タイトル:【ODNK】魔竜咆哮マスター:望月誠司

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 15 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/07/28 13:21

●オープニング本文


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 日本国が九州、大分県国東市。大分バグア軍司令所。
「福岡の御大は頑張ってるってのに、こっちは随分と苦戦してるようじゃねぇカ?」
 赤髪の男が言った。
「うるさいうるさいうるさいうるさい‥‥!」
 目に隈を作った白衣を着込んだ男が親指の爪を噛みながら呟いている。
「御前さんが無能なのか、敵が強いのか‥‥ま、俺は後者だと思っといてやるが、他の連中もそう考える訳ではなく、ついでを言えば例えそうなのだとしても許される問題じゃねぇよなぁ?」
「国東は陥ちぬわ‥‥国東は、陥ちん、ぜよぉ‥‥! ココの守備は完璧ぜよオオオオッ!!」
 ムキィィィィィ! と頭皮をかきむしって叫ぶヴァイナモイネン。
「難攻不落、か」
 そう謳っても実際に落ちなかった陣など過去にないがな、と赤毛の男は思う。
「そういや御前様の懐刀は何処行ったんだい? 死んだ? それとも逃げたか?」
「テメェにゃ関係ねぇぜよ、アナンタァッ! だいたい貴様こそなんでここにいるゥううう?!」
「うちの大将に様子見てこいって言われてな。意外に御前さんの腕前は買ってくれてるらしいぜ? カリマンタンの事もあるし」
「だったら‥‥助けにこいぜよ‥‥!」
「‥‥‥‥まぁ、一応、伝えてはおくが、あの人が何考えてんのかは、俺でも解らんからな。アテにするもんじゃないぜ?」
 その言葉に唸るヴァイナモイネン。
「しみったれた面ぁすんじゃねぇよ、今回はよぉ、俺達が手伝ってやるからサァ。一応、これでも赤竜第一の兵だぜ? なんか適当な機体よこしな。改造してんの、あるんだロ?」
「船が沈む前に盗みに来たか‥‥!」
 その言葉にアナンタ、と呼ばれた男は豪快に笑いだす。
「おいおい、なんでもそう、悪い方に取るのはいかんなぁ‥‥仲間を疑っちゃいけねぇよ、信じる者はすくわれるって言うゼ?」
「足元をダロ! 外道どもめ!」


 時は二〇一〇年七月。高田に抑えを残し、杵築へと移動した村上顕家は国東市攻略を掲げて号令をかけた。別府基地からKVが次々に飛び立ち六〇〇〇の兵が杵築から東へと向かい次いで海沿いに北へと登る。
「一発で頭を狙うにゃ国東はちと高さがある」
 山岳地帯の要塞を指して村上は言った。
「なんで手足からもいでゆく。じわじわとな。大分空港までを抜く。国東は固めていくが、空港までは一気だ。速攻で潰せ。一秒たりとも無駄にすんなよ」
 不破率いる空戦隊が防空部隊を撃破し、百戦錬磨の旅団員達は村上が調達してきた資金――色々黒い噂があるが――にものを言わせた贅沢な装備で立ち塞がる親バグア兵を焼き払い、見立山、妙見山の砲台群を陥落させ怒涛の勢いで街道を北上してゆく。
「なんでこっちの対地砲撃が無いィィィィ?! どうした鯨、何をしているゥ!!」
 砲火が轟く旧大分空港の基地、ヴァイナモイネンが怒声をあげている。
「は、それが敵の空戦隊にからまれていて現在、動きが取れぬと‥‥」
「ムキィィィィィ!! 図体ばかりデカイ役立たずめッ!!」
「だから、俺達にやらせてみろっテ」
 欠伸をしながらアナンタが言った。
「信用ならん!」
「じゃあ、このままやられんのかい。敵さん勢いあるゼェ? 敵が強いのは先頭のKV隊が強いからだ。それを潰せば勢いは落ちる」
「貴様に出来るのか!」
「今、先頭にいる連中くらいなら――半分ももらえりゃなんとか?」


 村上旅団の先鋒を務めるそのKV二十機からなる隊は空港手前の橋まで快進撃を続けていたが、新たに現れた十機のワーム隊によって瞬く間に殲滅された。
「馬鹿‥‥な」
 ゼナイド・ギルベリウスは呆然として呟いた。彼女の眼前で重装甲のゼカリアが豆腐のようになます斬られ爆裂と共に吹き飛んでゆく。
『はい、頑張った。でもあんたもここまでダァ!』
 声が響く間にも砲弾がゼナイド機に突き刺さってその腕を、脚を、吹き飛ばしてゆく。赤・緑・青の三機の人型ワームが低空をバーニアを吹かせながら突っ込んで来て、長大な赤光剣を振るい、すれ違いざまにゼナイド機をバラバラに分解して抜けていった。爆裂と共に二十機いた大隊最後のKVが荒れ地に沈む。
