タイトル:【BI】戦迅(5)マスター:望月誠司

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 15 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/08/02 22:27

●オープニング本文


前回のリプレイを見る


 黄塵吹き荒ぶ荒野の果ての果て、ユーラシア大陸がインドの戦場。
 ヒマットナガルを陥落させ周辺を平定し後方を固めたバーブル師団は、準備を整えるとカーティヤワール半島解放を掲げ、グジャラート州バーオナガルへと向けて進撃を開始した。
 カーティヤワール半島の大半はバグアの支配下にあり、UPCインド軍と戦線を広い範囲で展開して日夜対峙を続けている。二万を数えるバーブル師団はその戦線を増強する形で向かう事になる。
 アフマダーバードを後方の支えに南下、戦線を押しこむのが目標だ。バーブル師団隷下のバドルディーン歩兵連隊隷下のアブトマート大隊隷下のディアドラ中隊もこの戦線の一部を担って前進し、バグアの軍勢と対峙した。
 UPC軍とバグア軍が荒野を前進してゆく。両軍合わせて多数の自走砲と戦車が撃ちあい、砲弾が突き刺さって爆炎と共に大地を爆砕し、あるいは人と車両を消し飛ばしてゆく。
 轟音と共に砲火が吹き荒れる中、万のキメラの群れが幾つかの集団に別れ津波の如く突撃を開始したのが確認され、それを迎え撃つべく能力者達も幾つかの隊に別れて移動してゆく。その基本は横隊だ。砲兵中隊長ランバートはその様を見てまるで旧時代に逆戻りしたかのようだと思った。だが非能力者達の戦いならともかく、能力者とキメラに対しては非SES兵器では頑強な彼等に対してはジャミングの影響で命中力も火力そのものもまるで足りず、雪崩れ込まれて撃破される。ならばSES兵器でとなると射程が短いので撃ち倒す前にやはり雪崩れ込まれる。剣の時代、という程ではないが、一昔前のアウトレンジ戦闘から一転して白兵戦が猛威を振るっていた。突撃を止める槍が必要なのだ。
「よし、出番がやってきたぞ皆の衆。大陸で毎度お馴染み横隊戦だ。キメラ隊の突撃を止めてくれ」
 傭兵中隊の隊長を務めるディアドラの声が支給されているインカムの無線から響いた。今回は指揮戦車に搭乗して支援砲撃を行っているようだった。
「死なない事、抜かれない事、無茶しない事、優先順位はそれでやってくれ」
 ブロンドの女大尉はそんな事を言った。
 バーオナガルは守りの堅い都市では無い。戦線を破れればバグア軍は戦線縮小の為、都市を放棄して後退するであろうというのが大方の見解だ。
「先は長いが一つ一つ陥としてゆきたい所だ。各々目標意識を持って行動してもらいたい」
 と戦前にバジャイ参謀長は全軍に述べ、
「難しい事は考えなくて良い。目の前に集中して敵を倒し、隣の味方を助けろ。後はお偉いが勝手にやるさ」
 と歩兵大隊長のアブトマートは言った。能力者隊をまとめるディアドラの言葉は先のアレだ。
 どれが正しいとも言えるものではないが、立ち位置と性格によって何を重視するかは違うらしい。
 ならば傭兵達は何を見て戦うのか――それはきっと、それこそ千差万別なのだろう。
「なんというか、激戦区だね」
 橋でやってた頃が懐かしい、と青年が言った。彼の名前は山門浩志、ディアドラ隊とは色々縁があるらしい。色々迷ったが参戦したようだ。今回は第五傭兵分隊に所属している。
 キメラが駆け、能力者軍兵が銃を構え、傭兵達がそれぞれの武器を構える。激突の時が、迫り来ていた。





■作戦目的
 持ち場の守備

■所属隊
 ディアドラ中隊隷下の歩兵第五傭兵分隊となります

■敵キメラ
 1Tに最大100m程度突撃します。移動攻撃します。狼人、豚鬼、赤小鬼、骸骨兵の劣化型、数で勝負な方針らしい。武装は刀、槍、大剣、斧等です。飛び道具はありません。個体差はありますが、攻撃力400あれば期待値でれば一撃で倒せます。攻撃250でも両断剣・円閃を使用すれば期待値で一撃で斬り倒せます。紅蓮衝撃だと150程度。(スキルや消費アイテムの+は相対的に高めです)
 敵の攻撃、命中、回避はおおよそMOBですが、囲まれて一斉攻撃を受けると補正率が凄い事になる上に装甲の隙間等狙いますので高LVの方でも死にます。上手く連携してください。

■味方戦力
 砲兵隊は非SESなのでおよそ役に立ちません。
 指揮戦車隊は自己判断で危険そうな隊を支援します。余裕がありそうな所へは砲弾は飛びません。
 ヤマト青年の武装は銃底と剣にもSESが付いた銃剣銃とアーミーナイフ。クラスはエクセレンターです。そこそこ手練。要請が競合しなければそれに従って戦います。競合した場合、特に無い場合は自己判断で動きます。

