タイトル:【BD】輸送船団護衛マスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/09/30 08:29

●オープニング本文


 人類が主導権を握っていた先ごろの戦いでは事前に準備を整えることができたが、今回は逆の立場だ。大規模な戦力移動の確保は決して容易な事ではない。
「私達には輸送手段を提供する用意があります」
 北米の企業連合を代表したミユ・ベルナールの申し出は、南北中央軍に諸手をあげて歓迎された。コロンビアへの復興投資が、既に失われることを座視し得ない額に上っているという理由があるにせよ。不足している護衛の為の戦力確保には、傭兵たちへ白羽の矢が立った。


 北米より出航し大西洋を南下する船団。五隻編成で大量の物資を満載した巨艦のうち一隻、空母ではなく取り急ぎ簡易の滑走路だけが取りつけられた船(離着陸のスペースを従来機より取らないのがKVの良い所だ)では慌ただしく人員が走りまわっていた。
 当然の事ながらバグア側が物資の輸送を黙って見守る訳もなく、防空網を突破してHWの編隊が輸送船団へと迫り来ていたからである。
「回せーっ!!」
 軍兵が声と共に腕を振る。空母でさえ狭いのに簡易のものとなったら、その滑走路の混雑は相当なものである。空へとあがれても近距離まで踏み込まれてしまっては、KVを無視して船が攻撃されてしまう。そうなればあっという間に撃沈だ。可能な限り遠方で迎え撃つ必要がある。そのように一秒を争う航空迎撃の場面となれば、誰も彼もが殺気だっていた。
 甲板に並べられたKVが一機づつ滑走路に進み出て加速しバーニアを吹かせながら空へと舞い上がってゆく。
 その時、船団旗艦の艦橋より各機へと通信が発せられた。
「哨戒隊より悪い報せが入った。南の他に東からも敵のワーム編隊が接近して来ているらしい」
 輸送船団の命運は元より、南米で補給を待つ友軍の命運を左右する一戦が始まろうとしていた。

●参加者一覧

藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
セシリア・D・篠畑(ga0475
20歳・♀・ER
リゼット・ランドルフ(ga5171
19歳・♀・FT
藍紗・バーウェン(ga6141
12歳・♀・HD
乾 幸香(ga8460
22歳・♀・AA
ヤナギ・エリューナク(gb5107
24歳・♂・PN
フローラ・シュトリエ(gb6204
18歳・♀・PN
レイード・ブラウニング(gb8965
21歳・♂・DG
夢守 ルキア(gb9436
15歳・♀・SF
ヘイル(gc4085
24歳・♂・HD

●リプレイ本文

「スティングレイ、出るぜ‥‥っ!」
 ヤナギ・エリューナク(gb5107)の声と共にF‐108改‐スティングレイのアフターバーナーが咆哮をあげ、艦上の滑走路を加速し爆風を巻き起こしながら空へと上がってゆく。
「挟み撃ちという方法を選んだか。厄介ではあるが‥‥各個撃破するチャンスとも取れる。全力で出迎えてやるとしよう」
 とレイード・ブラウニング(gb8965)。敵機急襲の報を受けて艦載のKV十機が蒼空に舞っていた。
 うちの一機、CD‐016G‐シレンスを駆るセシリア・ディールス(ga0475)は空は余り好きではない。
(「‥‥あの人も、何処かの空を、今も飛んでいるの‥‥かな‥‥」)
 胸中で呟く。ともあれ、引き受けた仕事だ。輸送船団の護衛、確りとやり遂げたい所である。
「ち、しくじったな‥‥まだ、傷が癒えきっていないか」
 F‐108改のコクピットの中、ヘイル(gc4085)が呻く。厳しい状態だが、受けた依頼は果たすが傭兵である。できる限りのことはしてみせたい所。
「済まない。今の俺は戦力としては最低の状態にある。簡単な援護ぐらいしか出来そうもない」
 ヘイルは仲間達にそう伝える。
「大丈夫、なんとかなるよ」
 夢守 ルキア(gb9436)が言った。傭兵生活も長ければそういう事もある。状況が悪くともプロとしてなんとかしたい所。
 ヘイルは今回は遠距離からの援護に徹するそうだ。傭兵達は相談し手早く打ち合わせると隊を二つに分け、それぞれ南と東へと飛んだ。


