タイトル:【DAEB】藁城基地攻略戦マスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/10/25 06:06

●オープニング本文


 中国大陸。
 先に徳州市故城空軍基地を陥落させたUPC軍は『生門』と見なされている石家庄市の攻略を目指し軍を西へと進めた。荒野においてUPC軍と親バグア軍が激突し、また一つ新たな戦線が生まれた。
 石家庄市の周辺100km以内には四つのバグア軍基地が存在する。すなわち高義空軍基地、元氏空軍基地、藁城空軍基地、石家庄空軍基地である。
 この四つの基地に連動して守られている石家庄市の守備は強固である。UPC軍も幾つかの旅団や師団を当ててこれを打ち破らんとしていたが、生半には抜けず、陸空の戦いは苛烈さを増していた。
 うち高義空軍基地はロン・バオエン准将率いる旅団が既に陥落させた。元氏空軍基地はUPCのエース、ズウィーク・デラード軍曹率いるスカイフォックスの援護を受けて陸上部隊が攻略にかかっている。スカイフォックスが支援し傭兵がその制圧を助けるなら、きっと上手くやるだろう、とロンは思う。
 高義空軍基地を制圧したロン・バオエンは守りを固めつつ、他基地の攻略にかかっている部隊の支援に増援を送った。
『彼等』ULT傭兵達により構成された十機のKV隊は、その時その増援隊の一つとして、藁城空軍基地攻略部隊の上空へと送り込まれたのだった――

●参加者一覧

榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
三島玲奈(ga3848
17歳・♀・SN
アンドレアス・ラーセン(ga6523
28歳・♂・ER
井出 一真(ga6977
22歳・♂・AA
飯島 修司(ga7951
36歳・♂・PN
ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751
19歳・♂・ER
ラウラ・ブレイク(gb1395
20歳・♀・DF
奏歌 アルブレヒト(gb9003
17歳・♀・ER
夢守 ルキア(gb9436
15歳・♀・SF
長瀬 怜奈(gc0691
22歳・♀・SF

●リプレイ本文

 中国大陸、石家庄市周辺、陸と空とで砲火が激しく瞬いている地帯。
『セイモンだかナニモンだか知らねぇけど、要はアレを潰せばいいわけだ』
 地平の彼方に在る石家庄市の方角を見やりながらアンドレアス・ラーセン(ga6523)が言った。敵の制圧下にある拠点の一つ、今はその四方に存在する鎧たる敵基地の攻略の真っただ中だ。
(「ここは偵察ん時に来て以来だなあ」)
 今年の七月の事だから、もう三ヶ月も前田。
(「前は随分上から見ただけだったが、情報が役に立ったんならなによりだぁね」)
 そんな事を思う。それらの情報により軍は進撃して基地や都市を幾つか奪還し、うち一つ高義基地より現在のアンドレアス達は藁城基地攻略隊を援護する為に出撃していた。
『ソードフィッシュより各機へ、藁城基地攻略隊より通信が入った。あちらの航空戦力は全滅した、との事』
 十機の増援隊のうち一機、H‐223A‐SkyEyeで管制を勤める長瀬 怜奈(gc0691)が友軍からの無線を受け取って言った。その報によると友軍の航空隊が一機残らず撃墜されてしまったようだった。
『そんな、全滅‥‥!?』
 F‐201D/A3‐Merizimに搭乗するラウラ・ブレイク(gb1395)が驚愕の声をあげた。
『先発隊が墜とされたか‥‥』
 榊 兵衛(ga0388)が無線に呟いた。愛機はXF‐08D改2‐忠勝。
『舐めてはいなかったが、それなりに歯ごたえがある奴らのようだな』
『急いだ方が良さそうですね』
 XA‐08B改‐蒼翼号を駆る井出 一真(ga6977)が言った。空の支援が失われ敵のそれは健在となると味方陸上部隊は圧倒的に不利になる。
『もっと早く‥‥いえ、彼らの努力を実らせるわよ!』
 唇を噛んでラウラ。
『ここで退けられなければ‥‥後がありません‥‥全力で対処します』
 Mk.4D改‐Schwalbe搭乗の奏歌 アルブレヒト(gb9003)がこくりと頷く。
 傭兵達はもたらされた敵情報を受け取ると、手早く作戦を打ち合わせる。
『拡散砲を持つビッグフィッシュ‥‥どうやら通常型ではないようですね』
『相手にとって不足無し。先発隊の仇は必ず討って見せよう』
 井出が言って榊が頷く。
『範囲攻撃して来るのは厄介だな‥‥とにかく、頑張ってどうにかするか』
 R‐01改‐ディースに搭乗するユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)が言った。
『厄介なのはBFもさることながら‥‥三機、生き残ってますか──手強い、ですな』
 と言うのはF‐108改を駆る飯島 修司(ga7951)だ。また男は胸中で呟く。
(「江戸の仇を長崎で、という訳でもありませんが。先の大分での失態、ここで埋めさせて頂きましょう」)
 敵味方の実力と動きの全てが解らない以上、あの獅子座戦を失態というのは些か厳しいような気もするが、本人には忸怩たる思いがあるようだ。
『――奏歌機、作戦は概ね了解した。ユーリ機とBFを狙いに行く。長瀬機、情報提供宜しくっ』
 方針を受け取ると三島玲奈(ga3848)が言う。
『了解。ああ、それと、私の指示は報告と要請です。無理には従わないで下さい。また管制機が撃破されても状況を崩さないように』
『はーい』
 長瀬が言って三島が頷く。
『行こうかイクシオン、きみと私はオナジ』
 夢守 ルキア(gb9436)が言ってH‐223B‐イクシオンの翼が風を切って加速する。
 かくて十機のKVが戦線の空へと突入して行ったのだった。