「ハハッ、なかなか良い機体じゃないか?」
 無線からノイズ交じりの女の声が響いた。
「あの狂人も偶には良き物を作るようだな」
 涼やかな男の声が響く。
「あのハカセが作るもんはいつも技術的には大したモンだヨ。ちょいと使い方と趣味が悪いがネ」
 アナンタはボイナとクエレブエにそう返答する。
(「しかし、チト、燃費が悪いのが気にかかるが‥‥まぁもう少しはなんとかなるカネ?」)


 前線の司令車内部。
 ゼナイド隊壊滅、の報に通信手も兼ねている副官が信じられない、といったように声をあげた。
「ご、誤報では?! 戦闘開始の報からまだ一分も経ってませんよ?!」
「戦力が一方に拠ってりゃKV戦ならそれくらいでケリがつく、か‥‥?」
 村上もまた半信半疑なのか、そう呟く。
「し、しかし、いくらなんでも、二十機もいたんですよ?!」
「――支援隊を後退させろ。代わりに予備戦力の第二を先頭に出せ。連中を敵ワーム編隊にぶつける」
 短い逡巡の末に決断したらしい、村上は硬い声音で言った。
「ですが第二は切り札では?! ここで使っては、こんな馬鹿な事がある訳」
「急げッ!!」
「は――はっ!!」
 村上の見幕に押されて副官は弾かれたように機器を操作する。ジャミングが常よりも強い。副官は専用の強力な通信機から回線を開いて第二傭兵KV大隊に最前線へ移動するように命令を発する。
 村上顕家は仏頂面で禁煙パイプを噛み砕いた。

●参加者一覧

稲葉 徹二(ga0163
17歳・♂・FT
雪野 氷冥(ga0216
20歳・♀・AA
榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
国谷 真彼(ga2331
34歳・♂・ST
ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
アッシュ・リーゲン(ga3804
28歳・♂・JG
飯島 修司(ga7951
36歳・♂・PN
ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280
17歳・♂・PN
御崎 緋音(ga8646
21歳・♀・JG
鹿嶋 悠(gb1333
24歳・♂・AA
鷲羽・栗花落(gb4249
21歳・♀・PN
ハミル・ジャウザール(gb4773
22歳・♂・HG
カタリーナ・フィリオ(gb6086
29歳・♀・GD
流叶・デュノフガリオ(gb6275
17歳・♀・PN

●リプレイ本文

 杵築市から国東市へと向かう街道の途中。後退する歩兵団とは逆に前進する鉄の巨人達の姿があった。
 うちの一機、躍動するMk‐4D‐リアノンのコクピットの中、
「二十機のKVが一分で食われた、か‥‥」
 黄金の髪の男が呟いた。口端をあげニヤッと笑う。
「イイねぇ、ヤバい匂いがプンプンしやがる」
 傭兵、アッシュ・リーゲン(ga3804)だ。この商売もそれなりに長い。じっくりと楽しませて貰うつもりである。
「いささか早い出番ですね」
 国谷 真彼(ga2331)が無線に言った。予定では国谷達第二KV隊の出番はまだ先と見られていた筈だったが、緊急の出動となっていた。
 ゼナイド隊の生死は、あえて今は問わない。
「今回はちょ〜っとばかし、毛の色が違うみたいね」
 雪野 氷冥(ga0216)が言った。
「そうですね‥‥これまでの敵はどっちかというと一風変わった感じでしたけど、今回は本当に強力さを重視した敵みたいですね」
 御崎 緋音(ga8646)が雪野の言葉に頷く。
「ある意味で真っ当な方向で規格外な敵のようですな」
 飯島 修司(ga7951)が言った。過去二戦で多少はこちら方面の敵の余裕を削ぎ落とす事が出来たと見るべきか、と壮年の男は思う。
「‥‥強い奴が出てきたか」
 ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)が呟いた。
「司令部も人使いが荒いね‥‥ま、仕方ないか」
 予定とは違うが進軍の歩を止める訳にはいかない。倒して道を切り開きたい所だ。
「俺も微力を尽くす事にしよう」
 榊 兵衛(ga0388)が言った。
(「褌を締め直して掛からなくてはならぬな」)
 胸中で呟く。一分で二十機を撃破だ。新型なのかどうかは解らないが、よほどの化け物機体を持ってきたらしい。
 今回、集まった傭兵第二KV隊は質が非常に高かった。精鋭だ。戦力が流動的な傭兵隊において、ここまでの値を叩き出す事はそう無い。司令部からも兵達からも、団内で陸上最強の隊と目されている。
