タイトル:【ODNK】落日マスター:望月誠司

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/02/14 00:39

●オープニング本文


前回のリプレイを見る


 紅蓮が逆巻く炎の空。
「‥‥風向きが変わった」
 相良裕子はそう、ぽつりと呟いた。


 九州福岡の戦場、村上旅団の陣で不破真治が怒号を上げていた。
「どういう事です?! 何故、閣下が?!」
 村上顕家、未だ三十代ながら准将まで登り詰めた男が、周囲を数人のUPC兵に固められ引き立てられてゆく。
「‥‥不破」
 護送車に乗り込む直前、村上は振り向いた。
「なんです?!」
「万一‥‥西園寺って苗字の連中が俺の事を聞きにきたら『関わるな』と伝えてくれ。あとお前もこの件は調べるな。後者のこれは命令だ。あと――」
 村上は腰を曲げると言った。
「すまねぇ、しくじった。団の連中と、この国を頼む」
「‥‥‥‥!!」
 不破真治は目を見開いて立ち尽くした。村上がここまで不破へ頭を下げるなど初めての事だった。壮年の男が鉄格子の嵌められた車に押し込められ連れ去られてゆく。
「何故」
「‥‥風向きが変わった」
 護送車を茫然と見送る不破の背に相良裕子はそう声を投げた。
 ゆらりと不破真治が振り向いた。酷く昏く鈍く光を宿して刃のようにギラつかせている。この人もこんな眼をするのだな、と相良裕子はぼんやりと思った。
「相良裕子、お前、何を知っている?」
「准将はもう‥‥きっと、戻らないという事」
「馬鹿を言うな。どんな嫌疑か知らんがこの時期にあの人を後方に送るなど‥‥司令官抜きで俺達にどう戦えと? 上層部は何を考えているのだ?」
「村上顕家は処刑される」
「‥‥‥‥‥‥‥‥なに?」
「彼は知り過ぎていて、そして強引に過ぎた。だから、一つ致命的な風穴をあけられれば、ここぞとばかりに敵が群がって来る」
「相良?」
「この旅団は瓦解する。村上顕家はもう戻ってこない。ハラザーフ・ホスローも行方不明。ゼナイドも姿が見えない。遠藤大佐だけでは荷が重い」
「‥‥馬鹿な」
「この場面で嘘は言わない」
「何故」
「風向きが変わった」
「何故」
「この団は強くなり過ぎて、敵は勿論、味方からも目障りになり過ぎた。だから敵から仕掛けられ、味方からは切り捨てられた」
「そんな‥‥‥‥そ、ん、な、そんな馬鹿な話があるかッ?!」
「元々、強引なやり方だった‥‥‥‥村上顕家の錆が表に出てしまった、そういう事」
「何故」
「獅子座の陰があちこちに見えた。仕留めきれなかった。諜報部が負けた」
「何故!」
「UPCとULTとルウェリンの三つを相手にするのは荷が重かった。獅子座は強い」
「UPCとULTは味方だろうッ!!」
「敵になる場合もある。派閥がある。村上顕家は敵が多い」
「何故、俺は何も知らされていない‥‥」
「貴方は嘘をつけない人だから。秘密を共有できる男では無い」
 不破は目を大きく見開き、鉄塊で殴られたようによろめいた。
 少女は淡々と言う。
「それと、頼まれた筈」
「‥‥何を」
「この団を。あなたなら、もしかしたら出来るかもしれない」
 その言葉に不破はしばし反応しなかったが、少し経ってから表情を徐々に憤怒に変えていった。
「ふざけるなよ」
 足で大地を蹴りつけて言う。
「鳥居隊長の部下になる前の俺の得意技を教えてやろうか‥‥? 命令違反だッ!!!!」
 相良裕子は深刻な表情で瞳を翳らせる。
「‥‥そう言うと思ったんだよ。保険にもなれない人だね」
「やかましい‥‥納得できるかそんなもの‥‥! この団は、どうなる」
「貴方がまとめないのなら、別府基地の日向准将の指揮下におかれると思う」
「准将は基地を動けないだろ。どれだけ後方から指揮しろというんだ」
「名目上は日向准将指揮で、実質的には参謀長の遠藤大佐が仕切ると思う」
「そんなやり方で‥‥そもそも遠藤大佐でルウェリンに勝てるのか」
「瓦解すると言った」
「‥‥俺は認めんッ!!」
 不破は吼えた。
「こんな、こんな、こんな形で、こんな所で俺達が、終わるなど‥‥村上旅団が終わるなど‥‥ッ!! 俺は認めん‥‥‥‥ッ!! 認めて、たまるか‥‥!!」
「貴方の意志など巨大な風の前に立つ塵のようなもの。無茶をすると死ぬよ。沈み始めた船からは――」
「黙れ」
「そう」
「俺は戦うぞ。お前は退くのか? この混乱だ‥‥命令なんぞなくてもどうとでもなるという事か」
「相良も戦うよ」
 不破は目を瞬かせて少女を見る。
「‥‥沈み始めた船からはってお前が言ったんだぞ?」
「不破さんは不破さん、相良は相良だよ。そして相良は村上さんに万一の際はって頼まれてたから伝えてただけだよ。頼まれてた事は伝えたので後はもう相良の好きにするんだよ。相良裕子は基本的に諦めが悪いです」
「なるほど――破壊神、勝算は?」
「三割くらい」
 不破は笑いもせずに言った。
「上等、そんだけ打てれば強打者だッ!!!!」


