵は、口からバレーボールほどの透明な球体を発射する。その中身は、トリモチのような粘液だ。
 これで動きを止めた後、長い舌を器用に使ってゆっくり獲物を召し上がるという特徴を持つキメラである。
 粘液そのものに毒性はないが、この束縛から逃れるのが難しい。もがけばもがくほど、ねっとり絡みつく。
 ところが、これには意外な解除方法があった。塩分を含んだ水を大量に浴びせると、効果が失われるのだ。
 作戦の最中、偶然にもこの事実を発見。その後の研究でも、その効果は実証された。

 とにかくこの時は敵を退治し、この事件は終わった‥‥かと思われた。
 しかし、その一ヵ月後。
 戦いの舞台となった『オキナワビーチホテルデラックス』の支配人が、今さらULTに泣きついてきた。
「あ、あの‥‥以前はお世話になりました。で、ですね、今回も、お世話になりたいんですが‥‥」
 常に恐縮しまくるその支配人は、一枚の写真を見せた。そこにはおどけた格好のサルが写っている。
 彼はホテルのプライベートビーチで飼われているラッチくん。ホテルのマスコットとして活躍中らしい。
 この愛くるしい表情を振りまくサルが、実は事件の前後からとんでもない粗相をしていたというのだ。
「実はですね‥‥うちのラッチが、以前退治していただいたキメラの球体をいくつも隠し持っていたんです」
 いったいどこからどうやって失敬したのか、あのカエル型キメラの武器を大事に持っていたというのだ。
 きっとラッチには、宝物のように輝いて見えたのだろう。飼育員がこれを発見すると、すぐさま説教開始。
 最初こそしょげていたが、次第にご機嫌斜めになり、しまいには両手を振り上げて何かを訴え始めた。
 彼にしてみれば『話を聞け!』というサインだったのかもしれないが、それが人間に通じるわけがない。
 しまいにはやけくそになり、怒りに任せてボールを飼育員にぶつけたのだ。もちろん、相手はドロドロ。
 しかし、ラッチはそんなのお構いなし。どこに隠していたのか、次々とボールを出しては投げつける。
 それでひとまず気が済んだのか、ラッチは鼻息荒くプライベートビーチに隣接する森の中へと姿を消した。

 飼育員の話では、ラッチは機嫌を損ねると、森の中から姿を現さなくなるという。
 無理に捕らえようとすると、何らかの妨害‥‥この場合、あのボールを投げつけてくると予想される。
 彼が最初に覚えた芸が『物を投げること』だそうで、その洗練された技術は人間が舌を巻くほどだそうだ。
 キメラの球体を隠していることからもわかるように、餌などの大切なものを貯めこむのがご趣味らしい。
「できれば、皆さんのお力であの球体を全部割らせてしまう‥‥ということはできませんでしょうか?」
 そんなものが残っていても、百害あって一利なし。当時を思い出してしまい、苦しむ従業員もいるだろう。
 もちろんラッチにも非はないが、この状況ならむしろ怒らせて、すべてのボールを壊させるのが効率的だ。

 最後に支配人は、詳細について申し添えた。
 この事件はホテル側の不始末なので、事件解決にあたる方々は施設を自由に使っても構わない。
 美しいビーチを眺めながら、ジュースを片手に作戦会議‥‥そんな優雅なことをしちゃってもいい。
 ただし今現在もホテルは絶賛営業中なので、『森の中以外でのフル装備は禁止』と念を押された。

 奇妙なキメラの置き土産と、無邪気なサルが織り成す新たなる事件。南国を舞台にした熱戦が始まる。

●参加者一覧

石動 小夜子(ga0121
20歳・♀・PN
藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
芹架・セロリ(ga8801
15歳・♀・AA
紅月・焔(gb1386
27歳・♂・ER
ムーグ・リード(gc0402
21歳・♂・AA

