タイトル:桜咲く頃にマスター:桃野はな

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/04/20 20:15

●オープニング本文


 今回の依頼主は桜がたくさん咲いている公園の地主だ。

「桜が咲き始めて、ちらほらと花見客が訪れていました。
 ただ、ある日、突然、黒い昆虫みたいなモノがたくさん現れたと花見客から聞きまして‥‥。
 いまだにそれらが公園を占拠している状態なのです」

 黒い昆虫のようなモノが公園を占拠し、誰もが怯え、花見に訪れなくなってしまったと地主は言う。
 黒い昆虫のようなモノは10?ぐらいのサイズだという証言を花見客から得られた。
 自慢の桜が散ってしまう前にどうかまた花見客に戻ってきて欲しいというのがこの公園の地主の願いだ。
 ぜひ桜の花びら散る中で、安心して心ゆくまで楽しんでほしいではないか。
 花見客が楽しんでいる姿を毎年見届けるのが地主の一番の楽しみだそうだ。
 その楽しみを奪ってしまっては地主の生き甲斐はなくなってしまうだろう。
 地主のためにも花見客のためにもどうかこの公園を占拠している黒い昆虫のようなモノの退治に協力してくれないだろうか。 
 もちろん退治し終わった後には、思う存分花見を楽しんでくれ。

●参加者一覧

ジーラ(ga0077
16歳・♀・JG
ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
ブレイズ・カーディナル(ga1851
21歳・♂・AA
グロウランス(gb6145
34歳・♂・GP
秋月 愁矢(gc1971
20歳・♂・GD
リマ(gc6312
22歳・♀・FC
宇加美 煉(gc6845
28歳・♀・HD
住吉(gc6879
15歳・♀・ER

●リプレイ本文

 能力者たちを乗せた車は依頼された公園へそれぞれの想いを乗せて向かっている。
「花見を邪魔するキメラ‥‥無粋だね。花も静かに愛でられないなんて寂しいね」
 フランス出身の震災孤児ジーラ(ga0077)は呟いた。ジーラは有名なツン照れアイドルであり、本人も楽しんでいる。今回はブレイズ・カーディナル(ga1851)と組んで、キメラを駆除するつもりである。
「けっひゃっひゃっ、我が輩はドクター・ウェストだ〜」
 ドクター・ウェスト(ga0241)は施設研究グループのウェスト(異種生物対策)研究所所長である。
「ふむ、ゴキメラとは違うのかね〜」
などと考え込んでいる。
 グロウランス(gb6145)はこの依頼を見た時にフッと過った古い記憶に誘われる様に受けていたようだ。
「虫型キメラ‥を駆除して花見。キメラ駆除は慣れた仕事だが‥花見にかなりの魅力を感じるな。花見のために頑張るか」
 秋月愁矢(gc1971)は、花見のためにと張り切っている。
「早くキメラを倒してお花見タイム〜、と参りたいですね〜」
 どこか楽しげなのは住吉(gc6879)である。彼女は退屈するのが大嫌いで、傭兵稼業も彼女の暇潰しと生活費稼ぎの一環に過ぎなかったりするのだ。    
 リマ(gc6312)は内心でこう思っていた。
(「依頼、ね。そんな気分でもないんだけど‥。貴方なら、働かざる者食うべからず‥とか言うのかしらね。‥分かってるわよ。やりゃ良いんでしょ。って事で‥ごめんなさいね。八つ当たり、させて頂戴なぁ‥‥?」)
 どうも苛立った様子である。己の体で出来る事は生きる為なら何でも行って来た暗い経歴が影響しているのだろうか。

