タイトル:漆黒の四国はしつこくマスター:村井朋靖

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/05/29 22:50

●オープニング本文


 くたびれたトレンチコートとハンチング帽がトレードマークの日本人刑事が見つめる先は、不気味さが漂う夜の街だった。
 ところがちょっと視線をそらすと、てっかてかのお洗濯日和。本日は快晴なり。腕時計は昼の2時を指している。夜になっているのは、30メートルくらいの範囲だけ。この奇妙なギャップに、刑事は思わず頭を抱えた。
「いったい何がやりたいのかねぇ、あのバグア野郎は‥‥」
 彼の名は坂神源次郎。通称『キメラ刑事』。
 最近のライフワークである真紅のバラと黒い棘の紋章を使うバグアを追って、今回は四国東部の街に足を伸ばしていた。そこで突然、この光景を目にしたのである。坂神は呆れながらも調査を始め、いくつかの変化を確認し、順番にそれを精査していく。
「んー、中からコウモリみたいな声が聞こえるが、ありゃキメラだろうな。あいつが動くと、漆黒の範囲も一緒に動くってか‥‥」
 坂神はキメラの姿を確認しようと、必死に目を凝らす。キメラのいるところは完全な闇ではなく、あくまで月のない夜のようなもの。危険を冒さずとも、漆黒の中の状況は確認できる。そこで彼はある発見をした。
「なんだ、あれ? うちのかみさんより立派なネックレスぶら下げちゃって。もしかしてこの漆黒はキメラの能力じゃなくて、どっかの科学者が作った装置の仕業か?」
 なんとコウモリ型キメラの首から、小さな長方形の機械がぶら下がっている。これが周囲を暗くしている原因のようだ。坂神はこまめにメモを取り、さらに情報を集める。
「周囲の建物から判断するに、キメラの大きさは人間ほど。まー、すばしっこいんだろうなぁ。これまた厄介だねぇ」
 坂神はULTへの報告書をまとめるために、いったん近くの警察署へと向かった。もちろん周辺住民の避難誘導の手配も同時に行う。この辺の段取りはいつものことだ。手抜かりはない。

「四国漆黒装置をつけたキメラが飛び立って、数時間が経過いたしました」
 コウモリ型キメラが作り上げる漆黒とは正反対の、純白のスーツを着た美青年の報告を聞いたバグアは笑みをこぼした。
 彼はどんな時も優雅なムードとともにいる。大好きなものは『美しいもの』。今も上品なクラシック音楽を鳴らし、血のように赤いワインを嗜んでいる。背中まで伸びる金色の髪は軽くソバージュがかっており、最高級の白のタキシードとの相性は抜群。もちろんそのスタイルや顔立ちは「美しい」の一言に尽きる。
「か弱き人間の怯える様は、なんとも甘美なものだ。あの装置は、私がいつでも夜の雰囲気を楽しむために作らせた嗜好品だが、こんな活用方法を思いつくとは‥‥私もまた美しい」
 素敵なご趣味に自己陶酔するだけならいいが、どうやら頭はそれなりに切れるらしい。
「今回も無駄な抵抗という美しくない行為をすべく、人間の美しき進化系である能力者たちが集うのだろうか」
 彼は懸念を表明するも、その顔や声が曇ることはない。ワインをグラスの中で転がしながら、悠然と語り続ける。
「そろそろ彼らにはバグアに服従するという、賢明で美しい発想を紹介してあげないと‥‥ね」
 美しき金髪のバグアは、自分の影を追う者たちに積極的に関わる姿勢を見せた。闇より深く、光より煌びやかな敵との接触は近い。

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
正倉院命(gb3579
22歳・♀・SN
ナンナ・オンスロート(gb5838
21歳・♀・HD
希崎 十夜(gb9800
19歳・♂・PN
リュティア・アマリリス(gc0778
22歳・♀・FC
如月 芹佳(gc0928
17歳・♀・FC
市川良一(gc3644
18歳・♂・SN

