●リプレイ本文
「ふはははは! その程度の戦力で我らと渡り合おうなど、夢物語もいいところだな!!」
「夢物語じゃないトコ見せてやるぜってコレ夢じゃん!!」
ヴィンセント・南波(gz0129)は、いきなり混乱気味だった。
「うぉい!! ちょっとマテ! 何だよあいつら!! 思いっきり変態じゃねぇか!!」
早速ドン引きな黒羽 空(
gb4248)。白濁粘液まみれで下着姿inコートな琳 思花(gz0087)と、兄貴達の極太ホースを見比べ、ゴクリ、と生唾を飲み込む。
「何!? 我らを変態呼ばわりとは失礼千万!! 初対面でそのような‥‥教育がなっとらんな!!」
「パンツ一丁で説教すんなぁぁぁーーーッ!!」
すかさず異議を申し立ててきた兄貴に対し、空は、登場後わずか15秒でブチギレた。黒パンツ男に常識を説かれたのだ、無理もなかろう。
――その時。
「ちょっとそこのパンツ野郎!!」
夜明けの日本橋に、朗々と響き渡る女の声。
「む。そこか!!」
何かを発見したらしい兄貴につられ、道路脇の量販店屋上を見上げる一同。
「うわぁ‥‥また変なの出ちゃったよ」
そこにいた仮面鳥人っぽい人を目にして、南波は思わず、小さく呻いた。
「そこ! 変とか言わないっ!」
好奇の目で見上げる一同(兄貴含む)を指差し、背中の羽根をバサバサやりながらプリプリ怒る変な人。
「あれって、赤崎羽矢子(
gb2140)さんじゃ‥‥」
『説明しよう!』
そして、思花がウッカリ余計な事を口にしてしまった瞬間、空から響いた謎の声が、唐突にそれを遮った。
『ミス・レッドとは命をかけて変態と戦う能力者である。その正体は謎に包まれている‥‥が、本当のことには気付かないふりをしてあげるのがマナーであり、優しさというものだ』
「誰!? 誰が喋ってんだ!?」
空はどちらかというと、変な仮面鳥人よりも、謎のナレーターのほうが気になっていた。
――そして。
「そこの変態ちょっと待ったー!」
「ぬぅ‥‥今度はそっちか!!」
再び聞こえた乱入コールに対し、律儀にも反応を返してあげる兄貴達。
別のビルの屋上で仁王立ちになり、ハリセン片手に薄笑いを浮かべる少女――それは、新年らしく晴れ着に身を包んだ香坂・光(
ga8414)だった。
「ある時は漫才師、ある時は着物姿の一般人‥‥。しかしその実態は! 正義の戦士、褌レッド!」
ばさぁっ、と、いきなり晴れ着を脱ぎ捨てる光。このクソ寒いのにサラシと赤フンドシだけを身に纏い、どうだ、と言わんばかりに胸を張っている。
「ぐぬぬ‥‥なんたること! 新年早々、我らの敵は変態揃いか!!」
「ふんどしは下着。若い娘が端から下着のみで挑むなど――世も末であろう」
「我らのブーメランパンツですら、水着の域を脱していないというのに‥‥」
「いや、それよりもあの鳥人‥‥正体を隠さねばならんほどだ。相当な変態プレイを仕掛けてくるに違いないな!」
人間、変態兄貴にここまで言われちゃお終いであろう。
「お久し振りですね? 南波さん。まさか、貴方の夢で呼び出されるとは、意外でしたよ。‥‥ストレス溜まっているんですか? 何ありました?」
「ダメだよ〜、初対面の兄貴にほいほい付いて行っちゃ。食べられちゃっても知らないよ?」
「待てお前ら」
可哀想なものを見る目で声を掛けてきた榊 紫苑(
ga8258)と忌咲(
ga3867)を手で制し、南波が頭を抱えた。
「アレが俺のストレス性物質だと思うか!? あと、誰がホイホイ付いてったんだよ何時何分何曜日ッ!!!」
アレが、と言いながら、兄貴とついでに屋上の二人も纏めて指差す南波。自分の責任は最小限に抑えたい。
「やれやれ、また濃い奴の相手だな?」
