タイトル:強襲巨大キメラマスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 9 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/05/12 17:20

●オープニング本文


「お集まりいただきありがと〜ございますっ。緊急依頼で〜すっ!」
 ULTの受付場。まだ幼さを残したツインテールの少女がロビーの傭兵達を集めて言った。動きに合わせて頭に巻いた二つの黄色いリボンがふらりと揺れる。名をジャンヌ・ルイ=クルドールという。元は空軍でKVを飛ばしていたとかいう新人のオペ子だ。
「えっとぉ、依頼主はマドラガン市役所。マドラガンは赤道直下、東南アジアにある海辺の観光街ですね。それで海辺からおっきなキメラがどばっと出て、観光客がきゃーで、キメラが追って街がぼーんですくらんぶる〜! っていうまぁよくある形式の依頼って奴ですぅ〜。時間もないし細かい事なんてほっといてサァ依頼を受けやがれですぅ! ――え、駄目? ふふっ、しょーがないなぁっ☆」
 何がそんなに愉快なのかは解らないがきゃぴきゃぴと微妙な空気の摩擦感を発揮しながら少女は言う。
「えー、では耳かっぽじって良く聞くのです〜! 速攻第一、一度しかいいませんよぉ〜?!」
 とジャンヌ・ルイは状況を説明し始めた。
 概要はこうだ。
 本日の昼、マドラガン市の浜より巨大キメラが三体出現した。
 キメラはそれぞれ体長5m程度の巨大海像、巨大海蛇、巨大イグアナの三体である。
 彼等は皆、動きは鈍めだが、一様に口から鉄砲水を打ち出して攻撃する。水弾は円柱がまるみを帯びたような形で、直径は1m程度、長さは3m程度あるらしい。
 普通の人間に当たると身体がひしゃげて吹っ飛ぶ。
 市は浜に監視の職員を設置していたので、観光客達はキメラが浜に到着する前に退避を開始し、間一髪の所で死傷者は出なかったが、キメラ達は人々を追って街へと雪崩れこんでいるらしい。
 それぞれ三手に別れているとの事。
 キメラ達の移動速度は陸上ではそれほど速くなく、市民達も近隣からの退避を開始しているが、キメラ達は水弾を連射して建物を薙ぎ倒しながら進んでおり、市の被害は今もなお増加中との事だ。
 そんな訳でULTへとキメラ退治の緊急依頼が入っており、至急、これを撃滅してくれ、との事。
「ULTが提示する大まかな作戦によるとー、とりあえず極超音速的に数十秒なマッハでいける高速艇三機でキメラの頭上は水弾で撃ち落とされそうなのでちょっと離れた付近にばびゅんとパラシュートで能力者を投下して退治〜、みたいなっ? ちなみに水弾はそれぞれセイウチが火属性、サーペントが水属性、イグアナが雷属性ぽいって話ですぅ。見た目と必ずしも一致する訳ではないですからね、気をつけてくださいっ。それで、この依頼やってやるぜ! って方はこの中におられませんかぁ〜? やるって人は挙手願います! 細かい手続きは私がやっときますので、高速艇乗り場へ急いでください〜」

●参加者一覧

ブレイズ・S・イーグル(ga7498
27歳・♂・AA
エイミー・H・メイヤー(gb5994
18歳・♀・AA
八尾師 命(gb9785
18歳・♀・ER
湊 獅子鷹(gc0233
17歳・♂・AA
ソウマ(gc0505
14歳・♂・DG
鈴木悠司(gc1251
20歳・♂・BM
シクル・ハーツ(gc1986
19歳・♀・PN
ユウ・ターナー(gc2715
12歳・♀・JG
宇加美 煉(gc6845
28歳・♀・HD