「うわははははははは!! 勝った! 勝ったぞアナンタッ!! 最早敵は烏合の衆よッ!!!!」
 他方、バグアの陣、ルウェリンがけたたましく笑い声をあげている。
「左様ですか」
 傍らに立つ美青年が応えた。魔竜のアナンタではない。
「‥‥クエレブエ? 何故、貴様がここに居る。アナンタの奴はどうしたァッ?!」
「死にました」
「‥‥‥‥あっのバカチンがぁッ!!!! 見誤るなと言っただろうがぁッ!!!!」
「敵が強過ぎですね。まさかあそこから一気に持ってゆくとは‥‥敵の傭兵隊は鬼神の如き強さです」
「鬼神の如きだと?」
 ふん、とルウェリンは鼻を鳴らし牙を剥いた。
「俺とて空の鬼神よ。どちらが上か」
「光学迷彩とツインブーストがあれば圧倒的に大将です。勝負になりません。大将は規格外だ。現状でも一対一ではまず大将でしょう。ただ、敵は一機ではありません。連携も取れています。もしやはあり得るかと」
「勝算は?」
「そうですね、八割‥‥慎重に見て七割。三割はまだ敵に分があります」
「張るには十分だ。ここで往かねばただの臆病者よ。そして俺は臆病者ではない。カリマンタン、大分と随分好き勝手やってくれたが、今こそ村上旅団とやらを殲滅する時ッ!! アナンタ、ボイナ、スミスとヴァイナの阿呆にイルマリネンの仇を討つ時よッ!! 総攻めだッ!!!!」


 うきは市のバグア軍は村上旅団へと猛攻を開始。旅団長村上を突然失い混乱に陥っている隊を参謀長遠藤は苦心して掌握し指揮せんとするが、かつて不敗を誇っていた部隊は次々に撃破されてゆき、KV二十機を各所へと送り込んでようやく拮抗した。
 その報告を受けたルウェリンは満を持してFRで出撃、残存の竜頭と七機の強化タロスを率いて戦線の両翼を支える中央部を撃滅せんと前進した。
 迎撃に繰り出されたのは最後の切り札、不破真治率いるULT傭兵を中核に据えたKV隊だった。

「やらせはせんぞ‥‥ルウェリン・アプ・ハウェルッ!! 俺の命に代えても止めてやるッ!!」

 不破真治が吼え、かつて村上旅団と呼ばれ、今消えゆこうとしているこの団の、最後の戦いが始まろうとしていた。

●参加者一覧

榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
アッシュ・リーゲン(ga3804
28歳・♂・JG
井出 一真(ga6977
22歳・♂・AA
飯島 修司(ga7951
36歳・♂・PN
鹿嶋 悠(gb1333
24歳・♂・AA
白皇院・聖(gb2044
22歳・♀・ER
アレックス(gb3735
20歳・♂・HD

●リプレイ本文

 井出 一真(ga6977)はKV好きが高じて整備士にもなったKV好きである。普段から愛機の整備は自ずからしている程だ。
 故にそれは戦場でも変わりはない。
 かつて街であった場所の残骸、旅団の仮の陣として使われているその場所の、KV置き場で井出は工具を振るっていた。
 肉食獣を思わせるそのKVの脚を整備しつつ井出は額の汗をぬぐった。今回は常よりも入念な調整を行っていた。
 准将村上顕家が先程捕縛されたらしい。周囲は大混乱に陥っていたが、井出は黙々と整備していた。完璧に仕上げなければならない。
 獅子座がこの機会を逃す訳はないと予感していたからだ。
 やがて戦局は動き、獅子座自らが精鋭のワーム八機を引き連れて出撃、井出が所属するKV隊にその迎撃の命令が下される事となる。


