タイトル:【埼玉】Phantomマスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/11/30 22:44

●オープニング本文


 空。
 何処までも青い空だ。
 風防の向こうで冷たくも澄んだ風が荒れ狂っている。
『関東か』
 無線から男の声が聞こえた。
「‥‥感慨深い?」
 相良裕子は声の主に問い返した。
『多少な』
「ふぅん‥‥‥‥なにゆえ?」
『ずっと、ここから西の方で戦っていたからな』
 声の主――不破真治はそう答えた。
 村上旅団から遠藤旅団へと移り変わり、彼の旅団は九州の守備に残ったが、その隷下のKV隊として動いていた不破の戦隊は機動力が高い為、旅団から切り離され、各地への支援へと動く遊撃隊として編成しなおされていた。
「不破さんは‥‥なんでまだ戦っているのかな?」
 相良裕子は尋ねた。
『それを軍人に聞くか?』
 不破真治は笑ったようだった。
『まだ日本は解放されていないし、地球は解放されていないだろう』
「‥‥解放するのが使命?」
 問いかけたのは同類を求める心が何処かにあったからだろうか。
「皆の願いを‥‥背負っているから?」
『九州の頃はそれもあったが‥‥だがきっと、俺は気に入らないからなのだと思うよ。バグアに支配されているというのがな』
「ふぅん‥‥」
『お前は?』
「‥‥相良は‥‥託された物があるから‥‥」
『託された物、か。なるほど、亡霊だなブルーファントム』
――死者達が残した念によって動かされている。
 その言い方に少しむっとして少女は言った。
「‥‥意地の悪い言い方をされますね‥‥? ずっと故人の遺志を継いで戦ってた人に言われたくない」
 男は笑ったようだった。
『お前の戦は、お前の意志がそこにあるのか?』
「‥‥相良は叶えたいだけ」
『そうか。なら、それもまたお前の戦か‥‥ならばその願いが導く方向へと飛び続けると良い。だが生者の声も忘れない事だ軍曹。お前は生きていて、まだ十八の娘なのだからな。幸運を祈る』
 男はそう述べ、愛機をバンクさせると十数のKVを引き連れて横に流れていった。
(‥‥最近偉そうなんだよ)
 相良裕子は半眼になって嘆息すると操縦桿とスロットル、ラダーを操作して愛機を旋回させる。思う。やはり人は人それぞれという奴なのだろう、きっと。
「皆は‥‥なんで戦っているのかな?」
 相良裕子は問いかけた。深い意味はなくて、単なる好奇心だろう。


 不破真治中佐率いるKV戦隊「WarHeadSquadron」が飛んだのは日本国関東地方の埼玉県へと向かってであった。
 目標は熊谷基地に配備されているバグア軍の空戦部隊である。可能ならば、基地への爆撃も慣行したい所だが、防空戦力や対空砲の厚さからして現時点では難しいだろうという事でそれは今回の作戦目標に入っていない。
 今回の目標は迎撃に出て来た敵空軍の撃破である。一言でいえば削りの為の出撃だ。威力偵察も兼ねている。
 不破等KV隊が接近するとバグア軍は飛行キメラの大集団を解き放ち、さらにBFを中心としたHW編隊を出撃させた。総数およそ百。
 対する不破のKV戦隊は三十六機。ブルーファントムの相良を始め激戦区を勝ち抜いて来た歴戦の精鋭である為練度は高かったが、数の上では不利であった。加えて地上か空かすらも解らぬ何処かからロックオン解除パルスが断続的に放たれていてK−02などマルチロック式の兵装の使用が不可能になっていた。
 関東の空におけるウォーヘッド戦隊の戦いの一つが今、幕を開けんとしていた――

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
セラ・インフィールド(ga1889
23歳・♂・AA
ノビル・ラグ(ga3704
18歳・♂・JG
周防 誠(ga7131
28歳・♂・JG
飯島 修司(ga7951
36歳・♂・PN
狭間 久志(ga9021
31歳・♂・PN

