タイトル:【BD】恐竜型キメラ?マスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/09/19 14:39

●オープニング本文


 バグアの突きつけてきた脅しと共に、ボリビア領内へはキメラが侵入を開始していた。本格的な侵攻ではなく、これも脅しの意味合いなのだろう。
「‥‥でも、この国にはそれに抗う力がない」
 国王ミカエル・リアは項垂れる。中立を標榜するボリビアの主権を尊重し、UPCは駐留していない。援助という形で持ち込まれた僅かなSES武器や能力者らの力では、長大な国境線はおろか、人里を守ることすら困難だ。それゆえに、彼は。
「ULTへ依頼を出す。それならば国是を犯してはいない‥‥。そうだとでもいうのか? それで納得させるにも限界はある」
 一歩を踏み出した若き国王に、摂政のマガロ・アルファロは不快げに眉をしかめてみせた。


「と、ゆー訳で! あたし達が呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃーんってな救援隊な訳よ」
 ULTのブリーフィングルーム、金髪の少女が言った。コルデリア・ドラグーンことコルデリア=エルメントラウドである。今回彼女はAU‐KVの下に着込んでいた黒のボディスーツ姿で、肝心のAU‐KVには身を包んでいない。サイエンティストにクラスを変えたからである。ドラグーンでないのに通り名がドラグーンとはこれいかに。
「良いの、いずれハイドラグーンになってカムバックするんだから!」
 と少女は語るが計画倒れにならない事を祈るばかりである。
 生徒コルデリアにはカンパネラのエド教室からは隊を纏める役割が期待されていた。士官候補生である。彼女は成績は優秀だ。我が強いので、協調性に難がありと評される事もしばしばだが、一応彼女なりには努力している。
 故にますます強大化してゆく敵勢力に対し、他のメンバーの援護なども考えてサイエンティストとなったのではないか――とエドウィン講師は言ったが、彼女本人は「自分で回復出来るようになればタイマン最強じゃない?」と理由について説明している。実際の所は半々だろう。
「そんなのどうでも良いのよ。ともかく、サクサクと今回の依頼について説明するわよ」
 とコルデリアがモニタの前に立ち、銀色の棒を伸ばして振りつつ依頼内容を説明する。
「超巨大キメラが確認されたのはボリビアの大都市ラパスからずーっと南西にいった所のペルーとの国境の付近。割と、荒野な所よ。ナスビーだかナスカだかの地上絵があるような、そんな砂が吹きすさぶ場所ね。熱いわよ。目に砂が入らないように注意ね。親バグア政権のペルー方面から放たれて侵入してきたんじゃないかって言われてるけど、っていうかそれ以外なさそうなカンジだけど、まぁそこはどうでも良い。とかく、あたしたちの任務は街に向かってのっしのっしと侵攻中なキメラを粉砕する事ね」
 言いつつ少女は棒の先を横につつっと滑らせてモニタの一点をさす。くるっとなぞると拡大されて碁盤の目に状に整備された街の空よりの図が映し出された。
「キメラさんは現在この街を目指して歩いてるみたいね。とりあえず街の正式名称長いのでボリビィ街って呼ぶ事にするわ。で、このボリビィにキメラが到着したら、割と結構大変な事よ。老若男女、赤ん坊から長椅子に揺れる御爺ちゃんまで暮らしている所よ。避難が間に合えば、その場の命だけは助かるかもしれないけど、その後、家も仕事も失くしてどうやって暮らしていけば良いのかしら? まぁ、平和な時代なら難民キャンプとか手当てもそこそこ厚いけど、今の情勢でそれやったら遠からず結構な確率で死ぬって事ね。最低限路頭には迷う事態になるって訳」