 十機のKVが音を立てて廃墟と化した街を進んでゆく。
「‥‥村上准将が居ない今、これが獅子座の一統と正面切って戦える最後の機会となるんだろうな」
 うち一機、XF‐08D改2‐忠勝に搭乗する榊 兵衛(ga0388)が呟いた。
「将校の不正がどうとか、ってのはウワサに聞いちゃいたが‥‥まさかウチの大将も関わってたとはね‥‥」
 リアノンのコクピット内、アッシュ・リーゲン(ga3804)は煙草の煙をひと吐きするとガリガリと頭を掻く。
「にしたって時と場合ってモンがあるだろうがよ?」
 男は苛立たしそうに言った。煙草を指で挟んで携帯灰皿に押しつけてから閉じて懐に入れると、
「政治でしかモノを考えられねえのはどうしてロクでもねー奴ばっかなんだろうなマジで? まあンな事はどうでも良い、大将の最初で最後になるかもしれない『頼み』だ、キッチリ叶えてやるぜ」
 そう言った。
「不破少佐」
 飯島 修司(ga7951)は先程から無言で歩を進めているKV隊の隊長に呼びかけた。
「なんだ?」
「准将は指揮官として最も重要な目標を達成する為に、文字通りあらゆる手段を尽くしたのだと考えております。部隊の損耗を抑える、つまり部下を可能な限り死なせない、という目標をね」
 先頭を進む鋼の背に向かい壮年の男は言った。
「ですから少佐、気合十分なのは頼もしい限りですが『命に代えても』などと、死を容認するような発言は自重願います」
 その言葉に場にしばし沈黙が降りた。
「――そうだぜ。その意気や良し。だけど、アンタが死んじまったら何の意味も無いだろう」
 それにアレックス(gb3735)もまた付け加えるように言う。
「アンタは任されたんだろう? だから、絶対に勝って生き残るんだ」
 その言葉にも不破は沈黙を続け――数秒置いてから男は言った。
「面倒なのは抜きだ。要は勝てば良い。勝てば万事解決だ。他は後で考える。俺達でルウェリンをぶっ飛ばす!!」
 頭に血が昇っているのか――それとも素なのか――昔は猪突猛進型の士官だったという。最近は落ちついていたのだが、ここに来て若干昔に戻りつつある様子だった。
(さて、精々悔いを残さぬように全力を出し切る事としようか、と思っていたが‥‥)
 榊兵衛は胸中で呟く。不破真治はあくまで勝ちにいくつもりらしい。
(勝てるものなのか?)
 勝つと言葉でいうのは容易いが、勝ち目がないのに言っているならばそれは、現実が見えていないだけともいう。盲信者に付いて行ってその先に待っているのは破滅だ。
 榊は思う――いずれにせよ、全力を尽くすのみだ。
「片腕を獲ったと思ったら、こちらは頭を潰されました。向こうの頭と残る腕くらいは貰っていきたい所ですな」
 飯島がそう言った。傭兵達は作戦を打ち合わせる。
「どの敵を狙うかの判断は不破少佐に任せたいのだが」
 と榊。
「俺か? 了解した。ではナンバリングして口頭でそれを示そう。なお俺が倒れたら榊、井出、アッシュの順で選択者を移行せよ」
 若き少佐はそんな事を言った。
 街を抜け砲弾が生み出した荒野に出る。瓦礫と都市の残骸を背に、地平の彼方、真紅のFRと八体のワームが横に並び武器を構えて前進して来る。
「風は今だ強く確かな息吹は此処に在る‥‥」
 終夜・無月(ga3084)が言った。乗機は白のXF‐08B‐神威。その背に担ぐのは射程九〇mを誇る超巨大剣『シヴァ』だ。「何か光景がおかしい」と不破真治が評する程の超絶大業物である。
(東南アジアの次は九州か‥‥今までの借り、ここで纏めて返させて貰う)
 鹿嶋 悠(gb1333)は砂埃の彼方から歩いて来る真紅の機体を睨み胸中で呟く。距離が徐々に詰まってゆく。
「先の戦いの失態を償い、名誉挽回させて頂きます」
 GSF‐2200‐CROSSFIREの操縦桿を握り白皇院・聖(gb2044)が言った。迫り来る敵を見据える。
 KVが徐々に加速し、散会して展開し距離が詰まってゆく。双方特に呼びかけはなく武器と盾を構えた。空気が張り詰めKVの駆動音だけが響き渡ってゆく。
 敵機はFRと竜頭を中央にやや前方を駆け、少し後方にタロス七機が横に広がるように展開している。左から数えるならタロス四機、FR、竜頭、タロス三機という並びだ。
「TANGO‐4」と不破がコールした。レーダー上、敵がナンバリングされている。四番機、作戦に則り獅子座の隣から断つつもりらしい。
 FRと竜頭が輝きその身が宙に浮く。バーニアを加速して突進して来た。タロス達も次々に赤く輝いてバーニアを吹かし荒野を滑るように機動する。
 距離が詰まってゆく。
「引き付けてから撃て」
 不破真治が言った。遠間から当たる敵ではない。弾の無駄だ。
