タイトル:【MN】地球を守る戦士!マスター:村井朋靖

シナリオ形態: イベント
難易度: 普通
参加人数: 5 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/08/11 18:18

●オープニング本文


 遥かなる旅を終えるかのように、赤黒き謎の隕石が地球へと落下した。
 それは狙ったかのように日本の大阪南港へ落ち、たいした災害も起こさずにプカプカ浮いているだけ‥‥だったら、人類はどれだけ幸せだったことか。
 翌日、その中から奇怪な姿の戦闘員がわらわら出てきたかと思うと、見たこともないボートを操って地上に上陸。メタリックな棒を振り回し、善良な一般人の皆様を次々と蹂躙していく。
「はーっはっはっは! どこの星だかさっぱりわかんねぇが、すべてはこの俺様のものになりゃいいんだよ!」
 線の細い貧弱な戦闘員たちの中心に立つのは、自らボスと名乗る『暴悪将軍キンガー』。まるで地球の伝承にある鬼のような風貌をした豪胆な男である。彼はマグマのように赤い棍棒を地面に叩きつけ、手下には畏敬の念を、そして地球人には恐怖を与えた。正体不明のザコだけでも精一杯なのに、ボスまで登場とは‥‥まさに「泣きっ面に蜂」である。キンガー軍団は、瞬時にして関西を恐怖のズンドコへと叩き落した。

 てめぇの都合で地球に来たのに、ろくに挨拶もせずに侵略を開始するとは、実に穏やかでない。正義の味方も、強硬な手段を選択した。
 人類の平和をさりげなく守ってきた由緒ある秘密組織『スターズ』の幹部は、すぐさま事務員の杉森・あずさ(gz0330)に指示を出す。それは「地球にいるはずの変身ヒーローやヒロインを大阪に集結させ、最終的に暴悪将軍キンガーを退治しようよ」という内容だった。いくつもあいまいな表現が混じっていたが、そこをツッコむときりがないので、あずさは肝心なところだけ尋ねる。
「ずいぶんザックリな指示だけど‥‥まぁ、わかったわ。ところで集まったコンビとかチームが、自分とこのカラーを押しつけたりしてケンカとかしないの?」
 あずさは彼らを集結させることよりも、その後で全員が同時に戦うことに不安を感じていた。しかし幹部の返事は「大丈夫!」の一点張り。しまいにゃどんな聞き方をしても「大丈夫!」としか言わなくなった。さすがのあずさも、これには眉をひそめる。
「ったく、どうなっても知らないよ。いちおう連絡は取ってみるけどさ。集合は現地でいいでしょ、面倒だし‥‥」
「お、そうそう。勝っても負けても、彼らのチームやユニット名はちゃんと控えておいてくれ。こっちで連絡網を作るから」
 えらい事務的なことまで押し付けられて、あずさは戦う前からうんざりしてしまった。
 本当にこの地球を守るという戦士たちは、どこかに存在するのだろうか。そして当日、彼らはちゃんと協力して戦えるのだろうか? 今から不安だらけだが、やるしかない。あずさはアポを取り始めた。


 ※このシナリオはミッドナイトサマーシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません。

●参加者一覧

/ ドクター・ウェスト(ga0241) / 西島 百白(ga2123) / ソウマ(gc0505) / ヘイル(gc4085) / 縁寿(gc4511

●リプレイ本文

●黒き戦士の活躍
 キンガー軍団の戦闘員が、海沿いの開発都市を埋め尽くす。もはや大阪南港は悪の手に落ちた‥‥はずだった。しかし高層ビルの屋上にひとりの戦士が姿を現す。そしておもむろに黄金の鈴付首輪を装着すると、神々しき黄金の霊力が柱となって立ち昇る!
「ぬうっ! あの光‥‥この星の正義の味方か? こしゃくな!」
 暴悪将軍キンガーは大きな体を揺らしながら戦闘員を押しのけ、命知らずのバカの顔を見に来る。その頃には、少年は変身を終えていた。黒猫の耳と尻尾、そして露出度の高い黒のボディースーツには黄金のラインが入っている。幸運の神『招き猫神』に選ばれた戦士は、まるで鈴のように透き通る音で名乗りを上げる!
「厄を祓って福を招きよせるラッキーキャット・ソウマ(gc0505)、ここに参上!」
 胸のあたりで手を組んでポーズを決めると、キンガーは赤い棍棒を振り回して怒り出す。そして「かかれー!」と号令すると、戦闘員が一気に動き出した。
「出でよ、招福祓厄ノ剣! たあっ!」
 ソウマは霊力を束ねた黄金色の剣を手にすると、戦闘員はそれを見ただけで後ずさる。彼が普段から戦っている怨敵・禍津神とは関係がないようだが、それでもこの剣を前にして恐怖するということは、やはりキンガー軍団も邪悪な魂の持ち主と言わざるを得ない。
 黒猫の戦士はしなやかな身のこなしでビルから飛び、音もなく地面に降り立った。そして先頭を切って走る敵の隙間を縫うように動き、次々と招福祓厄ノ剣で斬っていく。
「そんなんじゃ僕を捕まえられないよ」
 親分の怒りを買わぬうちにと、戦闘員は息を合わせて再び大挙してくる。いくら素早い身のこなしや優れた武器があっても、物量で押されたらどうしようもない‥‥彼らも知恵を絞って考えてみた。
 だが、そこは黒猫が一枚上。今度は隙間なく駆けてくる戦闘員を残らず始末するため、招福祓厄ノ剣を握る手に今までとは違う霊力を注ぎ込む。すると、剣は槌の形に変化。これを真横に構えてぐるぐる回り、そのまま遠心力で敵を吹き飛ばした!
「ウッギーーー!」
「ふん、消えろ」
 変幻自在の武器・招福祓厄ノ剣は思った以上に厄介で、さらにソウマは福を招きよせる『幸運招来』という能力を会得している。万が一ピンチに陥っても、これを発動させれば周囲の因果律を操作し、不利を有利に変えるのだ。隙もなければ、穴もない。
