タイトル:【PN】マケドニアを臨むマスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/05/02 12:44

●オープニング本文


 古の時代、西はヨーロッパから東はインドまで、空前の版図を築いたアレクサンドロス三世。
 今日でもアレキサンダー大王の名で知られる彼が、軍の中核としたのが騎兵とファランクス戦法の組み合わせで有名なマケドニア軍である。
 現在マケドニアの名を国号に冠しているマケドニア旧ユーゴスラビア共和国の南部は、バグアによって占領され、その支配下におかれている。
 このマケドニア・バグア軍に大規模な北上の兆しがあるらしい。
 マケドニア共和国の北に国境を接するのはセルビア共和国だ。
 バグア軍の動きを受けて、セルビア共和国の首都ベオグラードからE75街道を通り、南に大量の物資が輸送されていた。
 目的地は国境付近の街ブジャノヴァクの南、E75街道上、地図で見て山と山が東西より迫っている地点である。
 山間の街道にUPC軍の手によって範囲が数十キロにも及ぶ大規模な陣地群が築城されている。目的はただ一つ、E75街道を通って北上してくるであろうバグア軍を撃退する事だ。
「聞いたか? E75街道上にはここの他にもラポヴォの南の山間部に陣が作られてるらしいぜ。なんでもそっちは陣地を通り越して要塞レベルだそうだ」
 地図を指でさして士官の一人が言う。そこは首都ベオグラードからおよそ百キロ地点だ。ブジャノヴァク陣よりも遥か北方にある。
「そんな内陸部に要塞を? ‥‥上層部は、そこまで押し込まれると思っているのか」
 もう一人の士官が驚きをもって答える。
「さぁな、保険だと良いんだが‥‥バグアの連中は半端じゃねぇ。このブジャノヴァクで止められれば良いんだが」
「その為にも堅陣を築かねばならない。しかし‥‥」
「物資の輸送が滞ってるんだよな。トーチカを作ろうにもコンクリートがなけりゃ話にならないぜ」
「なんでも後方の輸送部隊がキメラからの襲撃を受けているらしい」
「知ってるぜ、体長七メートル近い竜人型のキメラが街道を通る隊を奇襲してくるってんだろ?」
「ああ、二本脚で立ち、剣と盾で武装し、口からは雷撃を吐き出すらしい。兵士達の間じゃドラゴニアンとか呼ばれてる」
「ドラゴニアンねぇ、ファンタジーな連中だなオイ」
「バグア自体が半ばファンタジーな連中だからな、何が出てきても今更おどろきゃしない。問題は輸送部隊をどうやって守るかだが‥‥正直、手が足りていない」
「大量の物資だからな、輸送部隊も多くなり、守らなけりゃならんものも増える。いくつかの隊に別れて運ばれてるらしいが、いったいどれだけの隊が無事にここまで物を持ってこれるか」
「俺達には待つしかできない。無事を祈ろう」
「祈るだけとは、気楽なもんだな俺達は」
 その言葉に士官は苦笑して言った。
「なに‥‥すぐに俺達が祈られる立場になるさ。ここはじきに最前線になる」
「そうだったな‥‥それまでにせめて陣を完成させときたいんだが‥‥物がこねぇとな」
 士官は嘆息して呟いたのだった。

●参加者一覧

幸臼・小鳥(ga0067
12歳・♀・JG
シャロン・エイヴァリー(ga1843
23歳・♀・AA
セラ・インフィールド(ga1889
23歳・♂・AA
アッシュ・リーゲン(ga3804
28歳・♂・JG
威龍(ga3859
24歳・♂・PN
如月(ga4636
20歳・♂・GP
キャル・キャニオン(ga4952
23歳・♀・BM
緋沼 京夜(ga6138
33歳・♂・AA
レイアーティ(ga7618
26歳・♂・EL
ヤヨイ・T・カーディル(ga8532
25歳・♀・AA