 足並みを揃えて距離を詰めて行く。あちらも撃たない。隙を窺いながらKVとワーム達が荒野の中央へと機動してゆく。榊機が超伝導アクチュエータを起動した。
 相対距離一〇〇、井出機、四番機タロスへと標的を定め十式バルカンを猛射。激震と共に多身の砲が回転しマズルファイアを瞬かせながら徹甲弾が嵐の如く黄金の巨人へと襲いかかってゆく。タロスは赤く輝き突進しながら回避、井出機が低い姿勢で猛射を続けながら駆け榊機が槍を構えて突っ込んでゆく。白皇院機、バレットファストを発動、レーザーライフルをタロスの周囲へとその機動を阻むようにリロードしつつ三連射。宙を閃光が灼き貫いてゆく。
「羽撃け、リアノン!」
 アッシュ機、マイクロブーストを発動、集中射撃を受けている四番機の機動先を予測しその空間へ置くようにレーザーガンを十八連射、閃光を解き放ってゆく。不破機もまた同様に真スラスターライフルを向けリロードしながら二四〇発の猛弾幕を解き放った。集中射撃。閃光の嵐が四番機のタロスの装甲を削り、弾幕が火花を巻き起こして穴を次々に穿ってゆく。
 他方、飯島機、ブーストを点火、スラスターを吹かせて宙に飛翔、猛加速して先頭に踊り出ている。次に続くのは終夜機、巨大剣シヴァを抜き放ってこちらも一気に加速している。
 飯島、終夜と共にシヴァを使った策有。だがあの超巨大剣を横に薙ぐなら、剣の軌道上に味方の機体がいない時でなければならない。やるなら最初に激突する瞬間だ。視界の端、素早くレーダーを一瞥し不破が一〇〇m以内、終夜が九〇m以内にいる事を確認する。飯島は連携の発動コードを無線にコールした。射撃中の不破機がロックオンキャンセラーを発動、およそ重力波レーダーを掻き乱しバグア側の精度のそのおよそ三割を低下させてゆく。
 飯島機がブースト機動で超加速して竜頭へと突っ込み、終夜機が剣を振り上げる。その動きに即座に合わせてFRが猛加速しながら肩の二連の砲門を、竜頭がその顎を終夜機へと向け、相良機がそれよりも速くにファルコン・スナイプを発動しFRへと200mm4連キャノン砲を向けて猛連射した。轟音と焔と共に四門の砲より砲弾の嵐が飛び出し、FRは素早く大盾を翳し、砲弾と交差するように竜頭がプラズマのブレスを終夜機へと猛連射する。終夜は迫り来るプラズマ光波をスライドして回避してゆく。FRの大盾に六連の砲弾が次々に激突して超爆発が巻き起こった。飯島機が宙を駆けて竜頭へと上段に護剣を打ち込み、次いで下段を魔剣で薙ぎ払う。VS青竜頭。大分からの二度目の対戦。二刀と大盾と長剣が激突し轟音と共に火花を撒き散らす。終夜機が超巨大剣シヴァを薙ぎ払った。飯島機は剣で大盾を押し込みながらショルダーキャノンを竜頭へと向けて砲撃。
 FRは終夜機へと肩部の二連砲より爆裂する火球を撃ちだしつつ急降下してかわし、さらに連射してゆく。次の瞬間、壮絶な超爆発が大地を吹き飛ばすが終夜機はブーストを発動、猛加速して火炎の範囲から脱出する。
 竜頭はスライドして飯島機よりのキャノンをかわしその背に壮絶な鉄塊が炸裂した。壮絶な爆音と共に空前絶後の破壊力が炸裂、竜頭の強靭な装甲が砕け散りひしゃげ、ありえないレベルの損害を受けながらその巨体が吹っ飛んでゆく。飯島機はすかさずPFを発動、魔剣を背に納めつつ吹っ飛んだ竜頭へと追いすがってロンゴミニアトを抜き放ち突きこんだ。唸りをあげて穂先が飛び、竜の装甲に突き刺さって爆裂五連、竜頭の強靭な装甲が壮絶な速度で消し飛んでゆく。鬼神の破壊力。それでも竜頭は反撃に爆熱の輝きを長剣に宿して壮絶な剣閃の嵐を巻き起こす。飯島機は避けて避けて避けて避ける。全撃回避。キャンセラーが効いている。
 終夜機、FRからの範囲射撃をブースト機動で次々に回避してゆく、六連続の火球の嵐に対し四発を回避し二発が直撃コースへと飛んで来るもシヴァを正面に立てて防御。紅蓮が衝撃波を伴って超爆発を巻き起こしてゆく。損傷率六分。FRは終夜機へと唸りをあげて迫り、終夜機は間合いを保たんと後退しながらエニセイ砲弾を猛射。FRは地上を滑るように突進して機体を斜めに機動しながらかわし見る見ると迫ってゆく。ブーストする終夜機よりブーストするFRの方が速い。相良機が間に踊り出る。紺碧のKM‐S2よりルーネ・グングニルが加速して撃ち出される。FRは大盾を傾斜して構え、火花を散らしつつ前進しながら弾き飛ばす。
『竜王、その首級‥‥炎帝が貰い受けるッ!』
 アレックス機、ブースト、超伝導アクチュエータを発動している。敵機の機動力を減少させたい。横合いからFRへと突っ込みハイディフェンダーを薙ぎ払うように振るってその背のスラスターへと斬りつける。閃光の如き一撃。FRは地を蹴って跳躍。刃が空を断ち切って抜けてゆく。
