タイトル:そして秘め事の彼方へ?マスター:村井朋靖

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/06/18 11:49

●オープニング本文


 せっかく人間に脅威を与える存在として生まれてきたのに、バグアから「駄作!」と判断されて捨てられる不幸なキメラも存在する。
 そんな厳しい生い立ちもどこ吹く風。早々に「野良キメラ」となってしまった九官鳥は、闇夜を悠然と飛ぶ。風の向くまま、気の向くまま‥‥放逐された以上、帰る場所も目的地もない。ただ生まれ持った習性なのか、人の多い場所を見つけるとはゆっくりと降下。狭い街並みをさっと潜り抜け、何事もなかったかのようにまた舞い上がる。こんなことを繰り返しながら、キメラは気ままな旅を続けた。

 数日後、彼は偶然にもカンパネラ学園にいた。
 今はちょうど正午。疲れた翼を休めるため、男子学園寮の屋根の上でのんびりしている。気持ちよさそうに体を伸ばしたかと思うと、キメラの口がもぞもぞっと動き出した。そこから発せられる声は、学園に設置されているスピーカー顔負けの大音量で学園内に響き渡る。
「お、俺、キミのことが好きなんだー! 付き合ってくれー!」
「あ、あ、あの‥‥ボク、その、女子の制服を着た男なんですけど、そんなボクでも好きになってくれますか‥‥?」
 この声を聞いた人間たちは、盛大にズッコケた。熱血教師は怒り狂って「昼間っから何をやっとるんだ!」と犯人探しを始めるが‥‥実はこれ、学園内で誰かが発した声をキメラが再生しただけなのだ。
 どうやらこの九官鳥は鋭い聴覚で人間の会話を聞き、それをすさまじい記憶力で丸覚え。最終的には呆れるくらいデカい声で、さらには本人そっくりの声色でバラ色の秘密も遠慮なくバラしてしまうらしい。このつまらない特徴から、例のバグアが「こいつは駄作」と判断した経緯を察するのは容易である。
 熱い男の告白が終わったかと思うと、今度はテストの採点をする教授の独り言が始まった。その後は女子シャワー室での赤裸々な会話なども遠慮なく公開され、いよいよ学園内はパニック状態に陥る。どうやらこのキメラ、カンパネラ学園でのご滞在が長かったようで、いろんなネタをこれでもかとお見舞いしていく。この調子だと、ここ数日のカンパネラの会話は、すべて記憶しているかもしれない。そして、それを大衆の面前でとめどなくぶちまけられることは必至。

 いろんな都合を胸に抱く個性豊かな教師たちが、生徒や傭兵たちに早急な討伐を求めた。もはや一刻の猶予もない。早くキメラの口を封じなければ、誰かの秘密が暴かれる。カンパネラ学園にやってきた迷惑な野良キメラを倒す‥‥それが今回の任務だ。

●参加者一覧

姫川桜乃(gc1374
14歳・♀・DG
功刀 元(gc2818
17歳・♂・HD
御剣 薙(gc2904
17歳・♀・HD
悠夜(gc2930
18歳・♂・AA
春夏秋冬 立花(gc3009
16歳・♀・ER
夏子(gc3500
23歳・♂・FC
ファリア・レンデル(gc3549
16歳・♀・FC
海原環(gc3865
25歳・♀・JG

●リプレイ本文

●それぞれの思惑
 広大な敷地のカンパネラ学園で、小型のキメラを闇雲に探すのは愚の骨頂。そこでメンバーはふたつの捕獲班を作った。
 それとは別に、個別行動を希望した者がいる。キメラを安全に捕獲する罠を設置して回る海原環(gc3865)、独自の方法で探索を試みる姫川桜乃(gc1374)。
 どちらも何か企んでいるようだったが、その本心は透けて見えない。いや、参加者の大半が『そんなものを見てる余裕がない』だけなのだが‥‥