 いよいよキンガーの怒りも爆発寸前。吹き飛ばされる戦闘員の体でこっちが見えなくなった瞬間を狙い、将軍は口から火の玉を吐き出した!
「消えるのは、てめぇだぜーーー!」
「見た目も心も、鬼か。ならば!」
 キンガーは違和感を感じた。黒猫は今の攻撃に気づいてさえいない。ならば、今の声は誰だ? 答えはただひとつ。自分を倒そうとする新手‥‥そう、もうひとりの正義の味方がやってきたのだ!
 その結論に至る瞬間、キンガーはザコとともに爆風で飛ばされた。ソウマもそれをきっかけに自分を狙う火の玉に気づき、幸運招来を駆使して何とか難を逃れる。決定的なチャンスを逃したキンガーは自分を穿つ獲物を見た。それは一本の槍‥‥ヘイル(gc4085)が音楽ホールの屋根から投げ込んだ、一閃の光である。
「あれは‥‥輝く槍!」
「やぁ少年、また会ったね。相変わらず、神様の使い走りか? まぁ、頼りにさせてもらおう」
 キンガーは棍棒を振り回し、新たなる敵に声をかける。黒一色に染められたスーツに飾り気はないが、おそらくソウマと同じで身のこなしに自信があるのだろう。その端正な顔を見たボスは激怒した。
「ほほう、やってくれるじゃねぇか‥‥名乗れよ。俺様の記憶の片隅に留めておいてやるぜ」
「罪なき人々の平和を踏みにじり、省みることもない外道ども‥‥人それを、悪鬼と言う」
「俺様に倒される前に名乗れっつってんだ!」
「貴様らに名乗る名はない!」
 ヘイルの悪を憎む気持ちが、自然と表情と声を怒らせる。そして顔も黒のフルフェイスが覆い、漆黒の戦士が戦闘の場に舞い降りた。地面に刺さった槍を引き抜き、もう1本の槍とともに構える。
 キンガーの怒りが、戦闘員の尻に火をつけた。ところがソウマと戦っていた時ほどの団結力はなく、ただ無作法に襲い掛かるのみ。そんなものに、輝く槍『グロウランサー』が後れを取るはずがない。右手に装備した細身の槍を振るうと、槍から光が伸びて遠くの敵まで容易に薙ぎ払う!
「貫け、天槍!」
「ウギギギギギーーー!」
 もはや圧倒的な物量だけが頼みの戦闘員は、味方が倒れようともお構いなし。即座に第二波を繰り出す。しかも今度は全方位から攻めてきた。それでもヘイルは動じない。もう1本の槍‥‥左手に携えた荘厳な装飾の施された槍を地面に突き立て、雄々しく叫ぶ!
「穿て、地槍!」
 彼の足元はまるで水面のように地面が波打つように動き出した。そして突如、無数の土槍が隆起する。これが戦闘員をひとり残らず貫いていき、瞬く間に敵を一掃した。ソウマは宙を舞った敵を器用に踏みつけながら、ヘイルの元に合流。ここからはふたりで戦う。キンガーは隕石から戦闘員を上陸させようと躍起になるが、すでに地球の戦士の強さは知れ渡っており、中から誰も出てこようとはしない。
「決着の時は迫っているようだな」
「やかましい! 勝負はこれからだぜぇー?」
 正義と悪の戦いは、まだ終わらない。

