タイトル:それは忍者じゃねぇマスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/04/30 11:04

●オープニング本文


「忍者型キメラ?」
 雷前道誉はラーメンを啜りつつ呟いた。ガタン、ガタンと音を立てて屋台の上の陸橋を電車が通り過ぎてゆく。
「おー、忍者だー、覆面頭巾で、青竜刀もって、チャクラム投げつけてくるらしいぞー」
 歳の頃12、3の少女が木の椅子に腰かけ足をぷらぷらさせながら言った。腰まであるオレンジ色の髪がそれに合わせて揺れている。
「‥‥ちょっと待て」
 刀使いの雷前は少し考えてから言った。
「それは、忍者と呼べるのか? なんか色々混ざってないか?」
「おっもしれーよなー」
 にししと笑う少女の名は鳥居櫻、長銃使いのグラップラーだ。
「混ざりすぎだろ。中国はおろか天竺までいってんぞ。大体青龍刀って‥‥忍者が薙刀もってるのか?」
「薙刀? 違うよ、あれだよ、片手持ちの曲刀」
「ああ、なるほど、そっちか」
「それで黒覆面、青覆面、黄覆面、白覆面、赤覆面の五匹がいるらしいぜー」
「‥‥そりゃ何処の戦隊だ?」
 呆れたように雷前が言う。
「俺は認めん、断じて認めんぞ。俺はそんなものを忍者などとは認めない」
「えーでも皆、そう呼んでるぜー?」
「それは忍者じゃねぇ、NINJAだ」
 微妙にアクセントを変えて言う雷前。豪快ぶってる割には小器用な奴である。
「なんか急にバッタもんくさくなったー!」
「そんな日本文化を誤解しまくった挙句に生み出されたような代物、それで十分だ!」
 男は焼酎をすすりつつ言う。
「しかしなんでまた急にそんな連中の話を?」
「有栖川のー、ああ、有栖川っていうのはオレが世話になってるところのボスなんだけどー、その有栖川の会社が経営するテーマパークに出たんだよ。っていうか棲みついちゃってるんだ」
「‥‥テーマパークに?」
 何故だ、と思ったところで、雷前はオチが読めた気がした。
「まさかお前、そのNINJAども、忍者屋敷に棲みついてるとか言うんじゃねぇだろうな?」
「おおー! すげーなライゼン、なんで解ったんだ!」
「‥‥最近、バグアの思考パターンが読めてきたような気がする。ごく一部の連中だけだろうが」
「でー、オレが退治にいくことになったんだけどー、なんかアドバイスもらえたらなーって、思ってー」
「お前が?」
「そー」
「一人で?」
「ううん、現在お仲間ぼしゅーちゅー。あ、そうだ、良かったらライゼンもこないかー?」
「うーん、悪りぃ、相棒がまだ寝たきりなんだ」
「あれ、ヒビキさんの怪我そんなにひどかったのか?」
「いや、ちょっと早い五月病らしい」
「‥‥‥‥」
「気分が回復するまで付きそっててやらにゃあならん」
 雷前道誉は凛々しい面差しでそう言った。
 少女は生暖かい目で道誉を見やりぼそっと呟く。
「平和な世界だ‥‥」
「ん? なんか言ったか?」
「いや、べっつにー! しゃーねーから、おれ一人で死んでくるよー!」
「まてまて、なんでそうなる。お前んとこのボスにULTへ依頼だしてもらえば良いじゃねぇか」
「ULTかー、そっかーその手があったかー! ULTの皆に頼めばライゼンになんか頼まなくても大丈夫だよなー!」
「なんかとはなんだ糞餓鬼」
「うるせー、ばっきゃろー!」
 少女は椅子から飛び降りるとたたたたっと駆けていってしまった。
「あ、おいお前っ」
 慌てて席を立とうとした雷前の肩をごつい手が掴む。
「お客さん、お代」
「ツケで」
「駄目」
 雷前が自分と櫻の代金を払い終えた時、周囲に少女の姿はもうなかった。