「しーふぁさんの仇はとるよ。元気出してね」
涼しい顔でもう覚醒しちゃってる紫苑、さらに、自分をスルーして思花に話し掛けている忌咲を前に、南波は、ワナワナと肩を震わせた。
そして紫苑が、無駄に黒く艶やかな兄貴を一瞥すると、余裕の表情で口を開く。
「真打ちは、後から登場だろう? うざいから、速効で撤退させてや――」
「ははははは! そーれ白濁☆」
が、空気の読めない兄貴の発砲により、真っ先に粘液ビームを被って沈黙した。
「‥‥‥」
みるみる溶ける紫苑のスーツ。女性のように肌理細かな肌を白い粘液が伝い、濡れた身体の上を、兄貴の視線が舐めるように這い回った。
「白黒チェック、か――」
「野郎のパンツの柄で興奮してんじゃねえぇぇーーーッッ!!」
ちょっぴり前屈姿勢で舌なめずりしてる兄貴の頬に、南波の右ストレートがめり込んだ。
もんどり打って倒れる兄貴その1。アスファルトで下半身の一部を強打し、悶絶する。
「おのれ恐ろしいことを! 貴様それでも男か!!」
「やかましいわ! 変態!!」
まさかの反則攻撃に戦々恐々としながらも、兄貴その2がホースを構えた瞬間。
どこからともなく、バイクのエンジン音が轟き始めた。
「む?」
兄貴その2が振り返ったその視線の先に現れる、ヨーロピアンタイプの大型バイク。乗っているのは、真紅のライダースーツにその身を包んだ三塚綾南(
gb2633)である。
「ふははは! 面白い! 骨のありそうな奴が出て来ぶぐうぉっ!?」
闘志剥き出しで肉弾戦の準備をした兄貴その2。いきなり突進してきたバイクに撥ねられ、血飛沫とともに宙を舞う。
「ちょっ! 待っ――反則どぐうぉあーッ!?」
血塗れで転がる兄貴その2。一切スピードを緩めない綾南のスパークマシンが、時速180キロの勢いで彼の股間を直撃した。背中のホースを狙うより的が近かったんだから仕方がない。
「おおおのれ貴様ら! 我らが同胞に物凄いことをっ!!」
生気の失せた顔で震えている兄貴その1とその2の前に立ち、道いっぱいに並んだ兄貴軍団が、各々ホースを構えて総攻撃態勢に入った。
再びバイクで突撃してきた綾南が、正面からビームを喰らって転倒する。ライダースーツが白濁液に侵され、まるで昔のアニメの変身シーンみたいに消滅していく。
「‥‥寒いんだけど」
サテンネットインナー全開で、冷静に煙草を咥える綾南。だが残念ながら、煙草もだいぶ白濁粘液風味だ。
「あ、あんなもん当たってたまるかっ!! こんなところで裸になるなんて‥‥っ!」
「あれを食らったら、全裸‥‥か?」
『ふあははははは!! 一・斉・発・射ーーーッッ!!』
胸は無いけど脱ぎたくない空と、ぶっちゃけもう後がない紫苑が、粘液ビームに追われて逃げ回る。
地面やらビルやらに次々と着弾しては、白濁粘液と独特の臭いを撒き散らす『良い子は成分を想像しちゃダメだよ☆ビーム』。その飛沫を浴びた部分の服に、虫喰いのような穴が開いていく。
「この仮面越しの世界に、あたしは変態の存在を認めない!」
両の翼を羽ばたかせ、力強く空へと飛び立つ羽矢――いや、ミス・レッド。
「おい! 変態仮面が飛んだぞ!!」
「気をつけろ! きっと物凄い変態兵器を隠し持ってるはずだ!!」
「持つかーーッッ!!!」
兄貴達の過度な期待を寄せられて怒り心頭なミス・レッドが、ビームを空中回避しつつ怒鳴り声をあげる。
「そこを右だ! ミス・レッド! ‥‥いや左か?」
紫苑の指示が極めて適当にも関わらず、無事に大地へ降り立ち、華麗に兄貴達を襲うミス・レッド。細身剣が空を舞い、斬り裂かれた極太ホースから白濁液が勢い良く流れ出た。