■特記
 参加者が十一名に満たない場合は「参加者の皆さん+ヤマト+名も無き剣豪傭兵達」で合計十二名になるまで剣豪達が人数分加わります。

●参加者一覧

ノエル・アレノア(ga0237
15歳・♂・PN
ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
叢雲(ga2494
25歳・♂・JG
ゼラス(ga2924
24歳・♂・AA
小鳥遊神楽(ga3319
22歳・♀・JG
アッシュ・リーゲン(ga3804
28歳・♂・JG
辰巳 空(ga4698
20歳・♂・PN
ファルル・キーリア(ga4815
20歳・♀・JG
クラーク・エアハルト(ga4961
31歳・♂・JG
皐月・B・マイア(ga5514
20歳・♀・FC
アンドレアス・ラーセン(ga6523
28歳・♂・ER
ジュリエット・リーゲン(ga8384
16歳・♀・EL
リュドレイク(ga8720
29歳・♂・GP
ティリア=シルフィード(gb4903
17歳・♀・PN
ファタ・モルガナ(gc0598
21歳・♀・JG

●リプレイ本文

 開戦前。
「やっと来たか! ‥‥と言いたいが、まぁいい。来たんなら何も言わないさ」
 皐月・B・マイア(ga5514)が少し怒った風にしつつも青年を見てそう言った。
「御免、どうにもね」
 ほら、何時ものだ、という言葉にエネガンを受け取りつつヤマト。
「ヤマト、分かってるな? ちゃんと返せよ」
「ありがと、解ってる。自分の手で返すさ」
 へらっと笑って青年。
「それと、これが終わったらディアドラ姉さんに顔を見せる事。いいな?」
 青年は動きを止めた。少し眉を顰めてマイアを見る。
「拒否は許さないぞ。ハバネロティーは嫌だろう? なら、ちゃんと会え。私も付き合うから」
「それは――悪いけど、俺が会うか会わないかは俺が決める。行くならマイアだけで行ってくれ」
 青年は表情を消してそう言った。
「‥‥からいぞ?」
「からくてもそこは譲れないね」
 青年は言ってヘルメットを被った。
 マイアは嘆息した。
「なんでだ?」
「俺はまだ何も成し遂げていない――とまでは言わないけど、俺はまだ俺に納得がいっていない」
 少女は青年を睨んだ。
「‥‥それは何時になったらなるんだ? 私達の仕事は、姉さんだって、明日死んでもおかしくないっていうのは、解っているだろ? 下手したら今日だ。きっと心配している。顔くらい見せてもいいだろう。お前が納得するお前っていうのは、そういうものに全部背中を向けるのか?」
 つまらん意地だ。マイアはそう思ったし、ヤマトもそう思っている。だが、
「男が意地の一つも通せなくなったら終わりだな。大丈夫、ディアドラは簡単には死なない。僕が一番良く知ってる」
 エネガンを腰に差しガコリと突撃銃を担いでヤマト。
「馬鹿かお前は。本気で言ってるのか?」
「ふん、元より学の無い身さ。上のガッコいかずにすぐ兵士になったからね」
「そういう事いってるんじゃない!」
「――時間だ。行かないと」
「くそっ‥‥ちゃんと生き残れよ! そして考えろ! お前は私より姉さんの教えを知ってる筈だ‥‥それじゃあ、後でな!」
「何時だって考えてるさ! そっちこそ死ぬんじゃないぜ!」
 バーブル師団は南へ向かった。