●参加者一覧

九条・命(ga0148
22歳・♂・PN
鋼 蒼志(ga0165
27歳・♂・GD
メアリー・エッセンバル(ga0194
28歳・♀・GP
鷹見 仁(ga0232
17歳・♂・FT
伊河 凛(ga3175
24歳・♂・FT
セージ(ga3997
25歳・♂・AA
瞳 豹雅(ga4592
20歳・♀・GP
智久 百合歌(ga4980
25歳・♀・PN
藍紗・バーウェン(ga6141
12歳・♀・HD
森里・氷雨(ga8490
19歳・♂・DF

●リプレイ本文

 九州にある某街。今は休止されているテーマパークに十一人の傭兵が集まっていた。
「俺は鷹見 仁(ga0232)。人呼んで稲妻のヒーローだ。よろしくな」
「稲妻ひーろー? おおー、ろーりんぐさんだーか、ろっくだなー!」
 ダンボールを抱えた少女が目をキラキラとさせて鷹見を見上げている。少年少女は英雄に憧れるものだ。
(「‥‥隠し芸大会でヒーローっぽい決めポーズを見せたから付いた二つ名だと言うことは‥‥関係ないことだから黙っておこう」)
 鳥居櫻の自己紹介を聞きつつ、ふと遠い眼をしてそんな事を思う鷹見である。
「櫻ちゃん、久しぶりね。元気だったようで嬉しいわ」
 智久 百合歌(ga4980)が微笑んで言った。
「櫻さんが元気そうで安心したわ。兜ヶ崎村の人達も、元気で過ごしている?」
 とメアリー・エッセンバル(ga0194)。
「この前は世話になったな。いつか村を取り戻せるよう頑張ろう」
 そう言うのはセージ(ga3997)だ。
「おー、みんな、ひっさしぶり〜。この前はこっちこそお世話になったー! 今回もよろしくなー! 初めましての人もよろしくー!」
 セージは再会の握手でもしようかと思ったのだが、櫻は何やら手にダンボール箱を抱えていたので出来ない。常に巡り合わせの悪い男である。
 そんな中、鳥居櫻が抱えているダンボールを目撃し藍紗・T・ディートリヒ(ga6141)に電気のようなものが走った。軽く手をあげて挨拶する。
「だんぼー」
「だんぼー」
 流行ってるのだろうか。
 各々自己紹介などを簡単に済ませる。
「ふむ、忍者ではなくNINJAと呼ばれるからには‥‥脱げば脱ぐほど硬くなったり、一撃で首を撥ねたりしそうなものですが」
 どうなんでしょうねと鋼 蒼志(ga0165)。きっと彼等は時空の彼方で今でも馬小屋に住んでいる。
「文化まで吸収するのか、面倒な奴等だ‥‥」
 伊河 凛(ga3175)が静かに呟く。人に害を成さなければ――そんな思いが胸中をかすめたが詮なき事か。キメラは人を攻撃するよう創られている。
「さっさと片付けて平和なテーマパークにしないとな」
「おー、その為にもしっかり準備しねーとな。とりあえず頼まれたもん持ってきたぞー、確認してくれー」
 櫻が荷物を降ろして言った。
 傭兵達はダンボール箱を開けた。中には三メートル程度の棒と忍者屋敷の見取り図が入っていた。傭兵達は棒と地図を手に入れた。
「‥‥欲しいとは言ったけど、良くこんなもんあったな?」
 鷹見が頑丈な木の棒を肩に担ぎつつ言う。結構重い。
「おれもー良くはしらねーんだけど、ボスが言うにはダンジョン歩くならそれだってさー」
 忍者屋敷はバグアが色々いじくってトラップハウスとなっている。しかし根本的な構造にはあまり差異はないだろう、という事で地図を手に一同は作戦を練り始める。
「忍者か‥‥憧れた事も有ったな、影の軍団や風魔の一族に」
 と洩らすのは九条・命(ga0148)だ。
「だから‥‥という訳ではないがバッタ物を見せられると何か心がざわめいてくる」
「自分もねー、もう古巣ではあるんですけど、なんか許せないものを感じますわ」
 瞳 豹雅(ga4592)が複雑そうな表情で言う。彼女はかつては現代忍術の養成所で育てられていたらしい。
「奴等のカンチガイの元凶が知りたいです」
 と森里・氷雨(ga8490)。まぁ宇宙人が考える事である、認識できるだけまだマシなのかもしれない。
 あれやこれやの相談の末、傭兵達は三班に分かれて捜索する事に決めた。
「こっちも適当に戦隊名でも考えるか?」
 とセージ。
「んー、有栖川御庭番衆とか?」
 小首を傾げつつ智久。
「それじゃそれでー」
 班名は風魔班、伊賀班、甲賀班、とされた。ちなみに内訳は、アトラクションの出口側から突入する風魔班を九条、伊河、豹雅、櫻の四名で構成し、入口側から突入する伊賀班はメアリー、藍紗、セージ、森里の四名、同じく入口から突入する甲賀班を鷹見、鋼、智久の三名で編成した。
「櫻さん、何処まで屋敷は壊しても良いの?」
 メアリーが首傾げて確認を取る。
「んー、出来ればあんまり壊さないで欲しいけど、身の安全を優先させてくれだってー。怪しいと感じたらデストロイおっけー」
「つまり、遠慮はいらないって事ね」
 くすりと智久が笑った。どことなく楽しそうだ。
 連絡の取り方などの細部を詰めると傭兵達は立ち上がった。
「古きよき日本の文化を冒涜したキメラだ。遠慮なくぶちのめそう」
 セージが掌に拳を叩きつけて言う。
 一同は意気も高くにそれに応えると、色々間違ったキメラが棲まう忍者屋敷へと突入して行ったのだった。