 環はひとりになったところで、この日のために用意したお手製の罠を広げた。
 まずはマンガ的な罠のご紹介をしよう。檻となるザルを棒で立て、その中に作り物の九官鳥を設置。この棒の端っこには紐が括ってあり、絶妙のタイミングを引くと捕獲完了である。
 別にキメラ以外が掛かっても構わない。その時のお楽しみも準備してある。みんなの慌てる様子は近くに設置されたマイクで丁寧に拾い、リアルタイムで全員の無線に流す予定だ。
 他にも、秘密の暴露を恐れる人間を束縛する罠も用意してある。環の目的は「九官鳥型キメラが、たくさんのお喋りをしてくれること」を望んでいるのだ。
「どんなお話が聞けるか、楽しみですね♪」
 彼女の表情や声は明るいが、準備した道具は少し腹黒い。九官鳥友の会所属の環に、隙はなかった。

 一方の桜乃は、環よりもストレートな方法でキメラの捕獲に挑む。ノースリーブのセーラー服がまぶしい。
 装備も充実。まごのてにエアーソフト剣、指さし君1号。さらに首から呼笛を下げ、誰を威嚇したいのかわからない巨大注射器を持って歩く。
「鳥を探しつつ、他の班の邪魔‥‥じゃなかった。支援をしないと」
 単独行動のふたりが、自分のカラーを存分に発揮している。しかし、思惑通りに行くかどうかは別問題だ。

 捕獲班も動き出した。
 悠夜(gc2930)と春夏秋冬 立花(gc3009)、功刀 元(gc2818)で一班。さらにファリア・レンデル(gc3549)と夏子(gc3500)、御剣 薙(gc2904)でもう一班を結成。
 この時すでに二手に分かれていたが、定期的にトランシーバーで現在地を確認。それを立花が地図に書き込み、キメラの現在地を探る資料を製作していた。
 彼女の背中越しから地図を見ながら、元が「ツイッター、どこにいるんでしょうかー」と口にする。実はこの作戦中、みんなが元と同じようにキメラのことを『ツイッター』と呼んでいた。
「ハイハーイ。秘密をバラされたくないのはよーくわかるが、目的はあくまでも捕獲だからな」
「わ、わかってますよー」
「じゃあ、虫取り網を本気で構えたまま、真剣に地図をにらむのやめてください!」
 この時点で、元の挙動はすでに怪しかった。気さくなトークの最中でも、目だけは真剣。きっと近い将来、なんかやらかすつもりだ‥‥立花は警戒を高める。