 黄塵吹き荒ぶ荒野の果ての果て、インドがカーティヤワール半島グジャラート州の戦場。
「おーおー、よくもまあ集めたモンだわ。地平線が黒くなってやがる」
 アンドレアス・ラーセン(ga6523)が千を越えて押し寄せてくるキメラの群れを眺めて言った。
「これはまた。中々に壮観で」
 アンドレアスに続き、敵勢を見やって叢雲(ga2494)が言った。正面から見る限りでは敵が七、陸が三といった所か。ディアドラ中隊に向かって来ているキメラの数は千五百との報告がなされている。正面から見るとそれ以上に見える。視界の角度の関係だ。鋒矢陣が実数よりも兵数が多く見えるのに似ている。
「相変わらず人使いの荒い姐さんだが、ま、ここは出番だわな」
 俺らの役割はシンプル、結構結構、やったろーじゃねぇの、とアンドレアス。
「回復は頼みますよ」
「応、任せとけ」
 黒髪の男に金髪の男が答える。
 他方、
「こいつは壮観だ! ここまで来ると、絶望する暇もないねぇ!」
 フードをかぶりすっぽりとローブに身を包んだ金髪の女がガラララ! と大口径砲身を空回転させている。フードの陰からキメラの波を見据え、舌舐めずり。そんな彼女の名前はファタ・モルガナ(gc0598)。素顔は結構な美人さんだという噂だが、相変わらずの装いと言動のせいで今日も怪しさ炸裂中である。
「ああ‥‥息つく暇もなさそうだ」
 とホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)。数えるのも無駄なように見えた。津波の如く押し寄せるなら、侵食させずに撃退したいと左利きの闘牛士は思う。
「‥‥これだけのキメラを相手にするなんて正気の沙汰ではないわね」
 小鳥遊神楽(ga3319)が言った。狂気の沙汰程面白い! とはまぁ、思わない模様。女は半ば呆れたように続ける、
「まぁ、戦場なんてもとから狂気の世界以外の何者でもないのは分かってはいるけど‥‥」
「ええ、もう‥‥何と言いましょうか‥‥いえ、溜息しか出ませんわ‥‥」
 ジュリエット・リーゲン(ga8384)が呻く。
「バグア側もヤケを起こしていると言うか、後が無いからこそのこの様な攻勢だとは思いますが‥‥‥やはり気を抜くと溜息が出そうです」
 少女は爪先や踵で地を叩きつつ新しく購入したブーツの具合を確かめる。ジャッカルブーツ、履き心地は悪く無い。
「まあ‥‥仕方ないわ。雇われた以上あたしも微力を尽くすことにしましょう」
 小鳥遊が意を決したようにドロームSMGを取り出す。
「これだけ多いと、何だか撃てば当たりそうですね‥‥」
 同じくドローム製SMGを取り出しつつリュドレイク(ga8720)が言った。
 他方、
「おーおーおー‥‥こりゃヒドイ‥‥本気出しすぎだろうよ‥‥」
 前線に出て来たアッシュ・リーゲン(ga3804)がキメラの群れを眺めて呆れたように言う。
「これだけの大群はさすがに壮観ね。まっ、ここを抜こうとしたって、そうはいかないけど」
 同じく大弓を手に進み出てファルル・キーリア(ga4815)。
「俺はヤマト先生にお願いしてトンズラさせて貰うかねぇ」
「アッシュさん、んな事言ってると報酬でませんよ」
 ヤマトが答えて言った。
「あいよ、解ってらぁな」
 軽口を叩きつつも、銃をガコリとロードしてアッシュ・リーゲン。実際の所のモチベーションは高いようだ。
 曰く、未練たらしいと言われようが、やっぱり惚れた女が指揮してるしまだ好きだし力になってやりたいし、諦めきれないしな、との事。損な性格である。
「そういえばヤマトくん、少しは成長したのかしら?」
 ふとファルルがヤマトを見て言った。
「‥‥どうでしょう? ある意味‥‥退化してると言えない事もないかなぁ、と。ああ、でも、背は伸びましたよ!」
「そういえば確かに背、伸びたみたいね」
「はい。あと弾当てるのなら少しはマシになりました」
「そう――でも、絶対に自分の力を過信しちゃダメよ?」
「了解です」
 頷いてヤマト。アッシュやマイアなどは折り目正しく返答している青年を半眼で横目に見て「コイツ、猫かぶってるな」などと思う所である。
「まあとにかく、楽しい楽しい射的の時間の始まりだ」
 アッシュが悪党っぽく口端をあげて笑った。
 他方、
「正面きっての殴り合いか! こいつぁ腕の見せ所だな! 気張っていこうぜ!」
 紅雷のゼラス(ga2924)が牙を剥いて言った。気合いは十分だ。戦士としての血が疼いて仕方ないらしい。
「はい」
 ノエル・アレノア(ga0237)が頷いて言った。
(「絶対に臆したりはしない」)
 敵は壮観ともいうべき数だが、それでも。怯む訳にはいかない。
(「前回は危ないところをティリアさんらに助けられたけど‥‥僕、もっとしっかりしないと」)
 胸中で呟き、少年は気合いを入れている。
「ええ、でも、凄い数、です‥‥味方も数がいるとは言え‥‥気を抜いたら呑み込まれそう‥‥」
 そのティリア=シルフィード(gb4903)はそんな事を言った。