『久しぶりだな獅子座。カリマンタンで負けて僻地に左遷されたか?』
 鹿嶋機、読んでる。FRの後背へと滑り込みつつブースト&アクチュエータを発動している。ガンサイト、FRの飛んだ先へとスラスターライフルの銃口を向け猛射。高速のマズルフラッシュと共に激しい銃弾の嵐を解き放つ。FRは猛烈に赤く輝き慣性を制御しつつ横にスライドし、弾丸がFRの残像を突き破って抜けてゆく。FRはその勢いのまま相良機の脇の宙をすり抜けてゆくFRへと相良機は機体ごとぶつかる勢いで跳躍し槍を構えてチャージ。FRはバーニアを吹かせてスライドして回避。終夜、狙いを澄まして全力攻撃、射程九〇mの超巨大剣を豪雷の如く振り降ろす。大気が逆巻き衝撃波を巻き起こしながら鉄塊がFRへと迫る。宙のFRは機体を捻りながら槍を横に一閃。シヴァの剣腹へと横からロンゴミニアトが激突し、巨大剣の軌道が逸れ、FRのすぐ隣の大地を一直線に爆砕してゆく。土砂と土煙りが天へと向かって吹き上げる中、アレックス機と鹿嶋機から後方の左右からブースト機動で追いすがって迫ってハイディフェンダーと魔剣を振り降ろす。剣閃が二条奔ってFRの背に次々に直撃する。クリティカルヒット。しかしFR、猛烈に赤く輝きフィールドで弾き飛ばしている。無傷。弱体化フィールドだ。
『ハッ! 相変わらず良く吼えるッ!! まだくたばっていなかったか雷電乗りッ!!』
 FR、声を発しつつ後方をフィールドで守るに任せ、再度後退しながらシヴァを振り降ろさんとする終夜機へと宙を突撃しながら爆裂火球を猛射。巨大剣がFRに炸裂して赤壁に激突して弾き飛ばされFRもまた地面に弾かれるが無傷、二連の火球が咆哮をあげて終夜機を次々に呑みこみ壮絶な爆裂を巻き起こして装甲を吹っ飛ばしてゆく。アレックス機はFRの後背へと追いつくとその赤壁に対し行動速度の迅速さにものをいわせて剣閃を巻き起こす。ひたすら手数で練力切れを狙う戦法だ。再び前進を開始するFRの背へと向かって薙ぎ払われた剣が空を斬る。跳躍してかわした。再び距離が離れてゆく。プラズマライフルを宙へ向け猛射する。一発が命中して赤壁に吹き散らされた。
 他方、榊機、後衛の集中弾幕を受けている四番機へと最も接近した時点で二門のファランクスを起動。壮絶な速度で弾丸が解き放たれ一五〇〇発の銃弾がタロスへと直撃し壮絶な火花を巻き起こしてゆく。
 榊は衝撃に態勢を崩している四番機へと半身に槍を上段に構え一気に詰める。槍の間合い。槍を振り上げながらおよそ十四tの機体で大地を爆砕しながら踏み込み、パワーを全開にして振り降ろす。敵の態勢をさらに崩すべく強打。千鳥十文字の穂先が遠心力で加速して光と化し爆風を巻き起こして奔り強化タロスの身を直撃する。クリーンヒット、まさに稲妻の速さ。装甲があっさりと斬り裂かれ火花が散る。井出機が低い姿勢で四番機へと飛び込み、四番機が榊機へと反撃の剣閃を放つ。四足の肉食獣型のKVが地を這うように駆け、交差ざまにその背の翼でタロスの脚部を薙ぎ払い、火花を巻き起こして装甲を叩き斬りながら抜けてゆく。凶悪な破壊力が炸裂しタロスはバランスを崩すが、しかしそれでも剣をそのまま榊機へと振り降ろす。榊機は斜め後ろへと後退しながらあっさりとかわし、切り替えして踏み込みながら神速の三段突きを撃ち放つ。穂先がタロスの胴、喉、頭部に炸裂、井出機が切り替えしてUターンし再度剣翼で斬りつけ、榊機は駄目押しに即頭部へと槍を叩き込んだ。十字の穂先がタロスの即頭部をぶち抜き、次の瞬間タロスは漏電と共に爆発を巻き起こして倒れた。撃破。
 その間にタロス一番機、二番機、三番機、五番機、六番機、七番機は猛烈に赤く輝きながらブースト機動で不破機へと詰めている。電子戦機を潰しに来た。正面から一機が大剣で斬りかかり、不破機は後退しながあ大盾をかざして受け、二機が左右から踏み込んで剣を振るい、不破機は後方へ跳躍して回避し、一機がガトリングで猛射し不破機は盾をかざし、一機が慣性制御で宙を飛翔して後方へと回り込んで大剣を薙ぎ払って叩きつけ、前へふっとんだ所へ六機めが宙より落雷の如く大剣を撃ちつけて大地に叩きつけた。六機は不破機を取り囲むと大剣の切っ先を向け一機五連六機で三十連射の猛烈な突きの嵐を繰り出す。
『うぉおおおおおおおおおおおお!!!!』
 不破機は一瞬で穴だらけとなり壮絶な超爆発を巻き起こして爆裂四散した。大破。キャンセラーの効果が場から掻き消える。