●リプレイ本文

●漆黒の調査
 能力者たちが到着したのを確認すると、坂神刑事はさっさと退散する。ドラグーンのナンナ・オンスロート(gb5838)は「お任せください」と言うと、相手も「終わったら呼んでくれ」と返し、そのまま振り返らずに待機場所へと歩いていった。

 こうして調査が始まった。
 白衣姿のドクター・ウェスト(ga0241)が誰に伝えるわけでなく「我輩がドクター・ウェストだ〜」と名乗りながら道具を準備し、自分のタイミングで実験を開始する。
 まずはランタンを灯し、その辺に落ちていた長い棒の先に引っ掛け、漆黒の中にそーっと置いた。その様子は、キメラ討伐のために待機する希崎 十夜(gb9800)やリュティア・アマリリス(gc0778)が固唾を飲んで見守る。ドクターは周囲をぼんやりと照らす光を見ながら、さらに暗視スコープを装着して調査を続行。装置は正常に機能することから、この漆黒は純粋に夜を演出するだけのものだと判断した。
「ふむ、コレは光に対するフォースフィールドみたいなものかね〜」
 分析を聞いたUNKNOWN(ga4276)は、興味深そうにひとつ頷いた。彼はいつものように、装置の作り出す漆黒の中で映えそうな服をバッチリ着こなしている。
「しかし相変わらず、バグアの技術はデタラメだね〜」
「絶対、というのはないのだろう。どんなことにもね」
 煙草を咥えた口から紡がれる言葉を聞き、ドクターは不意に「けひゃひゃ」と笑う。これだから科学者はやめられない‥‥そんな感情たっぷりのニヒルな笑いだ。そして実験の仕上げとばかりに、彼は閃光手榴弾をじゃじゃーんと取り出す。これを使うということは、調査を兼ねた討伐を始めるというサインである。仲間たちは準備を急いだ。

 ドクターから距離を置いて、ナンナや京美人の正倉院命(gb3579)、そしておっとりとした如月 芹佳(gc0928)が戦闘に備えている。漆黒の空間はキメラを中心に移動するため、目だけで行方を追うと目がチカチカする。そこで芹佳は準備しておいたサングラスをかけた。それを見た十夜が「似合うな」と声をかけると、リュティアも「雰囲気が変わりますわね」と感想を口にする。
「みんなも義兄さんも、今日はよろしくね♪ こうやって見ると、コウモリって微妙にかわいいよね♪」
「遠くから見れば、ちょっとした愛玩動物。でも近くで見ると、薄気味悪いの象徴‥‥確かに微妙かな」
 ナンナが同意を口にしながら、ソニックヴォイスブラスターをドクターに手渡した。超音波を使って、キメラの反響定位をかく乱するのが目的である。彼も「これも実験の一端」と役目を引き受けたが、後で自分も攻撃に参加するので最初だけ使用する手はずとなっていた。
 囮役のナンナはAU−KVを装着。その背後から攻撃を仕掛ける十夜とリュティアも段取りを確認する。いよいよ討伐という時、UNKNOWNは「注意が頭上に集中しないように」とアドバイス。敵味方の区別なく、足元からアクシデントが発生する可能性がある。彼は「みんなが気持ちよく動けることが第一だ」と諭した。
「ソニックヴォイスブラスターを使ってから、閃光手榴弾を投げつけるよ〜」
 すでに閃光手榴弾のピンは抜かれており、ドクターはタイミングを計っていた。それを見たメンバーは、慌てて後ろを向いて耳を塞ぐ。ド派手な宣戦布告で、戦いの幕が開こうとしていた。