●リプレイ本文

「いよいよ慌ただしくなってきましたね」
 ヤヨイ・T・カーディル(ga8532)が言った。
「ですわね。ああ、わたくし燕隊のキャルと申しますわ。ヨーロッパでは多くの同僚が闘ってますの。皆さま、大規模戦で翼を並べる事があれば宜しくですわ」
 と優雅に一礼してキャル・キャニオン(ga4952)。
「はい‥‥よろしくお願い‥‥しますぅー。皆さん、今回は‥なんとしても‥無事‥届けましょぅー」
 おどおどとしつつも幸臼・小鳥(ga0067)が言った。
 それにアッシュ・リーゲン(ga3804)が答える。
「ああ、モノが届かない事ほど戦場でキツい事は無ぇからな‥‥しっかり守らにゃイカンね」
「物資が不足しては戦えるものも戦えなくなるからな。今回の任務は重要だ。必ず成功させないとな」
 威龍(ga3859)もまた頷くと、そう述べた。
 四月の某日、ラポヴォ要塞から輸送隊が出発した。輸送トラックが十台、KV十機編成の傭兵隊がその守りにつく。KVの補給の為大型のタンクローリーもつくことになっていた。
「さて、楽しいピクニックの始まりだ。動物が戯れに来なければ良いがな」
 アッシュが言った。十一台の車両と、十機のKVで構成される輸送隊はE75街道の南進を開始しブジャノヴァクを目指す。
「相手は竜、こっちはドラゴンハンターって所ですかね?」
 各員の配置を指示しつつ如月(ga4636)がG‐43ハヤブサのコクピット内で言った。
「そういきたいところね。新機体のデビュー戦、勝ち星で飾ってみせるわ」
 と意気込むのはシャロン・エイヴァリー(ga1843)である。愛機はXN‐01ナイチンゲールだ。輸送隊のトラックの傍を固めている。
「こちら緋沼、異常は見当たらない」
 緋沼 京夜(ga6138)が言った。真紅の機体を飛ばし輸送隊の上空で警戒にあたっている。
 緋沼が出発前に軍に確認したところ敵に翼はないらしい。
「これまではどういう形で奇襲されたんだ?」
「木々の間から突然出てきて雷撃をぼんっだ」
「穴を掘って隠れたり、擬態して待ち伏せ等はするのだろうか?」
「穴か? 解らんな。それが成されたという報告は上がってきていない。しかし場合によってはやるかもしれん。本格的に擬態まではしないだろうが、木々や地形の陰に伏せて待ち伏せ、くらいはやる連中だ。
 移動速度についてだが、それはKVと同じくらいだな。ああ、連中、匍匐前進もするから注意しろ、さすがに二本脚で走るよりは遅くなるが」
 軍の兵士はそう言った。不意打ちが得意な相手のようだ。
「敵の奇襲を警戒しながら数日間の物資輸送‥‥肉体的と言うより精神的に辛そうな任務ですね」
 緋沼と共に上空を旋回し警戒に当たっているセラ・インフィールド(ga1889)がコクピットで呟いた。気が抜けない任務というのはキツイものだ。
(「しかし前線の陣地構築にはこの物資が必要不可欠」)
 決して軽んじる事はできない任務だ。セラは気合を入れ直す。
 地上部隊の先頭をゆくのは威龍が駆るLM‐01スカイクラスパーだった。LM‐01はジャミング中和の能力を持つ。やや先行して進み、各機とのデータをリンクさせ警戒に当たっている。
 レイアーティ(ga7618)はそれをフルに活用し、レーダーを最大限に使って警戒に当たる。
「しかし‥‥相手はワームではなくキメラなんですよね」
 レーダーと一口にいっても色々ある。KVに搭載されているレーダーで捉えられるだろうか? レイアーティの脳裏を疑問がかすめる。まぁ空ではミサイル撃てるし、命中回避の向上効果もあるのだから、捉えられる筈だ。相手がレーダーに対する対策をしていなければ。
 しかし軍の輸送隊は何度も奇襲を受けているらしい。軍人達はそれほどの奇襲を受けていながらもジャミング中和装置を用意しないボンクラの集まりなのだろうか?
「‥‥そんな訳はないですよね」
 絶対のステルスというのは無いだろう。だがレーダーに頼り切るのは止めておいた方が良さそうだった。