●リプレイ本文

「キメラぁ? 生きてんだから殺しゃあ死ぬだろ」
 湊 獅子鷹(gc0233)がふん、と鼻を鳴らした。生物は殺せば死ぬものだ。万物必滅、この星そのものとて時の果てには宇宙の塵に消える。で、あるのに、一個の肉塊などが滅びぬ道理が存在するだろうか?
「良いだろう、やってやるぜ」
 湊獅子鷹は戦闘狂のリスクジャンキーであるという。殺せればいい、戦えればいいという考えでクルドールの呼び掛けに応じた。戦闘狂だとしても、その思考は冷静だ。異星の技術で創られた生体兵器とて滅びの定めから逃れられるものではないと知っている。要は殺しきれるか否か。それだけだ。
 依頼を引き受けたのは九名の傭兵達だったが、しかしうち一人宇加美 煉(gc6845)は途中、ULT傭兵独特の怪奇現象WPに巻き込まれて脱落となり、彼女を除いたメンバーで当たる事となってしまった。
「ま‥‥長くこの稼業やってればアクシデントはつきものだ。最悪、持ち堪えてくれれば良い、チャッチャと片付けて援護にゆく」
 ベテランのブレイズ・S・イーグル(ga7498)が言った。傭兵達は三機の高速飛行艇へ分乗し東南アジアへと向かう。
「パラシュートってユウ、初めて☆ ちょっとドキドキしちゃうなァ」
 海像対応班の高速艇内部、小柄な童女がパラシュートパックを装着しつつきゃっきゃと笑ってそう述べた。
「パラシュート‥‥か‥‥」
 他方、海蛇対応班の高速艇内でちょっと顔を白くさせているのはシクル・ハーツ(gc1986)である。通常時は高所恐怖症らしい。
「まさかとは思うのですが、降下中に攻撃してこないですよね〜‥‥?」
 イグアナ対応班の八尾師 命(gb9785)が少し不安そうに呟いた。パイロット答えて曰く、クルドールが説明時に言っていた通り少し離れた位置へと投下する予定なので基本的にはその心配は無用だ、との事。
 三機の高速艇が極超音速で飛び、翡翠に輝く海の彼方に陸地が見え、次いで街が見えてきた。
 マドラガン、近年発展を遂げた街。
(キメラなんかに潰させはしないよ)
 鈴木悠司(gc1251)が胸中で呟く。無線が飛び交う中、高速艇は三つに別れた。
「投下する! カウント3で飛べ!」
 パイロットが叫んだ。高速艇が減速し扉が開かれて風が内部に入り込んで来る。
 傭兵達は空から地上に向かって飛び降りた。冷たい風が唸って全身に吹きつけ頬を叩いてゆく。広がる大島。落下傘が開いて落ちてゆく速度が減じてゆく。
 降下中、
「あーなんか、怪獣映画みたいだね」
 鈴木は双眼鏡を取り出して様子を観察しながら言った。巨大キメラ達が水弾を撒き散らして暴れ回っている。
「なんだか怪獣映画のような絵面だな」
 同様の感想は海像班のエイミー・H・メイヤー(gb5994)も抱いていたようだ。黒いドレスを風にはためかせながら呟く。
「うわぁ‥‥おっきな海象サン‥‥っ! ユウ、動物園でしか見たことないよ!」
 とユウ・ターナー(gc2715)が声をあげている。
「でもあんなにおっきくなかったよう、な‥‥」
 ついでに言うなら動物園の海像は水弾を乱射して街を破壊しながら行進などしない。
 キメラ達が水弾でビルをハッポウスチロールの如くに撃ち抜き、爆発が起こってビルが崩れあちこちで火災が発生している。
「っ‥‥また街中で‥‥!」
 シクル・ハーツが歯軋りした。街が、人々の生活と努力の結晶が、破壊されて踏みにじられてゆく。
「これ以上は好き勝手にはさせませんよ」
 ソウマ(gc0505)が冷たい微笑を浮かべ、キメラへと火の如くに輝く眼光を向けながら呟いた。