●ビーストヒーロー! アナザーヒーロー!
 戦闘は熾烈を極めた。ソウマとヘイルのコンビは卓越した動きで、確実に敵を葬っていく。その戦いぶりを見れば、なるほど「知らぬ仲でない」というのも頷ける。
 戦士として小細工なしの強さを発揮するグロウランサーに前を預け、トリッキーな動きを得意とするラッキーキャットは後ろに控えた。ピンチになれば『幸運招来』で大事に至らぬようフォローし、討ち漏らしがあれば、招福祓厄ノ剣を爪に変えて確実に仕留めていく。これを繰り返すうちに、敵の数は半分以下になった。

 そこにふらりとたくましい体躯の青年がやってくる。彼は西島 百白(ga2123)。港の風が白い髪をやさしく揺らす。彼は周囲を見渡すと、静かに呟いた。
「目的地は‥‥ここ‥‥か。だが、ここに‥‥奴は‥‥いない‥‥か?」
 キンガーは偶然にも、この迷子の人間に気づいた。今、無力な人間を倒しても、とても快楽は味わえない。思わず苛立ちをあらわにした。
「ええい、勝負に水を差すな! 熱が冷めるわ!」
「‥‥変身」
 敵は我が目を疑った。目の前の青年は拳と拳を勢いよくぶつけると、機械仕掛けの肉食獣のような姿へと変貌する。この力の波動を感じ取ったソウマとヘイルは、この時初めて視線を向けた。
「新たなる戦士‥‥!」
「噂に聞いたことがある。裏切りの司令官に復讐を果たすべく、戦地を駆け抜ける阿修羅となって戦う男の存在を。あれは‥‥ナイトフォーゲルの化身!」
「俺の名は‥‥虎白‥‥参戦する‥‥」
 3人目は白虎のカラーリングが特徴的な重装備の戦士だ。彼は敵陣に突っ込むと、近くの戦闘員を大剣「グラファイトソード」で串刺しにして、それを縦に他のザコを銃で攻撃する。
「‥‥」
「ウギ?!」
 近接射撃で敵を蹴散らすと、突き刺した敵を群れに投げ入れる。無骨な虎白の挑発は、風前の灯火であった戦闘員の戦意をさらに削った。
「ウギギギギギギーーー!」
「‥‥どうした?」
 すっかり怯えた連中のところまですさまじい機動力で迫ると、そのまま大剣で薙ぎ払い、敵を一網打尽にする。この時、後ろのふたりに声をかけた。
「さぁ‥‥狩りの時間だ‥‥」
 ソウマとヘイルは彼のファイトスタイルを確認。ふたりが「いける」と判断したので、そのまま連携を取る。
 虎白の真骨頂は接近戦。変身のポーズよろしく、拳と拳をぶつけて気合を入れると、重いパンチやキックを次々と繰り出して敵を粉砕していく。背後から迫る姑息な敵には、自在に動かすことのできる尻尾で乱暴に薙ぎ払う。しかし、そんな大胆さばかりが彼の持ち味ではない。敵の攻撃を避け切れないと思えば、ザコを盾にして防ぐというしたたかさも見せた。
「ウギ!」
「悪いな‥‥戦場で使えるものは‥‥何でも使う主義なんでな‥‥」
「なるほど、その考え方は嫌いじゃない」
 凛とした声の奥底に、冷たい音が混じる。ヘイルは声の主を瞬時に察知した。ドクター・ウェスト(ga0241)こと、『ブラックジャッカー』である。
 彼は地球の環境を守るために世界征服を企む戦士だが、他のヒーローだけでなく、他の悪とも戦うので『ダークヒーロー』と位置づけられている。そう、ヘイルも何度か戦ったことのある相手だ。その後には『フランクス』なる黒いスーツにグローブやブーツ、ベルトを装備した人造人間を数多く従えており、見た目は完全に悪の権化。ところが白衣姿のドクターは、意外なことを口にする。
「しかし、この程度の力で地球を守るとはね。まったく‥‥君達だけに任せておけないな」
 今回はキンガーを相手にする旨の発言を聞き、ヘイルは小さく呟いた。
「む、あの時の科学者か‥‥決着は後だな。今は向こうが先だ」
 相手から一時休戦を引き出すと、ドクターは「オペレーションゴー!」と叫び、メスを上に投げる。その間、華奢な体に黒の強化スーツを装着。メスは巨大化して薙刀状の武器『シルバーメス』となって、ブラックジャッカーの手元へと戻る。変身を終えたドクターは頭部に「E」と刻まれたフランクスに戦闘員撃破の指示を出した。
「行け、フランクス! キンガー軍団を倒せ!」
 命令に忠実なフランクスは、それぞれ戦闘員に向かっていく。それを見て本人も突撃。ザコ同士で戦っているところを容赦なくシルバーメスで切りつけ、確実にその数を減らしていく。さすが、ダークヒーローの冠は伊達じゃない。この倒し方にソウマが異論を唱えた。
「だったら最初から自分で倒せばいいだろ? それに作ったものが残骸になったら、それこそ環境破壊だろ!」
「何を言うかと思えば‥‥フランクスは土のゴーレム。たとえ倒されたとしても、ただ大地に戻るだけだ」
 確かに倒されたフランクスを見ると、装備以外はただの土砂にしか見えない。ここはドクターに軍配が上がった。一方、やり込められたソウマはやけくそ気味に敵を倒していく。
「味方というなら、今回は仕方ない。あいつも含めた僕たちに最強の幸運を‥‥!」
 こうしているうちに、戦闘員の数はフランクスと変わらないほどになった。こうなると御大が出るしかない。いよいよ暴悪将軍キンガーとの戦いが幕を開ける!