 故に、
(「‥‥もしも、私たちが負けるようなことがあれば、村上旅団の士気にも大きく影響してくるはず」)
 御崎はそう思った。エース隊、というのは人数が少ない為、全体からみれば扱う戦域は狭いが、決定的な歪を巻き起こすものだ。特に、村上が予定を切り上げてまで出して来た以上はここは外せない場面である可能性が高い。少なくともあの大佐はそう見ている筈だ。
 決定的な場所で生じた歪は時の経過と共に加速度的に大きくなり、最後には巨大な渦となって戦場全域を呑み込んでゆく。この激突の勝敗は士気には確実に影響するだろう。団内で最強と目される隊が背負う物は、そういうものだ。
(「‥‥今回も絶対に負けられないっ!」)
 女は気合いを入れて操縦桿を握り直す。
「ふむ、随分と手練れの様子ですが、逆に言えば向こうさんもケツに火がついてきたという所で」
 そんな空気の中でもXN‐01改‐Xeroに搭乗する青年がプレッシャーを感じさせない調子で言った。
「戦局をひっくり返すチャンスですな。ガッツいて行きますか!」
 稲葉 徹二(ga0163)だ。エース隊同士の激突。ここ一番であるからこそ勝利すれば得られる物は巨大だ。やる気もでようというものである。
 一同は東に海を見つつ、砲弾によってあちらこちらが爆砕されているアスファルトの道を北上してゆく。
 ホアキンは行軍しながら手頃なサイズのクレーターが多く空いている地点を探した。少し前まで爆撃や砲撃が激しかったらしく、数十m単位の巨大な穴も幾つかあった。恐らくはフレア弾だ。
 ホアキンは手頃なサイズの物を見繕うと、それを利用し迎撃する事に決める。他の傭兵達もその周辺で敵ワーム隊の南下を迎え撃つ事にした。


 ワーム隊を捉えたのはレーダーよりも目視が先だった。ジャミングがかなり激しいようだ。
「うわぁ‥‥あの機体、竜の頭つけてるよ。視覚効果は抜群だね、ホント強そう」
 鷲羽・栗花落(gb4249)が彼方より攻めるワーム隊の三機を指して言った。赤、緑、青の竜頭の鉄巨人。
「――三原色、ですか」
 鹿嶋 悠(gb1333)もまたそれを見て呟いていた。緑のワームはあまり見ないが、赤いワームや青のワームはさして珍しいものではない。ありふれたものだ。しかし三色揃って、となるとなかなか珍しい。カリマンタン島の戦役を思い出す。あの時、獅子座旗下のエース達があの配色だった。
(「まさか、な‥‥」)
 生きていたのか?
 そんな言葉が脳裏をよぎる。
 鹿嶋や鷲羽、そして、その戦いで戦死した空の英雄や、ここにはいない仲間達等との死闘の末に撃墜された筈だが――しかし二十機を屠ったという実力、あの色、もしかしたら、そうなのかもしれない。確証は持てないが。しかし、もし万一そうだとしたら非常に厄介な敵だ。
「あの楯‥‥もしやまたあれか、だとするといちいち厄介なものを持ち出してくる」
 時任 絃也(ga0983)が言った。
「前回と同様の代物ならあれに対しての攻撃はほぼ無意味だ。連携で盾を使わせ、その隙を攻撃する他ない」
 時任が初見の仲間達へとそう注意を飛ばした。
「敵は手強い、無理をするなよ‥‥その上で、勝って帰るぞ」
 ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280)が言った。
「そうだね君、ヴァレスも無茶は控えてくれよ」
 流叶・デュノフガリオ(gb6275)が頷き答える。
「強化型ジャミング中和装置、起動。ウーフースタンバイ」
 国谷が言って中和装置をオンに入れた。強力なジャミングが和らいでレーダーが少しクリアになる。いつでもそうだが、今回は特に落とされるのは避けたい所だ。
――仲間の為に最後まで立っている。それが電子戦機やサイエンティストに課された使命です。
 国谷はそう言っていたが、正に鉄則だ。
(「撃ったら移動‥‥すぐに移動‥‥」)
 ハミル・ジャウザール(gb4773)が胸中で呟いている。攻撃後の移動など残身の類は大事である。何事も相手と状況に拠るが、殴られたら即座に殴り返して来るような手合いには特に大事だ。
 ワーム達が足並みを揃えて南下しKV達が展開する。距離が詰まる。
 カタリーナ・フィリオ(gb6086)機、足が遅く最大射程も長くはないので少し前に出ておく。
 距離が詰まる。
 鷲羽機A‐1D‐アジュール、ガンサイトに青いゴーレムの機影を納める。赤い眼が不気味に輝いていた。発砲。電磁加速砲から稲妻の如くに弾丸が飛びだした。挨拶代わりの一発。ゴーレムは赤光を纏い素早く機動して回避。