●夜
「ん‥‥ふぁ‥‥」
 夜、ディスタンのコクピットの中で小鳥がうつらうつら、頭を上下させている。
「はっ、ダメですぅ‥‥! 眠ってしまってはぁ‥‥!」
 頬を両手で叩いて首を振る。
 幸臼・小鳥はディスタンで歩哨に立っていた。歩哨が眠ると色々不味い。
 と、その時不意に風防が叩かれた。驚いてみやると、KVの腰の上までブロンドの女が登ってきていた。
 風防を開けると、シャロン・エイヴァリーはくすりと笑って、
「はい、コーヒー入れてきたわ。少しは眠気も和らぐと思うわよ」
 そう言って湯気の立つカップを差し出してきた。小鳥は礼を言ってカップを受け取る。
 熱いコーヒーを飲みつつ夜空を見やる。満天の星が輝いている。彼方を見やる、闇の中に荒野が広がっている。荒野の上にアスファルトの道が引かれていた。
「ヨーロッパ‥ですねぇ」
 感慨と共に呟く。東欧の大地は広かった。

「夜襲を掛けられてもしたら一大事だしな。此処は交代で歩哨に立つ事にしようぜ」
 と昼間言ったのは威龍だ。一同はそんな理由により夜は交代で見張りにつく事にしていた。
「でもよ、休める時ゃしっかり休む、戦場の鉄則だぜ」
 簡単に機体の整備をしながらアッシュ・リーゲンが言った。
 レイアーティは風防を開け、座らせたディアブロのコクピットで液体食を取りつつレーダーを睨みつけている。
「さっき仮眠を取りましたから大丈夫ですよ。アッシュさんこそ休まれては?」
「皆、仕事熱心だねぇ、俺はこれ片付けたら寝るわ」
「整備ですか?」
 夜食を一同に配りながらキャルが言った。
「ああ、ちょっとした不具合が致命的な隙を産む事もあるんでな」
「仕事熱心なのはお互い様な気もしますけどね」
 くすくすと笑いながらセラ・インフィールドが天幕から出てくる。
「まぁでも、確かにレイアーティさんは起き過ぎです。仮眠だけじゃあ、つらいですよ。レーダーは私が見ておきますから、休んでください」
 レイアーティはその言葉に考える。行程は一日で終わる訳でもない。倒れてしまったら元も子もないだろう。
「‥‥解りました。ではお言葉に甘えさせていただきますね」
「ええ、任せておいてください」
 セラは頷いた。
 一同はそんな調子で進んでいった。

