タイトル:【ODNK】死神達の饗宴マスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/06/05 18:11

●オープニング本文


「一つの戦が終わりに向かっている」
 大分県、別府基地のブリーフィングルーム、中佐の不破真治が言った。
 極北の地での戦いを終え九州へと帰還した不破率いるKV戦隊は再び北九州の空へと舞い戻っていた。
 不破は薄暗い部屋の中、淡く輝く巨大な影響な画面へと指揮棒の先を伸ばした。画面が切り替わり九州の地図が表示される。
「ダム・ダム亡き後の現在、九州のバグア勢力は大きく二つに分けられている。一つは言わずもがなの春日基地、九州バグアの一大根拠地だ。そしてもう一つが」
 不破は指揮棒を上へと滑らせた、下関海峡の近くの一帯が赤い色で塗りつぶされている。
「この、福岡県北九州市を中心とした勢力だ。春日と分断されて飛び地した形で孤立している。だがそれでもなお、今日においても頑強に抵抗し、その勢力を保って来た。流石に守勢ではあったが、外よりの援軍を待って挽回を狙っている節はあった」
 だがしかし、と不破は言って続けた。
「ここに来て自暴自棄ともとれる無謀な攻勢を開始した」
 曰く、北九州市一帯のバグア軍は何処から揃えて来たのか大量のキメラを産み出し守勢から転じて猛進撃を開始したという。諜報部からの話によれば、今回の大量のキメラは隠されていた訳ではなく援軍が来た訳でもなく、キメラプラントを暴走させて大量発生させたものらしい。
「敵が何故こんな行動を取ったのか――暴走させて大量に産み出す、というのに何のリスクもないなら普段からやっている筈だろう――その詳細はまだ入って来ていないが、バグア側になんらかの動きがあったと見られている。乾坤一擲の突撃だろう。九州司令部の評価はそれにしては杜撰である、との評価だが‥‥切羽詰まっての暴発、という見方が強い。それなら、助かる話だ。勝算ありと見なして突撃して来た訳ではないのだからな」
 若い将校は言った。
「戦略図を見れば、大局はこちらの優勢に展開しつつある。だが局地戦は全体戦力の比の通りに目の前の敵戦力が展開するとは限らない。歴戦の勇士であっても、全体が優勢の最中であるにも関わらず命を落とす時がある」
 最近の例で言えば、敵だが獅子座のルウェリンか、と不破。
「圧倒的劣勢の中でもそれを跳ねのけるように多くの勝ちを拾って来た奴であっても、優勢の中で思わぬ逆襲で死ぬ場合がある。逆を言うなら、俺達は絶体絶命の状況下でも打ち破って勝って来たから知っている。優勢だろうが、なんだろうが、死ぬ時は死ぬし負ける時は負けるのだ。一見優勢に見えても、構えに隙があったという事なのだろう。これを今更お前等に言うのはくどいかもしれんが――油断はするなよ」
 空陸のKV戦隊の長は言った。
「敵の動きに対し、UPCも進行を開始した。遠藤旅団だけではなく九州軍各地の軍で攻略にあたる。恐らくは、渡りに船なのだろう。軍の集まり方を見れば解るだろうから、今更隠しはしない。近々、春日の決戦が控えていると見て良いだろう。春日を攻める前にまず後顧の憂いを断つ、という訳だ。巨大な規模で動く事になるだろう。最終的に春日陥落を目指す戦略に則って行われる、今回のこの北九州市一帯の制圧を目指す戦での俺達の任務は制空の確保だ。空というのは、足が速いし、大抵の場合、陸がぶつかってからぶつかるものではない。方っておけば空から爆撃されるからな。実際、今回も俺達の後続には爆撃隊が控えている。だから、こちら方面は俺達が実質的な先鋒だろう。俺達が味方の頭上を守る。俺達が敵の航空戦力を排除し、味方の爆撃機を導き入れ、キメラプラントを爆撃し地上軍の侵攻を助ける」
 画面に予想される赤色で敵戦力の仮想図が浮かび、青色で味方の戦力とそれぞれの進路が示されてゆく。
 不破は言った。
「俺達に失敗は許されない。味方が空からの援護を失い、逆に敵が味方の地上軍を撃ち始めれば陸は地獄と化す。敵の航空部隊もここまでを生き抜いて来た精鋭だ。ぬかるなよ。俺達が死神だ。この空をバグアの勇者達の墓場に変えてやれ」