「いくよアジュール!」
 ブーストを点火、護剣を構えバーニアを吹かせて加速し突っ込んでゆく。
 ワーム達は一斉に赤く輝いて加速した。赤緑青の竜頭達が慣性を無視した動きで前方低くの宙へと跳びだし、地面すれすれをバーニアを吹かせて高速で突っ込んで来る。KV達も各機動き出している。飯島機が高速で駆け出し、稲葉機がハイマニューバを起動しブーストを点火させて駆けてそれに並び、両機の動きを見た鹿嶋も合わせてブーストを点火してそれに並走する。
 距離が詰まる。
 相対四〇〇、クレーターに陣取るホアキン機、緑竜頭へと狙いをつけエニセイ対空砲で砲撃。緑竜頭が掲げた盾に激突した。
(「盾に弾かれるのは承知の上だ」)
 アイギスを構えつつエニセイで砲撃を続ける。射撃で戦意を煽り、自機の方へと誘導せんと試みる。次々に猛烈な破壊力を秘めた砲弾が低空を飛ぶ竜頭の盾へと炸裂していった。
『行くぞ』
 ヴァレスが外部スピーカで竜頭達へと言った。漆黒のCD‐016G‐DenebCygniが四門のチェーンガンを青い竜頭へと向ける。射撃で分断、釘付けにせんとする。
『少々御相手頂こう‥‥何、少しは楽しめると思うよ?』
 流叶も言った。漆黒のCD‐016G‐皇騎もまた青竜頭へとマルコキアスを向けている。発砲、連射。漆黒の二機のシュテルンが同時に射撃を開始した。轟音と共にSES機関が回転し、猛烈な勢いでマズルファイアを瞬かせながら鋼の暴風を解き放ってゆく。デュノフガリオ夫妻のダブルファイア、十秒間に二千八百発にも到達せんかという凄まじい勢いだ。空間を弾丸が埋め尽くして飛び青竜頭へと猛烈な勢いで襲いかかる。
 蒼竜の鉄巨人は真紅の焔の翼を背から吹き上げつつ、大楯をかざし斜め前方へとスライドしながら鉄塊の嵐を盾で受け止め回避してゆく。並のワームなら消し飛ぶ凄まじい破壊力だが竜頭はまったく勢いを殺さず、また目標を転ずる気配もなかった。三機の竜頭は揃って一点を目指して翔けみるみると距離を詰めて来る。
 向かう先は、国谷機。
(「やはりそう来るか」)
 アッシュ、国谷機と共に前進中だ。紅い眼を鋭く細め胸中で呟く。読んでる。敵が有人の場合、電子戦機を第一に狙ってくる率が高い。
「こちらに来ますか」
 国谷は前進しながら敵味方の動きを把握中。ハミル機は国谷機の付近を、榊機、時任機、御崎機の三機は足並みを揃えて、カタリーナ機も前進。鷲羽はブーストで突っ込んでいて、雪野機は大外から回っている。ホアキン機、ヴァレス機、流叶機は射撃していているが竜頭達は射撃で止まる気配はまったくない。稲葉機、飯島機、鹿嶋機がブーストで竜頭達へと向かっている。
 アッシュは思う。三対三。止まるか? 味方のその三機は強烈な強さを誇っているが、敵の三機もまた凶悪無比だ。止められれば問題無い。だが万が一、
(「――抜かれたらカバーだな」)
(「一秒でも長く、立っていなければ」)
 アッシュと国谷は戦場全体に注意を向けつつ想定される幾つかのパターンに備える。
 突撃する鹿嶋機、ピアッシングキャノンで緑竜頭の盾の死角から狙いたい。ホアキン機はクレーターに陣取っている為、定点からの射撃だ。一方へ構えていればそれで済む。敵は身を半身に大楯を構えて砲弾を防ぎつつ突っ込んで来る。身のほぼ全てを隠し死角は無い。機動隊のアレだ。バーニアの推力方向どうなってる、と言いたくなるが慣性の方向を操っているらしい。慣性制御、最早お馴染みも過ぎた感のある能力だが、やはり厄介極まりない能力だ。
 稲葉機のファランクス・アテナイが起動し猛烈な弾丸の嵐が飛び出してゆく。大楯に激突して火花が散る。
 距離が詰まる。
 鹿嶋、稲葉、飯島機が一六〇m程の距離をおよそ五秒で詰め、その間に竜頭が四二〇の距離を詰めて来る。進路上に突撃する。射撃が止む。射線の問題だ。味方の背に当たる。
 飯島機が機盾を掲げ、稲葉機がゼロ・ディフェンダーを構え、鹿嶋機がアクチュエータを機動させ左にDoRを、右に小銃を構えた。竜頭達は身を捻り真紅のブレードを構える。凶悪な赤い光が瞬いた。赤を中央に左右を緑青が固め、三機の竜頭機は稲葉機へと一斉に斬りかかった。三方からの一撃。
 轟音と共に衝撃が巻き起こる。
 飯島機はブーストを発動させて踏み込み、青竜頭と稲葉機との間に割って入っていた。袈裟の斬撃を盾でがっしりとブロックする。鹿嶋機もまた稲葉機と緑竜頭との間へと剣を差し込んで受け止めている。
