●オープニング本文
前回のリプレイを見る「幸せな家が欲しい」
西園寺燐火はそう言った。
「きっと僕達は、楽園の世界の住人ではないから全ては掴めない。辛い時があっても良い。寂しい時があっても良い。一時でも、皆で笑える時があるのなら。それが、僕の望む幸せ」
少女はそう言って瞳を閉じた。
●事実の断片
「――情報を整理してみよう」
歌部星明が言った。
燐火の言
・かつて、西園寺亜里沙は厳しい母だった。
・息子である時雨には特に厳しく教育を行っていた。
・西園寺時雨は身体は弱かったが活動的な性格だった。
・時雨は亜里沙の気を引く為に時に、わざと怒らせるような事もしていた。
・燐火曰く、時雨は母を好いていた。
・五年前、時雨が死亡したその日、特にこれといって変わった事はなかった筈、との事。
・強いて言うなら、そのとき燐火は風邪をこじらせていて兄である時雨は凄く心配していたとのこと。
・西園寺家が出席しなければならないパーティがあった。それへ行くついでに、パーティ開始前に皆で買い物をする予定だった。ただし燐火は風邪をひいていたので、一人屋敷に残って寝ていた。
・燐火は全面的に協力してくれる、との事。
長谷川の言
・西園寺時雨と燐火はともに平蔵、亜里沙夫婦の実子。
・西園寺家の相続権は亜里沙に、次いで燐火にある。前妻の息子が一人いるが、これとは縁が切れている。
・亜里沙にも平蔵にも息子を殺す動機は見当たらなかった。
・時雨を殺して得をする者は特にこれといってはいなかった。
・転落死は自然に見えるが、親がついていながら、フェンスが張られていたのに転落するのは不自然。
平蔵の言
・亜里沙とは前の妻が死んだ後に結婚した。元は会社の秘書だった。
・平蔵の前の妻は古い家の出身だった。亜里沙は良く比較されていた。
・亜里沙は西園寺の妻として一分の隙もないようにと努めた。
・平蔵曰く、息子がアルビノだったからと言って責めたことはない。体質はどうにもならん事だ、とのこと。
・時雨は生意気だったが、可愛い奴だと思っていた、との事。
・しかし、亜里沙は全てに必死だった、とのこと。
・時雨は問題ばかり起こしていた。厳しい母に反抗ばかりしていた。嫌っていたのだと、思いたくはないが、嫌っていたのかもしれない、との事。
・時雨は当日、西園寺家で出席しなければならないパーティに出席しないと言いだした。しかし、亜里沙は無視してひっぱっていった。屋上についた時、時雨は車から飛び出して、フェンスの上に登り。 家に帰してくれるように要求した。拒否した場合、飛び降りると脅した。
・亜里沙は戯言だと思って無視した。
・平蔵も本気だとは思わなかった。
・強風に手を滑らせて時雨は落ち、死亡した。
・平蔵はそれを見た。亜里沙は背を向けていた。
・亜里沙は自分を責めていた。
・時雨はきっと両親を恨みながら死んで行った、とのこと。
「勝利への手札は揃いましたでしょうか」
そう問いかけた傭兵に陰陽師は答えた。
「恐らく、解決に必要な欠片は揃った」
ぱちり、と扇子を鳴らして言う。
「後は‥‥ここからどう亜里沙殿を説き伏せるかにござる」
●リプレイ本文
「平蔵さん、嫌いの反対は好きなのですよ?」
老人を見据え返し赤霧・連(
ga0668)が言った。
「時雨さんはお母さんのことが大好きだったって私は疑いません。子供の我儘はSOSのサイン。お母さんに構って欲しくて、自分だけを見て欲しくて、お母さんを独占したかったのですよ」
少女は言う、本当の嫌いは「拒絶と無視」だと。