●参加者一覧

榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
平坂 桃香(ga1831
20歳・♀・PN
漸 王零(ga2930
20歳・♂・AA
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
飯島 修司(ga7951
36歳・♂・PN
アレックス(gb3735
20歳・♂・HD

●リプレイ本文

 出撃前、別府基地。
「ご無沙汰しております、不破中佐」
 飯島 修司(ga7951)が言った。
「随分と遅くなりましたが、昇進おめでとうございます」
「有難う。貴方達のおかけだろう。しかし――そちらは、どうした」
「いやはや、何とも情けない格好で申し訳ありません。東京で少々羽目を外しすぎました」
 苦笑して壮年の男は言う。飯島は重傷を負っていた。
「そうか、珍しいな」
「まあ、傷が痛む間は大丈夫でしょう。牽制中心で動きますし、いざとなれば落とされる前に退きます」
 落とされると金が掛かりますからな、と飯島。
「そうだな。貴方ならやれると思うが、しかし空軍で一番金がかかるのは優秀なパイロットの育成だ。木石は替えが効くが、人はなかなかそうはいかん。無理はするなよ」
 不破はそう言ったのだった。


 晩春の九州の上空。不破率いるKV戦隊三十八機が青い空を背景に飛ぶ。
「交戦的で陽気で‥‥か‥‥敵ながら面白そうな奴らなんだな」
 うち一機を構成している漸 王零(ga2930)は愛機のコクピット内でふむ、と呟いた。
「‥‥獅子座一党の生き残りか」
 榊 兵衛(ga0388)が言った。情報によれば赤竜軍の生き残りのエース達が相当暴れているらしい。
「流石にきつそうな手合いだな‥‥」
 と漸。
「掛け値なしに強いのでしょうな」
 飯島が言った。赤竜軍は陸上で散々相手をしてきた連中だ。その辺りは承知している。
 その言葉に榊もまた頷く。
「だが、多少なりとも獅子座に関わりがあった身としては残党をいつまでも放置しておく訳にもいかぬしな」
 榊は、飯島や、アレックス(gb3735)、相良裕子や不破等と共に獅子座の赤竜を屠った十人のうちの一人だ。
「どこまでやれるか判らぬが‥‥全力を尽くす事としよう」
 男はそう言った。
(負けられねェ‥‥いや、負けたくねェ!)
 他方、アレックスは胸中で呟いていた。エースと対決というのはアレックスとしては本来なら勘弁な所であったのだが、
(「竜王殺し」の名を持つ者の一人として、最後まで関わり切るだけだ)
 負けたくない。
「無理するな、と言いたい所だが‥‥死なない程度に気張るか」
 青年はロッテを組む飯島へとそう言った。
「了解です。無茶な機動をすると傷が痛みますが。無茶な機動をしないと厳しい相手ですしな」
 と飯島。
「でもまあ、なに、何時も通り、だよ」
 それにUNKNOWN(ga4276)が言った。
「オーダーは『生きて帰る事』それが最優先だ」
 だから、無理はほどほどに、だね、と壮年の男はそう言った。


