タイトル:デートの敵は敵だったマスター:桃野はな

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/07/05 22:53

●オープニング本文


 ある夜のこと。
「おーい、アデル!!」
 家の外から声がする。
 部屋の窓から外を覗いてみると、家の前に親友のバッブがいた。
 慌てて、窓を開ける。
「どうした、バッブ!?」
「この前の公園が大変なことになっているらしいぞ!」
 この前の公園――付き合うことになったシェリーとの初デートに使おうと、バッブと二人で下見に行った公園である。
「ちょっと、今行く」
 転ばんばかりに、俺は家を飛び出した。
「後ろに乗れ、アデル」
「おう」
 バッブの自転車の後ろに乗ると、バッブは公園に向けて自転車を走らせた。

* * *

 もうすぐ公園が見えてくるところで、道に人だかりができていて、通ることができない。
 仕方なくバッブと俺は自転車を降りて、人だかりを抜けようとした。
「おい、兄ちゃんたち、これ以上進むと危険だぜ。ヘルメットみたいなのがブンブンたくさん飛んでるからな」
 ヘルメットみたいなの!?
 薄闇の中、目を凝らしてみると確かにヘルメットみたいなものがたくさん飛んでいる。
 しかも、公園の中を。
 これでは今度の日曜、シェリーとデートができなくなってしまう。
 どうしよう。
 ヘルメットみたいなのと戦う勇姿を見せるわけにもいかないしなぁ。
 誰か、ヘルメットみたいなのを退治してください。

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751
19歳・♂・ER
芹架・セロリ(ga8801
15歳・♀・AA
紅月・焔(gb1386
27歳・♂・ER
秋月 愁矢(gc1971
20歳・♂・GD
住吉(gc6879
15歳・♀・ER