●驚きのコウモリ
 まずはドクターがソニックヴォイスブラスター越しの高笑いで、キメラの気を引いた。
「けひゃひゃひゃひゃ!」
 コウモリは異様な雰囲気の超音波を食らうと、不意に周囲を見渡す。そして昼の場所からの攻撃ということを知ると、四国漆黒装置をぶら下げながら声の主へと向かっていく。ところがそこにいる人間は、みんな背中を向けていた‥‥ドクターは表情ひとつ変えず、迫る敵の前に閃光手榴弾を投げつけ、後ろを向いて身をかがめる。その数秒後、すさまじい光と音が炸裂し、コウモリだけがその餌食となってしまった!
「キ? キキーーーーーッ?!」
 なんとも情けない声を上げながら、キメラはその辺をせっせと飛び回る。かなり慌てているようだ。
 ナンナはこのタイミングで竜の鱗を発動させ、盾を構えながら悠然と夜の中へと入っていく。十夜は覚醒し、迅雷で一気に間を詰めると、円閃の威力を乗せた一撃で翼を狙う。まさに一瞬の出来事だ。
「全力、全開ッ! 雷幻閃ーーッ!」
 この一撃が見事に決まり、敵に強烈なダメージを与えた。それを見たリュティアがダッシュで接近、円閃による強力な一撃を含むツヴァイメッサーの剣舞を披露する。華麗な攻撃が、敵の悲鳴でいっそう引き立つ。
 一方的な展開を決定付けたのは、命の射撃だ。鋭覚狙撃で威力を高めた弾丸は、装置に向かって一直線。「ぐしゃっ」という鈍い音を立ててめり込んだ。これを見たドクターは、思わず口から魂が抜けそうになった。
「あーん、が‥‥はっ。み、命君。木っ端微塵にされては困るぞ〜!」
「まずはあれを無力化せんと、どうにもならんで。ウェスト様も研究者なら、一から組み立てればよろし」
 そんなのはよろしくないとばかりに、ドクターは超機械と機械剣を抜いて戦闘準備。さらに漆黒の中へ飛び込んだ十夜とリュティアの武器に練成強化を施す。
 UNKNOWNはキメラを狙って射撃。先陣を切った仲間が傷つけた箇所を狙うなど、どこか余裕を感じさせる戦いぶりを披露する。
「一発外したか。ま、キメラは動かぬ的ではないからな」
 自分に言い聞かせるというよりも、周囲に聞かせる感じでつぶやき、常に前向きな気持ちになれる雰囲気作りを心がけた。
 ここで芹佳がエレキギター型の超機械を実際に奏でて、攻撃を仕掛ける。今回はサングラスをかけているので、ノリのいいロックを周囲に響かせた。
「今日はノリノリでいくよ! 私、楽器を弾くのは得意なんだよね♪」
 熱いハートに火傷したのか、コウモリは超音波攻撃を食らって身悶える。十夜も「いい感じだぜ!」と義妹のテンションを褒めた。ナンナはロックな雰囲気に戸惑いを見せるも、今の芹佳の姿に説得力があるので、どうにも妙な気持ちになっていた。
 こうなるとキメラの攻撃は、いわば不協和音。自分の前にいる3人にそれぞれ攻撃を仕掛けるが、ナンナにかろうじて命中させただけ。しかも彼女にはこれをガードされ、またふらふらと宙を舞うしかなかった。