 北九州の空。
『敵機、多数接近』
 ノイズと共に無線が流れた。レーダーに断続する光点が浮かび上がり、蒼空の彼方に無数の赤い光が出現してゆく。六十を超えるHWの精鋭部隊だ。
『交戦を許可する。状況開始』
 無線が飛び交い、三十八機の鋼鉄の翼が音速を超え爆風を巻き起こして加速する。最大戦速。HW側もそれに応えるように加速した。
「――風が、吹くな」
 UNKNOWNのそんな声が無線に流れた。漆黒のK‐111が少し前にでる。僅か一秒の間にも彼我の距離が詰まり、敵影が大きさを増してゆく。
 敵集団の先頭、横一線に飛ぶ六機の真紅のHW達へと最初に仕掛けたのは平坂 桃香(ga1831)だった。ブースト&アクチュエータを起動、射角に入っている三機をロックすると五百発ものミサイルを空へと解き放つ、K‐02小型誘導弾だ。続いてUNKNOWN機もまたK‐02誘導弾を撃ち放ち、漸機もまた両機が仕掛けたのに合わせ誘導弾の発射ボタンを押し込んだ。三機のKVから放たれた千発もの小型ミサイルが空を埋め尽くすかの如く無数の煙を引きながら飛んでゆく。
 六機のHWは散っていたが、小型誘導弾の嵐が解き放たれたのに反応してそれぞれ上下左右へとさらに六方へと散った。真紅のHWは猛烈に赤く輝いて直角に機動し、次々に小型誘導弾の嵐をかいくぐってゆく。しかし、流石に全機全弾はかわせず、次々に直撃を受けて宙に爆炎の華を咲かせてゆく。
『ハッハァ! 手厚い歓迎だな!』
 ノイズと共に無線から声が響いた。敵の声だ。こちらの周波数は知られているようだ。陽気な声を響かせながら、爆炎を突き破って煙を振り払い六機のHWが赤輝を纏って突撃して来る。狙いは傭兵達、それぞれ一機づつ、一機を狙って一瞬で距離を詰めた。
 同様に距離を詰めんとする漸機の前にHWの一機から放たれた六連の誘導弾が牙を剥き咆哮をあげて襲い来た。漸機のファランクスが作動し猛烈な弾幕が二発のミサイルを叩き落とし、爆裂の華を咲かせ、さらにベアリング弾をばらまいてもう一発を叩き落とした。が、三発抜けた。超伝導アクチュエータで加速して旋回。誘導弾を回避するが、瞬間、猛烈な破壊力の徹甲弾に撃たれた。誘導弾が漸機に追いついて次々に命中し爆裂を巻き起こしてゆく。
 だがまだまだ落ちない。漸機、焔を切り裂いて翔けチェーンガンを起動、怒涛の勢いで弾丸を猛連射。弾幕の密度に偏りがつけてある。漸、薄い方向、敵機の軌道を予測し中央を狙ってKA‐01を射撃。砲撃が宙を奔り、弾幕を回避したHWが砲撃の進路上に飛び込んだ。KA‐01の一撃がHWを破砕し、その装甲を穿つ。HWが高速で機動し、漸機が旋回する。互いに攻撃を交換したが、HWの損害よりもアンラ・マンユのダメージの方が大きい。
「はっ!! 多少は不利くらいの方が‥‥楽しめるってものさ‥‥いくぞ、赤竜の生き残り!!」
 男は不敵に笑って述べ、操縦桿を切った。
 他方、飯島はSRD‐02で牽制に発砲していたが、相手の直進を見て狙いを切り替えていた。ブーストを起動、Pフォースを発動させ猛烈な爆雷を解き放つ。G放電装置だ。HWは即応し直角にスライド。反応が速い。が、突撃の速度を鈍らせられれば良い。飯島、さらにツングースカの弾幕からエニセイ対空砲の猛連射へと繋げリロードしつつSRD‐2で敵機中央部を狙って発砲する。さらにアレックス機がそれに合わせ二機のHWをロックオンしGP‐7ミサイルを撃ち放った。四五〇発ものプラズマミサイルが解き放たれてゆく。
 飯島機に狙われたHWは追撃の弾幕を回避し、エニセイの一発をかわすも、二発が直撃して態勢が崩れアレックス機からのプラズマ誘導弾の嵐が次々に炸裂し、ライフル弾がHWに直撃してその装甲を穿つ。真紅のHWは飯島機へと誘導弾を六連射し飯島機はブースト機動で誘導弾の三発を回避、が、HWの機銃が焔を吹き回避先に徹甲弾が飛び、強烈な破壊力が飯島機を揺らしさらに三発の誘導弾が追尾して次々に命中し大爆裂を巻き起こしてゆく。同時、別のHWがアレックス機へと誘導弾を連射しアレックス機はファランクス・テーバイを作動、猛烈な弾幕を張って二発の誘導弾を爆裂を巻き起こす。四発が迫り来て、アレックス機はブーストを発動急加速、マッハ6に加速して誘導弾の三発を振り切ってかわす、が、弾幕が襲いかかって装甲が穿たれ一発の誘導弾が追跡して命中、凶悪な爆裂を巻き起こした。が、これで落ちる程ヤワな造りではない。焔を裂いてカストルが飛び出し飯島機へと仕掛けているHWの背後へと迫り機銃で猛射する。嵐の如く飛ぶ徹甲弾がHWの装甲を穿ち、二機からの集中攻撃に気づいたHWが急降下して弾幕から脱出する。