「私は時雨さんと同じ病みたいです‥‥私は時雨さんが少しだけ羨ましいのです。だからこそ時雨さんが愛した家族には幸せになって欲しいんです」
●
会談より数日後、西園寺の屋敷に再び傭兵達が集っていた。
「もうしばらく『時雨』をやってもらいてぇんだ、頼む」
燐火の部屋、アンドレアス・ラーセン(
ga6523)が部屋の主に言った。
「ん、解ったよ。具体的には僕は何をすれば良いの?」
小首を傾げて燐火が問う。
「それはだな‥‥」
アンドレアスは五年前の事件の概要を含め、今回の計画を説明する。燐火の表情が僅かに曇った。
「時雨さんを一番よく知る貴女にしか出来ない事なんです。お願いします」
叢雲(
ga2494)もまた言った。
「でも‥‥母様、大丈夫かな‥‥」
「つらいとは思いますが‥‥その辺りも含め、お願いします」
柚井 ソラ(
ga0187)が言った。
「時雨さんの気持ち、お母さんに教えてあげられるのは、きっと燐火さんだけだから‥‥」
「僕、だけ‥‥?」
燐火が呟く。柚井は頷き、
「燐火さんだけです、それを届けられるのは。だから、どうか、お願いします」
少女はしばし迷うようにしていたが、
「‥‥解った」
少年を見て頷いた。
●
傭兵達は西園寺平蔵に対しても協力を要請した。
「今回で最後です。燐火君も協力してくれると言ってくれています。平蔵さん。家族を救う為に、貴方の協力が絶対に必要なんです。宜しくお願いします」
レティ・クリムゾン(
ga8679)が深々と頭を下げ言う。老人は無表情でレティを見据えている。
「時雨君は恨んでなどいなかった。時雨君が我侭を言ったのは、燐火君が心配だったからです」
とレティ。
「‥‥ほう?」
平蔵が片眉をあげる。
それに国谷 真彼(
ga2331)が言った。
「時雨君の反発は、好きだから気をひきたいというのが、客観的に見ても事実に近いでしょう」
今までに得た情報を総合し平蔵へと説明をする。
亜里沙は当時、『西園寺』のため全てに必死だった。だが厳しいながら冷たさや危機を含んだ怖さはなかったことから、亜里沙自身の子供への愛情は確実にあった筈。怒る以外は素っ気なかったという感想から、子供たちは寂しさを感じていたと考えられる。
同時に時雨は、燐火の寂しさを思いやっていた節がある。むしろ彼は『西園寺』の教育の中に、両親との関わりを感じており、妹に対して引け目を感じていたのではないかと。妹を楽しませているうちに、周りには陽気な性格だと映るようになったのではないか。
「故に『西園寺』は彼を蝕んだわけではなかった、と僕は思います」
説明を聞き平蔵の眉間に皺が寄った。
「デパートで買い物をする、というのは時雨君の言い出したことではありませんか?」
「‥‥‥‥その通りだ」
平蔵は頷いた。老人はしばし思案するようにしてから言う。
「言いたい事は大体解った‥‥儂は一体、何をすれば良いんじゃ?」
「五年前の再現を」
叢雲が言った。その為に必要なものを説明する。
「ショック療法という訳か‥‥」
説明を聞いて平蔵が唸る。赤霧が言った。
「平蔵さんも舞台に上がらなければなりません。今度こそ家族を守り通さなければなりません。五年前で足踏みしているのは平蔵さんだって同じと思います。亜里沙さんも、時雨さんも、燐火さんも、今度こそ全てを取り戻して来るんです」
平蔵は唸った。思案するように顎髭を撫でる。
「やれん事はない。じゃが‥‥それで本当に上手くいくのか?」
老人は眼光鋭く赤霧を睨む。
「やるからには成功の二文字しか考えません」