 南へと向かったのは藤田あやこ(ga0204)、藍紗・T・ディートリヒ(ga6141)、乾 幸香(ga8460)、ヤナギ、フローラ・シュトリエ(gb6204)の五機である。
「輸送船団が無事届かないことには、南米で戦っている味方の補給もじり貧になる可能性がありますし、ここは何としても護りきらないといけませんね」
 急行しつつ乾が言った。
「ロートルとはいえ、まだHWごときに後れを取る我ではない。まだ、先は長い この程度で船団の足をとめさせはせぬぞ」
 と藍紗。こちら担当の戦域はほぼ二年ぶりだろうか。四段階強化HWはその名の通り改造に改造を重ねられており昔日のそれとは一味違うが、いけるかな。
「謂わば多勢に無勢の現況‥‥その言葉に熨斗を付けてバグア共に贈ったるわ!」
 藤田はそう息まいている。
 やがて空の彼方にワーム編隊が見えてくる。HWが四体、CWが二体だ。
「攻撃の威力も落ちちゃうから、CWはなるべく早く消しておきたいわね」
 フローラはそう言った。各員素早く担当を打ち合わせる。
「OK、空の掃除といきますか‥‥っと!」
 ヤナギが頷き、
「HWは任せておくのじゃ、一機くらいなら我が抑えよう‥‥ちなみに、倒してしまっても構わぬのじゃろう?」
 藍紗が言った。何かのフラグが入った気もするが、気のせいだろう多分。
「迂回して来ると思うわ、本機はやや後方で敵機を観測、牽制狙撃に回る」
 と藤田。
 各機、戦闘機動に入りそれぞれ加速してゆく。相対距離一五〇〇、ヘッドオン。ヤナギ機はブーストを発動した。
 相対距離一千、乾機はバグアロックオンキャンセラーを発動、重力波を乱してゆく。
 相対距離四〇〇、四機のHWは赤く輝くと上方よりブーストで突っ込んで来たヤナギへと機首を上げてターゲットを合わせると一斉にプロトン砲を解き放った。一機四連、四機で十六発。ブースト機動、乾機のキャンセラー、遠く離れているがルキア機のジャミング中和が効いている。ヤナギ機スティングレイ、素早く旋回。閃光が次々にディアブロの至近の空を貫通してゆく。ヤナギ機、十四発回避し二発被弾。損傷率三割二分。CWへと迫り、発生した頭痛を堪えつつガトリング砲で猛射。八十発の弾幕を叩き込み被害を発生させる。
「回避行動をとらせ敵の時間を浪費させる!」
 藤田機PM‐J8‐看看兮もまたブーストとスタビライザを発動、HWの一機を射程に捉えるとD02ライフルで射撃。リロードしつつ二連射。二発の弾丸を叩き込んでその装甲を削る。
 藍紗機もまたHWへと迫る。彼女としては、同じ旧型同士なればその機動も見飽きたというもの、である。
「有人機ならともかく、無人機に遅れを取る我ではないぞ‥‥覚悟せい」
 本気でいくらしい。相対距離六〇〇、PM‐J8改‐朱鷺、スタビライザー、SESエンハンサーを併発、ガンサイトに敵機を納めるとレーザーライフルを発射、ドゥオーモを撃ち放ち、距離が詰まるとUK‐AAEMを二連射する。
 強烈な光線が突き刺さり、百発の小型誘導弾が飛んで激しい放電を巻き起こし、二発の誘導弾がHWに喰らいついて激しいエネルギー爆発でその装甲を吹き飛ばした。
 乾機‐R‐01E改‐バロール相対距離六〇〇、ヤナギ機が仕掛けたCWを射程に納めるとD02ライフルで発砲、リロード。弾丸が錐揉みに回転しながら空を裂いて飛び、CWに突き刺さってその装甲を貫いた。CWより漏電が発生し次の瞬間大爆発を巻き起こす。撃破。
 フローラ機PM‐J8改‐Hagel、もう一機のCWとの相対距離四〇〇、激しい頭痛が発生している。
 痛みを堪えつつターゲットをロックするとエンハンサを発動、UK‐10AAEMを二連射。誘導弾がCWを直撃してエネルギー爆発を巻き起こしその装甲を灼いてゆく。