●リプレイ本文

●いつでも準備は大事
 事件‥‥というよりも、騒動を解決するためにやってきた能力者たち。ビーチでの姿も、すっかり南国仕様だ。
 水着姿もまたおしとやかな石動 小夜子(ga0121)は、海水の温度を確かめるかのように波打ち際へと向かう。
 彼女の手には、空のペットボトルが握られている。これに海水を入れて、万が一の時に備えようというのだ。
 この海水を使う作戦は藤田あやこ(ga0204)が考案し、ムーグ・リード(gc0402)がせっせと準備中である。
 ホテルにお願いし、大きなタンクやドラム缶などを借り、それに海水を入れてジーザリオの荷台に積み込んだ。
「コレダケ、あれバ、大丈夫‥‥デショウ、カ?」
 働き者のムーグに、小夜子もあやこも「ありがとう」と感謝の言葉を口にする。これで準備は万端だ。
 車両は森の入口に待機させ、ネバネバを解消するための前線基地とする。しかし、まだ秘密兵器が存在した。
 あやこが持ってきた3本の巨大注射器である。ちゃっかりホテルのロゴをあしらっているところがニクい。
 これを水鉄砲の要領で使えば、とても便利な武器になる。また愛玩動物にとって、注射器は天敵と呼べる存在。
 適度に恐怖心を煽れば、早期決着も望める。その点は、UNKNOWN(ga4276)も認めるところだった。
 そんな彼は、ビーチでもダンディー。筋肉質な体に股切れのいい黒のビキニパンツ、黒のボルサリーノ帽‥‥
 胸元を飾る十字架、目元には眼鏡。そしてくわえタバコとダンディズムを添え、今日もバッチリ決めている。
 ビーチパラソルの下に品のいいチェアを置き、テーブルにはフルーツの盛り合わせや専門書、そしてカクテル。

 そしてレディーへの気配りも忘れない。美少女の芹架・セロリ(ga8801)にも、まるで宝石のように接した。
 その小さな手はトロピカルジュースを持っている。美しいグラスにフルーツの飾りつけが、なんとも魅力的だ。
 これはUNKNOWNがウェイターを呼んで用意させたものである。その呼び方もまた、優雅な雰囲気が漂う。
 セロリはうれしそうな笑顔を浮かべながら楽しそうにしている‥‥かと思いきや、煩悩力者を前に態度が豹変。
「うーん、素敵。沖縄といえば‥‥魚ですね。動物性たんぱく質なんです。わかったらついてこい、ガス野郎」
 この南国リゾートでもガスマスクを外さない変態青年の紅月・焔(gb1386)に命令を下す痛快なセロリちゃん。
 今のところ、他の誰よりもリゾートを堪能している。女性を見たり、女性を見たり、女性を見たりして‥‥
「ブリリアント‥‥ワタシ! 沖縄大好きネ!」
 きっと開放的な景色と正直な自分の欲望に酔っているのだろう。ただし、セロリのメイド服姿は例外のようだ。
 ある程度の混乱が予想される中、あやこが運転するジーザリオは、ゆっくりとラッチくんの森へと走り出した。
 ただ、UNKNOWNだけはビーチで待機する。一般客や従業員に被害が及べば、それこそ本末転倒だからだ。
 端から見るとただただバカンスを満喫しているように見えるが、ここをひとりで守るというのはかなり難しい。
 彼は仲間たちに「前線は頼んだ」と激励し、クールに決めた。おサルさんとの戦いが、いよいよ幕を開ける。

●キメラのボール遊び
 森に近づくと、さっそく威嚇の鳴き声が響き渡る。あやこは車を止め、準備した注射器での迎撃準備を促した。
「ムーグ、よろしくでごザル!」
「‥‥猿、ナントカシナクテハ、ネ」
 囮役になるのは、身長も高くて目立つムーグ。手には海水が満載の注射器。小夜子は和傘を持って、後に続く。
 セロリはサーターアンダギーをかじりながら、「魚が食えるって聞いたから来たんだヨ!」と焔を蹴りまくる。
 焔は「八つ当たりは勘弁」と注射器を抱えて、さっさと森の中へと避難。セロリもその後から追いかけていく。
 運転手のあやこは最後の注射器を持つと、ラッチくんを浜辺まで陽動するため、自身の装備を入念にチェック。
「赤ブルマをふりふりさせて陽動しなくっちゃ〜!」
 お色気たっぷりの陽動作戦は、焔なら確実だが‥‥果たしておサルさんに通用するのだろうか。ここも見所だ。