「ふっふー♪ もう下着姿だから一発目の白い濁った液体は怖くないのさ♪」
物理法則的におかしいことを口走っているのは、正義の赤フンこと、光であった。
「お、おのれ露出娘! それを下着とわかった上で堂々と‥‥恐ろしい子!」
どうやら兄貴達は、『ブーメランパンツ=水着』という薄っぺらな最後のプライドにしがみ付いているらしい。兄貴は、目の前の褌娘に向け、恐怖の念すら込めて粘液ビームを撃ちまくった。
――と、そこで。
「あっイヤ‥‥痛‥‥あっああぁぁぁっ!」
なにやらアヤシイ声が、薄暗い路地の奥から響いてきた。
棒か何かで肌を打つ音と、電撃を思わせるバチバチという音が聞こえる度、苦痛と快感の呻きが天を衝く。
「‥‥何だ?」
何かと思った紫苑が路地を覗き込んだ、その先では――
「ねえ、ここどう!? 痛いかしら!?」
「ああっ! お願いします女王様もっとぶって! もっとおぉッ!!」
「ははははははは!」
――全裸の兄貴と、全裸の女王様(綾南)が、激しく戦闘中だった。
「えい。大尉さんばりあー!」
「ちょ、待っ――ぶぼっ!?」
道路の真ん中では、いきなり忌咲の盾にされた南波が白濁粘液を全身に浴び、口腔内に雪崩れ込んできたモノに苦しめられていた。
男に生まれて20年。まさか、このような液体を口の中に入れられる日が来るだなんて。
「〜〜〜〜っっ!」
「あれ? 怒ってる? だって嫁入り前なんだもっ!?」
まあ、人間悪い事をすると自分に跳ね返ってくるわけで。
忌咲は、無言の抗議をする南波もろとも、白濁粘液を喰らってしまった。
溶け落ちる南波のパンツ。人生最大の危機にしゃがみ込むしかできないなんて、人間とは実にちっぽけな存在だ。
「ふはは!! 油断大敵!!」
「うぁ、ねばねばする。しかも顔にかけるなんて酷いよ〜」
「ぶわわわっコラ何しやがぶほごほッ!!!」
なぜか下着と靴下のみが溶け残るというマニアックな状態で座り込んだ忌咲目掛け、白濁粘液ビームの直撃を食らった空が吹っ飛んでくる。
「ぺっ‥‥、もし‥次食らったら‥‥!」
セミヌードの空が、粘液でヌメるクロックギアソードを手に、兄貴と対峙する。そして一気に疾り込んだかと思うと、円閃を発動し、刃を振るう――
――はずだった。
「変態覚悟ぉーーーっ‥‥って、ええぇえーーッッ!?」
何と、刃が兄貴のホースに触れる瞬間、いきなり ネジ曲がって接触拒否をかましたではないか。
反り返った刃は元に戻る勢いを利用し、柄にぶら下がったままの空を、逆に振り回して兄貴のホースに叩き付けた。
『冗談じゃないわ! あんな変態に触らせようなんてっ!! あなたとはもう終わりね!』
「こ、こらぁーーッ!! 剣の分際でごぼげふごふっ!!」
ブッちぎれたホースから溢れ出た白濁粘液に溺れる空を見捨てて、高飛車なクロックギアソードが走り去っていく。
「ふははは! もはや制御不可能!! 溺れ死ぬが良い!」
「ぁ‥‥や、ちょっとマテぇー!!」
正直未経験の感触と臭いを伴って、白濁粘液の奔流が空に襲い掛かる。ブラのカップが余って液が溜まりやすい分、下着が溶け落ちるのはとても速かった。
「よ〜し、このミス・ホワイトが助けてあげるね。超機械ビーム!」
なぜか羽矢子に便乗する忌咲。突き出した超機械がブルブルと震える。
「あれ?」
忌咲が首を傾げた瞬間、しゅぽんっ、とようやく産み落とされた特大の星玉が、ビームというかドッジボールの剛速球のように兄貴へと飛んで行った。ちょっと今日は難産だったらしい。
「む! お星様!」
取ると体が光って無敵なれるとでも思ったか、自分から直撃コースへと飛び出し、勝手にダメージを喰らう兄貴。弱くなっていたブーメランパンツが、ハラリ、と落ちる。