不安は胸の奥にしまい、鋼の意思をもって信じる。
「任せて下さい、大丈夫です」
にへらっと笑って少女は答えた。
平蔵はしばし無表情で赤霧を見据えていたが、
「‥‥良いだろう。たいした度胸だ」
老人は言った。
「お前達の案に賭けてみよう」
●
「西園寺香料のTVCMを撮影するのに、屋上駐車場をお借りしたいのです。補修が必要なので工事を行うとして、撮影期間内の屋上封鎖をお願いできませんか」
ホアキン・デ・ラ・ロサ(
ga2416)は平蔵と共に件のデパートへと赴き交渉する。
「うちの屋上をですか? しかしTVCMの撮影となると‥‥」
「なんとかしろ。手当は出す」
平蔵が言った。その言葉にデパートの担当者は息を呑む。
「‥‥解りました。西園寺さんにそう言われちゃねぇ」スーツ姿の男は嘆息する「ま、なんとかしましょう」
計画が進められる。
数日後、深音・フラクタル(
ga8458)は庭で茶を飲みつつ亜里沙に言った。
「聞きましたが、亜里沙さんはとても有能な秘書であったとか。そして今は平蔵氏の奥さんとして立派につとめていらっしゃる。羨ましいです」
屋敷の庭、白い卓と椅子と傘が並べられ、婦人達は談笑し、傍らでアンドレアスが昔亜里沙が好きだったという曲をギターで爪弾いている。
「あら、それほどでもありませんわ」
ころころと笑って亜里沙は答えた。
「お母様として奥様として西園寺家夫人として‥‥尊敬致します」
ロジー・ビィ(
ga1031)が柔らかく微笑みつつ言った。
「三役もこなされるのは並大抵のご辛労ではありませんでしょう? お寂しい事は在りませんの? ‥‥家族として」
「そう思う時もありますけれど‥‥時雨も皆さまのおかげで元に戻りましたし、皆さまこそ世界中を飛び回ってバグアと戦うのはお辛くはありませんこと?」
茶を片手に一同はそんな事を話しつつ、さりげなく亜里沙の過去から現在を追うように話を誘導してゆく。
「――そして、時雨と燐火が生まれたんですの」
西園寺亜里沙はそう言った。やがて話も切り上げようかという頃合いになる。
「明日はご家族で楽しんでいらして下さいね」
「ええ、有難う」
深音の言葉に亜里沙は笑って頷いた。
それにアグレアーブル(
ga0095)が言った。
「‥‥亜里沙さん、私は貴女の家族を救う為に最善を尽くす事を約束します。仕事、ですから」
「‥‥はい?」亜里沙が首を傾げた「時雨はやはりまだ何処か悪いのですか?」
「今は大事ありませんが、完全ではありません‥‥それを治す為に信じて欲しいのです。私達と貴女の家族を信じること――約束していただけますか?」
亜里沙は赤毛の少女を目を瞬かせて見ていたが、
「無条件には全ては信じられません。ですが、貴方達には実績がありますし、貴女はプロとしての誇りも持っていらっしゃるよう。良くは解りませんが、信じろというのならば、信じますわ」
アグレアーブルは軽く礼をした。
「有難うございます」
●
「‥‥鬼の名は時雨、か」
ホアキン・デ・ラ・ロサが呟いた。
母親は息子を失い、心を闇に明け渡した。狂った鬼の住まう闇に、娘を無理に押し込んだ。
狂気・愛情・憎悪・希望、全ては人の心の一側面だ。
「あなたが傭兵を使って依頼に深入りしない理由‥‥少しだけ分かったような気がする」
風が吹き荒び夕陽に照らされるデパートの屋上、突貫で準備が進められる中、眼下に広がる街並みを眺めつつ、男は陰陽師に言った。
「左様でござるか。貴公は時折、鋭いでござるからなぁ‥‥」
ぱちりと扇子をならし歌部星明。