 コルデリアは言う。
「あたしは正義の味方じゃないし、他人の為に命を賭けるのもそんな好きじゃないけど、まぁ、でもねぇ、可哀想じゃない? 住み慣れた家や家族の元を、離れるのは、辛いわ。ぶち倒せばお給金も出るって話だし、不安に心を締めつけられているボリビィの街の皆さんの幸せの為にも、ここは一つキメラさんには死んでもらいます」
 空色の瞳の少女は言う。
「殺しにかかってくる存在に遠慮はいらないわ。逆に言うと、あっちも全力であたし達を殺しに来るから気は抜かないようにしてね。なんで今更こんな事って思うかもしれないけど、こっち方面の戦域には射撃場の的みたいなキメラはいないわよ。あちらさんも、いつだって全力で命を取りに来るわ。遊び気分でやると、強けりゃなんとかなるでしょうけど、弱いと即死だから、そこは注意ね。死ぬ気でやっても、力が足りなけりゃやっぱり叩き伏せられるから、力に自信が無い人こそ立ち回りは大事よ。駆け出しの人は‥‥正直、今回は止めといた方が良いかもね」
 散々脅して来るが、コルデリアがサイエンティストになってるというのは、まぁそういう事なのだろう。まともにやりあえば普通のレベルなら何人かはバタバタと斬り倒されるのが当たり前のレベル。
 コルデリアはモニタの端を銀の棒で叩く。
 画面が音と共に切り変わって、砲台をつけた恐竜のようなソレの写真が映った。俗に言うレックスキャノンワーム。
「‥‥‥‥写真間違ってないか?」
 誰かが言った。
 コルデリアが答えた。
「恐竜型キメラ、三匹」
「‥‥‥‥」
 沈黙。
「‥‥‥‥ワームだよな? ワームだよな? どうみても、ワームだよな?」
「‥‥まぁ、そう見えない事も、ないわね?」
 コルデリアはしれっと視線を逸らしつつそんな事を述べる。余裕でKV出す相手じゃないか、と誰しもが思ったが、まぁ、そういう事なのだろう。
「大丈夫! なんとかなるわよきっと! っていうか他にやるって人がいないんだからあたし達でやるっきゃないでしょおお?!」
 最後はなんだかやけっぱち気味な少女の声がブリーフィングルームへと響き渡ったのだった。

●参加者一覧

柚井 ソラ(ga0187
18歳・♂・JG
皇 千糸(ga0843
20歳・♀・JG
遠石 一千風(ga3970
23歳・♀・PN
斑鳩・八雲(ga8672
19歳・♂・AA
時枝・悠(ga8810
19歳・♀・AA
霧島 和哉(gb1893
14歳・♂・HD
蒼河 拓人(gb2873
16歳・♂・JG
フェイト・グラスベル(gb5417
10歳・♀・HD
流叶・デュノフガリオ(gb6275
17歳・♀・PN
ミリハナク(gc4008
24歳・♀・AA

●リプレイ本文

「‥‥え、これワームですよね?」
 ブリーフィングルームで説明を聞いていたフェイト・グラスベル(gb5417)はモニタの映像を見て呟いていた。
「あれ‥‥どう見てもワームだよな?」
 流叶・デュノフガリオ(gb6275)もそう呟いていた。
(「ハ、ハカッタナー!?」)
 胸中で叫ぶフェイト、恐竜キメラと聞いていたのにここでワームと来た。
「とりあえずキメラで腕鳴らし‥‥のつもりだったんだけどねぇ」