 飯島機VS竜頭クエレブエ機。クエレブエ機は飯島機の猛撃によろめきつつも傷を再生させつつ長剣に赤光を宿して稲妻の如く飯島機へと斬りつける。飯島機、カウンター、間髪入れずにロンゴミニアトを繰り出す。竜頭の赤光剣が飯島機に届くよりも前に、穂先が竜頭の胴体へと喰い込んだ。リロードしつつ爆裂七連。超爆発の嵐が竜頭の内部で巻き起こりその上半身と下半身を二つに別けて吹っ飛ばしてゆく。クエレブエ機は機体を捻って穂先を外すと大盾で槍を弾きながら六連の剣閃を巻き起こす。飯島機はハイディフェンダーを振るってその剣嵐を次々にブロックしてゆく。火花と共に轟音が巻き起こった。
 終夜機は円を描く動きで距離を取り、FRが追尾の構え、相良機がインターセプトに入ってブースト&スナイプを発動しルーネ・グングニルでFRの機動を阻止せんと突きかかる。FRはキャンセラーが消えた瞬間に真紅の光を機体から爆発させて猛加速する。超強化を発動した。大盾を翳して穂先を受け、アレックス機は猛然とFRの背後へと迫ると護剣で斬りかからんとし、FRは槍を片手の中で回すと動きの起き上がりを妨害せんと猛射して来た鹿嶋機の弾幕をスライドして回避しつつ穂先を背後へと繰り出した。アレックス機、コクピット、ど真ん中、真っ正面、一撃死のコース。アレックス、カウンターとコクピット狙いは警戒している。即座に機盾ウルでガード。轟音と共に穂先と盾が激突して超爆発が巻き起こった。凶悪な衝撃がカストルを貫いてゆく。アレックス機はそのまま盾で穂先を横に流しながら焔を割いて踏み込みハイ・ディフェンダーを振り降ろし、鹿嶋機が合わせてブースト機動で一歩踏み込んで魔剣で斬りかかる。
『なるほど、雑魚ではない、が! 帝を名乗るには早いわッ!!』
 FR、笑い声をあげつつ二機よりの二連の斬撃をスライドして回避しつつ、さらに合わせて来た相良機のルーネ・グングニルを大盾を翳して打ち払いつつ肩部の二連砲を終夜機へと回して七連の火球を撃ち放つ。恐ろしく精度が高い。先より動きが速くなっているのもあるが、キャンセラーが消えているのが主要因だ。終夜機、避けられない。火の球が次々に終夜機を捉え咄嗟にシヴァを正面に立ててガードするもそれすらも突き破って超爆発が巻き起こってゆく。全弾直撃して損傷率五割一分。終夜機はブースト機動で間合いを保ちつつ入り乱れる三機の攻防を見つつ機会を捉え全力攻撃でシヴァを振り降ろしてゆく。
 七回攻撃して七回命中、しかし全て槍で逸らされるか真紅の赤壁に弾かれている。正面の相良機は槍と途中からゼロディフェンダーに切り替えて八回攻撃、FRは全撃を大盾で止める。アレックス機は背後から八回斬りかかって三発命中、鹿嶋機も同様に後ろへ喰らいていって四回仕掛けて三発命中、包囲攻撃をしてFRの装甲を削ってゆく。
 他方、VSタロス班。榊は標的を反転して向かって来た先頭の一番機に決めて宣言する。白皇院、バレットファストを継続しつつガンスリンガーの機動力で荒野を駆けつつ強化タロス一番機の周囲へと動きを制限するようにレーザーガトリング砲で閃光をばらまき、アッシュ機はタロスの機動を先読みしつつマイクロブーストを継続フィロソフィーを閃光を撃ち込んでゆく。榊機は二門のバルカン・ファランクスで千五百発の銃弾を一番機へと撃ち放ちながら突撃し、井出機もまた十式バルカンで二十発の徹甲弾を猛射しながら荒野を駆けてゆく。
 集中する閃光と弾丸の嵐に対し一番機タロスは赤輝を纏い突撃しながらスライドして大剣を構えて防御しつつ機銃で榊機へと五十連の弾丸を猛射する。榊機はアクチュエータを発動して斜め前方へと回避運動を取りつつスラスターライフルで弾幕を撃ち返す。射撃が交差しタロスへと光と弾丸を嵐が突き刺さって火花を巻き起こしながらその装甲を粉砕し、榊機が三十発の銃弾を回避し二十発の弾丸を受けて装甲を削られてゆく。損傷率五厘。機銃は命中率が高いが威力が低い。榊機の装甲の前ではさほどの脅威ではなかった。
 井出機が一番機へと突撃しつつその顔面へと対空砲を向け砲弾を撃ち放つ。銃弾の嵐によろめいている一番機の顔面へと弾丸が唸りをあげて飛び直撃してその装甲を爆裂と共に叩き割る。井出機は翼を鈍く輝かせながら突撃し、一番機は猛射を受けつつもそれでも大剣を袈裟に振り降ろしてカウンターの斬撃を放つ。残りの五機が榊機へと大剣を構えて突撃した。井出機は閃光の如き袈裟斬りに対しブーストを発動、斜め前方へと猛加速しながら低く踏み込んで掻い潜る、交差様に剣翼をタロスの脚部へと叩き込んで壮絶な衝撃力を炸裂させた。タロスが衝撃に崩れ白皇院機が疾風の如くに飛び込んで踏み込んでロンゴミニアトを繰り出した。穂先が唸りをあげて飛び、タロスの脇腹に命中、次に瞬間穂先から焔が吹き出しタロスの内部から凶悪な爆裂を巻き起こした。黄金の巨人の装甲が爆ぜ飛んでゆく。