(「隊長たちが色々訓示を述べてたけど‥‥とにかく孤立しないように、そして自分のやるべきことを見失わないように」)
 胸中で呟く。
「まぁ、現状からしてこの敵の数は普通でしょう」
 一人、辰巳 空(ga4698)はそう言った。
「そうですか?」
 ヤマトが問いかける。
「ええ、以前『耐久対突撃戦闘』もやってますから驚く迄の事はないですね」
 まぁ、山がちな日本等と違い、だだっぴろい平地での戦線というのは、こういう形になる事とてあるだろう。むしろこのパターンで言うなら、まだ少ない方かもしれない。
「ですが、これだけの人数でやり合うとなると‥‥やはりそれなりの対策は必要だとは思います」
 と辰巳。傭兵達は手早く作戦を打ち合わせる。
「お前ら無茶していいぜ。俺がゾンビ兵に仕立ててやっからよ」
 アンドレアス・ラーセンが愛用のエネガンを手に笑って言った。
「役立たず、と言うわけにもいかんしな」
 急な出撃だったのか、重症かつ消耗しているクラーク・エアハルト(ga4961)は戦況の把握とキットを使っての治療に務める事にした。今の内に救急キットを使って傷を手当しておく。
「久し振りね。あんまり領域に囚われても仕方が無いわ。協力しましょ」
 左翼に構える予定のファルルはお隣の第四分隊の元へとゆくと相互協力の旨を申し出た。一隊だけで戦うのではなく、また敵も正面に展開するものだけではない。あちらがピンチならそちらへと援護射撃を行い、こちらがピンチになったら戦力を融通してもらう、という訳である。
「こちらとしては異存は無い。戦力からすると正直、有難い話だ」
 第四の分隊長はそう答えた。第四の戦力値を十とするなら第五分隊は百程度はありそうだ。負担は増えそうな予感がするが、全体を見れば不利な隊を補えば有利になろう。
「弾幕なら任せろー! ってね。援護もするよ!」
 とガトリング砲を手にファタ。ファルルと同じく左翼についた。
「さ、行こうか。仕事の時間だ!」
 ゼラスが言って歩兵第五傭兵分隊の面々が展開し、ディアドラ中隊の二百以上を数える能力者達もまた横に並ぶ。第五傭兵分隊が守備すべき幅も他と同様二十メートル。これを堅守する。
「倒すではなく、倒されない事が肝心です」
 辰巳はそう言った。
「まさに酔うほど敵を倒す、厳しい戦いになるでしょうけど‥‥無理はせず、此処は生きて帰りましょうね。皆さん‥‥」
 右翼についたノエルはそう言った。少年は右翼の面々とよく話してその動きの予定を頭に叩きこんでおく。
 一千五百を数える狼人、豚鬼、赤小鬼、骸骨兵のキメラ達が横に三〇〇メートル、縦に一〇〇メートルの深さで列を組み、武器を振り上げ吠え声をあげ、カタカタと骨を鳴らしながら押し寄せて来る。
 津波だ。
 やがて一キロ後方に控える砲兵中隊六門の砲と、五百メートル後方で中隊指揮を取る三両の戦車が焔を吹いて砲弾を次々に飛ばした。独特の風切り音と共に弾が炸裂して大地を爆砕し炎を吹き上げてゆく。
 距離が詰まる。敵は百メートルを十秒で詰めて来る。数匹は吹き飛びながらも千四百以上のキメラが近距離まで突進して来た。
「良い波だ! サーファーならさぞ喜んだろうな!」
 ゼラスが笑ってそんな事を言った。
「ライド・オン・キメラかよ。そいつぁ爽快そうだ。スリル満点」
 アンドレアスはその間に練成強化を発動させる。
「それはさておきサイエンティストからドーピングのプレゼントだ。ま、精々気張れよ狙撃手諸君」
 叢雲、小鳥遊、アッシュ、ファルル、クラーク、ファタの弓と銃へ淡い光を宿らせてゆく。
「言われなくても頑張りますよ」
 叢雲がアンドレアスの軽口にそんな言葉を返した。
「間もなく一四〇」
 クラークは軍用双眼鏡をのぞき込み目盛で迫る敵群との距離を計りつつインカムに報せる。
 中央後衛に構える叢雲は狙撃眼を発動、光を宿した魔創の弓に弾頭矢を番える。敵キメラ、十メートル四方内にいるのは五匹、横との距離二メートル、後方の次列との距離は十メートル、それなりに隙間は空いている。敵を直接狙っては多数を巻き込む事は不可能だ。
 叢雲、位置をずらす構え。ならば間を狙う。直径1m程度なら爆風は届きそうだが、倒せるだけの威力は出るだろうか? 勢いを削げれば良い。
 突進してくる敵の斜め前方の大地を狙い撃ち放つ。次々に狙いを横に移動させつつ三連射。
 弾頭矢が大地に突き刺さり爆炎を吹き上げて土砂と共に熱波を撒き散らし、六匹のキメラの片足を焼いた。
 足を焼かれたキメラ達はよろめいて速度を落としつつも、そのまま駆けてくる。叢雲はサジタリウスに弓を持ちかえた。
 相対距離一二〇、ホアキン・デ・ラ・ロサ、同じく輝く魔弓に弾頭矢を番える。狙いは先頭の集団。広く、分断するように狙っていく。
 標的を次々に変えながら弾頭矢を五連射し矢を一発放った。
 弾頭矢が次々にキメラ達に突き刺さって凶悪な爆裂と共に五匹を次々に吹き飛ばし、唸りをあげて飛んだ一矢が骸骨兵の頭蓋をぶちぬいて倒した。六体撃破。