●あなたの罠は誰のもの?
 もうひとつの捕獲班は、ファリアを先頭に進んでいた。その後ろを鳥の着ぐるみ装備の夏子が、両手の翼をはためかせながら陽気に歩く。
 その最後尾には、男子用制服を着用した薙がいた。たまに彼女は、仲間まで監視するかのような仕草を見せる。どうやら捕獲班の最後尾には、落ち着きのない人が行くらしい。
「わたくしに秘密などありませんが、学園の風紀を乱す者を見逃すわけには参りません!」
「そうでゲス。今回は『学園の精神面での平和を守れ!』でゲスなぁ♪」
 調子よく語る夏子が、ふと薙に視線を向けた。やっぱりソワソワしている‥‥怪しい。彼は捕獲時に始末されないように動くつもりでいた。
 一方、ファリアの目的は実にシンプル。元と夏子に対して仕返しをする。それだけのために、前向き思考のお嬢様はがんばっていた。
「ボク、キメラを捕まえる罠があるって聞いたんだけど‥‥」
「タマさんが仕掛けるとか言ってたでゲスな。まぁ、味方の罠にホイホイと引っ掛かる夏子じゃないゲスがねぇ♪」
「はっ!夏子、あの物陰に九官鳥の姿が!」
 薙に先を越されては困ると、夏子はファリアの指差すところへダッシュ。そのまま陽気な着ぐるみは、一気に九官鳥を捕獲した。
 あっけない幕切れ‥‥と思いきや、これはついさっき設置したばかりの環の作った偽物。これに触れた瞬間、夏子の右足首にロープが絡まり、近くの木に逆さ吊りになってしまう!
「獲ったでゲ‥‥って、うひゃあーでゲス! ぷらーんでゲスよっ!」
「お助けしますわ! はあっ!」
 復讐の対象が哀れな姿になっているのに、ファリアが何もしないわけがない。すぐさま剣で束縛を解くが、おかげで夏子はそのまま頭から落ちた。彼は一瞬にしていくつもの恐怖を味わった。
「あいたたでゲス。ひどい目にあったでゲス」
「こんなことで挫けてはいけませんわ、夏子っ! あら、あんなところにザルの忘れ物がありますわ。家庭科室から飛んできたのかしら?」
 棒で半開きになったザルの中に、例の九官鳥が顔を覗かせていた。これを逃さぬ手はないと、何気なく手を突っ込むファリア。環は仲間が罠にかかったと知りつつも、ついついロープを引く。襲い掛かるザルの恐怖に、ファリアは思わず驚きの声を上げた。
「きゃっ! な、なんですの、これは?」
「それは鳥を捕まえる罠でゲスよ。ファリアさん、知らないでゲスか?」
 思わず強い口調で「し、知ってますわっ!」と答えてしまうファリア。その後もこんな調子で、次々と環の罠に引っ掛かる。ふたりの悲鳴はマイクを通して、他のメンバーに飛んでいるとも知らずに‥‥

 悠夜たちは、その通信を聞いて不安を覚えた。スピーカーから漏れ出る悲鳴は切れ目なく続く。
 そんな中、立花が単独で動く桜乃に連絡を入れた。すぐに返事をすることから、連中と一緒ではないらしい。
『こっちも罠を仕掛けたところなのに、他の罠にかかるわけないでしょ!』
「それならいいんですけど‥‥環さん、もう楽しんじゃってるみたいで」
『ついに立花ちゃんと一緒に依頼をする日がきたかと思うと‥‥クッ』
「その最後の『クッ』は何なの! なんでそんなに辛そうなの!」
 立花と桜乃、このふたりにも因縁があるのだろうか。相手は鋭いツッコミを聞かずに、通信を切った。
 その頃、元はあることが気になっていた。それは別班の悲鳴に、薙の声がなかったことである。
「もしかして‥‥薙さんはすでにツイッターを‥‥?」
 元は焦った。どんな言葉を続けても最悪な結果になっちゃう、この不思議。こうなると、もう落ち着いていられない。
 そんな彼の目の前に、異様な光景が飛び込んできた。地面に刺さった指さし君1号に、白い布がのどかに揺れている‥‥人差し指に白い物体が刺さっており、怪しさ満点。元は息を呑んだ。
「まさか薙さん、捕獲の途中でツイッターに襲われて‥‥!」
 悠夜と立花が目を凝らして確認しようとするが、いっぱいいっぱいの元は迷わず突進。キメラが暴いた秘密がほしい‥‥彼はその一心で駆けていく。この時、元は狼だった。
 その直後、彼は捕らわれの草食動物となる。なんとこれは環ではなく、桜乃が仕掛けた罠だった。元が指さし君1号を手に取った瞬間、体をロープでぐるぐる巻きにされてしまう!
「なっ! こ、これは罠だったのですかー」
「やった! 元ちゃんが獲れたー!」
「なぜ掛かった! そして、なぜ掛けた!」
 立花の冴え渡るツッコミを聞きながら、悠夜は問題の布を確認する。なんと、これはパンティーだ。しかしなんでこんなものを‥‥意外にもその答えは、頭上から降ってきた。
「スースーするけど、スカートはいてるし、めくれなければどうってことないわ」
「ん、この声は桜乃‥‥って、なんで上から声すんだ?」
 悠夜が声のする方向に視線を上げると、校舎の屋根に例のキメラ『ツイッター』がいた。しかしこの緊張感、少女たちには伝わらない。
「なぜ乙女が安易に脱ぐ! そんなんで鳥が捕まえられるか!」
「だから、マシュマロも刺しておいたのよ! 食べるかなーと思って」
「おい、もうキメラいるんだからよ。さっさとやっちまおうぜ。功刀、いけるよな?」
 元はツイッターを発見してホッとしつつ、必死になってロープから脱出した。4人はキメラに視線を向ける。