 東へと向かったのはセシリア、リゼット・ランドルフ(ga5171)、レイード、ルキア、ヘイルの五機である。
(「補給を断たれるわけにはいきません。輸送船には攻撃させない‥‥守り切ってみせる‥‥!」)
 リゼットは迫り来る敵を睨み胸中で呟く。
(「ぐ、思ったよりも堪えるな。だが、行かないわけにもいかないか」)
 操縦桿を握って苦痛に汗をかきつつヘイル。
「CW発見、後背守ってくれる?」
 とルキア。
「‥‥了解、HWに仕掛けます」
 セシリアがそれに応える。
 東側の敵機はHW三機、CW三機だ。相対距離一五〇〇ヘッドオン。各機戦闘機動に入り加速してゆく。
 セシリア機CD‐016G‐シレンス、ブーストを発動、HWの一機を狙って百発の小型誘導弾を撃ち放ち、それを追いかけるように加速し突っ込んでゆく。誘導弾が素早く翻るHWへと喰らいついて爆裂を巻き起こす。HW三機は赤く輝くとセシリア機へと向けて一二連の光線を爆裂させる。ブーストとアンチジャミングが効いている。素早くスライドして六発回避の六発を被弾。紅光が装甲を削り取ってゆき損傷率七割割二分。セシリア機、レーザー砲の間合いへ飛び込む。CWの怪音波により猛烈な頭痛が発生した。痛みを堪えつつレーザー砲を猛射、HWはスライドしてかわす。
「まずはセオリー通りに‥‥破壊させて貰う!」
 レイード機DH‐201A‐ザッパーもまたブーストを発動、CWへと向かって突っ込んでゆき肉薄。凶悪な頭痛を堪えつつファランクス・アテナイの弾幕からピアッシングキャノンで砲弾を叩きこむ。七五〇発の銃弾と二連の砲弾がCWへと突き刺さってその装甲を穿ってゆく。
「イクシオン、今回は攻めのカードで行くよっ!」
 ルキア機、レイードに続いて飛び込むと発生した頭痛を堪えつつ同目標を狙ってピアッシングキャノンを発射。唸りをあげて飛んだ砲弾が損傷しているCWへと突き刺さり爆裂と共に止めを刺す。撃破。
 CD‐016G‐Edainを駆るリゼット、CWへと肉薄すると頭痛を堪えて重機関砲から焔を吹かせつつ猛射し四〇〇発の銃弾を叩きこむ。
「こちらヘイル。これより援護を開始する。命中には期待しないでくれ」
 ヘイル機は戦域を旋回して回り込むと、発生した頭痛を堪えつつリゼットが狙ったCWへとガンサイトを合わせてSG‐01ライフルを発砲。ライフル弾を叩き込んでCWの装甲を穿つ。CWなら当たるようだ。


 南、ヤナギ機、CWを狙ってガトリング砲を連射。弾幕の嵐を叩き込んで蜂の巣にして爆裂と共に粉砕する。撃破。
 同時にHWの四機がヤナギ機へと光線を猛射してゆく。乾はキャンセラー継続中。ブースト機動で翻りつつ十五発回避、一発被弾。損傷率四割八分。
 藍紗機はスタビライザ、エンハンサを継続、HWへと距離を詰めるとM‐12帯電粒子加速砲より極大の爆光を二連射し誘導弾を連射する。猛烈な光がHWの装甲を消し飛ばし、二連の誘導弾が炸裂してHWを爆裂と共に消し飛ばした。撃破。電子援護をもらえれば十分いけるようだ。
 藤田機はブースト、エンハンサを発動しHWの一機へと肉薄すると荷電銃を猛射。三連のプラズマを叩き込んでHWの装甲を削ってゆく。
「我慢を強いられましたけど、これからが本領発揮です。わたしと【バロール】の力を思う存分に発揮させて貰いますね」
 乾、藤田が射撃しているHWへとロックサイトを合わせるとUK10誘導弾を三連猛射。全弾命中させて爆裂の嵐を巻き起こす。
「船団に手出しはさせないわ。落ちなさい!」
 フローラもまたターゲットを合わせエンハンサーを発動させてHWへと捻り込みプラズマライフルで猛射。増幅された十五連の強烈な荷電粒子の光がワームの装甲を灼きその装甲を削り飛ばしてゆく。次の瞬間、HWより漏電が発生し爆裂と共に四散した。撃破。
「どれ、ここは大丈夫かの‥‥向こうは一人まともに戦えぬ者がいるからの‥‥我は救援に向かう、あとは任せたのじゃ」
 藍紗機はそう無線に言ってブーストを発動、東へと向かう。