 稲葉機、ハイマニューバ、ブースト、国谷機のジャミング中和が効いているが、左右が味方に塞がれている。後ろに下がる。赤竜頭からの空間を縦に断裂する紅蓮剣閃がナイチンゲールの装甲を叩き斬って抜ける。速い。流石に二十機蹴散らしただけはあるらしい。
 こいつァ倒し甲斐がある、と思った。
『‥‥へへ、最近雑魚削りばかりで相棒が泣いておりましてな。ちィと付き合って下さいよ!』
 稲葉は言って、地に降りた赤竜頭へと正面から護剣を振り降ろす。赤竜頭は大楯を掲げてガード。火花と轟音が突き抜ける。赤竜頭、稲葉機へと猛然と斬りかかる。稲葉機、攻防が進んでスペースが空いたので相手の左、盾側へと回り込むようにしつつ回避運動。一発に斬り裂かれるも二発を避けた。稲葉は剣閃を凌ぐと反撃の斬撃を繰り出す。
『ヤな動き方しやがる。まぁた厄介そうなのが出て来たなオイ!』
 赤竜頭は盾でがっしりと受け止めつつ、そんな事を言った。
 他方、飯島機は攻撃で生じた盾の隙間へとハイディフェンダーの切っ先を突き込みカウンターを狙った。青竜頭は機体を捻りつつ大楯の縁を当て弾く。防がれた。だが、ただ正面から攻めるのとは違い十割通らない、という事も無さそうな手ごたえ。格闘武器において攻撃と防御は同時に出来ない。
 切り替えの狭間、速度の勝負。
 青竜頭が地に足をつける。飯島は半身に左の盾を掲げ、右の剣を背に納め槍の中頃を掴んで取り出すと盾の陰に穂先を隠しバーニアを吹かせて突っ込む。機盾での体当たりか爆槍でのチャージアタックの二択を迫る。青竜は斜め上の宙、は、デュノフガリオ夫妻に狙い撃たれそうだと判断し跳ばず、咄嗟に横にスライドして軸を外す。飯島は左足を大地に叩きつけて方向を切り替えると右で踏み込んで爆槍を繰り出す。青竜は盾で受けた。吹き上がる爆炎を切り裂いてカウンターの赤光剣が飛んでくる。飯島はアイギスで二連を止め、一発もらいつつも背に槍を納めてまた剣に持ち変えカウンターを放った。盾と剣が激突して轟音が鳴り響く。
 一方、緑に入った鹿嶋機、受けた後に斬撃を放っている。緑竜頭は盾で止め、着地。鹿嶋機へと唐竹割りに赤光剣を振り降ろす。鹿嶋、動き出しをよく見ている。剣閃自体は見えなくても予備動作を見ればタイミングは掴める。機体を半身に振り下ろされる剣に対して魔剣を振り上げ刃を添える様に合流させんとする。刃が接して滑り軌道が僅かにそれて雷電の肩の先を切り裂きながら斜めに抜けてゆく。流れた。間髪入れずに踏み込んで体当たりするかの如き勢いで薙ぎ払う。魔剣の刃が盾に激突して轟音と共に衝撃を巻き起こした。緑竜は盾を振るって魔剣を払い、その勢いで機体を捻らせざま剣で斬りかかって来る。鹿嶋は後退しながらスラスターライフルをフルオート。カウンター。出だしを潰す。猛烈な弾幕が緑竜頭の身に突き刺さり破壊力を炸裂させる。緑竜頭は撃たれつつもスライドしながら踏み込んで残りをかわし、赤光剣で斬りかかった。流される事を嫌ったのか横薙ぎから袈裟に繋ぐ連斬。鹿嶋、クレーターの方へと下がりつつ受けんとしたが、今度は流し損ねて切り裂かれた。初撃は上手く捌いて優位に立ったが、流石に速い。AIと違いすぐに学習してくるのがキツイ所。装甲の破片が宙に散る。損傷一割六分。
 三機が激突するのを見て雪野機はブーストを起動。バーニアを吹かせてゴーレムへと駆けてゆく。
 時任機、強化タロスへと前進しながら長距離バルカンで弾幕を放つ。三機の強化タロスは大楯で受けながら進み、ゴーレムへブースト突撃する鷲羽機との相対距離が一〇〇に入ると足を止め荷電銃を鷲羽機へと向け猛射。十二条の光の嵐が飛ぶ。鷲羽はディフェンダーを掲げて急所を防御。光線が次々にアジュールへと突き刺さって爆裂を巻き起こしてゆく。損傷六分。ロングボウとは思えぬ硬さ。非常に堅牢だ。
 二機の強化ゴーレム達は肩部砲を構え鷲羽と相対一五〇に入ると足を止めて連射した。ハミルはそれを見てゴーレムの連射を妨害せんと相対距離三二〇、SRD‐02で射撃を仕掛ける。狙われた一方のゴーレムは一発の砲弾を撃ち放った後、素早く横に動いて弾丸をかわし、鷲羽機へ二連射する。リロードしつつハミル機は前進を続ける。鷲羽は四連の砲弾に対し突撃しながらスライドして一発を回避するも一発が入って次々に残りの砲弾も炸裂してゆく。ディフェンダーを掲げて焔を裂いて飛びだした後、ハミル機の射撃の影響でやや遅れて飛んで来た二連の砲弾を避け一発を切り払って直撃をかわし、快速で突っ込んでゆく。鷲羽機、一気にゴーレムの懐まで飛び込むとその腕の多軸ドリルをショルダーキャノン目がけて繰り出した。螺旋の切っ先が砲の根元に炸裂し鋼を削り砕いて一撃で大穴を生じさせて破壊する。壮絶な破壊力。