●生け捕り作戦!
 立花からファリアへ連絡が飛んだ。無線を介してそれを聞いた環が何食わぬ顔で合流し、残りの4人もツイッターの元へ急行する。
 まずは悠夜が小銃「ブラッディローズ」を抜き、キメラに向かって威嚇射撃。命中はしないが、敵は危険を察知したらしく、ゆっくり地面へ下りてくる。
 このチャンスを見逃さず、元が虫取り網での捕獲を狙う。猛然とツイッターに向かうその姿は、誰が見ても必死すぎた。
「ツイッター、覚悟!」
「ちくしょー。薙さん、かわいいよなぁー。明日こそは‥‥明日こそは‥‥」
 ツイッターは元の声を奏で、隠しておきたかった秘密を容赦なく暴露した。その場に居合わせた全員が「うお!」と声を上げる。無駄に盛り上がってきた。
 ここまでひどい仕打ちを受けながらも、まだ元は自分を見失っていない。彼にとっての最悪は、この事実を本人に聞かれることだ。彼は固まりつつある体を無理に動かし、そーっと周囲に目をやった。悠夜、立花、桜乃、ファリア、薙‥‥少年は絶望した。連絡を受けた時には、かなり近くにいたらしい。
「やりましたわ! わたくし、元の秘密を聞きましたわ!」
 ツイッターの暴露を聞いて大喜びしているのは、悠夜にファリア、そして環。他の者はポカーンとするばかりで、当事者はぐうの音も出ない。
 薙は落ち着きを取り戻すため、脚爪「オセ」でキメラを黙らせようとする。しかし敵との距離がかなり開いていたため、ツイッターの口が早さで勝った。
「はぁ。どうしちゃったんだろ、ボク‥‥最近、あの人のことが頭から離れない」
「あ、あ、だ、ダメ! それ、絶対にダメ!」
 九官鳥が真似た口調は、誰がどう聞いても薙だ。固まっていた元はますます硬直し、観衆は耳を澄ませる。
「気がつくと姿を探してたこともあったし‥‥もしかしてボク、功刀君のことが‥‥好き‥‥なのかな‥‥」
 薙はビクッと身を硬直させた。そして周囲の祝福で我に返ると、顔を真っ赤にして「‥‥あ、あぅぅぅ」と、その場にうずくまる。
「初めて出会った時に一目惚れしましたー。猫が好きな所もボーイッシュな所も全てが大好きですー! もし良かったら付き合って下さいー!」
「なーんだ、ふたりともソワソワしてると思ったら、両思いだったんでゲスね! 何はともあれ、よかったでゲスよ♪」
 直後、どさまぎで、告ってる元に、ちゃんとフォローする鳥の夏子。その姿を見て、立花が「今さらだけど、なんで鳥なの!」とツッコんだ。

 ツイッターは口先だけで、能力者ふたりの攻撃を阻んだ。ペースをつかまれると厄介‥‥ここでメンバーは攻勢に出る。
 ファリアが迅雷で一気に敵の目前まで距離を詰めると、バスタードソードで二連撃を繰り出した。これを翼に命中させ、上空への逃亡を阻止する。それに続き、桜乃は花壇から高くジャンプ。キメラの頭に容赦なくエアーソフト剣を振り下ろす!
「あっ! さすがに手加減しすぎた武器のせいで弾かれた?!」
「そんなおもちゃで、キメラが倒せるか!」
 ツッコミが来ることを予想していたのか、桜乃は空の缶コーヒーを立花に投げつける。この攻撃は見事に命中し、相手に精神的なダメージを与えた。
「痛っ! 何するのよ! もういいわ! この網で捕まえましょう!」
「誰かが始末しても困りますからねー。私も手伝いますよ」
 立花と環が協力して捕獲し、さっさと檻に閉じ込めた。しかし無事に捕らえられた以上、秘密の暴露はまだ続く。

