タイトル:地の底の闘技場4マスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/06/18 17:00

●オープニング本文


 ある者は傭兵仲間から、ある者は治安の悪い路地裏の酒場の店主から、またある者はその筋の情報屋から、この場所の情報を聞いてやってきた。
 世界の何処かにあるという、キメラと人とを戦わせ、それを賭けの対象とする場所が。それは地の底の闘技場。金と血が、欲望と暴力が荒れ狂う場所だ。
 ある者は金の為、ある者はスリルを求めて、またある者は別の理由から‥‥その場所に集まり、ある者はどちらが勝つかに金を賭け、ある者は武器をとって命を賭け、ある者は食事を取りながらモニターでそれを眺める。
 要するに鉄火場だ。
 メトロニウムで三方を覆われた室内。地面だけは硬い石だ。百メートル四方、高さは五十メートルほどか。鉄血の箱の中、それがリングだ。設置された無数のカメラがその場所の様子を映し出していた。


 コロッセオの中、五名の男女が爪を、大剣を、槍を、斧を、太刀を手に刃の閃光を巻き起こしていた。
 一様に身に密着する黒のボディスーツ、ベスト、ブーツを身に着けている。しかし身体のラインの凹凸は歪だった。ある者は腿が、ある者は腹が、ある者は上腕が、身体のあちこちが、箱でも詰められているように飛び出ている。皆一様に顔の半分が、あるいは全体が、鉄灰色に輝く鋼で覆われていた。鋼は肉に喰い込んでいた。肉と鋼が繋がっている。彼等彼女等の瞳は真紅の色に淡く発光していた。この男女は、鋼と肉が混ぜられた生体兵器だった。人をベースに造られたサイボーグキメラと呼ばれる者達。
 その力は、凄まじい。
 キメラと戦っている八人の能力者達は次々に切り刻まれ鮮血の海に沈んでゆく。後方で銃を手にしていた少年がその有様を見て悲鳴をあげた。七名の能力者を肉塊に変えた四人の戦士達が振り向き、少年へと向かって一斉に走りだす。少年は銃を撃ちつつ、やがて恐怖に負けたように踵を返して走りだした。狭いリングの中を助けを求める声をあげながら逃げ回る。後ろから爪と盾を持った男が詰め、太刀を手にした女が横合いから疾風の如くに間合いを詰めた。一撃が少年の足を刈り取り、少年が血をぶちまけながらよろけ、後方から爪を持った男が追いすがって打ち倒した。倒れた少年に対し大剣が、斧が、槍が叩き込まれ瞬く間に肉塊に変えてゆく。
「あら‥‥能力者、というからには一人くらい倒してくれるかと思ったのですけども、呆気ないものですわね。特に最後、無様な。つまらないですわね」
 モニターで様子を見ていた女がグラスに口つけながら嗤った。キメラ達の勝利が告げられまばらな歓声が周囲のテーブルからあがる。
「今回はあまり質の良い挑戦者ではなかったようですな。まぁしかし、それを差し引いても流石はドクター・ヴァイナモイネンが創りだした最新型キメラだけはあるという事ですかな」
「ヴァイナモイネン‥‥ああ、あの狂人? 九州軍に負けっぱなしだから優秀な印象はないのですけども」
「それはドクターの産み出すものが弱いという訳ではなく、敵が強いのでしょうな。ほぼ毎回の如くULTの傭兵やら村上軍団やらが立ち塞がるのだそうです」
「ULT――U、L、T、の傭兵」
 女が真っ赤な唇を歪めて笑った。
「覚えていますわ。ええ、覚えていますとも。彼等は皆、良い戦いをしてくれました‥‥天使と戦った時など、腹をぶち抜かれながら頭を砕くなんてとても素敵でしたわぁ」
「は、は、は、好評でしたか‥‥では、どうですかな? 次の挑戦者はULTの傭兵達で編成してみましょうか?」
「あら‥‥本当に? それが出来るのなら、是非そうしてもらたいですわね?」
「では、そのように致しましょう」
「うふふ‥‥また愉しませてくれると良いのだけど」