 三機のHWは赤輝くとセシリア機へと一機四連、三機で十二連射。
 セシリア、頭痛を堪えつつブースト機動。操縦桿を切り機体を旋回させる。
(「‥‥避けきれない」)
 精度が落ちている。紅の光の嵐に呑まれた。プロトン砲に撃ち抜かれてシレンスから焔が吹き上がり大爆発を巻き起こす。砕け散った翼が空に破片を撒き散らし、炎に包まれた胴体が煙を吹き上げ錐揉みながら落下してゆく。大破。
「ヘイル、レイードの援護を、ルキア機、HWへと向かうよ!」
 ルキアは損傷具合と火力を計ると無線に一報を飛ばしつつターゲットをHWへと移す。
 リゼット機は重機関砲で八〇〇発の銃弾を叩き込んでCWを蜂の巣にして爆裂と共に大破させ、リロード。
 レイードがキャノンを連射しアテナイから弾幕を叩き込み、ヘイルがリロードしつつライフル弾を発射して最後のCWを撃破する。
 ルキア機はブーストを発動、リロードしつつピアッシングキャノンを連射して先にセシリア機が誘導弾を炸裂させたHWへと二連の砲弾を叩きこむ。


 南。
 乾はキャンセラーを継続中。ヤナギ機はブースト機動から翻ってプロトン砲を回避しつつ藤田に無線を飛ばし、二機のHWをロックオン、五〇〇発のK‐02誘導弾を猛射する。誘導弾が次々に炸裂して大爆発を巻き起こし、
「FOX‐3!」
 藤田機はタイミングを合わせてエンハンサーを発動させ二〇〇発のドゥオーモを撃ち放ち次々に直撃させて破壊の嵐を解き放ってゆく。
「逃がさねェゼ‥‥?」
 さらにヤナギ機がロケット弾を撃ち放ち、乾機が螺旋誘導弾を猛射し、フローラ機がプラズマライフルを連射する。集中攻撃を受けた一機が爆裂と共に大破し四散した。撃破。
 最後の一機がヤナギ機へと連射するも当たらず、四機からの集中攻撃を受けて爆散した。


 東、三機のHWがルキア機へと十二連の光波を飛ばし、
「HWAが一番損傷率高いよ!」
 ルキアはナンバリングして言いつつ素早く翻って十一発の光線を回避し一発を被弾する。損傷率一割一分。
「牽制する。良く狙えよ?」
 レイード機はブーストで加速するとHWAへと十六式螺旋誘導弾を三連猛射、次々に直撃させて大爆発を巻き起こす。
 すかさずリゼット機がドゥオーモを撃ち放ち加速して突っ込み、ルキア機がキャノンを連射しヘイル機がライフル弾を撃ち放つ。
 衝撃に態勢を崩しているHWへとドゥオーモが炸裂し、さらに次々に砲弾と弾丸が突き刺さってゆく。リゼット機が穿たれているHWの側面から稲妻の如く入って剣翼で交差ざまに叩き斬った。強烈な破壊力。
 Edainの後方で赤い光が広がり、爆裂を巻き起こしながらHWAが砕けて散ってゆく。撃破。
 HW二機はルキア機へと射撃するも当たらず、レイードの誘導弾、ルキア機のキャノン、ヘイル機のライフル、リゼット機の剣翼が唸って装甲を削られ、さらに十秒後に集中攻撃を受けて撃破され、藍紗が到着し五機から集中攻撃を受けて最後のHWも虚空に散ったのだった。



 かくて輸送船団へと挟撃を仕掛けて来たワーム編隊は撃破され母艦に戻った九機のKVは歓声と共に迎えられた。セシリアと乗機のシレンスも艦隊によって無事に回収され、その健闘を讃えられた。CWが生きている間に矢面に立つのはきついものだ。
 輸送船団は無事に南米へと到着し、輸送された大量の物資を港へと降ろし始めるのだった。
 南米の戦況は混沌としており、その勝敗の行方は未だ見えないが、この作戦で守られた物資は友軍の確かな助けとなるだろう。


 了