●リプレイ本文

 出撃前。
「お久しぶりです不破少尉‥‥いえ、今は中佐でしたね」
 セラ・インフィールド(ga1889)が言った。
「セラか! 久しぶりだな」
 破顔して不破が言った。
「一緒に戦うのはいつかのカリマンタン島以来になりますか」
「そうなるか。懐かしいな」
 男は少し遠くを見るように言った。
「あの頃、ディスタン乗りと言えば第一に思い浮かぶのは貴方だった気がするよ」
 セラは記憶を探った。赤道直下の灼熱の太陽の下で戦い。あの島の空気は熱かった。
「なんだか随分遠くまで来てしまったような気がします」
「‥‥そうだな」
「戦い始めてからもう四年か‥‥」
 男の声が響いた。白鐘剣一郎(ga0184)だ。
「いや、名古屋でギガワームを落として反撃の狼煙を上げてから、僅か四年と言うべきか」
 四年で地図は随分と変わった。状況もまた然りだ。
「僅か、か。そうとも言えるか‥‥」
 日本だけを見てもバグアの支配下に置かれていた地域の多くを奪還するに至り、全体を見渡せば宇宙への足掛かりを得て、いよいよ敵の本陣が標的に入ってきている。
「ようやくここまで来たな」
 白鐘は言った。
「だが、ここからが正念場だ」
 最後まで戦い抜いて生き残る、男はそう言った。
「この戦いを通じて得たもの、失ったものはその時改めてゆっくり考えたいところだな」
「その時に、か‥‥確かに、そうだな。ここからが正念場だ。まだ終わっていない」
 不破は頷いた。
「中佐、今回は前に出すぎず、敵の動向を見極めて的確に俺たちが当たれるよう調整して貰えると助かるな」
「その手の注意も久しぶりに聞いたな。大丈夫だ、俺ももう突撃兵じゃないぞ」
 不破真治、獅子座戦時の事は忘れているらしい。
 白鐘は微笑を浮かべると、
「そうか。数は少なくとも精鋭揃い。采配の腕の見せ所と思ってよろしく頼むな」
「了解。ヘマをやれる立場でもなし、無茶はせんさ。任せておけ」
 一つ背を叩くと古い戦友達は手を振りそれぞれの乗機の元へと向かったのだった。


 かくて空。
 三十六の翼が舞い上がり、関東へと向かって飛ぶ。
「――戦う理由、ですか。相良軍曹には獅子座戦での恩もありますし、隠す程のものでもありませんからな」
 飯島 修司(ga7951)は無線から聞こえて来た少女の問いに対しそう答えた。
『有難うなんだよ。どんな理由?』
 ノイズと共に言葉が聞こえる。
「始めの頃は『復讐』という単純なものでした。今はそれを根幹に、少なからぬ『意地』と僅かばかりの『矜持』が乗っかっております」
 飯島は言う。
「ただ、最近は戦う事自体が目的かつ理由になりつつあるのも事実でして。戦場の空気が心地良いと申しますか、平穏無事な空気を息苦しく感じると申しますか。少なくとも、自身が生きている実感を一番強く得られる場所が戦場になっている事は間違いないでしょうな」
 男は笑った。
「まあ、今のところそれで何か支障を来たす訳でもありませんがね」
『‥‥人は望むように生きて、望むように死ぬべきだ、故に望むならそれも良いんじゃないか、とか不破さんなら言いそう』
 少女は言った。
『相良は、でも、戦いがなくなっても飯島さんが生きてるんだなぁって実感が得られる生活を送れると嬉しいよ』
「左様ですか」
 飯島はそう相槌を打ったのだった。


「戦い続ける事への理由か‥‥」
 狭間 久志(ga9021)は呟く様に言った。
「元々は、敵討ちかな‥‥自分や家族の」
 戦争とは縁遠かった狭間とその家族も、以前の仲間達も殆どは東京がバグアの手に落ちた時に失った。
 自分の意志の自由と無関係にこうなってしまった事に憤りを覚えている。
「今は、でも」
 思う。
 今はただ、愛機と飛ぶ事で自分の限界に常に挑み続けられる事で、ここに居る自分を実感していた。何よりKVパイロットとしての――ハヤブサ乗りとしての自負もまたあった。
 故に、愛機を指して言った。
「こいつとなら、前に進める気がするからかな」
『そうなんだ‥‥そのハヤブサは狭間さんの翼なんだね』
 少女からはそんな言葉が返って来た。
「ああ」
 男は頷いた。
 かつては、まっすぐ飛ばす事も難しかったのに、よくここまでこれたもんだ――そう、思った。
 でも、できるなら。
(今の自分にとってハヤブサが必要な以上に、自分を必要としてくれる誰かと出会えるなら、また、生き方を変えてもいいのかもしれないね‥‥)
 男は胸中で呟いたのだった。