忌咲の脳裏に一瞬、『ぱお〜ん!』な擬音が駆け抜けた。
「うぁ、見たくない物見ちゃった。トラウマになりそうぅぅあっ!?」
「ぶわっ!? あれ? あたしの大事な褌がー!?」
粘液ビームを喰らって吹っ飛ばされて来た光が忌咲にぶつかり、空を巻き添えにして地面に転がる。粘液に濡れた身体が絡み合い、あっという間に全員の下着が溶け落ちた。
「やだぁ〜! 全部溶けちゃうよぉ〜!」
「ごほっコレ鼻に入‥‥ちょ、ぁっ‥‥どこ触ってっ‥‥」
「可憐な乙女にこんな格好をさせ‥‥ぅあっ‥そこダメぇ‥っ」
立ち上がろうとしては足を滑らせ、全身をどろりとした液体に支配されながら肌を擦り合う三人の少女たち。むせる度に唇や鼻から白い粘液が流れ出し、互いの肌の上で糸を引く。
「アレはアレでいいんでしょうか」
「そーいう趣味の奴が見たら、ヨダレが止まらんな‥‥俺は違う俺は違う俺は違う」
少女たちがあげる如何わしい嬌声を聞きながら、パンツ一丁の紫苑と全裸の南波は、ゲンナリ顔でそんな会話を交わしていた。
そして突然、二人の目の前を颯爽とバイクで走り去る、マッパのライダー。
一瞬だけ見えた彼女の顔は、やたらスポーティ―な汗と満足感に光り輝いていた。
「「‥‥‥」」
とりあえず無言を保つ二人。「変なもんいたね」「そうですね」と、会話ができるようになったのは、数十秒ほど後のことである。
「ぴゃあぁっ!?」
その時、結構一人で頑張っていたミス・レッドが、とうとう二発目の粘液ビームを喰らってしまった。
「あわわどどどどうしよう!? ハッ‥‥そうだっ!」
慌てて羽根をむしり、一枚ずつ胸の先端にくっつけ始めたミス・レッド。その間にも、下着はどんどん溶けていく。
「え! ち、ちょっと! 溶けるの速すぎーーーッ!?」
悲痛な叫びをあげたミス・レッドの現状はというと、羽根二枚を胸につけただけ、という兄貴もびっくりの変態仮面っぷりであった。
「本性を現したな変態仮面! 我が同胞の恨み、晴らさせてもらう!!」
「変態の居場所なんてこの世界に無いのよ黙れゴルァーーーッ!!」
つい調子に乗ってしまった兄貴の股間に、ミス・レッドの膝蹴りが命中する。
崩れ落ちた兄貴の目は、こう語っていた。
――『お前ら本当に急所好きだな‥‥』と。
「ふ、ふふふ。もう溶ける物も無いし、こうなったら自棄だよ」
羞恥心を捨てきれない空を残して、素っ裸の忌咲と光が吹っ切れた笑みを浮かべ、兄貴達に突入する。凹凸の少ない身体に纏わり付いた粘液は、どこにも引っ掛かることなくキレイに下へと流れて行った。
「変態兄貴は滅殺だよ! 必殺! ハリセンスマーーッシュ!」
「ぬおお!? ハリセンごときで!?」
全裸の少女たちの手により、速やかに撲殺される兄貴達。うち何体かのパンツが膝までズレるが、もはやそんなもん関係ない。
「あははははもうどうでもいいわ死ね変態!!」
ブチ壊れたミス・レッドが、胸の羽根が剥げ落ちるのにも気付かず参戦し、(色んな意味での)急所突きが炸裂する度、兄貴の悲鳴と怒号が日本橋の空を揺るがした。
「えぐい‥‥」
そんな阿鼻叫喚の地獄絵図を見つめる南波は、男性としての精神的ダメージにより、到底女性の裸に興味を持てる状態ではなくなっていた。
夢なら早く醒めてくれと、頑張って瞼を閉じる。
その隣に立ち、ウンザリ顔の紫苑もまた、ため息をついて目を伏せた。
「正月から、濃い相手をして疲れた‥‥後は、自分でなんとかしてくれ」
呟き、踵を返して――彼は、再び立ち止まる。
そう、彼は見てしまったのだ。
路地という路地から顔を出し、パンツ一丁の彼を品定めするかのように見つめる――数百もの兄貴達の姿を。