 皇 千糸(ga0843)もまた呟く。彼女はイェーガーになって初の出動であるようだ。実戦で慣らして、少しでも早くモノにしたいとの参戦であったのだが、
「これはまたトンでもないのが出てきたなー」
 蒼河 拓人(gb2873)が言う。
「出動許可出てないと思うんだがKVとか‥‥」
 と流叶。どうやら生身でやれという事らしい。大分無茶な依頼が来た。しかし、
「まぁ良いか。まだ力が足りないかも知れないが、腕試しには丁度良い」
「屠竜は闘士としての浪漫目標ですわ」
 ミリハナク(gc4008)は微笑を浮かべて言った。無茶な任務でもやる気は十分らしい。
 傭兵達はすったもんだもあったが依頼を引き受ける事に決め、作戦を打ち合わせると高速艇に乗り込みボリビアへと飛んだのだった。


 作戦領域の空へと到達すると傭兵達は高速艇の扉を開き、降下する。落下傘が開き、十一人の傭兵が荒野へと降り立った。
 一同は砂の大地に築城を行う事にしていた。時枝・悠(ga8810)、蒼河、ミリハナクはスコップを借り受け、皇は自前のバトルスコップを持ちこんでいる。遠石 一千風(ga3970)はコルデリアから敵味方の現在位置を聞くと地図で街の位置を確認し、RCの予想進路へと隊を導く。場所に辿りつけば傭兵達はキャノンや戦斧等、手持ちの武装で大地を爆砕して穴を生じさせ、スコップでそれを拡大、整えてゆく。
「プロトン砲相手どこまで有用かは分からないけど‥‥直撃するよりはマシでしょ、多分」
 と言うのは皇である。複数個に分けて塹壕を作りたい模様。常人ならばかなりの時間を必要とする作業だが、戦車をも吹き飛ばす能力者達の火力と腕力を以ってすればそれほどに難しい事ではなかった。地平線の彼方に巨大な三体の恐竜型ワームが姿を現した頃には、一帯に複数の塹壕を築き終えていた。
「なんとか間に合いましたかね」
 スコップを塹壕の底に刺し、上に這い出て来た斑鳩・八雲(ga8672)が言った。
「しかし、上級職の初陣の相手がアレとは‥‥まぁ、精々実験台になるとしましょうか」
 男は彼方より迫る巨竜を見やり苦笑を洩らす。
「ほんの少し前までワームに生身で挑むのは自殺行為だったけれど‥‥」
 遠石は砂塵防護用のゴーグルをかけつつ呟く。
(「新しい力が手に入った今、やれるのか‥‥やらなきゃいけない‥‥ここに集まった仲間も同じ思いなのかしら?」)
 上級職に転職してから初仕事である者が多いようだ。
「きちんと力、使いこなさないと‥‥」
 柚井 ソラ(ga0187)もまたそうだった。腕輪に触れながら呟く。何故か。守れるようになりたいからと青年はいう。守る――何を? 余人の知る所では無い。きっと理由は人それぞれ。
 一同は迎え撃つべく準備を整え展開する。AU‐KVがバイク型に展開され霧島 和哉(gb1893)が前部に、その後部座席に時枝が跨った。
「‥‥何が怖い‥‥て。いい加減、KVサイズを見ても‥‥何の変哲も‥‥感じなくなって来た‥‥事、だよね‥‥?」
 と霧島青年。この所、バカデカイ相手ばかりだ。流石に慣れて来た。
――敵がデカかろうが、強かろうが、いつも通り手を尽くすだけで、なんら問題は無い。
 そんな事を思う。
 作戦目的と手順を確認しながら時枝・悠(ga8810)もまた言う。
「‥‥要するに、此処で纏めて斬り捨てろ、と。ああ、分かり易くて良い」
 遠慮無く油断無く容赦無く。いつものように片付けよう、と思う。
 フェイトもまた覚醒して十九歳程度の長身の女へと姿を変じさせるとバイクに跨る。その後部座席につくのは斑鳩だ。