 能力者が森に分け入ると、さっそくの大歓迎。ご挨拶とばかりに、ラッチが例の球体をポーンと投げつけた。
 ムーグは物は試しと、注射器で海水を飛ばして迎撃。すると空中で球体は形を崩し、中身は地面へ流れ落ちた。
「ネバネバ‥‥溶ケテ、マス」
 どうやら海水をじかに当てれば、被害は受けないらしい。それを知った焔は、サルがいるであろう場所に叫ぶ。
「‥‥猿、だと? くくく‥‥良いだろう。相手してくれる! 霊長類、舐めんなヨ!」
 そう言って雑用に回ろうとした矢先、見上げた場所とはまったく違う方向からラッチくんの反撃を食らった!
 球体はちょうどガスマスクの口元にある突起部分で破裂し、焔は見事なまでに全身がネバネバになってしまう。
「モンキーと敵対するなよ、モンキー。焔君、ちょっとお友達になってきなさいよ。獣になるの得意でしょう?」
 セロリの提案を理解したのか、ラッチは交渉に対して「ノー」を突きつけるべく、再び球体を投げてきた。
 しかし、さすがは能力者。セロリは瞬天速を使って避けると‥‥ボールはまたしても焔の体に命中してしまう。
 彼はもう、哀れなほどべとべとになっていた。しかし、ラッチくんに球体を使わせているのは事実である。
 小夜子は用意したペットボトルを使って焔の体を覆う粘液を洗い流すと、捕獲用の網を振って挑発を始めた。
「お猿さん、飼い主さんのところへ戻りましょう」
 焔をいじめて機嫌をよくしたらしく、ラッチくんの声は踊っていた。今頃は球体を掘り起こしているのだろう。
 その間、ムーグは胸を叩きながら低い声で唸った。これも作戦で、彼は彼なりに縄張りを主張しているのだ。
 森に侵入すると同時に威嚇してきたことから、この手のアピールは過敏に反応するだろうと踏んだのである。
 これが見事に的中する。ラッチくんの球体を投げるスピードが、明らかに増した。これは本気で怒った証拠だ。
 焔はムーグから空になった注射器を預かると、車まで走ってあやこのものと交換し、またみんなの元へと戻る。
 小夜子とセロリは球体を避けるが、ムーグは最初から当たる気でいるので、あっという間にネバネバの餌食。
 彼はあまり汚れを気にしないらしく、攻撃の手が休まるとみんなに海水をかけてもらって、まとめて処理する。
 本格的に動けなくなると、浜辺におびき出せない‥‥こんな調子で徐々にジーザリオの近くへと後退していく。

 ラッチにもプライドがある。隠してある球体を掘り起こす以外は、毎回凝った仕掛けを能力者たちに披露した。
 まずは遠投。お次は連射‥‥先に投げたボールを潰し、ネバネバを食らう範囲を広げるという芸当まで見せる。
 これに引っかかったのが、セロリだった。せっかくシールドまで駆使して避けたのに‥‥もちろん、キレた。
「おま、俺がどんだけドン引きしながらメイド服着てると思ってやがる! 霊長類、舐めんなよっ!」
 ベクトルが似た者同士だからか、焔もセロリも同じ勘違いをしていた。サルも人間と同じ霊長類なのである。
 焔はセロリを救出するも、その表情はゲンナリ。どうやらセロリに被害が及ぶのは、望んでいなかったようだ。
 ところが小夜子がネバネバになる気配がない。開いた傘を巧みに操り、それで球体を受け止めて華麗に転がす。
 これにはムーグも「スゴイ、デス」と舌を巻いた。焔はガスマスクの奥に一筋の涙を光らせた。これはひどい。
「あのサル‥‥オスなのに! 俺と同じ大変にヘンタイなのに! セロリは無視しろ! もっと気合入れろ!」
「えらくなったもんだな、ガス野郎。あとでお詫びに、牛を食わせろ。とにかくスキヤキ、てんぷらだ」
 ツッコミにしては自分勝手な物言いが目立つセロリだが、他の人だと手に余るのできっとこれでいいのだろう。
 想像以上の騒がしさではあったが、作業はリズムに乗ってきた。後退も順調だ。この調子なら、問題ない。

●そして捕獲作戦へ
 ラッチくんが球体を調達する時間が、次第に長くなってきた。いよいよ相手にも焦りの色が見え始めている。
 前線基地に接近したため、ここからはあやこも参戦。小夜子はラッチの多様化する攻撃をひとつずつ説明した。
「ウキキ。なるほど、敵もサル者でごザル。困ったモンキー!」
 胸のボールとヒップの半球を揺らしながら、すっかりおサルさんのような喋り方になっているあやこであった。

 無駄に熱い戦いが再開された。
 ついにラッチくんが、その姿を現す。写真どおりの姿ではあるが、あの球体を3個も、器用にお手玉している。
 それを矢継ぎ早に投げることで、先に仕掛けた。ここはあやことムーグ、そして焔が、注射器を使って溶かす。
 相手は地団太踏んで悔しがるが、すぐに森の中からせっせとおかわりのボールを持ってきて、投げ続けていた。
 そんな攻防が続くうち、ラッチくんの悔しがり方がエスカレートしてくる。すでに怒りは頂点を超えたようだ。
 これを合図に、ムーグだけでなくあやこも囮役として派手な動きで挑発しながら、浜辺に向かって走っていく。
「ウキがふたつでウキウキー♪ ウキがみっつで、ウッキッキー!」
 今回、テンションの上がりやすい人間は何かを間違える傾向にあるらしい。あやこもまた焔たちと同じだった。
 女性の武器を最大限に活かしての挑発に、ガス野郎の心も体もウッキウキ。おサルさん以上に興奮している。
 さっきよりも両者の距離が開き、ラッチくんは渾身の力を込めて遠投し始めた。ところが、狙いが定まらない。
 こうなると避けることに集中する必要もなくなるし、あとは使い切ってくれるのを待つばかり。これは安心だ。
 小夜子は来るべき時に備え、ラッチくんがあさっての方向に投げた問題の球体をひとつだけ確保しておいた‥‥