 女はそう言って笑い、赤い液体の入ったグラスを干したのだった。

●参加者一覧

アグレアーブル(ga0095
21歳・♀・PN
御影・朔夜(ga0240
17歳・♂・JG
如月・由梨(ga1805
21歳・♀・AA
エマ・フリーデン(ga3078
23歳・♀・ER
宗太郎=シルエイト(ga4261
22歳・♂・AA
アンドレアス・ラーセン(ga6523
28歳・♂・ER
アンジェリナ・ルヴァン(ga6940
20歳・♀・AA
斑鳩・八雲(ga8672
19歳・♂・AA
神撫(gb0167
27歳・♂・AA
シン・ブラウ・シュッツ(gb2155
23歳・♂・ER

●リプレイ本文

「負ければ死。リスクが増えない者は全財産を賭します。賭け専門の者にとってそれでオッズが下がるのは面白くない」
 控室、黒服は御影・朔夜(ga0240)にそう答えた。故に禁止されている、と。
「‥‥つかぬ事を聞きますが。あのキメラの仕入れ先‥‥もしかして、九州じゃないですか?」
 宗太郎=シルエイト(ga4261)が問いかけた。黒服は答えなかった。しかしこの不愉快な感覚には覚えがあった。
(「発想力は認めますが、模造は苦手分野のようだ‥‥出来損ないは、焼却処分してやります」)
 今回集まった傭兵は十名。皆、それぞれの目的を胸にこの場所へやってきていた。
――こんな地の底で何を得ようというのか? 誰かが言った。だが、ここでしか手に入らぬ物もまたある。
 アグレアーブル(ga0095)はじっとモニタを見ていた。身体が疼くのを感じる。見ているだけのは、もう飽きた。自分がこちら側の人間である幸運に感謝する。
 だが、
「こういう場所に来る人だとは思わなかった」
 赤毛の娘はちらりと視線を横にやる。そして意外だ、と言った。
「‥‥‥‥ヴァイナモイネン、て名に聞き覚えがあってな」
 視線の先の男は紫煙と共に言葉を吐いて答えた。アンドレアス・ラーセン(ga6523)だ。
 殺戮の饗宴の箱。まさかこんな物が開催されているとは、胸糞悪いを通り越して笑えてくる。
(「かつて、深入りするなと刑事は言った」)
 だから此処でBKなんて口走る気は毛頭ない。だが――考え過ぎか? だが、金、キメラ、親バグア、UPCの内部と、利権の構造、取引――そして、鉄火場。もし、ここがそれなら。
 ‥‥男は首を振った。今はそれを考える時ではない。
 顔をあげて黒服を見る。その視線の先が何処へ向かっているか、黒いグラスのせいで解らない。顔は決してこちらに向けない。だが、
(「黒服の連中‥‥俺の事、監視してないか?」)
 それは気のせいかもしれなかったが――
「‥‥変わりませんね、ここは」
 斑鳩・八雲(ga8672)が苦笑しながら言った。この場所に来るのは既に三度目だ。控室、やはり独特の空気が渦巻いている。開催者や観戦者も含め随分と物好きが多いものだと思う。もっともそれは斑鳩自身についても言える事だが。
(「‥‥昔でしたら、馬鹿馬鹿しいの一言で切って捨てたのでしょうか」)
 如月・由梨(ga1805)は胸中で呟いた。昔なら戦いを求めてこんなところまで来るなんて有り得なかった筈だ。ここまで来た真意が自身でも分からない。
(「ただ、戦場を求めて、というのは確かかもしれませんね‥‥」)
「前に来たのは、いつだったかな‥‥」
 朧 幸乃(ga3078)が呟いた。彼女も以前この闘技場で戦った事がある。
(「不謹慎だけど、知人が多いとなんだか少し安心しますね‥‥」)
 胸中で呟く。命を賭けるに見知った者達と肩を並べられるのは幸運な事だ。
「しかし今回は、何とも形容し難い敵ですね。大猿の方が、まだ可愛げがありましたよ」
 斑鳩が鮮血だけが遺されたモニタの中のリングを眺め、のんびりとした口調でそんな事を言っている。