 車が公園の前に到着した。
 桜の花々が咲き誇っている。
 豊満な体を持つ宇加美煉(gc6845)が口を開いた。
「桜の花というのはやはり心をざわつかせる何かがありますねぇ。文字通りのお邪魔虫は早々に退場願うのですよぉ」
「きっと本来なら花見客で溢れ返ってたんだろうな、この場所は。さて、この原因になってる虫とやらを倒して花見できる場所を取り返してやろう。さっさと終わらせないと桜も散ってしまうしな」
 ブレイブは桜を見ながら、そう言った。
 作戦としては、外周からだんだんと内側へ攻めていくようにしていくことになった。連絡は無線で取り合うこととなった。もちろん、桜の木は大切にしつつ、だ。
 公園内には、キメラと思われる黒い昆虫がたくさん飛んだり、うようよと徘徊している。
 ブレイズと組んだジーラは、キメラを遠距離から追いつめる。視覚を一時的に強化し、狙いを定めて相手の弱点をつく鋭覚狙撃で、周りの桜を傷つけないように確実に攻撃を当てていくジーラ。
「頼む、ブレイズ」
「OK。ジーラ」
 追いつめられたキメラをブレイズが接近して攻撃する。攻撃されたキメラはパタパタとその場で倒れていく。
「我が輩がこの力を振るうときは、バグアかソレに組するものを相手にしたときだけだからね〜」
 ドクターは黒い昆虫がキメラかどうか確認したいらしい。
「住吉くん、すまないが小石でもアノ昆虫になげつけてくれないかね〜」
「いいですよ」
 住吉はドクターの願いを快く引き受け、昆虫に石を投げつけた。
「ソノ赤い輝き、やはりキメラか〜!」
 FF確認できたので、キメラと確認したドクターであった。
 ドクターは超機械によって、半径30m以内にある、視認できる武器を強化することができる練成強化を仲間に使った。能力者たちから、助かった、との声が上がる。
 そして、超機械を通してエミタに働きかけ、知覚をアップさせた。キメラが接近してくると、チアリトリスで攻撃しながらも、キメラや強化人間の容姿、大きさ、能力、外見から分かる攻撃性能、FFの強度等を観察分析、そして、細胞サンプルの採取をしている。
 グロウランスは他の者と打ち合わせ後、ソロ行動に移った。
 近接のキメラには、キメラの弱点に打ち込む急所突きを乗せた刀の居合いですれ違いざまに切り捨てていく。キメラがどんどん切り捨てられていく。 
 届かぬキメラには、SES搭載超機械である扇嵐を振るい竜巻で潰していく。ものの見事にキメラがぺちゃんこんに潰されていく。攻撃も防御も己とキメラと桜木の相対位置を常に意識し、桜へ二次被害を防ぐ構えである。
 グロウランスは戦闘中は常に無言である。
 秋月は公園の外側から取りこぼしのないように中心へ進行していた。
 虫の排除は基本的に鴉羽という黒刀である。長さ1.9mほどの黒色の太刀である。
 刀身は烏の濡れ羽色をしており、その艶のある美しさとは裏腹に独特の怪しい雰囲気を持つ。鋭く強靭な刃は、数多の敵を斬り裂いて尚、その切れ味を保つと言われている。
 鴉羽でバッサバサとキメラを切り裂き、桜の木や周辺環境を傷つけないように注意しながら、公園の中心へ向かっていく。
 空を飛んでいるキメラに対しては、小銃ブラッディローズでバンバンと攻撃。キメラの背後の桜に当たらないように厳重に注意を図っている。
 秋月の足元にも、殺られたキメラがバサバサと落ちてくる。片付けるのにどうやら手間暇がかかりそうだ。
 リマは突っ込んで集まってくるキメラを切り伏せる作戦だ。
 他の能力者と攻撃範囲が競合しないように留意する所存である。
「えいっ」
 これだけいるキメラだ。簡単にリマのところへ突っ込んでくる。切り伏せるまでだ。
「待てよ」
 逃げるキメラに対しては、目にも止まらない脚力で、途中に遮る物のない目標地点まで一気に駆け抜けることができる迅雷で追い、刹那で目にも止まらぬ一撃を放った。 
「あたしの範囲のキメラは片づいたようだわ」
 宇加美は豊満な胸から蜂蜜瓶を取り出した。
 指ですくって一口舐めようとして‥‥、
「‥っとぉ、舐めるのが目的じゃなかったのですよぉ」
 どうやら舐めるのが目的じゃなかったらしい。
「何となく甘い物が好きそうなイメージがあるのですがぁ」
 自分の胸元を見下ろしながら、
「塗ったりしたらおびき寄せられますかね?」
 宇加美の発想は極めて危険である。
「かゆくなったりしたりしそうなのでやりませんがぁ」
 宇加美は天然なのだろうか‥‥。
 結局、桜から少し離れたところに蜂蜜を撒いてみることになった。
 虫を発見した宇加美はキメラかどうか確認し、キメラと断定できたら、有無を言わさずに、野球のときに使用する木製バットによる神主打法で全力を持って打つ。
「はっ! はっ! えいっ!」
 蜂蜜を胸に塗ろうとしていた宇加美からは想像できないほどの打撃ぶりである。
「キメラと分かれば遠慮はいらないですねぇ」
 桜にダメージを与えなさそうな小型・軽量を突き詰めたペンサイズの小型超機械αで強力な電磁波を発生させ、攻撃を始めた。
 飛んでるキメラも這っているキメラも地べたに倒れていく。
「私の装甲は伊達じゃないのですよぉ‥‥たぶん?」
 なぜか疑問形の自信を持つ宇加美であった。
 隠密潜行で目標を偵察し終えた住吉は攻撃に移った。
「いや〜、日本の象徴である花見を台無しにして下さるとは空気読めてないですね〜、‥‥処分しちゃいますよ‥‥?」
 先手必勝と敵の弱点に打ち込む急所突きを用いて確実に仕留めていく。キメラがボロボロとその場で倒れていく。
「お花見会場を台無しにする憎きバグアめ! 西行さんの代わり私が掃討してくれようぞ〜!」 
 住吉に向かって飛んでくるキメラに対しては、「檜扇」の形状をした超機械「扇嵐」を用いて受け流し、防御していった。
 こうして能力者たちは黒い昆虫のようなキメラを倒していった。