「一〇〇に入る。四匹。その十m後方に十匹、その後方も十m間隔で十匹横列」
 クラークからの報を聞きつつ叢雲は白光を放つ弓で次々に射ってゆく。放たれた矢が豚鬼、赤小鬼、狼人の頭蓋に吸い込まれるように次々に突き立った。三匹のキメラが倒れる。弓から十字架銃に持ちかえる。
 ホアキンは魔創の弓を六連射し、一列目最後の豚鬼を射抜いてふっとばすと、二列目の端を撃ち、間隔を一つ空けて移して射ってゆく。六匹のキメラが倒れた。
 ホアキンは弓を背に負うと、左で紅炎を抜刀し、右手で背からスノードロップを引き抜く。
「パーティーにようこそぉ!」
 ファタ・モルガナは腰溜めに輝きの宿った大口径ガトリング砲を構える。掃射。多銃身が激しく回転しながら猛烈な振動と共にマズルフラッシュを炊いて一〇〇発の猛烈な弾幕を解き放ってゆく。八〇のラインに入ったキメラ達が猛烈な弾丸の群れに薙ぎ払われ、鮮血を噴出し、骨を砕かれながらばたばたと倒れた。五体撃破。
「さぁ来たぞ! 全員乗りきれよ! 祝勝会は多いほどいい!」
 相対六〇、ゼラス、ティリア、リュドレイクが射撃を開始する。
「銃器はあまり得意じゃないんだけど‥‥怯ませることくらいならっ!」
 左翼前衛に位置取るティリア、三発の貫通弾を装填したアサルトライフルを構え、正面の狼人を狙い、セミオートに入れて三連射。対フォースフィールドコーティングされた弾丸が狼の身に突き刺さり、強烈な威力を解放して風穴を穿ちつつ吹き飛ばした。少女はライフルを背負うと二刀の小太刀を抜き放つ。
 ゼラスは正面より迫り来る狼人へとアサルトライフルで発砲、五連射。弾丸は錐揉みながら空を切り裂き、次々に狼人の身体に突き刺さって鮮血を噴出させながらぶち抜いてゆく。
 リュドレイクはドロームSMGを構えてフルオート。猛烈な勢いで弾幕を張り正面から突進して来た骸骨兵へと七五発もの弾丸を叩き込んでゆく。骸骨兵が粉々に砕けながら吹っ飛んだ。撃破。
 後衛より相対六〇、小鳥遊、ファルル、アッシュもまた一斉に射撃を開始する。
 分隊右翼に展開する小鳥遊神楽、光の宿ったドロームSMGを構え幅の広い豚鬼へとサイトを合わせる。練力を解き放ち強弾撃を発動、トリガーを絞る。反動を抑えつつ三点バースト。正確に弾を集めてゆく。三十発を撃ち込んだ所で豚鬼が吹き飛んだ。六発をさらに飛ばしてから隣の狼人へと狙いを移し連射を切りながら射撃してゆく。そちらも蜂の巣にして撃ち殺した。二体撃破。
 左翼後衛ファルル、青緑と練成の光を纏った長さ二m以上の大弓に矢を番え、次々に連射。一撃必殺を狙う。はっしと放たれた三本の矢が赤鬼の首を貫き、吼え声をあげる狼の咥内へと飛び込み、骸骨兵の頭蓋をぶち抜き、次いで飛来した弾丸が眉間を貫通していった。キメラ達がよろけながら前のめりに倒れてゆく。三体撃破。
「撃つ方向さえ間違えなきゃド素人でも当てられるなコレ」
 アッシュ、練力を解放して強弾撃を発動。右膝を地につき左膝を立て、膝上に乗せた腕でアサルトライフルの銃身を支えつつ銃床をしっかりと肩で固定する。精密に狙いをつけ発砲。上へと跳ね上がる反動を殺しながらセミオートで撃ってゆく。
「それでも当てるトコ当ててこそ狙撃屋だよな、っと」
 豚鬼の顔面と胸を狙って二発射撃、隣の赤鬼に標的を移して同様に顔と胸に二発、骸骨兵の頭部を狙って一発を射撃した。豚鬼と赤鬼が血飛沫を噴出しながら倒れた。骸骨兵の頭部に矢が突き立ち、弾丸が眉間をぶち抜いて爆砕してゆく。二体撃破。最後ファルルと標的が被った。
 初期状態からの三列目が倒れ、それが最前列となって、次々に倒れゆく味方の屍を乗り越えて雪崩れ込んで来る。
「来るなら来い! このスパークは中々強烈だぞ!」
 相対五〇、左翼前衛、皐月・B・マイアは禍々しい形状の杖を翳すとその先端から五条の電撃を解き放った。蒼雷が宙を翔かけて豚鬼に次々に炸裂し、あちこちを灼き爆ぜさせてゆく。煙を吹き上げながら豚鬼が倒れ、動かなくなった。撃破。
 相対四〇、辰巳、ノエル、ジュリエットが射撃を開始する。
「いざ、万人敵と行かん‥‥」
 辰巳はS‐01拳銃のサイトを正面から槍を構えて来る赤鬼に合わせると引き鉄を引いた。轟く銃声と共に六連射。弾丸が唸りをあげて飛び、次々に赤鬼を貫いて鮮血に踊らせる。糸が切れた人形のように倒れた。撃破。
 ノエル、基本的には格闘戦でゆくが、他は皆、まずは射撃戦の模様。突出は厳禁と心得る。作戦は聞いていたので、最初から予定を変更しS‐01拳銃を抜き放っている。正面の豚鬼へと狙いをつけると五連射。全弾が豚鬼に炸裂し血飛沫を噴出させながら倒れていった。撃破。
 ジュリエットもまたS‐01拳銃を構えると骸骨兵の頭部へと狙いをつけ、二連射。銃声を響かせながら拳銃弾が骸骨兵の頭部に突き刺さって骨を穿った。骸骨兵がぐらりと傾いで転倒する。標的を隣の豚鬼へと移し首を狙って連射。こちらも風穴をあけて撃ち殺す。二体撃破。