「戦う理由か」
 白鐘は言った。
「最初は戦える力を得たのなら、出来る事をすべきだと考えた。今は‥‥護りたい家族や仲間の為、だな」
『そっか。白鐘さんは絶対に守らなきゃいけないものがあるもんね』
「ああ」
 他方、
「私が傭兵を始めたのは、単純に生活の為ですね」
 セラはそう言った。
「故郷を追われ見ず知らずの土地で、食べていくにはこれが一番手っ取り早かったですから。エミタに適性があったのも幸いしました」
『生業として、選んだ‥‥って感じです?』
「ええ。まあだからと言ってあまりビジネスライクに依頼をこなしているわけでもありませんが。困っている人がいれば助けたいと思いますし、相手や一緒に戦う仲間によっては戦いそのものを楽しく感じることもありますしね」
 セラはそう答えたのだった。


「俺の戦う理由は――‥‥やっぱ、バグアに支配されてる故郷を解放する為、かな。このままバグアに隷属し続けるなんて、俺には耐えられ無ぇ」
 ノビル・ラグ(ga3704)は戦う理由についてそう語った。
「服従か反逆か。どちらかの選択を迫られた時、俺は反逆の道を選んだ」
 でも、今はそれだけじゃないと青年は言う。
「多くの味方や敵の屍の上に俺達は生かされてるだろ? だから――そいつらの無念を背負えるだけ背負うって決めたんだ‥‥背負いながら、平和な世界が訪れる日まで戦うってな」
 ノビルは言う。
「そんでもって平和が到来した暁には、歳相応の青春をエンジョイするって決めてんだ」
 青年は言ってから独り言のようにぼそっと付け加えた。
「――その時は、裕子も一緒だぜ?」
『ん‥‥了解したんだよ』
 と言葉が返って来た。
『バグアとの戦いが終わって平和になったら‥‥どこかへ遊びに行こうよノビル君。きっと楽しいよ』
 少女はそんな事を言ったのだった。


 周防 誠(ga7131)は無線から流れる会話を聞きながら思っていた。グリーンランドの頃から表面化しだしたそれについて。
 戦う理由。
(敵も味方も、両方救おうとするほど自分は善人ではない)
 敵と味方なら味方を守るために戦う。
 その根底にあるのは「死なせたくないから」という感情。
 だが、戦う意思を持たない相手は敵ではない、とも考える。にも関わらず、自分は投降勧告を毎回するわけでもない。
――自分が討ってきた中に戦う意思のない相手はいたのではないか?
 そんな考えが脳裏をちらつく。
 そして、同時に強敵と戦うことで高揚する自身の感情も否定できない。
 全ては詭弁で、自分は「ただ戦いたいだけなのかもしれない」と悩んではいる。それでも。
「死にたくないから戦う‥‥ただそれだけですよ」
 周防は言った。
「皆さんもお気をつけて」
 思う。
(悩みや本音をストレートにぶちまけるのは大人のやることじゃありませんしね。今は目の前に集中するとしましょう)
『了解。周防さんもお気をつけてなんだよ』
「ええ」
 男は悩みを抱えつつも表にはそれを出さず操縦桿を握って、空の彼方より迫る赤い光を睨み据えた。