「喜ばしい事態ではありませんが、これはこれで楽しめそうです」
 シン・ブラウ・シュッツ(gb2155)はそう言った。今回は仕事ではないからだ。
「ミラーサイボーグ‥‥いや、そう決めつけて当たるべきでは無いか」
 黒髪の女が言った。アンジェリナ・ルヴァン(ga6940)だ。
「そういや、ツヴァイって‥‥ザ・デヴィルっぽいな‥‥」
 と神撫(gb0167)。
「まぁ、何者かに似ていようとただそれだけのこと。アレそのものの本質を見極めて‥‥撃破するのみだ」
 とアンジェリナ。
「そうだな。どこまで強くなれたのか、確かめるにはいい相手だ」
 どこまでできるがわからんが、やってやるさ、と神無は言った。


「久々のステージって奴だ。援護はしてやる、魅せろよお前ら」
 アンドレアスが言った。ゲートが閉まりきるよりも前に一斉に殺し合う者どもが駆け出してゆく。中央へ向かう最速はフィア、次いでアグレアーブル。風の如くに駆ける。
「来いよ――お前の相手は私だ」
 三番手、御影。相対七十。突撃しながら左の拳銃をフィアへと向け発砲。眼つきの悪い女は素早く方向を切り返して弾丸をかわした。御影はデヴァスで射撃、足を止めて狙いをつけ連射、三点バースト四連。眼つきの悪い女は稲妻のように奔りしながら突っ込んで来る。弾丸は三発が突き刺さっていたが残り九発空を貫いている。速い。女が眼前まで迫り御影の右へと踏み込んでくる。御影は素早く退がりつつ左の拳銃で二連射。女は突進しながらスライドし入り身にはいって銃口をかわす。脇に構えられた刀が光る。五連の閃光が突き抜けた。御影の全身から血飛沫が勢い良く噴出する。全部入った。負傷四割四分。
 アグレアーブル、疾風脚発動、ドライの側面へと回らんと走る。日本人形のような少女がこちらを向いている。弧を描く軌道を取りつつ片手で横へと黒猫を向け発砲、四連射、回り込まんと走る。ドライは左右に体を振って乱数回避。二発が虚空へ抜け、二発が少女の身に突き刺さる。シン、相対三〇まで距離を詰め、以降は円弧を描くように駆けて間合いを保ちつつ隙を窺う。アンドレアスはドライへと詰め弱体を発動し、如月、アグレアーブル、アンジェリナ、シンへと練成強化を発動した。それぞれの武器に光が宿る。
 朧は周囲の様子を確認しつつアンドレアスの傍らに立つ。対峙者達は上手くそれぞれの相手へ激突出来そうか? このままいけば当たりそうに見えた。朧は付近で直衛につきつつ、超機械をかざして五連の蒼い光の電磁嵐を発生させる。狙いはドライ。少女は地を蹴りつけて素早く横に跳んだ。三連の嵐が何もない空間で炸裂し、二つの嵐が女を捉えて呑み込んだ。
 シン・ブラウ・シュッツ、横に跳んだドライの着地の瞬間を狙い澄まして、左右のSeeleとLichtを解き放つ。
「以前戦ったサイボーグは見た目以上にタフでしたね。貴方はどうですか?」
 呟きつつ練力を全開にし左右のエネルギーガンから流星雨の如く光弾を猛射する。必殺のWalzer ‐Meteorstrom‐十二連撃。いきなり決めにいった。電磁嵐の中に着地したドライへと閃光が襲いかかり次々に貫いてゆく。黒のボディスーツを焼き穿ち、爆裂を巻き起こした。全弾命中、壮絶な破壊力。雑魚なら一瞬で消し炭だ。しかしドライは凶悪なキメラ達の中でも特に頑強だった。半分以上持っていかれたが立っている。
「‥‥さぁ踊ろうぜ、この猿マネ野郎!」
 シルエイトVSアインス、ヴァイナがいれば誤解だと主張したかったろうが言われてみると似ているか? 黄金の槍使いが激突する。その間合い、得物の長さは同じ、長身な分シルエイトの方が僅かに広いか、牽制するようにランスを繰り出す。切っ先がアインスの脇をかすめ抜けて行く。アインスは疾風の如くに踏み込むと喉を狙って切っ先を螺旋に回転させて放つ。シルエイト、咄嗟に首を振るも脇が抉り取られて血霧が噴出した。アインスが嵐の如く突きを連射してくる。瞬く間に身に穴が空き血塗れになってゆく。抉られつつもカウンターの槍撃を放つが、悉くが空を切り、あるいは穂先で払われる。当たらない。負傷二割三分。