 次いでクラークが射撃を開始する。45口径のリボルバーを構え豚鬼へと狙いをつけて発砲。銃口から焔が吹き上げ、強烈な反動が傷ついている肩を貫いてゆくが、堪える。重症だが、それでもその道の一般人のプロ程度の体力は残されている。
 常ならば猛烈な破壊力を秘めた弾丸を、しかし豚鬼は身を捻って回避した。
 クラーク・エアハルト、能力者でも一流のスナイパーだが、この怪我では常の鋭さは見る影も無し。
(「‥‥くっ!」)
 まったくイメージ通りに動けない。翼をもがれた鳥の気持ちが少し解るような気がした。
 ヤマトはアサルトライフルをフルオートに入れて射撃し一匹を撃破。
 アンドレアスは周囲に注意を払っている。エネガンの射程までは敵勢が三列薙ぎ倒されているのでちょっと届かない。
 ホアキン、スノードロップを一発射撃してから雷光鞭に持ち変え爆雷を解き放ち、辰巳はラジエルを抜き放った。
「今日の天気は晴れ時々榴弾、とね」
 叢雲、十字架銃を担ぐと敵の足元を狙って榴弾を次々に発射し、小鳥遊が強弾撃を発動させつつSMGで弾幕を張り、ノエルは拳銃をホルスターに納め機械剣を抜いた。
「初めて使うけど‥‥中々面白いわね、これ」
 ファルルは即射を発動させると五本の矢を次々に射て、アッシュは膝射の態勢で撃ってゆく。マイアは再度五条の爆雷と解き放ち、リュドレイクは鬼蛍を抜刀し、ジュリエットはS‐01を連射した。
「キミが左なら私は右。キミが右なら、私は左だ!」
 ファタがリロードしつつガトリング砲で弾幕を張り、クラークがアラスカを発砲する。
 猛烈な弾幕と榴弾と爆雷と矢が最前列のキメラ四匹と二列目の六匹へと嵐の如くに飛んだ。
 榴弾が炸裂して爆炎が噴き上がり弾丸がキメラを蜂の巣にし爆雷が消し飛ばし、矢がぶち抜いてゆく。次々にキメラ達が倒れ、過剰分の攻撃があるいは後方へと飛び流れ弾がかわされ、あるいは奥のキメラへと激突して打ち倒してゆく。
 最前列の四体が消し飛び、二列目の八体が粉砕され、三列目の三体が倒れた。
「回復しか能がないワケじゃないんだぜっと」
 アンドレアス・ラーセン、練力を解放し電波増幅を発動、小銃の形のエネルギーガンを構えると正面の狼人へと狙いをつける。
「‥‥食らいやがれ」
 言葉と共にトリガーを引く。五連の爆光が宙を一瞬で制圧し、次々に狼人の胴体に突き刺さって凶悪な破壊力を撒き散らし消し飛ばした。撃破。ヤマトもエネガンを連射して骸骨兵を撃破している。
 随分倒したがまだ分隊正面には四十七体残っている。
 死体の山を踏み越えてキメラ達が突っ込んで来る。
「寄って来たな。じゃあ、出番だぜ相棒!」
 ゼラスは大鎌ノトスに持ちかえると刃へと極限までエネルギーを集中させて振り抜いた。
「挨拶だ! 貰え!」
 空間が断裂し爆風が逆巻きながら骸骨兵へと襲いかかってゆく。ソニックブームだ。
 音速波が骸骨兵に直撃してその身体のあちこちに巨大な罅を入れるも、大剣をふりかざしながら駆け、踏み込んで来る。そのラインに並ぶのは七匹。後に十m毎の間隔ごとに横列十匹が四段。
「来るか! いくぜオラ!」
 長さ2.2mを誇るノトスはリーチがある。骸骨兵の大剣が振り降ろされるよりも前にその首へと湾曲した刃を叩き込んで跳ね飛ばした。
「そら! そぉら! ‥‥終わりだ! そらぁっ!」
 骸骨兵の左右から踏み込んで来た狼人へと突いて止め、後退しながら柄を滑らせて持ち手の位置を変えながら薙ぎ払って豚鬼を止め、間髪入れずに豚鬼へと鎌の先端を頭部へと振り降ろして爆砕する。踏み込んだ狼人が振るう太刀を豚鬼から鎌を引き抜きつつ柄で受け流す。
 横手よりノエルが踏み込んでレーザーナイフで豚鬼の胴を抜き、次いで顔面へと叩き込んで斬り倒した。
 辰巳、赤鬼が突きだして来た槍をかわしながら踏み込み、斜め右から斬りかかって来た骸骨兵の大剣を左手の盾を横殴りに当てて弾き、勢いのまま回って右手のラジエルを赤鬼へと叩き込んだ。炎光を纏う刃に撫で斬りにされた赤鬼が倒れ、辰巳は骸骨兵が二撃を振り降ろすよりも前に天剣を振り降ろして斬り倒す。
 ティリアは疾風を発動させつつ狼人が振り降ろした太刀を斜めに踏み込みながらかわし、小太刀の間合いに入ると伸びあがりざまに首を狙って斬撃を繰り出した。狼の首が掻っ捌かれ鮮血を噴出しながら仰向けに倒れてゆく。クリティカルヒット。撃破。威力が低くても致命的な急所をぶち抜けばこちら報告担当戦域の敵は大抵は耐えきれず一撃だ。まぁ直撃させるのが極めて大変だから滅多には決まらないのだが。
 リュドレイク、豚鬼が斧を振り上げて飛びかかって来る。紅蓮衝撃は『これ本当に一撃で倒さないとヤバい』という状況で使いたい。温存しておく。
 左からの斧を身を捻ってかわしつつ振り上げた太刀を豚鬼の頭部に落雷の如くに叩き込み、返す刀で袈裟に一閃させて斬り倒す。血飛沫をふきあげながら豚鬼が倒れた。
 後続のキメラ四十匹が武器を振りかざして突撃して来る。第五分隊が守るべき幅は二十メートル程度でその左右では他分隊が激突している。