「灼き、抉れ! クリムゾン!!」
 さらに爆裂に呑まれているタロスへとアッシュ機がマイクロブーストで突っ込んだ。裂帛の気合いと共に金属の筒を握りしめ、突き出す。金属から蒼い光が噴出して収束し、刃を象った。レーザーナイフ白雪だ。光の刃が奔ってタロスの胸に突き刺さり、タロスの瞳から光が消え仰向けに倒れてゆく。傷口から電流が洩れアッシュ機と白皇院機が飛び退くと次の瞬間、超爆発が巻き起こった。タロスが四散して散ってゆく。撃破。
 二番機、三番機、五番機の三機が猛烈に赤く輝きながら榊機へと距離を詰め剣閃の嵐を三方から巻き起こす。一機六連、三機で十八回攻撃。途中、六番機と七番機が榊機の後背へと回り込んで一機六連、二機で十二連の流星の如き突きを放った。榊機は正面左右からの攻撃を六回分全撃素早く機動して悉くを鮮やかに見切ってかわす。背後二機からの四撃を二発かわして二発に直撃を受ける。壮絶な破壊力に武者鎧が吹き飛びその態勢が崩れる。五機のタロスはその隙を逃さず周囲を取り囲んで剣撃を次々に叩き込んでゆく。榊機はそれでも千鳥で正面の四発を叩き落とし、十六発の直撃を受けて装甲を穿たれ損傷率五割五分。
 飯島VSクエレブエ、真紅の閃光の嵐を飯島機は一歩後退しながら受け、続く連撃の打ち込みの瞬間を狙って前に出て爆槍を繰り出す。穂先が竜頭の胴を再度捉え鬼神の爆裂と共にその上半身と下半身を永遠に別れさせた。撃破。
 榊、二番機をターゲットに定める。アッシュ機はフィロソフィーをリロードしつつ二番機の背へと連射。井出機が弧を描くように車輪のように回りながらタロスの背を剣翼で掠め斬り、白皇院機もまた井出機と榊機の攻撃で崩れた所へロンゴミニアトを同様にヒット&アウェイで突き込んでゆく。榊機は井出機が崩した所へ千鳥十字を振るって五段の槍撃を叩き込んでゆく。タロス達は猛烈に赤く輝きながら全力攻撃、流星の如くに榊機を滅多突きにしてゆく。二番機のタロスが猛爆を巻き起こしながら倒れ、榊機が十五発の剣閃の直撃を受けて損傷十割六分、大破。漏電と共に爆炎を吹き上げ忠勝が砕けながら倒れて行く。
 VSFR。
(これ程の男が敵なのが心底から惜しいぜ、クソッタレ!)
 アレックス、駆けまわる獅子座の正面を抑えるのを相良機に任せ、その後背にブースト機動で喰らいついて剣閃を放っているが、囲まれているこの状況でも後ろに目がついているのかと疑うレベルで当たらない。予測と反射を駆使して剣を振るうがフェイントが何処に入るか読み切れなく、未来の予測が絞れない。対戦経験の無い己よりも技量が上の敵の動きを漠然と読み切るのは至難だ。しかし、アレックス、速い。反応速度と手数の多さで予測を全て叩き斬る勢いで無理にやりに喰らいつき命中打も放ってゆく。
(獅子座の攻撃は狙いが正確な上に戦術選択は常に最善)
 他方、鹿嶋、ルウェリンの特徴に思考を巡らせている。戦術の最善は相対的なものだが、別の意味で概ね確率が最も高いという意味での最善戦術を好む傾向にある。攻撃対象も距離や相手の防御性能もあるが、基本的に放置してはリスクの高い敵から潰してゆく。方針自体は堅実。
 一方のパイロットとして操縦の精度は抜群だ。能力者でも神業と言って良いレベルで正確無比。
(逆を言えば、思考が解ればそれだけ読みやすい!)
 鹿嶋機は動きを読み切って剣を振るい命中させてゆく。が、敵も流石に鬼神の称号は伊達ではないらしく、こちらの読みが当たり始めるとパターンを即座に変えて来る。この辺りまで来ると勘レベルの読み合いだ。
 相良機は獅子座と打ちあいながら終夜機へと陸空から距離を詰めようとするFRの前進を時に文字通り体当たりさせて止めている。接近戦よりも遠距離が専門だがこちらも伊達で破壊神と呼ばれているエースではないらしい。壮絶な剣閃の嵐を巻き起こして獅子座の盾を封じ込めている。終夜もまたFRの接近を妨害するようにシヴァを打ち込みつつ距離を取ってゆく。練力がそろそろ失せて来たのかシヴァが命中した時に弾かれる事がなくなり、FRの強固な装甲がそのままその超絶な一撃で砕け散ってゆく。ルウェリンでもこの状況下では全ては防げずまた布陣を抜けはしない模様。しかし、飛び道具は飛んで来る。七連の火の球が終夜機を捉え次々に直撃して装甲を消し飛ばしてゆく。損傷率九割六分、まだ耐えている。