 すっかり能力者の独壇場‥‥というより、オンステージとなった漆黒の内外。芹佳の演奏にあわせて、UNKNOWNと命が小気味いいリズムで射撃を行う。コウモリの悲鳴までピッタリならご喝采。命の仕掛ける攻撃が装置に命中すると、ドクターの悲鳴に似た合いの手が入るのはご愛嬌。
「ふむ。音楽のある戦いも悪くない」
 紫煙を燻らせながら銃を打ち鳴らすUNKNOWNは、漆黒の中央に目をやった。
 ナンナは竜の咆哮で全身にオーラをまとい、さらに竜の瞳で強力な一撃を見舞わんとする。頭部を駆け巡るスパークが攻撃を命中へと導き、さらにダメージを重ねていく。その隙を逃さず、十夜とリュティアが攻撃を仕掛けた。
 こうなると一方的な展開になる。ここでドクターはがんばる芹佳の超機械に練成強化を施し、電波増幅で自らの能力を高めた。そして悠然と接近すると、電磁波とレーザーブレードで憎きキメラを追い落とさんと攻撃を仕掛ける。
「我輩の白い鴉は夜の空を飛ぶ、なんてね〜。ベイベ〜」
 ロックな空気を味わいながらも、きっちりと敵の悲鳴を引き出す。その言葉に応えるかのように、芹佳が激しい旋律とともに攻撃を仕掛け、何発か命中させた。
 すでにコウモリが限界なのは、誰の目にも明らかだった。しかしまもなく閃光手榴弾の呪縛から解き放たれるためか、わずかに元気を取り戻しつつある。敵は再びナンナと十夜、リュティアに体当たりを仕掛けた。攻撃が命中したのは十夜だけだったが、彼はこれを避け切れずに手傷を負わされる。
「くっ! やりやがったな、この野郎ーーー!」
 これが十夜のテンションなのか、それともロックな空気のせいなのか‥‥滝峰を振り上げながら、再び戦闘態勢を整える。ナンナは敵の攻撃を衝撃波で飛ばせばと思っていたが、ここではその効果を試すチャンスがなかった。

●キメラも装置も!
 ここでUNKNOWNがバラキエルを厳かに構え、キメラに銃口を向ける。
「そろそろ足止めが必要かな?」
 あえてゆっくりと制圧射撃のモーションを取り、さらにハッキリと話すことで前衛のメンバーに離脱するよう仕向ける。それを察したリュティアは、十夜を制した。
「十夜様、合図です」
「よし! ドクター、ナンナ! 下がるぜ!」
 十夜の合図で全員が一斉にキメラから距離を置く。リュティアは迅雷を駆使して移動し、抜刀・瞬で武器を雷遁にチェンジ。十夜も同じく抜刀・瞬を使って小銃に持ち替えた。
 全員の一時離脱を確認した後で、UNKNOWNが制圧射撃を開始。銃の連射による威嚇を行い、コウモリの動きに制限を与えることに成功する。
 ナンナはキメラに向かって、スノードロップによる射撃を行い、これを命中させた。
「全弾命中。バックアップをお願いします」
 ここぞとばかりに、命と十夜が装置に向かって射撃を浴びせた。いよいよ四国漆黒装置はマヌケな音を立てながら煙を上げる。
「あとは頼みますえ」
 もはや、キメラも機械も風前の灯。ここでリュティアが武器をツヴァイメッサーに持ち替える。
「これで終わりに致しましょう‥‥死の舞踏!」
 彼女は迅雷で瞬時のうちに接近し、円閃による強力な一撃を加え、再び迅雷を使って敵の死角へと移動する。まさに「ダンスマカブル」と呼ぶにふさわしい技だ。コウモリはいったい何が起きたのか訳のわからぬまま、サンドバッグのように打たれまくる。
 ドクターは再び電波増幅を使い、超機械「白鴉」から強力な電磁波で追い撃ちを決める。飛ぶことすらままならぬ状態にしたところで、芹佳が武器を超機械から蛍火に持ち替えた。
「とどめだよ!」
 迅雷を使う直前に軽く目を瞑り、静かにサングラスを取る。そして一瞬して夜の世界へと吸い込まれた。もちろん、目を開いても視界に影響はない。そのまま刹那を駆使し、目にも留まらぬ一撃を繰り出した。これを避けられるほどの元気がなかったのか、キメラは哀れな断末魔を響かせながら地面に伏す。同時に四国漆黒装置も力を失い、理不尽な夜も明けた。
「ハートビートな夜が‥‥終わったぜ」
 今回の戦いを象徴するセリフを、十夜が残した。敵が繰り出したのは『音もなき暗い世界』を阻止したのは、能力者たちの奏でたハーモニーであることは確かである。

●漆黒の向こうに
 ドクターは十夜の傷を練成治療で癒すと、まずは四国漆黒装置の確保に入る。これはリュティアが回収していたが、本人はすんなり「ウェスト様にお渡し致します」と答えた。ドクターはそれを聞いて小躍りすると、さっそくコウモリ型キメラの細胞サンプルを取りに行く。外見から判断される攻撃性能やフォースフィールドの強度など、まだまだ調べることは満載だ。