●風魔
 尺八の音色でも聞こえてきそうな日本家屋。
 内部に侵入した一同は覚醒し班ごとに分かれて探索する。
 出口側から侵入した風魔班の四人は黒ずんだ木造の廊下を慎重に進んでいた。足音を立てないように進んでいるのだがみしりみしりと音が鳴る。
「元々、こういう廊下は外敵に備えて音が鳴るように作られてますからね。慣れてねーと足音を消すのは難しいです」
 すげぇ再現度っすねーなどと言いつつ豹雅が言う。音を消すのは力ではなく技の問題だ。そして設定された動きしかエミタAIはサポートしない。やろうと思ってすぐ出来る事ではないが、流石というべきか、本物の忍者の卵だったという少女は足音を立てていなかった。
「ま、開き直っていきましょう。そんで大将ー、他が前衛ばっかりなんで、大将はどっしり構えて援護射撃お願いしますわ」
「解ったー、でもおれ大将かー! なんか新鮮だー!」
 櫻はそんな事を言っている。
「上の警戒も重点的に頼む。相手はNINJAだからな」
 周囲の様子を探りつつ伊河。
「了解ー」
 ぐるーりと首をあげて櫻。足元が不安だが、子供ではあるまいし――子供だった――素人ではないし、まぁ大丈夫だろう。
「こちら風魔班、廊下は異常無し」
 九条はトランシーバーを取り出し他の班と連絡を取る。伊賀と甲賀の両班からも異常無し、との報が返ってきた。

●伊賀
「こちら伊賀班、居間を探索中、現状では異常無し」
 森里が無線に向かって報告を返す。
 伊賀班は畳の縁は踏まない、壁に極力近づかない、戸を開けるときは体を隠しつつ、などといった基本を抑え罠を可能な限り回避しながら探索を進めている。
「いないのぅ」
 襖の奥の部屋をみやって藍紗が呟きを洩らす。
「NINJA達は隠れているのか」
 セージが畳や壁に刀で傷をつけつつ言う。
「何時襲ってくるか解らないわ、気を抜かずにいきましょう」
「了解」
 メアリーの言葉に一同は頷き、伊賀班の面々は静寂の中、慎重に探索を進めた。

●甲賀
 銃声が轟いた。
 散弾がまき散らされ障子に無数の穴があく。すらりとした足が無造作に突き出され、ボロボロになった障子を蹴り飛ばし踏み倒す。
「いないわね」
 女は金属音を立ててショットガンをリロードしつつ部屋の中へと視線を走らせる。智久だ。
「ちょっと待った」
 部屋に入る前に鷹見が三メートル棒で畳を叩いた。天井から格子が降り、壁や畳から勢い良く槍が突き出てくる。
「任せろ。俺のドリルの破壊力ならば、この程度の破壊は‥‥容易い!」
 鋼は部屋に踏み出すと、ドリルスピアを振るって格子と槍を木端微塵に打ち砕く。
「さすがに忍者屋敷だけあって派手だな、罠の多いこと多いこと」
 鷹見が背後をみやって言う。彼等が通ってきた後には発動した罠の数々と破壊された扉などの残骸が飛び散っていた。
「片っ端から壊していけば無問題よ。どんどんいきましょう」
「応」
 智久の言葉に一同は頷き、甲賀班の面々は喧騒の中、豪快に探索を進めた。