 他方、榊機、ブーストとアクチュエータで機動しながら真紅に輝くHWをガンサイトに納めるとミサイルをロックしながら十式機銃で猛射。徹甲弾が火と化してHWへと襲いかかってゆく。HWは直角にスライドしながら弾丸をかわしつつ榊機をロックオンして誘導弾を撃ち放つ。榊機も機銃射から間髪入れずにHWの回避先へと機首を向けロックしていたAAMを猛連射した。超音速をさらに超えて極超音速でミサイルとミサイルが飛び交う。榊機のテーバイが作動して弾幕の壁が誘導弾の二発を大爆発と共に叩き落とし、抜けて来た四発の誘導弾を超音速機動で急降下して回避し、ベクタードスラストで疑似慣性制御の如く急角度でスライドする。瞬間、先程までの予定進路を閃光が貫いた。嵐の如く徹甲弾が宙を貫いてゆく。機体と機体が迫り交差して蒼空を突き抜けた。
「‥‥一騎討ちを挑んでくるとはな。良かろう。こちらも相手してやる事としよう」
 榊は呟きながら機体を横滑りさせ壮絶なGに耐えながら通常ではありえない角度で旋回し、真紅のHWもまた一瞬で宙返りして一気にトップスピードで加速する。無線からノイズと共に笛の値ような甲高い音が響いた。
 他方、平坂、K‐02誘導弾を撃ち放った直後に上空へとブースト機動で急上昇しつつ、発射機構をパージ、身軽になってその動きをさらに加速させていた。HWは一機、爆炎を突き破って平坂機へと猛然と迫って誘導弾を六連射した。平坂機はアフターバーナーを噴出させ、機首をHWへと向けると矢の如くに突っ込んでゆく。回避は無駄と割り切って避けない、全力攻撃。誘導弾が次々に命中して六連の超爆発を巻き起こし、装甲にものを言わせて焔を突き破りHWを照準に捉え機銃で猛射する。あちらかも弾丸が、コクピットを狙って襲いかかって来た。瞬間的に機体をスライドさせる。風防のすぐ傍を弾丸の嵐が貫いてゆき、カウンターで誘導弾を三連射。ミサイルが猛然とHWへと襲いかかり次々に命中して凶悪な爆裂を巻き起こした。焔の中から飛び出して来たHWへと機体ごとぶつけるようにブースト機動で突撃する。翼の刃が唸りをあげて赤輝を纏ったHWへと迫り、HWはローリングして刃をすり抜けるようにかわした。
『HA! イカレタ野郎ダ!』
 無線からそんな声が聞こえた。何処となく愉しそうである。KVとHWが交差して空を突き抜けてゆき、また両機ともに急角度の軌跡を描いて旋回した。
 他方、UNKNOWN機、機体を揺らしながら飛翔しエニセイ対空砲を二連射。HWは赤輝を纏って加速し超速で飛んで来た二連の砲弾を間髪で回避、焔と共に煙を噴出し六連の誘導弾を撃ち放った。艶の消えた漆黒のK‐111は飛燕が翻るように旋回しミサイルを次々に回避してゆく。回避先へと徹甲弾が唸りを上げて飛んで直撃し火花を散らして、しかし吹き散らされた。無傷。
『ははっ! こいつぁ、とんでもねぇ‥‥飛んでやがるのか、それで!』
 ノイズが走って無線から声が洩れた。
「御覧の通りだが‥‥まぁ、そう嘆くな。頑張れ」
 UNKNOWN機、見た目は一見は色以外は通常のK‐111のようだったが、非常に違う。普通のK‐111はこれほどまでの装甲の塊ではない。巨大鎧「日ノ丸」、それのパーツを使って飛んでいた。不沈艦だ。化物である。
 UNKNOWN機は空戦隊とHW部隊がぶつかりあっている全体を見渡す。あちこちで焔が炸裂し風が咆哮をあげている。どちらが消し飛ぶか。
 男は味方の苦戦を見ると眼前の敵を前に自機の翼を翻した。
『野郎‥‥!』
 意図を悟ったか敵の声が無線から洩れた。
「まあ、すまん。やる気はあまりないのだよ」
 一対一なんてのに美学は、ない。
 男は胸中でそう呟いた。