「キメラが人類の潜在的な恐怖を利用したものならば悪霊もまたキメラ足り得るもの」
アグレアーブルが呟くように言う。
「最後の希望の住人には、その闇をも払う力があるとお考えですか?」
陰陽師は夕日を眺め、
「さて‥‥結局は人に拠ると思う故、解らぬ――が、最も可能性が高いように思えた。あの島は光が強く、闇もまた濃い」
勝負の時が迫っていた。
●ShowDown
ホアキンは天気予報を確認し、日程を定めた。刑事の長谷川に頼み、事件の現場資料を借り受け、時雨の転落したフェンス、西園寺家の車の停車位置を確認した。赤霧やアグレアーブル、叢雲等と共に業者を指揮し、フェンスは目立たぬよう内側にずらし、安全を確保。ペンキを塗り、ひびを補修し、清掃し、車を配置した。デパートの屋上は五年前の事件当日のように可能な限り再現されていた。
「この勝負、必ず勝ちましょう」
最後の打ち合わせの時、ロジー・ビィが言った。一同はその言葉に頷く。
傭兵達は五年前の事件を再現し、亜里沙の目を覚まさせようとしていた。
「昔、こんな風に出かけた事があったね」
黒塗りの車の中、燐火が亜里沙に言った。
「あら、そうだったかしら?」
「うん、あったんだ。あの日も燐火は熱を出してた。今日もまた風邪ひいちゃったけど、大丈夫かな」
「燐火?」
燐火の言葉に亜里沙は痛ましそうに眼を細めると、
「時雨‥‥燐火は五年前に風邪をこじらせて死んだのよ」
母は娘を見下ろしてそう言った。
「辛いでしょうけど、受け入れなさい」
「‥‥うん」
男装の少女は唇を戦慄かせて頷いた。
やがて車は屋上に到着し、五年前の状況が再び開始される。
「‥‥時雨さん、力を貸して下さい‥‥」
柚井ソラは物陰でそっと呟いた。
車の助手席から平蔵が降り、後部座席から亜里沙と燐火が降りる。
「母様、やっぱり、僕はパーティにはいかない」
強い風が吹くデパートの屋上、燐火は白髪を風に揺らしながらそう言った。
「あら‥‥どうしたの?」
「僕はパーティにはいかない、絶対に」
「そう? 仕方のない子ねぇ」
亜里沙は困ったように眉をひそめると、
「それじゃあ、家に帰りましょうか」
そう言った。
物陰から様子を伺っていた一同の間に動揺が走る。今の亜里沙は昔の亜里沙とは違う。同じ手順で同じ状況にはならない。
「‥‥家にも帰らない」
燐火が呟いた。
「は?」
「私にはね、母様、帰れる家が無いんだよ」
「時雨‥‥? ――時雨!」
燐火はフェンスの上に登った。細い鉄柵の上に二本の足で立つ。
「私は‥‥私はっ、僕は‥‥!」
燐火は意識を時雨へと塗り替える。やけに眩暈がした。時雨のふりをして、彼が思っていたであろうことを推測し、それを我が事のように語るのは、眩暈がするほど苦しかった。
「僕は‥‥本当は、家族皆で来たかった。僕は、本当は、母様と父様が大好きだったんだ。反発していたのは構って欲しかったから」
燐火は胸を抑え涙を流しながら言う。
「燐火の事ももっと気にして欲しかった――そうだね、兄さんならそう言ってくれたかも。僕は此処から落ちた、僕はもう居ないッ!」
「時雨? 何を言って」
亜里沙が小首を傾げる。燐火の瞳がかっとその名の通り燃え上がったように見えた。
「あんたは‥‥知っている筈だ西園寺亜里沙ァアアアアッ!! 西園寺時雨はここから落ちたんだッ!! そして私も貴方の中から消えたッ!! 私はここに居るのに‥‥! もう私はあんたの中の何処にも存在してない!! 私は時雨じゃない、時雨じゃないってのに! 私は、一体、貴女にとって、なんなんだい‥‥っ?!」