●リプレイ本文

アデルとシェリーの初デートの前日、能力者たちは公園へ集まることになった。朝日を浴びて、ヘルメット型のキメラが黒く光っている。ブンブンと電子の羽音がうるさい。
 能力者たちが公園へ次々と現れる。
「けっひゃっひゃっ、我が輩はドクター・ウェストだ〜」
 私設研究グループのウェスト(異種性物対策)研究所の所長のドクター・ウェスト(ga0241)の姿が見える。ドクターは重体のUNKNOWN(ga4276)と組む予定だ。UNKNOWNは電柱の陰からこっそり公園を覗いている。
「正直、君と組むのは不安なんだがね〜、仕事以外に何をするか分からないところが、だね〜」
「みぎゃっ!」
 UNKNOWNは腕をしゅたっと挙げた。どうやら人語は苦手なようで、「みぎゃ」「ぎゃお」と身振り手振りで意志疎通を図るらしい。年齢も一億三十五歳という、全てが謎に包まれたUNKNOWNである。現在、負傷中のため、ドクターのサポート役に回ることになった。
 UNKNOWNは緑色の竜神の着ぐるみを着ている。黒の帽子にサングラス、黒のビキニパンツが非常に可愛い。くわえ煙草とダンディズムは忘れていないらしい。
「おとなしく遠距離武器で攻撃していたまえ〜」
「みぎゃ!」
 口の中に仕込んだ超機械カルブンクルスはドクターに、抵抗もむなしく一時没収されてしまった。
 しかし、ライトニングクローを隠しおおせたUNKNOWNはドクターを驚かせようとなにか企んでいる様子だ。 
 能力者が集まったところで、ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)は集合と確認用に無線を準備した。能力者たちは活動範囲が重ならないよう、互いに注意し、公園内で解散した。
「ヘルメットとガスマスクは似て非なるものだ・・よって貴様等は俺の敵だ」
 なぜかガスマスクを被っている紅月・焔(gb1386)である。しかもジョジョ立ち・・・・。
「はー、結構な数の敵さん、厄介そうですね・・・・まあ、俺にとってはお前の方が百倍厄介だがよ」
 芹架・セロリ(ga8801)は、友人の紅月の足を蹴りながら言った。芹架は基本的に丁寧な口調ではなすのだが、紅月には乱暴な口調と横柄な態度で接する。
困ったことや面倒くさいことが起きたときには紅月を頼る・・もとい押しつけるらしい。
(「リア充のために戦う・・だと!? 非リア充のための俺には拷問に等しいな」)
 そんなことを思っているのは秋月愁矢(gc1971)である。キメラ退治はいいとして、その後予定されているデートがどうも気に入らない。
「ジャマセズニハイラレナイナ、リア充ナンテホロビレバイイ」
 つい本音をぽろっと口にしてしまう秋月であるが、俺もいつかリア充になろうと決心しているのであった。
 能力者たちは各個に散らばって、個別にキメラを撃破する作戦である。
「若き神聖な愛を育む場所に貴様等は邪魔だ・・消え失せろ・・」
 終夜・無月(ga3084)は呟いた。終夜は予め全敵の把握し、瞬天速でブリットストーム射程内に可能な限りの目標を捉えられる位置まで移動した。抜刀・瞬を使用しようした早抜きでブリットストームの空間圧殺にて攻撃していく。そして、太刀に持ち替え、太刀を己の一部かのように自由自在に操り、敵の合間を的確に縫う。一瞬の隙もなく、鋭い刃音を立て、キメラを切っていく。
 終夜の攻撃は、基本的に必中必殺仕掛けで確実に損傷を与える方針である。そして、敵の攻撃は全回避である。確実な攻撃がキメラにダメージを与えていく。
 住吉(gc6879)は、電波増幅によりエミタの力によって自らの精神力を高め、知覚力をアップさせた。時間短縮のためである。天狗が持つとされている「八手の葉の団扇」の形状をした天狗ノ団扇で仰ぎ、旋風を起こし、ダメージを与え、副兵装である扇嵐で、一時的に竜巻を与え、キメラを攻撃していく。キメラから接近されたら、扇嵐で防御しつつ、天狗ノ団扇で吹き飛ばす。
 ドクターは練成強化により、仲間たちの武器を強化した。そして、電波増強で知覚力をアップし、長さ750mmのエネルギーガンと超濃縮レーザーブレードである機械剣αで、キメラを攻撃していった。もちろん、UNKNOWNを守りながらの戦いである。
 一方、UNKNOWNは重体だからいつもより身体のキレが悪い。キメラに見つかればあたふたとばったばった右に左に走り、尻尾を振り、みぎゃみぎゃーとごろごろ地面に転がって回避している。重体にしては、とても動いている。本人もまさかこれだけ動けるとはとびっくりである。
 速くて硬いとはすごいぞ、なーが君。
 ユーリは何者も見逃さない探索の眼で探索しながら、見つけ次第、キメラに斬りかかっていく。公園の木に穴を開けてはなるまいと、銃の使用は緊急時のみである。キメラに逃げられそうになったときは、やむを得ないので、ドローム製SMGの弾幕で攻撃していく。色々壊さないように注意しながら退治するユーリは、とても気遣い屋であった。
「セロリン! 合わせろ! 合わせた事無いがナ!」
 紅月が芹架に向かって叫ぶ。芹架は木々の間をちょこまかと動き回りながら、敵を木に引きつけている。その隙を紅月が狙い撃つ作戦だ。
「囲まれたら面倒ですがここが俺が引き付けます。・・あ、でも俺には当てるなよ! 俺に絶対に当てるなよ!?」
 芹架は走りながら、紅月へ叫んだ。芹架は余裕があるときにクリムゾンローズでキメラを撃っている。クリムゾンローズとは戦いの花言葉をもつバラの名がつけられた銃である。白い班模様が描かれた紅色のボディだ。所持したものは戦闘中に闘争本能が高ぶると言われている。
 紅月と芹架は連携をして(打ち合わせはしていないが)、キメラを片づけていく。
 秋月は使用することで、そのすぐ後の攻撃力をアップさせるシールドスラムを使いながら、片刃の大太刀の酒呑で刺突や円閃使用での薙ぎ払いで攻撃している。酒呑は最強と言われた鬼の名を冠した真紅の刀身を持つ太刀で、波紋は炎のようにゆらめいて見える。距離があるキメラには小銃のブラッディローズで撃っている。 
 能力者たちはお互いに無線で連絡を取り合い、キメラを順調に片づけていった。しばらくすると、公園はヘルメット型キメラの残骸だらけとなった。
「ふっ・・残念だったな・・俺たちの息の合ったコンビネーションは完璧だ・・なあ? ゴロリ?」
 紅月はジョジョ立ちの決めポーズで芹架へ話しかける。名前を間違えているのは仕様だ。
 打ち合わせでは、キメラの残骸の片づけも予定に入っている。
 ユーリはAUKVを外し、空薬莢やキメラの破片が残らないように念入りに清掃している。折れた枝も添え木で治せるような場合、添え木をしている。実にユーリらしい対応だ。
「さてさて、お掃除開始ですね。さっさと処理してゴミ箱に不法投棄してやりましょうか〜♪」
 住吉は実に楽しそうだ。だが、ゴミ箱に不法投棄はいけない。
 ドクターはいつものようにキメラの細胞サンプルの採取をしている。
「ノーマル同士のデートくらいなら別に構わないがね〜」
 どうやら出歯亀趣味はないようだ。
「ビービングトムには関心ないしね〜」
 採取したサンプルを研究したくて、さっさと帰ろうとするドクターだ。
「もし片方また両方が能力者であれば、彼らは正教徒ではないということだね〜」
 ドクターは今はない十字架を探して胸元に手を置いた。
「まあ、今の我が輩には関係にないか〜」
と呟き、ドクターは公園を去る。歯止めがない今、信仰との板挟みに悩むドクターであった。
 日付が変わって、アデンとシェリーのデートの日になった。
 アデンとシェリーがベンチへ腰をかけているところをUNKNOWNは二人の後ろ3mからパシャリと証拠写真もとい記念写真を撮っている。最後までなーが君は脱がないUNKNOWNだ。
「俺はね、カップルとかアベックとか・・恋人同士とかはクッキーの次に嫌いなんだよ! グヘヘ」
 どうやら紅月はクッキーが一番嫌いらしい。
 食欲魔神の芹架は彼らのお昼ごはんが気になって仕方がない。
「お前ら飯はどうするんだ? 彼女の手作り弁当か? 良いな、うらやましいな。あ、デザートも忘れちゃ駄目だ。むしろデザートのが大事だ!」
 アドバイスという名目の自らの理想を延々と語り続ける芹架であった。
「おい、リア充・・その赤い紐を叩き切ってヤル」
 そう言い、目立つ位置で死んだ魚の様な目でアデンたちを見つめようとする秋月を他の能力者たちは止めにかかった。
(「どうしても俺はリア充になれない・・泣いてもいいかな・・これが・・涙・・いつか必ずリア充になろう」)
 周りに止められながら、秋月は心に誓った。 
「ふふふ、ここで昼ドラ的なドロドロな真っ黒な三角関係が完成したら面白いのですがね〜」
 住吉がデートを観察しながら、どす黒い妄想をはためかせる。
 終夜は公園のベンチで読書していたが、ふと顔をあげると一人の少年の姿が目に入った。邪魔者かと目を見張ったが、少年の表情があまりに悲しく、とても邪魔をする様子ではなかった。
 少年の名はバッブ。アデンの親友である。シェリーへの気持ちを隠したまま、アデンの恋の行く末を見守っている。