●NINJAバスター
 風魔班が屋敷内の一室に足を踏み入れた時、不意に掛け軸が吹き飛び、奥の壁から一体のNINJAが飛びだしてきた。
「SAMURAI!」
 妙な鳴き声と共に黄色の覆面をつけたそれは部屋内に電撃をまき散らす。閉所で薙ぎ払うように放たれたそれは避けるのは非常に困難だ。風魔班の面々を爆雷の嵐が貫いてゆく。
「SE・PU・KUー!」
 さらに間髪入れず床下から赤覆面が飛びだし口から炎を吐き出す。
「チッ!」
 九条は身を伏せて咄嗟に炎をかわしつつ、腰のホルスターから拳銃を引き抜く。素早く狙いをつけ四連射、赤覆面に銃弾を叩き込む。櫻はライフルを黄覆面に向けて連射した。黄覆面は素早く跳躍し、天井に張り付く。
 伊河が赤覆面へと月詠を構えて迫った。畳を踏み締めて疾風の如き四段突きを放つ。赤覆面は横に素早く動いて軸をずらして回避した。
 豹雅は一足跳びに赤覆面の懐に飛び込んだ。大胆な動きだ。相手の攻撃を引き出すのが狙いである。双爪の連撃から、相手の喉元目がけ爪を繰り出す。
 赤覆面は青龍刀で受け流し、カウンターの斬撃を放った。刀が命中し少女から血飛沫が飛ぶ。赤覆面は体を当てて豹雅を吹き飛ばすと、爆裂する火球を追撃に放った。豹雅の身が壁に激突した所へ火球が炸裂し爆風が巻き起こる。
 紅蓮の熱波が荒れ狂う中でも伊河は豹雅が生みだした隙を逃さなかった。事前に打ち合わせていた行動だ。ここで外す訳にはいかない。
 伊河は先手必勝を発動させ練力を全開にすると渾身の力を込めて月詠を袈裟斬りに振るった。音速を超えた刃がNINJAの身を引き裂く。衝撃によろめいた所へ、返す刀で水平に薙ぎ払った。NINJAの首が飛んだ。鮮血が噴き上がる。爆雷が伊河を貫いた。再び黄覆面が雷撃をまき散らしていた。電撃に貫かれチャクラムを受けて櫻が膝をついた。豹雅が昏倒した。
 九条は雷を浴びながらもリボルバーを撃ち放っていた。SESエネルギーで威力を強化された弾丸が天井の黄色覆面を撃ち抜く。回転しながら畳の上に降り立った黄色覆面へと九条は間髪入れずに迫り、その顔面に拳を叩き込んだ。NINJAは障子を突き破って吹き飛び、中庭の転がって、そのまま動かなくなる。
「瞳、大丈夫か、しっかりしろ」
 伊河が昏倒している豹雅を抱き起こして言う。
「ぐ‥‥」少女はうっすらと黄金の目を開く「み‥‥見事だったぞ伊河凛。貴様こそNINJAバスター・リンを名乗るに相応しい‥‥ガクッ」
 結構シャレになってない状況なのだがあくまでネタを捻じ込む豹雅である。再び昏倒。
「おいっ?!」
「‥‥豹雅、ヤバクね?」
 こちらはなんとか意識を保ってるのか櫻が言う。一同は慌ててキットを使って応急処置を開始するのだった。