 地に降り立った傭兵達はパラシュートを切り離すと無線の案内に従って各班キメラの居る方角へと駆けた。
「悪いコはお仕置きしちゃうンだカラーっ!」
 ユウ・ターナー、動物は好きっぽいが、街の人達に危害を及ばせる訳にはいかない。超大型SMG『ヴァルハラ』を手にアスファルトの道路を駆け、体長5mの巨躯を誇る巨大セイウチへと突撃してゆく。エイミーは瞳を金色に変化させ拳銃とバクラーを手に風の如く駆け、湊もまた本来成長するべき姿へと身を変化させ小太刀を構えて突き進む。
 セイウチが道を駆ける三人の方へと向き直り、その口から水弾を発射、する前に、ユウは先手必勝を発動、
「これでも食らえーー! なのっ」
 ヴァルハラから猛烈な弾幕を解き放つ。焔と共に薬莢が舞い弾丸が横殴りの雨の如くに海像へと突き刺さってゆく。水属性の弾丸が猛烈な破壊を巻き起こした。効果は抜群だ。
 セイウチはユウの猛射に怯んだ様子をみせたが、坐して死ぬ生体兵器は存在しない、童女へと直径1m長さ3m程の巨大なドロップ型を水弾を口から吐きだす。
(来る)
 ユウ、敵の動きを良く見ている。弾幕で水弾の破壊を出来るかどうか一瞬考えたが、ちょっとデカイ、横っ跳びに身を投げ出す。逡巡で少し反応が遅れたか脇を水弾が掠めて痛烈な破壊力を解き放った。並の人間ならひしゃげて潰れる威力だ。
 背後でアスファルトが爆砕される中、再度ヴァルハラを構えてフルバーストで薙ぎ払う、制圧射撃だ。海像の動きが明らかに鈍った。
「市街には立ち入り禁止ですよ」
 エイミー、その間に射線を避けながら駆け、セイウチへと拳銃を向けている。発砲、ペイント弾がその大きな片目に直撃して塗料を撒き散らした。
 海像が反応してエイミーへと水弾を撃ち放ち少女は側面へと跳ぶ。水弾がエイミーの肩を掠めながらアスファルトに激突して破砕し、少女はアスファルトに降り立つと再度蹴って、間合いに飛び込み青の水晶剣を抜刀様に流し斬った。水属性の太刀が凶悪な破壊力を解き放ってゆく。
 その間に湊は弧を描く軌道で駆けキメラの逆サイドへと踏み込んでいる。二刀の小太刀を振り上げ竜巻の如くに多段の斬撃を放つ。刃が海像の胴に炸裂して分厚い皮膚と脂肪を斬り裂いた。
(分厚い皮膚と脂肪に筋肉の壁‥‥的がでかいからって簡単なわけねえか)
 手首に返って来た重い手応えに男は胸中でそう呟いた。


「何とか着地できましたよ〜。急ぎましょう〜」
 対イグアナ班では地上に降りた時、八尾師がほっとしたように言っていた。ブレイズが無線から大まかな座標案内を受け取り伝えてキメラを目指し駆け出す。
「あっちの方角に居るね」
 鈴木が聞こえて来る轟音に耳を傾けて言った。無人と化した街のビルの谷間を駆ける。主道路に出ると彼方に緑色の巨大な爬虫類が見えた。5mもの巨躯を誇るイグアナが水弾を乱射しビル等を破壊し倒壊させ火災を巻き起こしながら突き進んでいる。
「‥‥アレか。こりゃあまた派手に暴れてやがるぜ」
 ブレイズが目を眇めて呟いた。手に竜の紋章が浮かび、紅蓮の闘気が前進から吹き上がる。
「それじゃ、始めよっか!」
 犬耳と尻尾を発生させて鈴木が言った。男達はギアを一段階上げ、それぞれ大剣と二刀を手に猛然と加速してゆく。
「新しく準備したこの武器で仕留めて見せますよ〜!」
 八尾師が金色に瞳を変化させて追走しつつ全長750mmの銃を手に言った。知覚系の御用達、科学の結晶エネルギーガンである。
 鈴木、駆けつつ練力を解放し真紅の剣をイグアナの顔面、目の辺りを狙って剣を振り抜いた。黒色の衝撃波が唸りをあげてイグアナへ襲いかかってゆく。イグアナは首を横に振った。黒色の波動が顔の隣の空間を貫いて抜け奥のビルに炸裂してコンクリートと窓ガラスを破砕する。巨大爬虫類は顎を開き巨大なドロップ型の水弾を撃ち放った。巨大水弾が音速を超えて飛び鈴木の身に直撃した。猛烈な衝撃が炸裂するも鈴木は真紅の剣を構え巨大水弾を突き破って駆け抜ける。火属性を纏っている、雷属性のイグアナ水弾には強い。対策はしっかり立ててあるようだ。
「ちょいと面借りるぜ!」
 ブレイズ、突撃しながら距離20mまで踏み込むと大剣に極限までエネルギーを集中、紅蓮の弧を描きながら振り下ろした。空間が断裂して空が逆巻き、不可視の衝撃波が飛び出してゆく。音速波がアスファルトの道を削りながらイグアナへと襲いかかり轟音と共に炸裂してその皮膚を爆ぜさせた。痛烈な破壊力。火属性。イグアナは水弾を撃ち返しブレイズは駆けつつ大剣を翳して防御。こちらも属性優位を生かして突き破って抜けてゆく。
「む〜、思ったより動き素早いですね〜」
 八尾師は間合いに入るとエネルギーガンを掲げて練成弱体を発動。不可視の何かが飛び、目には見えないがイグアナの装甲が脆くなった。
 ブレイズが大剣でイグアナに斬りつけて壮絶な破壊と共に血飛沫を噴出させ、イグアナが怒りの咆哮と共に前足で薙ぎ払い大剣でガードしたブレイズをパワーに物をいわせて吹き飛ばし、男の身が砲弾の如くに飛んでビルに激突してコンクリートが爆砕され崩れた。その間に鈴木は縮地を発動させて高速で側面を取り抜けざまに真紅の剣で叩き斬ってゆく。赤い色が舞った。八尾師は練成治療を発動させるとブレイズと鈴木の傷を癒してゆく。