 爆風を巻き起こし十機のKVが陸上の歩兵達や戦車達の頭上を越えて戦域に雪崩れ込み、一機の巨大高速飛行艦がそれを迎え撃たんと旋回し、三機のHWが赤く輝いて迎撃に移る。HWの狙いはルキア機だろうか、しかし真紅のディアブロが加速した。飯島機だ。BFの正面には極力入らぬように機動しつつ爆風を巻き起こして加速し隊より一千程度先行してHW三機目がけて突っ込んでゆく。
 相対距離六〇〇に入るとSRD‐02を撃ち放ち、追いかけるように距離を詰めるとエニセイ対空砲で猛射。三機のHWもまた弾丸の直撃を受けながらも赤く激しく輝き十六連の爆光を空間を埋め尽くす勢いで解き放つ。
 砲弾と光線が交錯する。方向は偏っている。包囲射撃ではない。ジャミング中和が効いている、飯島機は旋回しながらスライドして十六連の光線を次々に掻い潜る。一方の七連のエニセイ砲弾がHWへと次々に鋭く直撃してその装甲を穿ち、爆砕した。HWから紅蓮の光が膨れ上がり超爆発を巻き起こしながら空で弾けて散ってゆく。撃破。
「HW班。もしこっち来たら引きつけるから撃って!」
 相対距離七〇〇、ルキアは言いつつ最後の一機の上方より撃ち降ろす。弾丸が砲より勢い良く飛び出し一瞬で空間を制圧してHWへと迫る。真紅のHWは慣性を制御すると直角に急降下して回避した。一瞬で吹き飛んだ事からあるいは弱いのかとも思われたが、雑魚ではないらしい。飯島が鬼なのだと思った方が良さそうだ。
 飯島機を追ってHWの二機が前に出て来た所へ榊機が猛然と襲いかかった。超伝導アクチュエータ、ブーストを起動、距離四〇〇から十式高性能長距離バルカンで猛射しながら詰めてゆく。
 HWが翻り、弾丸が喰らいつき、敵の機動を読み、制限した所で榊はロックをかけると操縦桿の上部の発射ボタンを押し込んだ。忠勝の翼の下よりミサイルが切り離され、次々に煙と炎を吹いて超加速し、宙を駆け抜けてゆく。三発の八式螺旋弾頭がHWに直撃すると猛烈な爆裂を巻き起こした。その凶悪な破壊力を解き放ち、装甲を抉り爆発で消し飛ばしてゆく。
「彼らが減らしてくれた分、BFに戦力を割けるわね」
 ラウラは飯島機が猛射を受けている隙に上方より間合いを詰めると、榊機より猛攻を受けているHWへと迫りその爆裂と共に肉薄しつつ、空中変形スラビライザーを起動、航空機形態から人型へと変形した。
「こちらも各個撃破、全力でいくわよ!」
 真紅の力場を形成しつつ音速を超えて突撃し交差ざまにハイ・ディフェンダーを抜き放ち、極大の光線剣を発生させて振り降ろす。鍛え上げられた合金の刃と蒼光の雪村がHWの装甲を深く切り裂きながら抜けてゆく。
 次の瞬間、ラウラ機の後方で真っ赤な光が解き放たれた。HWが爆裂を巻き起こしながら大地へと向かって落下してゆく。撃破。流石の格闘兵器、良い威力だ。
 三島機もまた生き残りのもう一機のHWへとSRD‐02とSRRの二門で連射を浴びせている。敵AIを混乱させる事が狙いのようだ。HWは赤く輝いてスライドして素早く回避し、三島機は翻って味方機の元へと向かう。
「あの砲口は‥‥!?」
 一方、飯島等がHWの注意を惹いた隙にBFへと向かった井出は正面に備えられた大口径拡散プロトン砲を見てその巨大さに驚愕の声をあげていた。BFが旋回しその頭部が井出機の方向へと向く。敵艦正面には出来るだけ位置しないように井出機も注意を払っていたが、遠距離で狙われると上下左右の動きではどうにもならない。円は中心に居る方が回る距離は圧倒的に少なくて済むからだ。