 戦闘が終わった能力者たちはキメラの残骸の掃除を始めた。
 用意のいい秋月が掃除道具を持ってきていてくれていた。
 ドクターは掃除と称して、サンプル採取をしている。
 グロウランスが携帯で依頼主にキメラ討伐完了報告と花見をする旨を伝えている。
 
 キメラの残骸も片付け終わり、抜かりのない秋月が持ってきたブルーシートを敷き始めた。
「我が輩は先に帰るよ〜。こんなことをしている場合ではないのでね〜」
 ドクターは先に帰ってしまった。
 グロウランスが用意してきたお重を広げると、能力者たちは息を飲んだ。
 お重は、錦糸卵、絹さや、桜でんぷを彩り華やかに盛りづけ、いなり寿司。ほぐした塩焼き。ニジマスをご飯に混ぜ、白炒りごまと塩で握った一口おにぎり‥‥と挙げればキリがないほどに豪華であった。
 秋月は日本酒を一升瓶で持ち込んでいる。
「酒癖はそう悪くない‥‥はずだ」
 リマは桜の根元に腰掛け、背もたれている。
(「ちょっと失礼して、と‥‥。のらりくらりが信条だったはずなんだけど、さ。とてもじゃないけどそうは言えないわね。‥‥助けようとしただけなのよね‥。それなら、この怒りはー、‥‥如何するべきなのかしら」)
 リマは桜を見上げて、そのまま目を瞑った。
 宇加美は三味線を弾きながらまったりと花見をしている。
「未成年と言うのもお酒飲めなくて面白くないのですねぇ、冬を越して葉よりも先に花を付ける‥これが桜の生命力なのですねぇ」
 隙あらば日本酒を盗み飲みしている宇加美であった。
 ブレイズはジーラに声をかけた。
「せっかくこんなに広いんだし、歩き回って桜見てくるかな。‥‥で、その、ジーラも一緒に来ないか?」
 ジーラは頷いて、ブレイズの後をついていった。
「え、えっと‥あのさ、今度、君に聞いてほしいことがあるんだ。今はまだ上手く言葉にまとめられないけど‥でも近いうちに必ずはっきりと伝えるから」
 ブレイズはとぎれとぎれにジーラに話す。
「ううん、きっとボクも言いたいことあるから。その時に伝えられるように、ボクも言葉を纏めておくよ。‥春と言っても、まだ少しだけ肌寒いね」
 ジーラはそう言って、ブレイズの手を握った。
「こうすれば、暖かい。それじゃ戻ろっか」
 
 毎年、春は訪れ、桜は咲く。誰にも、そしてこの二人にも。