 一メートルもある太刀を持っていれば直径、三メートル程度はカバー出来るとして、傭兵達が持っている刀剣の類は平均長大な物が多いから実際はそれよりも広い。リーチのある武器を持っていない者もいるが、二刀使いもいる。前衛に立つのは左翼、辰巳、ティリア、マイア、中央、ジュリエットは少し下がっているのでホアキン、ヤマト、右翼はゼラス、ノエル、リュドレイクの実質八名、割と厚い。
 隙間は抜けられそうにないから、キメラが並べるのは前方のみとして密集陣でもない限り、一mの幅がおおよそキメラが格闘するには限界とすると並べるのは二十。前、斜め前の左右で多くて三名、せいぜい槍が間を抜けるくらいか。
 最前列の十匹が傭兵達に打ちかかり、そのさらに十m後方から突撃してきたキメラ達が間に入ってそれぞれの得物を振り降ろす。そのさらに後続はその後方で団子になって固まっている。
 辰巳が突撃して来たキメラをまた三匹斬り倒し、五匹から攻撃を受けるも全撃かわした。当たらない。
「さぁ来い‥‥! まだまだ斬って斬って斬りまくってやるっ!」
 ティリアは豚鬼の首を裂き狼人の心臓を突いて三匹を倒し、五匹から攻撃を受けるも三発かわして一発太刀で受け流した。
 マイアは二匹の豚鬼からの斧撃を盾で受け流し軽く後ろに跳んで回避。
 ホアキンは骸骨兵からの袈裟の打ち込みを身を斜めに沈めてかわし赤鬼の槍撃を剣で跳ねあげて回避し、狼人の太刀を後退して回避した。
 ヤマトは太刀をかわして槍の穂先をナイフで払ってかわした。ゼラスはノトスで豚鬼を押して攻撃させず、狼人の太刀を柄で受け流す。
 ノエルは二匹の狼人からの袈裟と左袈裟の同時斬撃を素早く後退して回避。
 リュドレイクは赤鬼からの突きと身を捌いてかわし、骸骨兵の大剣の打ち込みを太刀で受け流し、豚鬼の斧撃も鬼蛍で撃ち落として回避した。
 正面からなら誰も喰らいそうに無い。
「ここからが本番だ」
 ホアキンは1.5m大太刀を左手一本で振るい稲妻の如き剣閃を巻き起こしてゆく。骸骨兵の頭部を爆砕し、狼人を袈裟に真っ二つにし、踏み込んで赤鬼の首を跳ね飛ばす。
「出来る限りカバーはさせて頂きます故、存分にお暴れ下さいませ!!」
 後方につけているジュリエットが言ってS‐01をホアキンの左脇から連射して援護し二体を撃破、ヤマトも合わせてナイフで敵の攻撃を捌きつつエネガンを至近距離から叩き込んでホアキンの右面を中心に二体を撃破。
 ホアキンは援護を受けながら竜巻の如くに紅炎を振るって次々に一撃の元にキメラを斬り捨て、十秒で十二体を撃破した。
 辰巳、一撃で斬り倒せなかった分は援護に任せる予定、キメラ達の斬撃を回避しながら一撃づつラジエルを叩き込みつつ、一撃で次々に斬り倒し、キメラの壁に浸食してゆく。六体撃破。
「寄ってみなぁ! 裂き飛ばすぞ!」
 ゼラスは豚鬼と狼人を薙ぎからの振り降ろしと、突きからの斬撃で斬り裂き倒すと、ノトスを回転させて後続の豚鬼と狼人の打ち込みを牽制して潰す。その間にホアキンが残像でも残しそうな動きで入って来て斬り飛ばしていった。十二体撃破のうちの二体だ。
 ノエルは二刀の光剣を振るって二匹の狼人を斬り倒し、リュドレイクと連携して赤鬼の一匹を撃破した。
 リュドレイクは豚鬼に二連の剣閃を当てて吹き飛ばし、骸骨兵の大剣をかわざま二段撃を叩き込んで粉砕し、赤鬼からの槍撃を身を沈めて装甲の厚い箇所で受け止める。ノエルが側面から踏み込んでレーザーブレードで斬りつけ、赤鬼の態勢が崩れた所へ狙い澄まして踏み込み、真紅の太刀を水平に一閃させて鬼の首を刎ね飛ばした。三体撃破。
「邪魔をするな! 私達は、前に行くんだ!」
 後方にステップしたマイアは着地と同時に杖をかざして近距離から爆雷を三条叩き込んで左の豚鬼を吹き飛ばし、踏み込んで来る右の豚鬼へと二条の爆雷を放って灼き殺した。二体撃破。
 ティリアは円閃を発動させて骸骨兵の腰骨を右の太刀で吹っ飛ばして沈め、豚鬼の首を刎ねて葬り、赤鬼の穂先をかわしざまに踏み込んで、第五分隊正面最後のキメラとなったその赤鬼の心臓を突き刺して貫き殺した。
 百匹撃破完了である。
 その間に後衛達は左面の第四分隊正面のキメラ達へと移していた。
 叢雲が榴弾を爆裂させ、小鳥遊がSMGを猛射し、アンドレアスが第四分隊員達へ練成治療を五連射し、ファルルが強弾撃を発動させS‐01を連射し、アッシュがアサルトライフルで狙撃してゆく。クラークは無線で側面より援護に回る旨を第四隊に伝えていた。
「援護するよぉ! ついでに散れ!」
 ファタは前進すると、大口径のガトリング砲を構え、第四分隊達と押し合いになって団子になって固まっているキメラ達へと第四分隊の隊員を巻き込まないように斜めに狙い、ブリッツストームを発動させて一五〇発の猛烈な弾丸で薙ぎ払った。近距離からの斜めからの射撃に夥しい数のキメラ達が薙ぎ払われて鮮血を噴出させてゆく。
 さらに第五分隊の前衛九名も突撃して次々にキメラを打ち倒していった。