 タロス三番機、五番機、六番機、七番機の四機は猛然と井出機へと襲いかかる。井出は六番機をターゲットにコールしつつ、対空砲を六番機の顔面へと叩き込みつつブーストを起動させ動きを止めずに荒野を低い姿勢で駆け回る。白皇院機が六番機の周囲へとレーザーガトリングで猛射しアッシュ機がフィロソフィーで射撃してゆく。井出、愛機の限界は熟知している。蒼翼号の運動性は抜群だが、今日は念入りな整備もあってか特に調子が良い。その限界いっぱいまで振り回すように乱数に複雑に高速に駆け抜けてゆく。タロス達は囲まんと迫り大剣を烈火の如くに突き降ろすが、井出機は剣翼で薙ぎ斬りながらタロスの足元を駆け抜けてゆく。速い、というより重心が低く小回りが効く。タロスの数も減っていて包囲しきれない。タロス達の剣の十二発が悉く空を切り、ガトリング砲に切り替えFFと装甲に任せて同士撃ちもお構いなしに集中して徹甲弾を嵐の如くばらまいてゆく。一機三〇発、四機で一二〇発。一〇発命中して井出機は損傷率四分。
 飯島機、FRへと突撃を開始する。
 包囲攻撃を回避したルウェリンの先へと終夜機がシヴァを豪雷の如く打ち込み直撃させてFRの装甲を陥没させ、飛来した七連の火球の直撃を次々に受けて吹っ飛んでゆく。損傷率十四割一分、大破。
 シヴァが炸裂してFRが態勢を崩した瞬間を狙って相良機と鹿嶋機とアレックス機が三機で猛然と剣閃の嵐を巻き起こした。八回攻撃、四回攻撃、八回攻撃、相良機の剣撃をFRは大盾で全撃ブロックし、鹿嶋機の魔剣とアレックス機の護剣が次々にFRを乱打してゆく。ダメージの蓄積からバーニアの一基が粉砕されて速度が低下し、横合いから突っ込んで来た飯島機がロンゴミニアトを繰り出し、FRは長剣を振るって穂先を叩き落とす。飯島機はハイディフェンダーにスイッチすると七連の剣閃を巻き起こし、FRの剣と激突して火花を巻き起こしてゆく。
 白皇院機とアレックス機が射撃を六番機へと集中させ、井出機は四機からの攻撃を次々に回避しながら六番機へと剣翼で斬りつける。六番機、まだ倒れない。榊機が倒れた分火力が減少している。タロスの傷が再生してゆく。
 飯島機と相良機がFRへと護剣を振るって斬りかかりFRは大盾と槍で受け、飯島機の足元へと砲を回して爆炎を炸裂させ、アレックス機と鹿嶋機がFRへと猛打し、飯島機が態勢を崩し、そのコクピットへFRが狙いを定めて槍を突き降ろし、相良機がブーストを起動して体当たりしてFRの姿勢を僅かに崩す。コクピットから逸れて飯島機の足の付け根に穂先が突き刺さり超爆発が巻き起こり、飯島機が爆槍をFRへと突き刺し装甲を粉砕して超爆発を巻き起こしてゆく。飯島機、損傷率二割四分。
 鹿嶋機が、アレックス機が、飯島機が、相良機が、包囲して滅多斬りにしてゆく。
『ほぉ‥‥っ?!』
 声が聞こえた。牙を剥いて笑っている男の姿が鹿嶋には見えた気がした。FRの赤光が消え失せ次々に直撃が増えてゆく。アッシュ機、白皇院機が閃光を猛射して井出機がタロス四機の猛攻を回避しつつ剣翼で突っ込み、六番機を破壊する。
 FRが高速で駆けまわりながら槍を猛然と振り回し飯島機へと一閃させて貫通させ超爆発を巻き起こすが、しかしそれでも飯島機は倒れずカウンターの爆槍をFRへと突き刺して同様に超爆発を巻き起こしてゆく。さらにアレックス機が、相良機が、三方から囲むようにFRへ刃を嵐の如くに打ちこんでゆく。鹿嶋は帝虎をFRへと体当たりするように突進させつつ外部スピーカへと叫んだ。
『地獄へ行っても覚えて置け!』
 跳躍。唸りをあげてFRへと肉薄すると、帝虎の頭部を後ろに振ってから前方へと振り降ろす。額から3m程の剣が飛び出した。高周波剣だ。真っ直ぐにFRの頭部へと向かってゆく。
『俺の名は鹿嶋悠だ。ルウェリン!!』
 轟音を巻き起こして激突。刃がFRの頭部に直撃しその装甲を砕いて削ってゆく。さらに周囲から猛攻が叩き込まれて、FRのあちこちから茨の如き漏電が発生し始めた。
『この、状況下で、この俺を、消し飛ばすだと‥‥ッ?!』
 最後に獅子座は言った。
『やるではないか貴様等。まぁ覚えてはおこう、先に、地獄で、待っているぞッ!! うわはははははははははーーーーーッ!!!!』
 次の瞬間、壮絶な超爆発が巻き起こってファームライドは木端微塵に爆散した。


 タロスは未だ三機が健在だったが、井出機はよく踏ん張っており、アッシュ機と白皇院機と連携してタロスを削ってゆき、やがてFRを仕留めた四機が加勢にやってきて、滅多斬りにしてその悉くを荒野へ爆散させたのだった。


 ルウェリンとその幕下の兵を失ったルウェリン軍は大混乱に陥り、大佐遠藤は反抗の指示を飛ばし、村上旅団は底力を見せてこれを押し返し粉砕した。
 主を失ったバグア軍は春日へと敗走してゆき、旅団は前進してうきは市を奪還し、ここにUPCと旅団の旗を立てたのだった。





 了