 アレックス機の後背へ慣性制御でHWが捻り込んで来る。
(くっ‥‥カストルと、自分の腕と、僚機を信じるっきゃねェか!)
 アレックス、アクチューエータを継続発動しつつアフターバーナーを再点火、極超音速に加速しながらブースト機動で強引に横滑りして背後から襲い来た徹甲弾を回避。飯島機がアレックス機へと猛攻を加えているHWへとSRD‐02で射撃して炸裂させ、もう一機が飯島機へと仕掛けて徹甲弾の嵐を旋回に移った飯島機へと猛射してゆく。HWの注意が逸れた瞬間にアレックス機がブースト機動で機首をまわして向き直り、飯島機へと機銃を猛射しているHWへと十式バルカンで猛射。HWは翻ってかわす。
 平坂機、ブースト機動で翻り誘導弾を撃ち放ちつつ機銃を猛射しながら突撃し剣翼の一撃を叩き込まんとする。対するHW、誘導弾を直角にスライドして回避しバルカンの弾丸を喰らいながらも七連の誘導弾を猛射する。ミサイルの嵐が平坂機へと次々に直撃して凶悪な大爆発の嵐を巻き起こしそれを突き破って稲妻の如くXF‐08D改が飛び出し、交差ざまに翼の刃をHWへと叩きつけた。凶悪な破壊力が炸裂し、HWの装甲が抉られ削り斬られてゆく。
 両機は交差して突き抜けると再びブーストと慣性制御で翻って向き直った。どちらが先に耐えきれなくなって落ちるか、そんな戦いだ。
 榊、ブースト機動とアクチュエータ、ベクタード・スラストでHWの慣性制御に強引に喰らいついてゆく。互いに宙をスライドしながら機首を向け合って射撃し、榊は誘導弾と機銃を射撃しながら突撃しスラスターライフルで猛攻を加えてゆく。HWからの反撃の誘導弾をテーバイで叩き落とし、抜けて来た誘導弾が爆裂し機銃の弾丸が忠勝の装甲を削ってゆく。榊、優位に展開していた。
 漸機とHWが互いに後背を取らんと高速で機動し、漸、アクチュエータで対抗せんとするが、HWは慣性制御で漸機の後背へと捻り込み機銃を猛射する。
「ちっ!」
 漸は舌打ちすると急上昇、すると同時に機体を立てて急減速する。徹甲弾がアンラ・マンユの装甲を蜂の巣にし、しかし意表を突かれたか漸機の下方を抜けてゆく。漸、スロットルを全開に入れ直しロールさせながら機首を下げる。HWの背後へとリロードしつつエネルギー砲を猛連射、一撃が命中してHWの装甲をふっ飛ばし、しかし残りをHWは慣性制御で旋回し回避した。敵もまだまだ落ちない。漸機とHWが旋回し、やはり再びHWが慣性制御で背後を取る。一騎撃の巴戦は敵の方に分があるようだ。
(二度は通じんだろうな‥‥!)
 さてどうする。高速で展開する一刹那の間に漸が思考を巡らせていると、不意に背後を取っていた筈のHWが急旋回し、それを追いかけて数百発の小型誘導弾が飛びHWに喰らいついて凶悪な爆裂を巻き起こした。漸は風防越しに後方を振り返り叫んだ。
「UNKNOWN!」
「すまん、な。私はエースではないから、ね」
 男の声が響く中、漆黒のK‐111よりエニセイの砲弾が焔を吹き、爆裂に揺らぐHWへと次々に直撃させてゆく。もう一機のHWはUNKNOWN機の後背について装甲の隙間を抜かんと精密射撃を繰り出していたが漆黒のK‐111は空気の断層を滑るようにゆれ必殺の一撃を許さなかった。


 激闘が続いたが、やがて飯島機とアレックス機が火線を集中させて一機を撃墜し漸機とUNKNOWN機もまた一機を撃墜した。機数に差が出ると戦いの均衡は加速し崩れてゆき、HW達は集中攻撃の前に次々に落され赤竜軍はついに空から砕けて消えた。
 傭兵隊は飛行戦隊と共にバグア空軍六十機を殲滅し、爆撃機を守ってその対地援護を完遂させた。
 やがて陸空でUPC軍はバグア軍を打ち破り北九州市を解放してUPCの旗を立てたのだった。


 了