『急速離脱します!』
 言い終える前に操縦桿を切る。敵の砲門からも光の粒子が集束し間髪入れずに超巨大な爆光となって空に解き放たれていた。
 拡散して広がり最大部で直径五百mもの空間を猛烈な破壊力を秘めた紅の光で埋め尽くす。範囲が広い。井出は咄嗟に回避機動を取っていたが回避しきれず光に呑まれ、その装甲が猛烈な勢いで融解してゆく。
 アルブレヒトは回避に専念して距離を取り、巻き込まれるのを逃れている。
『拡散型のプロトン砲‥‥! 厄介な‥‥』
 光を突き破って脱出し井出は高速で機動する巨大艦を見下ろして井出は呟く。
(「厄介だけど‥‥敵が大々的に使ってこない以上、何か欠点がある筈だ!」)
 その構造上、何かあるのかもしれない。欠点が単にコスト的な物だったらお手上げだが。
 アルブレヒトは井出と共に距離を取りながら様子を見つつBFの注意を自機の方へと向けさせんと飛行している。
 他方、玲奈機とロッテを組むユーリ機は井出が射撃を受けた隙に側面より一気に近距離まで突っ込んでいた。
(「拡散されるより近距離での集束状態の方が回避距離が短くて楽かな?」)
 という考えだ。というか、広くなるとあの井出ですらかわせなかった所を見ると至難。飛び込んだ方が拡散砲に対して有利なのは正しい筈。ユーリは巨艦へと接近すると30mm重機関砲で様子を見つつ射撃を繰り出した。猛烈な銃弾がBFの装甲を貫き、破壊を撒き散らしてゆき、フェザー砲が回転してユーリ機へと向けられ紫色の爆光が猛烈な勢いでディースへと襲いかかった。咄嗟に旋回する。ユーリ機、かなり速い。紫光弾の多くを置き去りにして回避してゆく。が、かわしきれない光が装甲を瞬く間に削り飛ばしてゆく。こちらもかなりの精度と威力を持っているようだ。
『デカいからって動きが遅いとは限らねぇんだよなあ‥‥やれやれだ』
 舌打ちしてアンドレアス。
 ユーリ機より逆サイドよりBFへと迫る。F‐108改‐ギャラルホルン、スロットルを全開に高速で突撃するとガトリング砲で甲板を薙ぎ払いながらそのまま抜けてゆく。長瀬機が後を追走し同様にレーザーバルカンでBFの表面へと光弾を撃ちこんでゆく。
『遠いと拡散、突っ込めばフェザー砲‥‥隙がないが、強いて言うなら一度に全方位には対応できないって事か?』
 一度突き抜けたアンドレスは自身の所感をそう長瀬へと述べた。ほとんどの機体はそうなので、改めて欠点という程の物ではないかもしれないが、一機が一度に繰り出せる手数には限界がある。実際、BFは井出機とユーリ機へと猛射を飛ばしているおかげで、アンドレアスと長瀬機への対空砲火は薄かった。
『なるほど、かかるなら一度に一斉にかかった方が良さそうだな。幸いあれだけの大物だ。狙える箇所も山ほどある』
 長瀬は言って頷き、各機へとその旨を飛ばす。
 HW、ルキア機や長瀬機を狙いにいきたい所だが、流石に遠すぎる。飯島機へと猛射を繰り出すもかわされて背後を取られ至近距離からSRD‐02の直撃を受けた所へ十八発の高分子レーザーの猛射を受けて撃ち抜かれ、爆散した。
 光を突き破った井出機、ブーストを発動、極超音速まで一気に加速してBFの至近まで接近すると、再度放たれた拡散プロトン砲を突進しながらスライドして回避する。やはり近い方が避けやすいようだ。蒼翼号はそのまま、その巨大な砲身へと突っ込むと斜めから入って翼の刃を炸裂させた。刃と鋼が激突し、火花と共に巨大砲の砲身が真っ二つに切断されて落下してゆく。叩き斬った。