「よろしくお願いしますね」
「はい、なんとか掻い潜れると良いんですけどね」
 とフェイト。一発デカイのもらって転倒だけは避けたい所だが、しかし二輪はこけやすい。いけるかどうか。
「あまり無茶を出来る相手ではないだろう」
 一方、流叶はコルデリアと話し合って支援手順を整えておく。二人で治癒する体制を崩させない狙いであり、支援範囲が競合しない様である。
「攻撃が最大限に集中しそうな箇所を互いに射程に入れて、そこを中心に左右に別れましょう」
 とコルデリア。
「解った。重症人は、出来るだけ‥‥出したくないモノだね」
 流叶は多少なら防護にも自信があるので、本当に危ない時は庇う事も念頭においておく。
「了解、あたし達で全員五体満足で帰してあげましょっ」
 やがて距離が詰まり、三体の巨竜が迫り来る。
 巨竜達は既に傭兵の存在に気づいているのか、加速し、土煙をあげて駆けてきていた。
「んー、まずあの真ん中の奴を狙ってみる?」
 と皇。
「解りました。それじゃ、俺達は最初は左右のRCの目をペイント弾で潰したら加わりますね」
 と柚井。
「ん、そうね。了解」
 女は塹壕内を移動して正面に巨竜の姿を納める。相対距離二四〇。距離の減衰がきつい。相手はワーム。とても中るものではない――以前ならば。
(「集中集中‥‥大丈夫、私ならやれる。できる!」)
 皇、塹壕から身を乗り出し貫通弾を装填したライフルで狙いを定める。超長距離狙撃と部位狙いのスキルを発動、イェーガーのガンレティクルの紋章が精密な数値を示し始めた。弾丸軌道と敵の軌道を予測。交差点を狙いトリガーを絞る。轟く銃声と猛烈に重い反動が肩を貫く、抑えこむ。弾丸が錐揉みながら空を裂いて伸び、吸い込まれるようにRCワームのプロトン砲の砲口に飛び込んでいった。くぐもった轟音が響き渡る。命中。
「‥‥ををっ、ホントに当たった! 凄いぞ私、流石ね上級クラス!」
 ちょっと自分に感動する皇である。煙を吹く銃を上に塹壕内にひっこむ。流石に行動力を全て注ぎこむだけの事はあるらしい。
「感動してる所悪いけど、次、次!」
「了解!」
 コルデリアの声を受けつつ狙撃銃をリロードしつつ再び塹壕から身を乗り出す。十秒経過して相対距離一二〇、左右では柚井と蒼河とミリハナクも射撃を開始している。皇は三人と共に狙撃銃をリロードしつつ連射する。
「‥‥通しはしません、よ‥‥っ」
 柚井、塹壕から身を出しライフルを構え部位狙いを発動。まずは前衛が近寄りやすい隙を生み出したい。RCワームの瞳を狙う。ペイント弾を装填したライフルでリロードしつつ三連射。ワームは首を振って一発が外れ二発が右目と左目に直撃して鮮やかな黄色い塗料を撒き散らした。相手も速いが流石にイェーガー、精度が高い。
 蒼河、同様にペイント弾を装填したライフルを構え、柚井が狙ったものとは別のRCの瞳を狙い発砲。一発目、竜は首を振って外れた。二発目、高速で飛んだ弾丸が右目の端に炸裂し三発目もまた竜の左目に命中して塗料を撒き散らした。こちらも精度が非常に高い。
「愛しい恐竜さんと戦えるだなんて幸せですわ。私のすべてをぶつけて挑みますの」
 ミリハナク、微笑を浮かべつつ貫通弾を装填した狙撃銃の銃床を肩に当てて構え、皇が射撃したワームへと狙いを定める。背中のプロトン砲に当たれば御の字だが、とりあえずは中りやすそうな胴体狙い。反動を抑えつつリロードしつつ発砲。弾丸が唸りをあげて飛び、スライドしたRCの肩先をかすめて抜けてゆく。外れた。