●能力者の日常?
 ツイッターは無事に捕獲されたが、ファリアは意気盛ん。ゲージの中に手を突っ込み、キメラを鷲づかみにして叫んだ。
「さあ、次は夏子さんの秘密をお言いなさい!」
 夏子は完全に油断していた。
「な! ファリアさん、なんてことを聞くでゲスか!」
 その直後、ツイッターはスーパーの雑音を細かく描写し始める。これが夏子の秘密‥‥この出だしに誰もが首を捻ったが、夏子は苦笑いを浮かべた。そして彼のセリフが再現される。
「よっし! ナイトバーゲンの豚バラゲット! 覚醒した甲斐があった!」
 たかが買い物で覚醒‥‥さすがの立花も、これには驚いた。しかし、この話には続きがある。
「あー! 誰だ、バハムートに乗ってる奴! あっちの惣菜を狙ってるな! ならばこっちも‥‥! リンドヴルム、夏子、参戦する!」
 その後、店内放送で『店内での覚醒やAU−KVの使用をご遠慮ください』と注意されたところで、リピートが終わった。
「主婦か! しかも覚醒したり、AU−KV装着したりって必死か?!」
「こうでもしないと、何も買えんのでゲスよ‥‥」
 あまり能力者らしくない微笑ましいエピソードに環が笑うと、なんとツイッターが彼女の声で喋り始めた。
「罠はこれでよしっと‥‥そうだ。キメラ以外の野鳥が取れたら、晩のオカズにしよう。焼き鳥にして、日本酒をきゅーっと♪」
 それを聞いた仲間が、彼女の腰にぶら下がっているブラッディローズに目をやった。誰もが「なるほど」という視線で環を見る。
「ちっ、違います違います! 決してキメラを食べようとしたわけではっ」
「まったく。清く正しく生きれば、私みたいに秘密なんてできませんのに‥‥」
 立花がそう言って話をまとめようとした瞬間、ツイッターが衝撃の事実を語った。
「失礼ですが、お客様にはまだブラジャーは必要ないかと‥‥」
 このセリフは、この場にいる誰の声でもない。しかし該当者は素直に反応した。悲鳴にも似た声を上げると、ツイッターにビンタして暴露を止める。
「立花ちゃん‥‥お店でそんなこと言われたの?」
「ほら、これで黙りましたよ‥‥って、かわいそうな人を見る目をしないでください」
 桜乃の思わぬ反撃にも動じず、立花は何事もなかったかのように振る舞う。暴力を振るわれたツイッターは、しばらくの間は自分から喋るのをやめた。とりあえず、これで一段落‥‥騒動を楽しんだ悠夜はどこか満足げな表情で、夏子に話しかける。
「アァ〜、ダリィー。でもまぁ、これで安心して屋上で煙草が吸えるぜ。夏子も一服どうだ?」
「未成年は煙草を吸うな!」
 立花はこのツッコミでなんとか息を吹き返した。秘密を暴かれるとは、実に恐ろしいことである。

 その頃、元と薙はお互いの気持ちを伝え合っていた。こうなってしまっては、そうするより他にない。
「案内ツアーの後から、ずっと気になってて‥‥。薙さん、好きです。だからボクと‥‥付き合ってください」
 薙からいい返事があるのはわかっているが、ここで重要なのは「自分の言葉で伝えること」だ。ふたりはちゃんと目を見て話す。
 意外性にあふれた奇妙なキメラが、いろんな意味で能力者たちを結びつけた。