「さて‥‥俺でどこまで持たせられるかな‥‥!」
 神無、突っ込んで来るツヴァイへと重心や視線でフェイントを飛ばしつつ右側面へと入る。流し斬りを発動、脚を狙って長さ2.3mの大斧を竜巻の如くに振るう。ツヴァイは低い態勢から向き直り盾で受け止めた。鋼と鋼が激突して火花が散る。ツヴァイはそのまま強引に突っ込んで来る。神無は間合いを保とうと後退しながら引き戻した斧を振り降ろす、と見せかけ深く身を沈め脚への薙ぎ払いへと切り替えた。ツヴァイは突進しながら跳躍して避け、爪を繰り出す。神無が咄嗟に頭部を振る。爪が耳を抉りながら抜けてゆく。ツヴァイはその勢いのまま身を神無へとぶちあてると疾風の如く爪撃を繰り出す。神無は後退しながら一発をかわし、爪に肩を切り裂かれ、額が割れ、脇を貫かれて捻られ掻っ捌かれる。赤色がぶちまけられた。負傷四割二分。
「軽口を叩く暇は‥‥ふふ、ありませんかねぇ」
 笑みを浮かべつつ斑鳩が駆け、赤髪のヌルが大剣を手に弾丸の如く突っ込んで来る。大男は突進の勢いを乗せ担ぐような態勢から颶風を巻き起こして鉄塊を振り降ろす。斑鳩は突進しながら盾を翳し身を捻りざま払うように叩きつける。轟音が響き渡った。盾越しでも激痛が腕を貫いてゆく。逸れた鉄塊が石畳に激突し爆砕した。斑鳩は破片が舞う中を一歩踏み込み、手に蒼く眩く光の刃を出現させる。天空から蒼雷が落ちるかの如く機械剣を振り降ろし、間髪入れず逆袈裟に斬り上げる。ヌルは後退するも初撃を避け損ね機械部から小さな火花を巻き起こした。だが大男は怯む様子を見せず、遠間から反撃の鉄塊を振り回す。竜巻の如き猛攻。斑鳩は盾をかざし後退しながら止めて、止めて、止めて、止める。逸らしているが腕が砕けてゆく。負傷三割。猛烈な破壊力だ。活性化を連打して対抗する。
 如月、シンの猛撃を受けて身体のあちこちから火花を散らしているドライへと突っ込む。機械人間が斧を構える。まだまだ死んでない。油断なく長柄戦斧を構え間合いに踏み込む。まだ仕掛けない。相手がリングに破裂音をあげて踏み込み肉厚の豪斧を振り降ろして来た。如月は深く腰を落として戦斧をかざす。斧と斧が激突して轟音が鳴り響いた。貫通する衝撃が腕から伝わり身を抜けてゆく。凶悪な破壊力。視界がブレた。止めても連打を受けると不味い。
「銀色の残光に金色の一閃、機械の眼で捕えきれるか‥‥?」
 アンジェリナが追随している。練力を解放、如月に斧を叩きつけているドライの横手から全身鎧の自重を突撃に乗せて踏み込み、脇構えから薙ぎ払いを放つ。ドライは斜め後ろへ一歩後退して回避。如月は急所突きを発動、長柄斧を振り上げ少女の額を狙って猛然と打ち込みをかけた。凶悪なパワーの激突。ドライの戦斧と如月の長柄斧が激突し轟音と共に猛烈な衝撃が逆巻いた。銀の女戦士が振り抜いた大太刀を八双に、稲妻の如くに袈裟に放つ。ドライは噛み合わせた斧を支点に横に回って避けた。その勢いのまま如月に肩を当てアンジェリナの側へ吹き飛ばさんとする。脇下に肩が入って如月は衝撃に息を詰まらせたが踏みとどまる。重心が低い、下がらない。目論見が外れたドライは一歩後退しながら戦斧を振り上げ、後方から回り込んで来たアグレアーブルがその後頭部をハイキックで蹴り抜いた。如月は一歩下りつつ長柄斧を振り上げ、渾身の力を込めて振り下ろす。ドライはよろめきつつも咄嗟に斧を振り上げて受け止めんとする、が、それよりも前に横から伸びて来た太刀の切っ先が脇腹に滑り込んだ。動きが止まった瞬間、ベオウルフが身を折ったドライの脳天に激突する。アンジェリナは手首を返し、突き刺した太刀を捻りそのまま横に掻っ捌く。ドライの頭部と脇から血飛沫が吹き上がり膝が落ちる。間髪入れずに如月は斧を繰り出し吹き飛ばした。アグレアーブルが破裂音をあげて駆け体重を乗せて顔面を爪で踏み抜きアンジェリナと如月が渾身の力を込めて大太刀と長柄斧を腹と胸部へと叩きつけて爆砕した。ドライの瞳から光が消える。撃破。