 翼の先が風のうねりに震え、キャノピーを一枚挟んだ先では風が荒れ狂い咆哮をあげている。景色が流れてゆく。敵機との距離が詰まってゆく。レーダーに浮かび上がる無数の光点、空の彼方から迫る赤い光、バグア軍、その数百以上、大編隊だ。
「敵の規模も凄ェケド、味方も豪華絢爛だな〜?」
 ノビルが言った。
「‥‥っつーか。俺だったら絶対敵に回したく無いネ。この面子‥‥」
 ぼそりと呟く。
 味方メンバー、白鐘、セラ、周防、飯島、狭間、相良、不破、WHS隊員二十八人。全員が五機以上のワームを破壊しているであろう歴戦のエース達だ。
 距離が詰まり、ノイズが走り、中佐が言った。
『交戦を許可する。蹴散らせ』
 エンジンより焔が噴出し、音速を超えて翼が爆風を巻き起こし、KV達が突っ込んでゆく。鋼の咆哮。両翼より白雲を引き、青空に白い線を描いてゆく。空では太陽が眩しく燃え、機体が光を反射して煌めいていた。
 空の彼方、一面を埋め尽くすように広がる赤、青、銀、金、色とりどりの飛竜達の群れが顎を開き、HWが赤輝を纏って迫り、巨大な戦艦が悠然と戦場中央を飛ぶ。
「裕子とKVで飛ぶのって、実は初めてだったりするんだよなー?」
 風を切り裂いて飛ぶロングボウのコクピット内、振動に震える計器を睨みながらノビルが言った。
『そういえばそだね。問題なさそう?』
 ノイズ交じりの無線から少女の声が響く。
「エースHW以外なら問題ない。まかせとけ」
『了解なんだよ』
 やがて距離が詰まり間合いに入る。ノビルは複合式誘導を発動し8式螺旋弾頭ミサイルを小型HWへ撃ち放った。誘導弾が煙を噴出しながら極超音速でHWへ伸びてゆく。HWは横にスライドしたが誘導弾が追尾して喰らいつき爆裂を巻き起こした。
 相良機もD‐02で援護射撃を開始。白鐘機も銀色のHWへとD‐02で射撃しながら突っ込んでゆく。飯島機がそれに続いた。
「行くよ、周防君!」
 狭間、言いつつドゥオーモを撃ち放っている。総計百発にも及ぶ小型誘導弾の嵐が、BFの巨体に唸りをあげて迫る。
 周防機はそれに合わせてブーストとマイクロブーストを併発した。風よりも速く、黄金の閃光を発しながら猛加速し、一瞬で先頭へと出た。後続をあっという間に引き離しながら巨大戦艦の上方目がけて突っ込んでゆく。
 周囲の十数機のHW達が反応してプロトン砲を嵐のように撃ちまくる。迫り来る光の壁をゲイルIIIはローリングしながらその僅かな隙間を掻い潜って突き抜け、狭間機からのドゥオーモが次々にBFへと喰らいついて大爆発を巻き起こした。
 ゲイルIIIは一八〇度ロールからベクタード・スラストで機首をBFへと向けるとエニセイを猛連射してBFの対空砲を次々に破壊してゆく。
「貰った!」
 狭間機紫電の四連大型ブースターが咆哮をあげた。翼面超伝導を起動、極超音速まで一気に加速し雷光の如くに宙を駆け抜け交差ざまにBFの表面装甲を翼刃で抉り斬りながら抜けてゆく。
 その間に間合いに入ったセラ機ASH−01シンディはWHSのKV達と並んでプラズマライフルで猛射を開始した。誘導弾が飛び交い、プラズマ光波がHWに直撃して装甲を消し飛ばし爆裂する火球に変化させる。HW側も淡紅色の光線を次々に撃ち放ち始めた。
 白鐘機は一機の銀色HWと三機のHWからのプロトン砲をかわしざま、D02、レーザー、チェーンガンと突撃しながら繋いで銀HWの装甲を穿つ。そして空間を埋め尽くすように遅い来るドラゴン達のブレスを滑るように旋回してかわした。恐ろしいまでの運動性だ。バグアの強敵に一般能力者が対峙した時のそれのように中らない。