 海蛇方面。
「戦力が分散されると考えるべきか、各個撃破できると考えるべきか‥‥」
 街を駆けつつシクルが呟き思考を巡らせている。
「敵がいかに巨大だろうと、きちんと連携が取れた僕達は無敵です」
 それを魅せてあげますよ、とソウマはニィと口の端を釣り上げる。こちら方面二人だけだが、それでも無敵と言い切れるか? 愚問である。二人でも敵がただの一個ならば自軍は敵の二倍の戦力、圧倒的優勢に変わりはない。少年はそう述べ、そしてシクル・ハーツはそれを信じた。やるしかない。
 交差点を曲がる。広い主道に出た。居た。彼方、水弾を撒き散らしながら進む毒々しい色の巨大な海蛇、樹齢千年の大木がうねりながら進んでいるかのよう、人間なぞ容易に一呑み出来る巨大さだ。それが巨大な水弾を連射し破壊を撒き散らしながら進んで来る。
「さあ、派手に舞台を飾りましょうか」
 ソウマ、電波増幅を発動、指揮棒を翳し巨大蛇へと向けて先制の電磁嵐を巻き起こす。電撃に宿る雷の属性が猛烈な破壊力を撒き散らし海蛇は顎を開き、シクルは妨害すべく1.8mの和弓より番えた矢を雷光の如くに撃ち放った。矢が鋭く空を裂いて、飛び海蛇の頭部にぶち当たって爆裂を巻き起こした。弾頭矢だ。雷属性、凶悪な破壊を撒き散らす。焔を裂いて水弾が飛び出し、ソウマ、敵の動きに注視して読んでる。自身障壁を発動しメトロニウム製の頑強な盾でガード。超巨大な水弾が激突して壮絶な衝撃を巻き起こす。ソウマ、障壁を張ってガードしたが壮絶に重い。衝撃が貫通して全身の骨を軋ませてゆく。
(速いな‥‥ある程度、動きを予測しないと辛いか)
 シクル、水弾の速度にそんな事を思いつつ矢継ぎ早に次弾を撃ち放って爆裂を巻き起こす。反撃の水弾が飛来しシクルは飛び退いて回避。一次クラスとしては反応速度は非常に高い。さらに放たれた水弾を駆けつつ回避する。ソウマは自身に練成治療を発動させ再度電磁嵐を巻き起こして海蛇を灼いた。