 ナンナと芹佳はリュティアを挟んで、まじまじと装置を観察した。
 装置の各所にバラと棘の紋章が刻まれており、装飾としても機能しそうだ。外見はすべて黒塗りだが、光沢があり上品。これを弾丸で壊していたのかと思うと、なぜかもったいない気持ちになってしまう。
「この機械、面白いね。いつでも寝れるもんね。私もひとつ欲しいかな」
「部屋を暗く灯す電球の豪華版‥‥と言ったところですか。軍事的な転用を考えた場合、かなりの制約を受ける装置ですね」
「私はどちらかといえば、芹佳様がおっしゃる用途のものだと思います。もしかして、これはバグアの嗜好品では?」
 娘たちが話に花を咲かせていると、いきなり装置の底が外れる。周囲に響く乾いた音。そして芹佳の無機質な「あっ」の声。そして静かに流れ出すクラシック音楽‥‥誰もが「誰かが装置を完全に壊した」と思い、周りに集まってきた。リュティアが「そんな粗相はしておりません」と底面を上にすると、そこにはモニターがあった。どうやらこの部分で、映像を受信するらしい。画面にはでかでかと、あの紋章が映っていた。
「真紅のバラと黒い棘の紋章ということは、つまりはバグアはんということですか?」
「その通り。カーテンオープン!」
 命の問いかけに答えるべく、紋章の描かれたカーテンが勢いよく開いた。その向こうには、白いタキシードを着た美しきバグアがワイングラスを揺らしながら、上品な赤い椅子に座っている。彼はすっと立ち上がると、能力者たちに向かってうやうやしく礼をした。
「人間の美しき進化系でありながら、愚かな抵抗を続ける諸君‥‥ごきげんよう。我が名はフィリス。フィリス・フォルクード」
 ナンナは敵の風体を見たせいか、装置に対するリュティアの感想が今になって理解できた。この性格なら、手間のかかることを喜んでしそう‥‥そう思えた。
「ふむ。その口から放たれる声はハープのよう。そしてクラシックは威厳を損なわず、それでいて上品なものを選んでいる」
 UNKNOWNは表情ひとつ変えず、バグアの表現力を評価してみせた。しかし相手の反応は、いまいちよろしくない。
「このフィリス、美しくないものは必要としていない。そう、それはバグアの侵略を受け入れない諸君らも含まれる‥‥」
 どのような姿をしていても、バグアはバグア。彼もまた地球の侵略者に違いない。十夜は画面に顔を覗かせて挑発する。
「そこのキザな人。見つけたら、迅雷飛び蹴り食らわしてやるから、覚悟しておけよ」
「これ以上の無法はさせませんわ」
 真っ向からの宣戦布告に、リュティアも混ざった。それを受けたフィリスは落胆のポーズを美しく見せる。
「おお、なんということ。バグアに従順であれば、限りある命を美しく終わらせることができるというのに‥‥」
「けひゃひゃ。何から何までデタラメだね〜、バグアは」
 ドクターの言葉は単なる挑発とも受け取れるが、深い意味のあるようにも思える。彼の言葉を遮る者は誰もいない。フィリスは歌うように語りかけた。
「よろしい。また、この私と関わりを持つこともあるだろう。そのたびに賢明な判断というものを教えて差し上げよう」
「あなたが愛する美しさとは無縁な世界で、また会いましょう」
 ナンナがそう答えると、通信が切れた。
 少しご立腹の十夜は何も言わずに愛剣で装置を壊そうとすると、ドクターが体を張って制止するお約束のコントが展開される。それを見たメンバーは表情を明るくした。この事件は解決している。あとは坂神に依頼の達成を報告するだけだ。そして四国漆黒装置の向こうにある闇‥‥フィリス・フォルクードと名乗るバグアの存在を。