 雪野機はブースト機動でゴーレムへと距離を詰めている。相対距離一二〇、プラズマリボルバーを構え鷲羽機が向かったのとは別のゴーレムへと牽制射撃。ゴーレムは素早く飛び退いてかわした。雪野機は勢いを止めずにそのまま突っ込む。カタリーナ機も前進中。相対距離二一〇程度まで詰められるかどうか、といったところ。
(「移動力が厳しいですわね」)
 カタリーナは胸中で呟く。せめてブーストをかけたい所だが、接近してからも使用したい。遠間で撃てれば良いが、命中等を考えると一〇〇程度までは距離を詰めたい。難しい所だ。
『少しの間、私達と遊んでもらいます』
 相対距離二〇〇、御崎、外部スピーカでタロスへと言って宙に小さく跳躍。時任機の弾幕を受けている強化タロスへと真スラスターライフルで上から撃ち降ろす。タロスは身を屈めて大楯の陰に身を隠した。銃弾が大楯に激突して火花を散らしてゆく。
 榊機は僚機と足を揃えて前進し、アッシュ機と国谷機は強化タロスとの相対距離一八〇、まだ射程外。
 赤青緑の竜頭三機と稲葉、飯島、鹿嶋の三機は激しく白兵戦を繰り広げている。竜頭達はそれぞれ七連の剣閃を巻き起こし、稲葉機回り込みつつ五発かわし二回斬られて損傷率二割二分。良く避ける。稲葉機はアテナイを叩き込みつつ三連斬撃を見せに閃光銃を放つ。しかしそちらは盾に悉く止められた。
 鹿嶋機はじりじりとクレーターの方へと後退しつつ(十m移動してあと百五十m)敵の攻撃予備動作に銃撃を合わせて弾丸をぶちあててゆく。本来は、当てるよりも回避させて攻撃をキャンセルさせるのが目的だが、緑竜頭は構わず強行攻撃して来た。『避ける暇あったら叩き斬れ』の思考らしい。鹿嶋機の破壊力と自らの強装甲と再生能力からの判断だろう。鹿嶋、三十発の弾丸と一発の剣撃を叩き込むも残りはかわされ、竜頭からの斬撃を三発受け流し四発貫かれて損傷五割九分。
 飯島は盾で四回止めて三発縫われて損傷二割一分。七発のカウンターを竜頭へ三発命中させ剣撃を叩き込むも四発は避けられる。チャージは盾で受けられた。
 ホアキン、クレーターへと下がって来る鹿嶋機の背がスクリーンになってる。
(「これは、難しいかな」)
 クレーターに陣取る事を諦めると鹿嶋と緑竜頭の元へと向かう。
「待たせた」
 疾風の如き速度であっという間に距離を詰める。ちょっと普通じゃない機動力。アクチュエータを発動、鹿嶋機へと斬撃を叩き込んだ緑竜頭の盾の無い右側面から踏み込むと胴を狙ってグングニルを加速させて撃ち放った。豪速で繰り出された槍が竜頭の装甲をぶちぬいて穴を穿つ。
「矢張り、思い通りにやらせてはくれんか。詰めるぞ」
 少し、撃ちにくい。ヴァレスは淡々と言ってブーストを機動させて愛機を駆け出させる。
「わかったヴァレス」
 流叶も了解を無線に返すとブーストを起動させて駆け出す。二機の漆黒のシュテルンがバーニアを吹かせながら青頭竜へと向かう。
 流叶は飯島機と盾と盾をぶつけあわせている青竜頭へと向かって突撃しながら猛烈な弾幕を解き放つ。竜頭は素早く飛び退いて弾丸を回避。
「この一撃、耐えられるかっ!」
 ヴァレス機はバーニアを吹かせながら青竜頭へ突撃し機杭エグツ・タルディを繰り出した。炸薬が爆裂し、メトロニウム製の杭が高速で飛び出す。竜頭は盾でがっしりと受け止めた。轟音と共に衝撃が逆巻く。
 雪野機がブーストを継続して突っ込んでゆく、ゴーレムは肩部砲を構えている。
「強化型ジャミング集束装置、起動!」
 国谷が言って半径三〇m以内のジャミング中和能力を強化する。相対距離二六〇、ハミルはブレス・ノウを発動させると荷電粒子砲、は少し射程距離が足らないので再びSRD‐02をゴーレムに向ける。回避にスライドするであろうゴーレムの未来位置を予測、幾つかのパターン、山を張って射撃。マズルフラッシュと共にライフル弾が長い砲身より飛び出し、スライドする強化ゴーレムの身へと吸い込まれるように突き刺さる。
 その隙に雪野機が一気に踏み込んだ。白銀のグラーネは装甲表面に素粒子を巡らせ斥力場を展開、バーニアを吹かせながら槍構えチャージをかける。ゴーレムは慣性を制御して向き直り至近距離から砲弾を撃ち放つ。グラーネはブースト機動でスライドし砲弾を紙一重ですり抜けると猛然とロンゴミニアトを繰り出した。鈍い衝撃と穂先が大剣を掻い潜って脇腹に突き刺さった。
「悪いけど、時間かけてられないのよね!!」