●湯煙の中に
「ここは‥‥脱衣場かしら?」
 伊賀班、メアリー・エッセンバルは戸を開けた中をみやってそう呟いた。
「アトラクションに風呂‥‥どういう頭してるんだ? ここの設計者」
 セージが呆れ顔で言った。
「リアリティの追求、という奴なのかもしれんのぅ」
 きょろきょろと見やりつつ藍紗。
 その時、奥の方から「かぽーん」という木桶の音と、確かな水音が鳴り響いた。
「誰か‥‥入っている?」
 森里は思う。お約束を踏襲するなら、そこにいるのはくノ一。まぁ間違いなくキメラだろうが。
 一同は武器を構えて戸を開け放つ。
 瞬間、湯気が視界に溢れた。熱気に負けずに眼を凝らすと白い煙の中に立つ影が一つ。間違いなく、いる。やがて煙が晴れ、その裸体が姿を現した。
 健康的な小麦色の肌、膨れ上がった胸、逞しい上腕二頭筋、どうみても男なマッチョメンの顔には風呂なのに何故か、黒覆面。
 覆面、裸に、ふんどし一丁、こいつぁデストラップだ!
「ごふぅっ!」
 森里がよろめいた。ヴィジュアル的なダメージが圧倒的破壊力となって一同に襲いかかる。
「ワターシ、クノイチ、DEEEEEATH!!」
「嘘つけぇええええええええ!!」
 セージが叫び、戦いが始まる。
 黒覆面はふんどしからチャクラムを取りだし放つ。セージは畳返しで返そうと思ったが畳が無いので身を伏せて回避する。間違っても当りたくない。
 脱衣所の入口から青覆面が飛び込んできたが、後方を警戒していた藍紗の影射が炸裂し奇襲を潰す。
 セージと森里はキャッチ時の隙を狙って左右から猛攻をかけたが特に黒覆面はチャクラムには拘らないようで、飛び退いてあっさりと回避した。攻撃を凌いだ黒覆面は大木のような足を繰り出し森里を吹き飛ばす。見かけはアレだが強い。
 メアリー・エッセンバルが練力を開放して素早く間合いを詰めていた。特殊能力の起点となる部位は見分けがつかないので、とりあえずファングを振りかざして斬りかかる。裸だけに当ると防御力は低いらしい、黒覆面は瞬く間に血塗れになってゆく。
 青覆面が口から三連の猛吹雪を巻き起こした。煌く冷気の渦は場に満ちる湯気も凍結させ傭兵達の身を切り裂く。
「一射必倒!」
 氷雪の中、藍紗は小さな身で長大な和弓を限界まで引き絞る。裂帛の気合と共に勢い良く矢を撃ち出した。連射された矢が閃光となって走り青覆面を穿つ。
 黒覆面が旋風の如く蹴りを繰り出す。メアリーはスウェーして回避するとカウンターの一撃を喉元に叩き込んだ。よろめいた所へセージと森里が刀を振り上げて迫り、滅多斬りにして斬り倒す。
 青覆面へと藍紗が矢を放つがまだ倒れない。再び青覆面が吹雪を吐き出した。巻き起こる冷気に森里が膝をつく。
 振り向いたメアリーは瞬天速で間合いを潰すと、突進の勢いを乗せてラッシュをかけた。爪の連打を受けて青覆面は吹き飛び、ようやくその動きを止めた。

●デストロイヤーズ
 罠は壊し、怪しいものは壊しながら進む甲賀班。
 その部屋に踏み込んだ時、智久が掛け軸に向かって何気なくショットガンを発砲した。次の瞬間、血塗れになったNINJAがその奥から飛び出してくる。
「川万河!」
 謎の叫びにも力がない、NINJAもさすがに先制攻撃を受けるとは思っていなかったようである。赤覆面ぽくなった白覆面が光球を吐き出した。室内を純白の光が荒れ狂う。しかし智久は闇の衣を発動させて光を吸い込んだ。
「某の電動槍で――貴殿を穿ち貫く!」
 鋼が接近し、練力を解き放ってドリルスピアを繰り出した。動きの鈍っているNINJAは回避できない。回転する穂先が白覆面の肉体を貫通し破砕する。
「蛍火――白雪斬!」
 すかさず側面に回り込んだ鷹見が練力を全開にし怒涛の六連撃を繰り出した。白覆面はドリルと刀であっという間に解体される。
「‥‥意外にあっさりね?」
 首を傾げて智久。白覆面、瞬殺であった。


 かくて忍者ならぬNINJA集団は殲滅され、テーマパークは平和を取り戻した。
 だがバグアの間違った認識が改まらない限り、再び何処かでバッタ物のキメラが幅を効かせることだろう。
 しかし忍者屋敷を巡る騒動はこれにて一巻の終わりであり、それはまた別の話とさせていただこう。

 了