「メタボリックなお腹ですね、切り取ってダイエットさせて差し上げましょう」
 海像と激闘する三名。エイミー、紅蓮衝撃を発動、青水晶の刃を一閃させて壮絶な破壊力を巻きこし、湊もまた二刀を振るって斬り裂いてゆく。海像が勢い良く回転し、湊が直撃を受けて跳ね飛ばされて宙へと舞った。エイミーは素早く後退して回避しつつ剣を振るって音速波を撃ち放つ。
「体は厚着でも頭はスカスカでショ?」
 ユウ、影撃ちを発動、音速波が炸裂する中、水弾をエイミーへ猛射する海像の頭部へと狙いを定めて弾丸の嵐を叩きこんだ。海像の頭部から鮮血が噴出し、エイミー、巨大な水弾に呑まれた、雷属性、火に弱い。壮絶な破壊力が荒れ狂い少女の身が木の葉の如くに吹き飛んでゆく。
 吹き飛んだ湊は宙で体を捌くとビルの壁の側面へと足をつける。勢いを利用して膝を曲げバネを溜めると渾身の力を込めて蹴りつけた。三角跳びの要領で男が弾丸の如くに飛び、湊は両断剣を発動、キメラの頭部へと二本の小太刀を突き立てた。海像型の瞳から光が消え、ゆっくりと倒れてゆく。撃破。


 イグアナ方面。鈴木はイグアナの後ろに回り込んで斬りつけ、イグアナが頭を巡らせ回転しながら尾で薙ぎ払う。
「‥‥っと危ない」
 鈴木、読んでる。即座に飛び退いて回避。八尾師はその隙に電波増幅を発動させるとエネガンで光線を猛射してイグアナの前脚を撃ち抜いた。痛烈な破壊力。
「余所見してんなよ!」
 瓦礫を吹き飛ばしてブレイズが起き上がった。練力を全開に強刃、瞬天速を発動。
「貰った‥‥ファフナーブレイクッ!」
 男がカウンターの爪撃を瞬間移動したが如き速度で掻い潜り、イグアナの顔面へと身ごとぶちかましをかけるかのように全体重を乗せて紅蓮の大剣を振り降ろした。壮絶な一撃が炸裂しイグアナの頭蓋が割れて鮮血が噴出する。次の瞬間、その瞳から光が消えて崩れ落ちた。
「うわっとと!」
 ブレイズが突っ込んだ隙にイグアナの腹の下へと滑りこんで剣を突き刺していた鈴木は、急いで剣を引き抜きつつ這い出て潰されるのを回避したのだった。


 対海蛇、ソウマとシクルは道の左右に展開し雷属性の電磁嵐と弾頭矢を猛射して射撃戦を繰り広げてゆく。海蛇からも水弾が連続して撃ち放たれるが、ソウマは障壁を展開して盾で受けシクルは身軽にかわして多くをかわしてゆく。少々の被弾があってもソウマが練成治療で回復させた。
 徐々に間合いが詰まってゆくとシクルは迅雷を発動、水弾をかわして一気に大蛇の眼前へと飛び込むと練力を解放、抜刀・瞬で1.8mの大太刀を抜き放つと二連撃で連撃仕掛けた。一撃は雷の弓の方が圧倒的だが手数がある。剣閃の嵐を巻き起こして蛇を斬り刻んでゆく。海蛇が頭を巡らせ顎を開くとシクルは迅雷で離脱した。水弾が道路に炸裂する。
 ソウマは超機械グロウで時に強く、時に小さく、優雅に指揮を振るように動かし電磁嵐を巻き起こしてゆく。海蛇がソウマへと水弾を連射し、シクルは再び大弓に弾頭矢を番えるとその咥内目がけて一矢を放ち爆裂を巻き起こした。
 ソウマは水弾を受けつつも盾を翳して踏ん張り、フェルマータの指示を出すかの如くグロウを突き出した。
「華麗に踊らせて上げますよ、その命絶えるまでずっと僕が、ね」
 電磁嵐が荒れ狂い、海蛇はそれに打たれて暴れながら、ついに絶命して倒れたのだった。


「お怪我はありませんか〜? 治療しますよ〜」
 戦後、八尾師は治療に回り鈴木はユウと無事と勝利を祝してハイタッチしていた。
 傭兵達の活躍によりキメラは退治され街は平和を取り戻した。
 何度も繰り返された結末。
 何度も繰り返された破壊。
「街の復興は‥‥この街で生きる人の仕事ですね」
 ソウマは破壊された街を見つめながら呟き、過去何度も見てきた人の生きる力を信じ、その場を立ち去った。

 人は立ち上がるのだ。何度でも。

 空には赤い星が輝いている。



 了