 トリガーを引いて爆裂三連。痛烈な破壊の焔が荒れ狂いゴーレムの装甲を吹っ飛ばす。ハミルは相対一四〇まで突撃しつつ荷電粒子砲を撃ち放った。極大の光が爆音と共に飛び出し、一瞬で宙を制圧して炎の中のゴーレムへと突き刺さる。プラズマ光波がゴーレムの装甲を灼き削り飛ばしてゆく。
 強化ゴーレムはしかし、爆炎を払い、光を吹き散らしながら竜巻の如く大剣を振るった。雪野は振り降ろしの一撃を斜め後ろに動いてかわし、逆袈裟の斬撃をスウェーしてかわし、高速の突きを槍で払ってかわした。ブースト機動と国谷機のジャミング中和が効いている。捌ける。
 もう一方のゴーレムと白兵戦闘を繰り広げている鷲羽は、振り下ろされる大剣に合わせ、かわしざまにドラゴンヘッドスマッシャーを突き出した。ドリルの先端がゴーレムの手首に突き刺さり、回転して甲高い音をあげながらその奥までぶち抜いた。大剣ごとゴーレムの両手首が地に落ちて転がる。鷲羽は右斜め後背から迫り来た猛烈な荷電嵐に撃たれつつも、堪えて踏み込み、返すドリルでゴーレムの胸をぶち抜く。多軸ドリルの凶悪な破壊力が荒れ狂いゴーレムを粉砕した。鉄巨人が爆裂を巻き起こしながら崩れ落ちる。撃破。
 一方で光の嵐がアジュールの装甲を吹っ飛ばしてゆく。後背からの一撃、クリティカルヒット。十八発の荷電波が全弾直撃して損傷率六割一分。カタリーナ機はゴーレムとの相対距離一二〇まで詰める。
 他方、相対距離一八〇、時任、榊、御崎、国谷、アッシュの五機は揃って進んでいた。整然とした動きだ。時任機と御崎機は引き続き機銃と小ジャンプからの突撃銃で弾幕を張りつつ前進。相対一五〇に入ると榊機もスラスターライフルで弾幕の形勢に参加。三機で弾丸の嵐を撃ち放ちながら前進してゆく。相対七〇で榊機のアテナイが起動して嵐の如く弾丸を発射し、アッシュ機がレーザー砲で、六〇で国谷機がレーザーバルカンを撃ち始める。
 三機の強化タロス達は半身に大楯を構え、正面からの弾幕を防ぎつつ鷲羽機へと荷電銃を向け十八連射している。アッシュ、割り込みにいきたいが遠い。
 飯島機は赤竜頭へと向かい、稲葉機と挟んで攻撃開始、飯島機が突っ込み稲葉機が機動戦の形。赤竜頭は駆けながら前後を挟まれないように立ち回る。飯島機の槍が爆炎を吹き上げ、稲葉機が直線に閃光を差し込み赤竜頭の身を撃ち抜いた。緑へはホアキン機をやや前に損傷が増して来ている鹿嶋機は機を見て斬り込む形で左右から挟みこまんと仕掛ける。損傷状況、飯島機、四発を盾で防ぎつつ三発もらって三割八分、ホアキン機、盾で反撃を悉くブロックして一割一分。
「流叶!」
「あぁ、分かってる‥‥双頭の悪魔、敵を食め!」
 ヴァレス機は後退しつつ流叶機は横に回りつつ、マルコキアスを青竜頭へと向け怒涛の弾幕を解き放つ。クロスファイア。青は正面のヴァレス機からの射撃を大楯で受け、横手の流叶機からの弾丸を装甲に受けつつも慣性制御のバーニア機動でヴァレス機へと低空ダッシュして猛然迫り、肉薄しつつ横に回り込む。ヴァレス機を壁にしてルカナ機からの射線を切る動き。両機もそうはさなせないように動くが相手の方が速い。青は宙にバーニアを吹かせつつヴァレス機へと切り上げ、袈裟斬り、薙ぎ払いと繋ぐ。何の防御策も無しに対応出来る速度差ではない。バターでも裂くように赤光剣がヴァレス機を切り裂いてゆく。三発入って八割三分。トドメの四撃目を振り上げると同時、横手から弾丸の嵐が青竜頭へと叩きつけられ、ブーストで加速した流叶機が盾を構えて割って入った。振り降ろされた赤光剣がアイギスと激突し猛烈な衝撃が巻き起こる。
「ぐ‥‥っ!」
 盾の間を縫って連続突き。皇騎に赤光剣が突き刺さって装甲が吹き飛んでゆく。一発止めるも三発縫われて三割五分。流叶は強い。ヴァレスも弱く無い。が、敵は化物だ。しかし敵も化物だが、こいつらを一機で抑えてた連中はどんだけなんだと思う所である。
「‥‥今だ!」
 攻撃を凌いだ流叶機が横に踏み込んで剣を振るい、ヴァレス、ブースト機動、PRMSを精度と破壊力に乗せ青竜頭の右側面から突っ込んだ。
『貴様等程度に、流叶をやらせると思うなよ!』
 左右からの同時攻撃。流叶の剣と大楯が激突しヴァレス機から高速で放たれたパイルバンカーが青竜頭の脇腹に炸裂した。強烈な破壊力で装甲を突き破って喰い込む。
 VSゴーレム、雪野機が爆槍を流星の如く突きだして爆裂を巻き起こし、ハミル機がブレス・ノウから荷電粒子砲を三連射してプラズマの奔流でゴーレムを焼き焦がす。