存在の抹消。徹底的な拒絶と無視。少女は涙を流して絶叫する。
「私は、貴女にとってなんなんだよ、母さん!!」
「燐火さん!」
叫びが重なった。想定外の状況とはいえ予定と行動が違い過ぎる。
「ワ、タ、シ、は‥‥っ?!」
少女の身体がぐらりとゆらぐ。風が吹いた。
燐火は屋上のフェンスの上から仰向けに落ちていった。
「あ、あ! あ、あ、あ、あ、あ‥‥‥‥!」
亜里沙が目を見開き、小刻みに痙攣している。
――どうする? 状況が想定と違い過ぎる。一同は視線をかわす。
フェンスの向こう側で、縁の上に伏し燐火は声をあげて泣いている。幾人かがそちらへ向かった。
「亜里沙さん‥‥貴女のお子さんは何人?」
ロジー・ビィが問いかける。
「あ‥‥? ふ、二人です、それが何かっ?」
目を見開いたまま答える。
「では誰が生きていて、誰が死んでいるのかも解りますね?」
叢雲は一枚の書類を突きつけてみせた。死亡届書記載事項証明書、ひらたく言えば死亡の証明書だ。西園寺時雨は五年前に死亡したと記載されている。
見開かれた亜里沙の目。その瞳孔が急速な収縮運動を開始した。焦点が揺れ、瞳孔が小さくなり、大きくなり、小さくなり、激しく繰り返す。
「時雨さんは五年前に亡くなっています」
深音もまた事件の記事を突きつけてみせる。
次の瞬間、西園寺亜里沙は絞殺された鳥があげるような声で、この世のものとも思えぬ絶叫をあげた。
「母さん!」
悲鳴を裂いて声が響いた。
柚井に支えられて燐火が立っている。
「兄さんは、母さんを憎んでなんかいなかったよ! 私は知ってる! 兄さんは母さんが大好きだった‥‥! だから兄さんが母さんを恨むなんてありえないんだよッ!!」
「り‥‥りん、か?」
潤滑液のきれたゼンマイのような動きで亜里沙は娘をみやる。
「私だって‥‥!」
少女は俯き嗚咽を洩らす。涙が床にぽつぽつと落ちた。
「燐火‥‥!」
亜里沙が震える声で呟く。女の隣にそっとアンドレアスが立った。
「アンタは、失くしたモノに拘って、手の中のモノを見失ってた」
男は隣に立ち燐火を見ながら続ける。
「‥‥その手だっていつ離れるか判らねぇんだぜ」
今ならまだ間に合う、言って男は亜里沙の背を押した。
母は駆け出し、泣いている子に触れる。懺悔の言葉を述べながら強く抱きしめた。
●
西園寺亜里沙は時雨の死を認め、燐火の存在もまた認めた。
「周囲を良くご覧になって‥‥」
西園寺の屋敷前、別れ際、ロジー・ビィが亜里沙に言った。
「貴女を心配し、愛していらっしゃる方が傍に居る事を忘れないで下さいませ」
亜里沙はそっと頷いた。きっとその言葉は届いた筈だ。
「これで燐火さんともお別れになるんですね。嬉しいですが少しだけ寂しいです」
柚井ソラが言った。
「そうだね‥‥」
髪を黒く染めた燐火は目を伏せ、やおら顔をあげて言った。
「もし、また近くに来るような事があったら寄ってよ、皆ならいつでも歓迎するから!」
「ええ、もし機会があったら、その時に――」
柚井は微笑んで言った。
「燐火さん。魔は何処にでもあります。でも、祓えない魔なんてない。そのことを忘れないで」
「ん‥‥解った、忘れないよ」
燐火が頷く。
かくて、一同は別れの挨拶を済ませると西園寺家を後にした。
「これで、ようやくはじまるんだな。この家族は」
帰還途中、レティが満足そうな表情で言った。
「前途には様々なものがあろうが‥まぁここまで来ればなんとかなるであろうよ」
うむり、と頷いて歌部星明は言ったのだった。