 霧島&時枝、フェイト&斑鳩の二台のAU‐KVのエンジンが唸りをあげて前方に飛びだし、遠石が瞬間移動したが如き速度で加速する。流叶、弓は持ってきてない模様なので前進、コルデリアも続いた。
 最速で射程に飛び込んだのは遠石。狙撃組には攻撃は向けさせたくない、上手く攻撃をひきつけて捌きたい所。三体のワームは突っ込んで来る女へと狙いを定めた。砲を向け一体三連、三体で九連の爆光の嵐を解き放つ。ミリハナクが前進しながら竜の一匹へと牽制射撃し一発の弾丸を叩きこむ。弾丸が直撃して竜の皮膚を貫いた。
「もらう訳にはいかないっ」
 遠石、迫り来る光線に対し回転舞を発動。敵二匹の精度が落ちている。大太刀を空間に刺して跳躍し、光線の一発を飛び越えてかわす。速い。続く二発目に対しても回転舞を発動、脚甲で空間を蹴って急降下して紙一重でかわす。三発目、回転舞、強力だが効果が一瞬の割りに練力消費がバカでかい。もう空だ。光線が着地した遠石へと唸りをあげて飛び、その身を呑み込んだ。全身が消し飛ばされるが如き凄まじい衝撃力。光の嵐が迫る。雪崩れるように七発命中して負傷率十六割二分。目の前が真っ白になって次に真っ暗になった。流叶は練力を解放すると雷光鞭をかかげて練成治療を発動、遠石を目標に四連打する。治療術を受けて遠石の細胞がみるみるうちに再生してゆく。コルデリアもまた練成治療を発動させて連打した。遠石は意識を取り戻すと身を起き上がらせる。痛む箇所は何処も無い。負傷率零。全快復だ。
「‥‥突っ切るよ。振り落とされない、ように‥‥ね」
 その一瞬の間にブースト突撃した霧島等のバイク組がワームの足元まで飛び込んでいる。フェイトの後部に搭乗する斑鳩は突撃中にショットガンを構えると竜の頭部へと向けて散弾を撃ち放っている。ワームは首を振って散弾を回避。時枝はバハムートの座席を蹴って飛び降り、霧島はAU‐KVを変形させて装着する。斑鳩もまたバイクから飛び降りてフェイトはミカエルを装着した。
 時枝は猛撃を発動させ太刀を一閃。次の瞬間、竜の右足が割れ鮮血が勢い良く吹き出す。竜の頑強な皮膚を物ともしない桁違いの破壊力。衝撃に態勢が崩れた所へすかさず霧島が小太刀で斬りつけ、フェイトが腕からスパークを発生させて全長3.2mの巨大な竜斬斧を叩きこむ。猛烈な衝撃が巻き起こり、竜の皮膚が割れて鮮血がほとばしる。
「龍を調伏する御伽噺は数ありますが‥‥いやはや、我が身になろうとは」
 斑鳩が袈裟斬りの一撃を放つ。SESの一般的な刀だが、使い手に力がある。痛烈な一撃が竜の皮膚を切り裂いた。さらに復活した遠石が飛び込んで白銀の刀で斬りつける。
 五人の連打を受けてワームの足が千切れ、その巨体が揺らぎ傾いでゆく。時枝は素早くRCの首筋へ跳躍して刃を振り下ろす。太陽の剣が首の半ばを断って抜け、滝のような鮮血が砂の大地にぶちまけられた、竜の双眸から光が消え、その巨体が地響きと共に大地に沈む。撃破。
 遠石、別の一匹へと向かう。ワームは視界の大部分を塗料に塞がれつつも、踏み込んで来る女へと左右の爪を振るい、吼え声をあげて顎を開き噛みつきにかかる。女は爆風を巻き起こしながら迫る右の爪を身を低くして掻い潜り、左の爪を後退してかわす。顔の位置を下げて来たRCに対し霧島が反応し、全身からスパークを巻き起こしつつその顔の側面へと大盾で体当たりするように殴りつけた。轟音と共に竜の顔が弾かれ逸れてゆく。その攻防の間に柚井、貫通弾を装填しワームの一匹へとリロードしつつ三連射。二発の弾丸がプロトン砲へと突き刺さって火花を巻き起こす。強烈な破壊力。皇もまたプロトン砲を狙って射撃、リロードしつつ三連射。二発の弾丸を砲身に炸裂させる。