 実はおサルさんの無差別砲撃は、UNKNOWNが陣取る最終防衛ラインまで被害を拡大せんとしていた。
「うむ、静かなビーチはいいもの、だな」
 すっかりくつろいでいるように見えるかもしれないが、彼は刻一刻と変わる状況を把握している。
 そしてポーンと球体が投げ込まれたのを知るや、瞬時に覚醒して狙撃眼を使い、すばやく銃を抜いて破壊する。
 近くにいたウェイターがじっくりこれを見ても、まるで『球体が空中で溶けたようにしか見えない』だろう。
 撃つのも早ければ、銃を隠すのも早い。そう、装備を使ってはならないのではない。見せてはいけないだけだ。
「ふむ、モンキー君の投手力、か」
 UNKNOWNはシンガポールスリングで口を潤すと、再びハードカバーの専門書を手にとって読み始めた。

 ビーチへの被害も未然に防いでしまう能力者がいる。こうなると、ラッチくんは怒り狂うしか手段がない。
 そしていつものように森の奥へと戻ったはいいが‥‥彼は「ウキャッ!」とえらくおかしな声を上げた。
 彼の身に何が起きたのかは、容易に想像がつく。保管していたキメラの球体を、すべて使い切ったのだろう。
 この時を待ってましたとばかりに、焔が笑いながら森の入口まで前進し、ラッチくんがやってくるのを待つ。
「ラッチ‥‥言葉の壁さえなければ、貴様とは分かり合えたかもしれないな。同じ‥‥煩悩力者として!」
 さすがのラッチも、その侮辱に耐えられなかった。尻尾を器用に使い、木の枝を使って自分を弾にして特攻。
 ところがその挑発さえも計算ずく。彼の背後から小夜子が、あのキメラの球体を投げんと振りかぶっていた!
「ウキ! キキーーーッ!」
 自分がぶつけるのではなく、逆にぶつけられる‥‥ラッチは戸惑いを隠さない。本能的に危険を察知した。
「小夜子さ〜ん! 今でぇす♪」
 焔と接する時とはまるで別人‥‥セロリはかわいく声を出すと、小夜子はその球体を地面にそっと置く。
 そしてラッチくんに向かってダッシュし、そのまま彼をキャッチ。空中で彼を抱き締めて、頭を撫で始めた。
「ウキャキャ? キャキャ‥‥ムキーーー! キーーー! キーーー!」
「ふふ、興奮してますね。でも落ち着くまで離しません。ちゃんと飼い主さんの所に帰してあげなければ‥‥」
 みんなはそれを見て一安心。小夜子がフェイントに使った球体も、あやこがさっさと海水で溶かしてしまう。
 焔は小夜子の胸に収まっている霊長類にジェラシーを感じながらも、ひとまず事件の解決をみんなで喜んだ。
 これで心置きなくリゾートを満喫できる‥‥それはセロリもムーグも、誰もが同じことを考えていた。

●締めは焼肉で
 ラッチくんは興奮が冷めると、すっかり小夜子になついてしまった。彼女のお説教にも『うんうん』と頷く。
 あやこは彼に替わりのおもちゃとして、アルミホイルを貼ったきらきらするビーチボールをプレゼントした。
 これは投げるたびに違った光り方をするので、ラッチくんもずいぶんと気に入ったらしい。

 UNKNOWNはラッチくんの帰還をバナナで祝福。「お疲れさん」と声をかけ、やさしく頭を撫でる。
 そして割れていない球体の処理から戻ったムーグにも果物を勧め、おサルさんと同じように頭を撫でていた。
「あんのんサン。贅沢ハ、苦手、デスガ‥‥焼き肉、食ベタイ、デス」
 ムーグの意外なセリフに、セロリが過剰反応。あの焔が驚くほどすごい猫をかぶって、必死におねだりする。
 牛は望むところだし、これに動物性たんぱく質とてんぷらがあれば最高‥‥いじらしい態度でアピールした。
 結局、これが決め手となり、夜はバーベキューすることが決まる。それまでUNKNOWNはトローリング。
 ここで大物を釣り上げて、宴に彩りを添えようという、なんとも心憎い演出である。これにはムーグも喜ぶ。
「よかったですね、ムーグさん」
「キキーーーッ!」
 小夜子の言葉にラッチも続く。これからは一匹も仲間に加え、なんとも賑やかなバカンスとなりそうだ。