 アルブレヒト機もまたMブースターを発動させて加速するとBFへと接近し叩き斬られた砲の奥へとレーザーキャノンを連射し、爆裂を巻き起こして完全に破壊する。
「後衛は任された! 存分に暴れてね」
 玲奈機、ブーストで加速するとライフルでBFの砲台へと弾丸を撃ち放つ。弾丸は高速で機動するBFの甲板に激突し火花を散らした。ユーリ機、それを受けて本格的にBFへと攻撃を開始する。至近武装がメインなので体当たりするハメになる事態に注意する。直角にぶつかるとほぼ確実に大破する予感がした。
 猛射して来るフェザー砲の光弾を受けつつも怯まずに飛び込み鉄弾の嵐を敵の砲座へと叩き込み、すれ違いざまに剣翼でその砲を切り裂く。猛烈な破壊力が炸裂して砲が割れ、紫色を連射しているそれは割れ目から光を洩らし次の瞬間、爆裂と共に自壊した。
 アンドレアス機は空をターンして再度BFへと向かうとパニッシュメントフォースを発動させると中央のフェザー砲を狙いポッドミサイルとUKミサイルを撃ち放つ。長瀬機もまたブーストを発動すると砲座をロックし対艦ミサイルを撃ち放った。ディアブロから放たれたミサイルが砲座を直撃して猛烈な破壊を撒き散らし、斉天大聖から放たれた対艦ミサイルが甲板の端に激突して大爆発を巻き起こしてゆく。
 榊機はBFの正面から迫ると井出機とアルブレヒト機が破壊した拡散砲の部分を狙って螺旋誘導弾を猛射してゆく。傷口から破るようだ。ミサイルが鋭く飛んで突き刺さり、艦の内部まで入って爆炎と破片を撒き散らしてゆく。
『皆お待たせ、援護するわ』
 再び航空機形態へと戻ったラウラ機もまたBFへと接近すると短距離リニア砲を撃ち放ち高分子レーザー砲より光を爆裂させて十五連の蒼光でBFへと破壊の嵐を巻き起こしてゆく。
『円形に布陣しよう! 誰かの攻撃は当たる筈!』
 ルキアは無線に言いつつBFへと接近すると、ロングレンジライフルで射撃し弾丸をその船体へと撃ちこんでゆく。
『護衛機と大砲を失えばあとは俎上の大魚、ね』
 ラウラの言葉通りやがて最後のフェザー砲も破壊されれば敵は最早撃墜されるのを待つだけの棺桶となった。BFが逃走を開始した時にラウラが言った。
『なるべく敵側頭上まで追い込んで撃墜出来ないかしら?』
『敵側?』
『地上』
『なるほど』
 傭兵達は攻撃の手を緩めると、敵艦が敵陣まで入るのを待って猛攻を加え、これを逃さず見事に撃墜してみせたのだった。



 かくて、拡散プロトン砲を装備した巨艦と三機のHWは撃墜され、藁城基地攻略隊は傭兵達の支援を受けて無事に基地を陥落せしめた。
「先行隊の彼ら、脱出して救助されてたらいいのだけど」
 地上、茜の陽が刺す奪還された基地の滑走路、彼方の施設に翻るUPCの旗を見上げながらラウラはそんな事を呟いた。
「瀋陽へ避難した人達との約束、解放への一歩になったかしら」
 勢力図の塗り替えの激しい場所。戻れば同じ。否。いつかの後退を恐れて前進を止めれば後退し続けるしかない。進まない者はその場から動けず明日は無い。子供でも知ってる自明な事だ。故に一歩は一歩。
 この一歩の積み重ねがこの大陸を解放し、やがてこの空に浮かぶ赤い星を撃ち抜く波動となる事を信じよう。


 了