 御影は練力を全開にすると即射を発動、貫通弾をリロードし二連射、強弾撃。血に濡れた牙を剥き左右の拳銃で怒涛の連射を開始する。右で七連バースト左で七連射、弾丸の嵐を解き放つ。フィーアは素早く斜めに踏み込んで弾丸を回避しながら太刀を振るって剣閃の嵐を巻き起こす。両者は高速で立ち位置を変えながら銃撃し、斬撃を放つ。
 御影、襲い来る六条の剣閃、一発以外全部喰らった。スーツがズタズタに裂かれ全身が真っ赤に染まってゆく。負傷八割五分。フィーア、九回回避五発被弾。壮絶な破壊力が荒れ狂った。女は高速で踏み込んだ勢いのまま転倒し、鮮血をぶちまけ、リングに赤河を引きながら滑ってゆく。
 紙一重、とった。
 御影は銃を手に、足跡をつけながら、地でもがいている女へと近づいてゆく。
「まぁ、出来は悪くなかったが‥‥所詮は路傍の石と言った所か」
 男は退屈そうに言って見上げたフィーアの顔面に鉛玉を叩き込んだ。撃破。
 アインスは疾風の如く槍を繰り出し、シルエイトに穴を開けてゆく。負傷四割八分。アインスはシルエイトの繰り出す穂先を踏みこんで回避しざま、石突で頭部を殴りつけ、槍を回転させ穂先で薙ぎ払う。頭部に一撃を受けつつもシルエイトは狙っていた。敵が薙ぎ払いのモーションに入った瞬間に叩きつけるように自身も薙ぎ払いを繰り出す。槍と槍が激突し爆炎が荒れ狂った。
「捌いてみせろよ、技自慢――!」
 凶悪な爆裂に弾かれアインスが仰け反っている。シルエイトは反動の勢いのまま身を一回転させると薙ぎ払いを繰り出した。穂先がアインスの脇腹を強打し爆炎を吹き上げる。間髪入れず右側面へ踏み込む。振り上げたランスの先、爆熱の輝きが宿る。裂帛の咆哮と共に身を折っているアインス目がけ渾身の力を込めて振り下ろす。猛烈な打撃音が響き渡った。
「残念――」
 シルエイトは頭部を打ち抜いた勢いのまま膝を折って沈みこみ、伸びあがって穂先を繰り出す。切っ先が顎に迫る。鈍い手ごたえ。ぶち抜いた。
「もう一発だっ!!」
 次の瞬間、壮絶な爆裂がキメラの頭部を吹っ飛ばした。
 神無はツヴァイからの連撃を上体を反らしてかわし、後退してかわし、四連に滅多斬りにされつつも突き飛ばすように斧を叩きつける。ツヴァイは素早くかわし、盾で受ける。神無、負傷六割七分。
「戦士な奴の気持ちは解んなくてね。勝手に援護させて貰うぜ」
 アンドレアスは練成治療を発動、神無に三重、斑鳩に一つ飛ばした。男達の身がみるみるうちに回復してゆく。さらにツヴァイへと練成弱体を飛ばす。変化は見えないが、恐らく入った。
 アグレアーブル、バックアタック、巨漢の上半身を狙って銃撃する。背後からの弾丸はさすがにかわせずツヴァイの身から鮮血が吹き上がる。隙を見逃さずシン・ブラウ・シュッツ。
「必ず殺す技で必殺技、いい響きですよね」
 練力を全開にし必殺のSymphonie‐Sturm‐を叩きこむ。十四の閃光の牙が次々に巨漢の身に喰らいつき消し飛ばしてゆく。撃破。
 ヌルが鉄塊を振るい回復した斑鳩の身を切り刻む。朧が電磁嵐を発生させ、ヌルは咄嗟に飛び退き連続して発生する電磁嵐を回避してゆく。やがて避けきれずに呑み込まれた。斑鳩はその隙に活性化を発動、ヌルへと蒼刃で斬りかかる。ヌルは飛び退いて回避。その背後から斧が激突し、脳天に大太刀が叩き込まれた。如月とアンジェリナだ。斑鳩が両断剣を発動させて踏み込む。三方からの猛撃を受けてさしものヌルも堪え切れず、鮮血のリングに沈んだのだった。