 飯島機もまたHW編隊のプロトン砲の嵐を掻い潜り、キメラ達からの火球や雷撃を装甲にものを言わせて突き破ると銀色HWの一機をガンサイトに納め47mmのツングースカ機関砲で弾丸を嵐の如くに解き放ち追撃のSRDを放つ。弾幕が銀HWの逃げ道を封殺して蜂の巣にし、ライフル弾が直撃して銀HWの動きが鈍ると、唸りをあげて迫り、翼の刃で交差ざまに斬り飛ばした。装甲を抉られたエースHWは漏電を発生させ次の瞬間に大爆発を巻き起こして四散した。撃破。赤いディアブロが焔を引いて青空を旋回してゆく。
「K‐02ぶっ放せたら爽快だろうなー。ロックオン解除パルスが鬱陶しいぜ‥‥!」
 ノビル、そんな事をぼやきつつ、遠間をスライドしながら相良機と共にライフルで前衛を援護しつつ向かって来たキメラの一匹をレーザー砲で射撃し撃ち落とす。
「‥‥僕達が『ハヤブサ』だ!」
 狭間機がブーストを全開に飛びまわり、ロケットランチャーで爆撃の嵐を巻き起こして対空砲を沈黙させてゆく。ノビルもまた誘導システムを起動しBFの射出口らしき場所へと狙いをつけドゥオーモを撃ち放った。
 小型誘導弾の嵐とロケット弾が飛び、次々に爆裂の華を咲かせる。その隙に周防機がBFに肉薄し、フレア弾を投下、超巨大な大爆発を巻き起こした。
「狭間さん、フォローは頼みます!」
 周防は爆炎を尻目に機体を宙返りさせ再びBFへとアプローチする。
「了解!」
 狭間は声を返し、彼との付き合いも長くなってきたな、などと思いつつ周辺のHWへ牽制を開始。周防機は速度に物を言わせて機動するBFの上面に並ぶと相対速度を合わせ、ぴたりと肉薄するように機体を下げてゆく。着艦するつもりだ。BFも音速を超えて戦闘機動中、優しい飛行ではない。KVの車輪とBFが激突した。ランディングギアがいかれて圧し折れ飛び、ワイバーンの胴体が擦れ、BFから赤壁が展開し光が散る。
 強引に着艦した周防機は獣型に変形する。バグア同士はFFがあるので誤射の心配が無い。護衛のHW編隊が唸りをあげて迫り、狭間機が猛射して一機へと爆裂を巻き起こして脱落させ、相良機がもう一機を消し飛ばした。残りのHW達が変形時の隙を狙ってプロトン砲を周防機へと嵐の如くに叩き込む。砲が次々に直撃してゆくが、光を突き破って青い獣が飛び出した。装甲も並ではない。動いている。フレア弾が炸裂した箇所へとさらにツングースカとエニセイを叩き込んで大穴を空けBF内部へと飛び込んでゆく。
「銀の翼の真打、見せてくれよう。行くぞ流星皇!」
 猛射して敵エースの一機目を撃墜した白鐘はチェーンガンの猛弾幕から唸りをあげて翼を翻し二機目のHWへと突撃してゆく。灰銀のシュテルンと銀のHWが交差した。流星皇の翼の刃が敵機の装甲を断ち切り、直後にHWは電流を溢れさせ大爆発を巻き起こす。エースすらも歯牙にかけぬ凶悪さ。
 赤い悪魔を駆る飯島も同様にツングースカの弾幕からライフル狙撃、リニア砲の一撃へと繋いで二機目の銀色HWを消し飛ばした。蒼空に鋼の欠片が散ってゆく。向き合えば消え去るのみだ。
 四機のエースをあっという間に全滅させられたバグア軍は次々に撃墜されてゆき、やがてBFの高度が下がり始めると、内部から爆発が起こって外装甲が吹き飛んだ。中から再度変形したワイバーンが黄金の光を噴出しながら飛び出して来る。周防機だ。
 瞬後、BFが超爆発を巻き起こして空を紅蓮に染め、爆音と共に大気を揺るがしたのだった。


 その後も戦隊員達は順調にHWとキメラを撃破してゆき、バグア軍はやがて潰走した。
 WH戦隊は全機が無事に帰還し、そして熊谷基地のバグア戦力が大きく削られた事が報告されたのだった。


 了