●山道の戦い
 数日の行軍を経て隊は平野部を抜け、山間部へと突入した。道の左右より山の木々が迫る。視界が悪い。
「もう少しでブジャノヴァクです」
 セラが無線に向かって言った。既に行程の大部分は終了している。
「だが、このあたりからが本番だ。軍の輸送隊は奇襲でやられている。山間部が勝負だ」
 緋沼が各機に注意を呼びかけた。
 一同はより警戒を密にして進む。
 左右から迫る木々の陰に注意を払いつつ進軍する中、突如としてレーダーに反応が現れた。レーダーに注意を払っていたレイアーティが真っ先に気づく。
「レーダーに反応! 数五! 右方森中、距離は――」
 百五十、至近距離だ。横から来た。
「迎撃を!」
「了解!」
 傭兵達は即座に反応し迎撃体勢に移行する。何機かのKVが走った。森へは降りられないので緋沼とセラは一端、路上に着地する。
 木々の陰から飛び出してくる巨大な影が見えた。長大な剣と楯を構え竜人達が地を揺るがして駆けてくる。
「盾は重量、形状から足元を守るのには向いてないわ、狙いましょう」
 シャロン・エイヴァリーが言いつつスナイパーライフルで脛辺りに狙いをつけ発砲する。回転するライフル弾が飛んだ。初撃は外れたが二発目が命中した。ダッシュ中の竜人が脚への衝撃にバランスを崩し転倒する。
 キャル・キャニオンは機体を跳躍させ、空中からの攻撃を仕掛けようと試みる。だがそれをやるには地形が悪い。木々の葉に遮られ上からでは敵が見えなくなる。変形して上昇するには加速が足りない。
 小鳥機がスナイパーライフルをリロードしつつ発砲する。二連のライフル弾が木々の間を縫って飛んだ。竜人は盾をかざして受け止める。ちなみにシャロンの言葉については小鳥が撃った時では「形状」あたりが現在進行形で無線から流れている。
「お前達にやれるエサは無くてな、お引取り願おうか‥‥!」
 アッシュ機もまた同様にスナイパーライフルで狙撃を仕掛ける。発砲。しかしかわされた。即座にリロードし発砲。盾で受けられる。レイアーティ機はSRD‐02で攻撃を仕掛ける。
「残念ですが、どこから来ようが私の機体には不得手な距離は無いんですよ!」
 真紅の機体から精密かつ強烈な破壊力を秘めた弾丸が飛んだ。二発の弾丸が竜人に直撃し鮮血を噴出させる。
「先手必勝! 当たればラッキーってやつですっ」
 ヤヨイ機もまたスナイパーライフルで射撃していた。アグレッシヴ・フォースを発動させてエネルギーを増大させる。音速を超えて二連の弾丸が飛んだ。竜人が翳した盾でエネルギーが炸裂し、その腕に衝撃を与える。
 四匹の竜人は猛烈な弾幕にも怯まず前進し、顎を開き一斉に三連の爆雷を吐き出す。狙われたのは小鳥、アッシュ、レイアーティ、ヤヨイの三機だ。避けると後ろのトラックに当たる。各機防御体制をとって電撃を受け止める。激震がコクピットを襲った。
 シャロンに転倒させられた竜人は起き上がり前進を再開する。
 威竜機と如月機は森中へと飛びこんで前進する。威竜機は射程距離まで間合いを詰めレーザー砲を猛射した。閃光が盾の装甲を削り取ってゆく。如月は竜人の頭部へとガトリング砲をばらまいて牽制する。盾が上がったところへ下半身めがけてレーザー砲を炸裂させた。
 シャロン機は前進を開始する。小鳥、レイアーティ、ヤヨイの三機は竜人の足元に狙いをつけてSライフルをリロードし発射した。空を裂いて弾丸が飛び、竜人達の足を撃ち抜く。アッシュ、キャル機はターゲットを合わせて狙いをつけた。
「Wライフルのキャルとは私ざます!」
 キャル機は左右のライフルで射撃を仕掛ける。アッシュ機と合わせて三連の弾丸が飛ぶ。竜人の足に命中。鮮血を噴出させた。
 竜人達が爆雷を撃ち返す。威竜、如月、レイアーティ、小鳥へとそれぞれ三連の爆雷が飛ぶ。威竜機は木立を盾にして回避した。如月機も素早く横に飛び退いて避ける。レイアーティ機と小鳥機は腕をかざして雷撃を受け止める。
 威竜機はリロードしつつレーザー砲を猛射し、如月機はガトリングとレーザー砲のコンビネーションで反撃する。
 先に転倒させられた竜人がシャロン機に向かって雷撃を吐き出す。XN‐01はハイマニューバで加速し、すり抜けるようにかわした。
 シャロン機は森中を突進するとビームコーティングアクスを振り上げ、振り下ろした。輝く刃が竜人の肩口に喰い込む。さらに力を加えて押し込みながら引き斬ると、水平に斧を一閃させた。竜の首が宙を舞い、滝が逆流するかのごとき血柱が噴き上がる。竜の巨体がぐらりと傾ぎ、倒れた。
 その瞬間、別の竜人が横方向に吹っ飛んだ。肉片をまき散らしながらスピンし、地面に激突する。
 側面よりセラ機を先頭に立て緋沼機が接近していた。真紅のディアブロはハンマーボールを引き戻すと次々に投擲する。足を射抜かれていた竜人達は回避できず、鉄塊の直撃を受けて吹き飛ぶ。盾で受けた竜人もいたが、受けた盾ごと吹き飛ばされて木に叩きつけられる。巨木がミシミシと音を立てて折れていった。
 セラ機はレーザー砲を連射して木に叩きつけられて地面に転がっている竜人へと閃光を発射しトドメを刺す。
 最後の一匹は威竜、如月からレーザー砲を、後衛からスナイパーライフルの嵐を受け、蜂の巣にされた。体中から血を噴出させ、ゆっくりと仰向けに倒れていった。

●任務の完了
 かくて、竜人の群れを撃退した傭兵達は山間部を抜け、ブジャノバクの前衛陣へとたどり着いた。
「これで、あと十年は戦えるよな?」
 ニヤリと笑いアッシュが言った。
「十年か。良い数字だな。それを目標に気張るとしよう」
 陣の兵士は苦笑すると、
「ともかく、今回はご苦労だった。友軍の支援に感謝する」
 兵士はこめかみをするように手を振り上げると、一同に向かって敬礼した。
 もたらされた物資が今後の戦いの助けになる事を祈りつつ、傭兵達はその地を後にしたのだった。