●最終決戦と大オチ
 キンガーの怒りはとっくの昔に沸点を超えていたが、ブラックジャッカーの戦法を見ると少し冷静になった。今は不敵な笑みをこぼしつつ、自慢の獲物を肩で担いでいる。
「来いよ、ドクター。この俺様を病巣呼ばわりしやがって‥‥!」
「貴様に地球をくれてやるわけにはいかないな。我輩が支配するのだからな!」
 先手必勝‥‥ブラックジャッカーはシルバーメスで敵を切り刻む恐怖の必殺技「オペレーションスラッシュ」を繰り出した!
「うごうごうごっ! よ、よくぞ、よくぞ切ってくれたなぁ‥‥おかげで、俺様の切り札が‥‥出せるぜぇぇぇっ!」
 仕留めたかと思われたが、実はこれさえもキンガーの罠。切り裂かれた傷口からは赤い血が蒸発していく。いや、正確にはマグマのような成分を秘めた血液が炎の粉塵となって立ち昇り、彼が大きく息を吸うと口の中で火力が増幅。先ほどラッキーキャットを襲った火の玉など比較にならないほどすさまじい地獄の炎が蓄えられた!
「死ねぇ! この星の戦士どもーーーっ!」
 すべてを焦がす灼熱が4人の元へと放たれる。しかしそれを救ったのが、ダークヒーローであるはずのドクターだ。地獄の業火を受け止め、キンガーの火力が尽きるまで3人の前を離れない。
「ドクター!」
「君達がこの程度でやられるなど、我輩は認めないからな‥‥」
 敵がこの炎を吐き切るまでに決着をつける。3人の気持ちがひとつになった。虎白は「射撃は‥‥苦手なんでな」と言いつつも、キンガーを威嚇するためにハンドガンで威嚇。そして弾丸を追いかけるようにして一気に接近し、大剣で片腕を切り落とす!
「うんぎゃあーーーーーっ!」
「‥‥面倒だ。後は‥‥任せる‥‥」
 痛がるキンガーは空に向かって炎を吐き出す。それはまるで曲芸のようだ。ようやくドクターの耐える時間が終わったが、彼はゆっくりと地面に伏す。もう茶番は結構とばかりに、ヘイルが続いた。ボスに向かって地槍を投げつけ、土槍の集中隆起で敵を空中に跳ね上げて『照準』を合わせる。
「セット!」
 空を舞ったキンガーに追い撃ちとばかりに天槍を投げつけると、それは瞬時にいくつもの光の槍に分裂して、相手を空中に縫い止める。
「リロード! 天地穿貫す‥‥輝く槍!」
「なっ、なんだ! あ、あの長大な槍は! どこから‥‥いつの間に出てきたんだ?!」
 キンガーが慌てるのも無理はない。ヘイルの手にある悪を貫く光の槍は、何もない空間を切り裂いてやってきた!
「グロウランサー!!」
 戦士が全力で投擲した槍は、キンガーへと一直線。そのまま頑丈な胸を貫き、いずこかへと消える。この傷を攻撃に転換させられるほどの余裕はなく、キンガーは空中でただ苦しむだけ。
 だが、その苦しみから解放されるのも時間の問題だった。最後にソウマが『幸運招来』で巨大化させた招福祓厄ノ剣で、侵略者の身を滅さんと迫る!
「これで終わりだ! 超・招福祓厄ノ剣!」
「な、なるほどな‥‥こ、この星にやってきたのが‥‥この、お、俺様の、さ、最大の、不運‥‥う、うぎゃあーーーーーっ!」
 神々しき剣に両断され、キンガーはついに最期を迎えた。それと同時に赤黒き謎の隕石も爆発四散し、わずかに残された戦闘員もすべて降伏する。3人の戦士は地球を守るという大仕事を終えると、そんな自分たちを守った戦士『ブラックジャッカー』の元へ近づいた。ところが、そこにあるのは例の黒い強化スーツと焼け焦げた匂いのする茶色い塊‥‥
「これは‥‥土か‥‥」
 虎白の言葉を聞き、ヘイルは「そうでなくては」と不敵な笑みを見せる。何が起きたかわからないソウマだったが、奇妙な笑い声を耳にするとすべてを悟った。
「まさか‥‥なんだろ、このすっごい疲れそうな展開‥‥」
「けひゃひゃ、みすみすやられる我輩ではないわ〜。敵を騙すには、まず味方からってね〜」
 なんとドクターは生きていた。いや、生きていて当たり前。なぜなら、最初から戦っていないのだから。すべては身代わり用の特製フランクスがドクターを演じていただけなのだ。
「しっかり必殺技のデータはいただいたよ〜。すぐに帰って、これを研究だ〜」
「調べても負けないのが、本当のヒーローなんだよ!」
「少年の言うとおりだ。せいぜい、無駄骨を折るといいさ」
 銀河からの侵略者・キンガーを倒した戦士たちは、また別の道を歩みだした。はたして再び集うことがあるのだろうか。その時はどんな戦いを見せてくれるのだろうか。そんな期待を、破壊されたビルの影から秘密組織『スターズ』の杉森・あずさ(gz0330)がじっと見つめていた。
「これ‥‥連絡先聞きづらいから、上には適当にごまかしとこう」
 4人の戦士は宿命によって集う。連絡網では集まらない。そういうことなんだろうと、あずさは思った。