 カタリーナ機、相対距離一〇〇まで詰めるとゼカリアの主砲、420mm大口径滑腔砲を轟音と共に撃ち放つ。連射。
「邪魔です。私達の道を塞がないでくださいませ!」
 唸りをあげて飛んだ二発の砲弾が飛ぶ。ゴーレム、避けられない。猛烈な爆炎が巻き起こった。爆砕されたゴーレムが吹っ飛んでゆく。撃破。
「味方が落とされるのを眺めている様な間抜けだと思うか?」
 アッシュ機、タロスへと突っ込んでいる。時任と榊機も突っ込んだ。アテナイとソウルが発動して弾丸の嵐を解き放っている。国谷機は集束装置を持続させつつ前進しながら光線で、御崎機は実弾で弾幕を形勢し援護射撃する。
 三機の強化タロス達は大楯でガードしながらそれぞれ目標を鷲羽からアッシュ、時任、榊の三機に転ずると荷電ライフルを連射して迎え撃つ。
 アッシュ機、国谷機の援護が効いている。盾で六連の閃光を全弾ブロック、損傷率三割一分。時任機も援護が効いてる、突進しながらスライドして全弾回避。榊機も悉くかわす。速い。
 時任機が踏み込んでDoRを落雷の如くに振り降ろし、榊機が千鳥十文字で稲妻の如くに突きかかる、アッシュ機がビームクローで斬りかかった。三機のタロス達が大楯を合わせてそれぞれの武器が激突し轟音が轟き火花が散る。御崎はアッシュからの攻撃を受けているタロスの真上に跳ぶとリロードしつつ三十発の弾丸を撃ち放った。弾丸が上から降り注ぎタロスの装甲を穿ってゆく。
 鷲羽機はブーストを機動させてタロスへと突撃する。右側面に回るとブリューナクをリロードしつつ三連射し、誘導システム、照準投射、併発、多目的誘導弾を四連射。時任機の斬撃を止めているタロスの横手より三連の砲弾が激突し四発の誘導弾が直撃して大爆発を巻き起こした。タロスが爆風で吹っ飛んで破砕されながら大地に転がる。撃破。壮絶な破壊力。
 雪野機はタロスへハミル機、カタリーナ機は竜頭へと向かう。国谷機は集束装置を継続発動。
「そろそろ決めにいきますかっ!」
 御崎機、アクチュエータ、ブースト発動、真っ向からゼロ・ディフェンダーを振るって暴風の如くに斬りかかる。盾と剣が激突し、アッシュ機はマイクロブーストを発動させてその側面へと回り込んだ。
「霊鳥の翼が導いてやろう、ただし辿り着く先は地獄だがな」
 白雪を発動させると輝く刃でタロスへと突きかかり脇腹を抉る。タロスが光線剣を一閃させリアノンは盾で受ける。御崎機が剣を頭部に叩き込み、国谷機がブーストで回り込みメアリオンでタロスの後背を突き刺す。三機に囲まれて滅多突きにされたタロスは漏電を起こしながら爆裂した。撃破。
 榊機が機槍で突きかかりタロスが大楯で防ぐ。時任はサイドへ回りつつ機銃を撃ち放ち、ワイヤーを放ってタロスの腕を絡めた。行動を阻害しつつ電撃を流し込む。タロスは感電しながらも光剣を発生させて斬り降ろす。時任機は回り込みつつ素早くスライドして回避。榊機がワイヤーで盾が下がった所を狙い踏み込む。盾の上部から槍を突き降ろしゴーレムの顔面をぶち抜いた。すかさず時任機がDoRを振るってその腹を掻っ捌いた。タロスの瞳から光が消え、爆裂を巻き起こしながら動かなくなる。撃破。
「‥‥そこだ!」
 他方、鹿嶋の斬撃を竜頭が盾で受けた瞬間に横手に回ったホアキンが裂帛の気合と共にグングニルを繰り出した。タロスの足を貫き大地に縫い止めると腕を狙って、破壊神の如き威力を秘めた蒼く眩く輝く光の刃を発生させ斬りかかる。竜頭は素早く大楯を動かして刃を受け止めた。
 バーニアを吹かせ慣性制御で飛び上がり、足を振るって穂先を外し一気に高空へと登ってゆく。他の二機もそれぞれ飛び退いてバーニアと慣性制御で空へと上がったようだった。
『ははっ、死ぬかと思ったってよ。流石にやるねぇ!』
 赤竜頭が高空から外部スピーカを用いてそんな事を言った。先のホアキンの一撃に対してだろう。
『しかし、ちょいと時間切れだ。オレ達ゃこれで失礼させてもらうヨ』
 その言葉に対し地上から鹿嶋が言った。
『帰ったら獅子座に伝えなさい。俺達を甘く見ていると後悔するぞ‥‥とな』
『――聞き覚えある声だナァ、忌々しい。オレぁメッセンジャーじゃねぇが、ま、了解したヨ』
 流叶とヴァレスは追撃をかけるつもりでいたが大破する予感がしたので止めておく。
 三竜頭はバーニアを吹かせると高空を高速で跳んで彼方の空へと消えていった。


 かくて、押し返しを押し返した一行はまた指令を受け要所の防備、または応援へと向かった。
 国谷はゼナイド隊の生存者を回収、治療行動に当たった。なお死者は全体が勝つまで捨て置けとの事だった。


 了