 その後、第五分隊は第四分隊正面のキメラをまたあっという間に粉砕し、共に苦戦している他隊への援護へと回った。
「戦場は荒野ってねぇ‥‥死神の列は少々長いよこりゃ‥‥」
 途中、弾幕を張りつつファタはそんな事を言った。ディアドラ中隊は第五分隊や他隊の活躍も併せて正面の一五〇〇匹のキメラを殲滅、右翼の中隊が撃破されかかっていたがそちらへと急行してこれを破り、右翼の中隊と共に反転して左翼の中隊が相手をしているキメラの群れへと突撃してこれも粉砕した。
 キメラ部隊を破られたバグア軍は後退を開始しアブトマート大隊は戦線を突破すると激闘を続けているバドルディーン連隊内の友軍を支援してその撃破を助けた。
 連隊が正面の敵を打ち破るとバグア軍は抗しきれぬと判断したか全軍揃って一斉に後退を開始、バーオナガルを放棄してその後方にある堅所へと入って戦線を縮小させつつも維持せんと動いた。バーブル師団は前進しバーオナガル市を奪還し、ここにUPC軍の旗を立てたのだった。


 戦後、
「まったく、汗だくで埃っぽいったらないね。早くシャワー浴びて寝たいよ」
 フードの女が言った。流石の第五分隊の面々もあちこち駆けまわったので疲労困憊である。
「戦闘じゃ役立たずだったんです。これ位はさせてください」
 クラークは負傷者を救急キットで手当てして回り、仲間達の為に珈琲を淹れた。珈琲を淹れる技術も常より鈍っていたが、流石に慣れているだけあって味が落ちても美味い好評であった。
 マイアは一人ディアドラの元を尋ねるとアッシュやヤマトやファルルなど昔からの馴染みの他、幾名かの名前をあげてその無事を告げた。女大尉はほっと息を吐くと、微笑して「伝えてくれて有難う」と言った。
 青年は結局、ついては来なかった。



 了