「これが新しい力だ‥‥ってな」
 蒼河は即射を発動、左右のRCの砲を狙ってそれぞれ三発づつ貫通弾を撃ち放ち、うち五発を命中させる。流叶は雷光鞭をかざして練成弱体を二匹のRCへと発動、目には見えないが恐らく効いた筈だ。様子を見つつ味方の負傷に備える。コルデリアはフェイトとミリハナクへ練成超強化を発動させている。
 爪を掻い潜った遠石が咆哮が叩き込まれた瞬間に足元へと入って五連斬を浴びせ、時枝もまた右のRCの脚へと七連の剣閃を叩き込んでいる。左のRCへと斑鳩が二連の音速波を撃ち放ち、RCは素早く横に飛んで回避。反撃に巨竜の剛爪が繰り出される。斑鳩、運動性に差があるが、相手の精度が落ちていており、また的を絞らせぬように駆け回っている。振るわれる爪牙と牙を次々にかわす。
 その間に竜の翼で加速し、咆哮を発動させたフェイトが竜の足元へと入っている。全身からスパークを撒き散らしつつ、一閃の光と化して交差ざまに巨竜の脚を薙ぎ払う。超強化で精度を増した戦斧が竜の脚に炸裂して血飛沫と共に猛烈な衝撃を巻き起こした。
「間近で見てもやっぱり惚れ惚れする素敵な姿ですわね。斬ってバラして喰らいたいわ」
 同じく強化されているミリハナクが突撃しながら双斧を振るって音速波を撃ち放って脚部へと追撃を叩きこみ、さらにそれを追いかけるように飛び込んで斧刃で脚部へと斬りつける。皮膚が割れて鮮血が勢い良く噴出した。
「さて、この巨体を打ち上げられるかどうか」
 斑鳩、衝撃に揺らいでいるRCへと踏み込むと、練力を全開に天地撃を発動、下方からすくいあげるように太刀を振るう。
「――斑鳩流、天山一式」
 刃が直撃して猛烈衝撃が巻き起こり、RCの身が一瞬浮いた。天高くに打ちあげるのは流石に無理だが態勢は崩せる。男はすかさず猛撃を加えてゆく。柚井、皇が射撃し、蒼河は即射を発動しつつ弓に持ち変え前進すると弾頭矢を番え、ワームの顔面、砲、脚部へと五本の矢を撃ち放った。矢が次々に命中して猛烈な爆裂の嵐を巻き起こし、霧島が咆哮を叩きこみ、遠石が斬りつける。流叶は斑鳩に治療を発動しつつ、時枝へと練成強化を付与した。
「粘れよ、紅炎」
 女は天地撃を発動、光を纏った太刀を下から上へと斬り上げる。刃が炸裂しRCの身が壮絶な衝撃に揺らぐ。時枝は振り抜いた刀を返すと両断剣・絶を発動させた。剣の紋章が刃へと吸い込まれ強烈な輝きを纏う。
「出し惜しみは、無しだ」
 振り降ろされた刃が、竜の腹を泥のように叩き斬って抜けた。竜の身から赤色のものがぶちまけられ、その瞳から光が消えて倒れる。超改造されたKVでもなかなか出ない破壊力。撃破。
 最後の竜は爪牙を振るい、斬られつつ粘るも、やがて流叶とコルデリアからの弓矢と光波を受け、フェイトの咆哮と斑鳩の天地撃で態勢を崩された鈍らせた所へ、ミリハナクが跳躍して双斧を竜の首へと炸裂させ、竜は血霧を噴出させながらその巨体を大地に沈めたのだった。


 かくて、傭兵達の活躍により国境の街に迫った三匹の恐竜型ワームは撃破され街はひとまずの安全を取り戻した。報せを受けた街では人々は歓声をあげ、安堵に胸を撫で下ろしたという。
 ボリビアの情勢は未だ混沌とした中にあり、その未来が何処へ向かっているのかは、未だ誰にも解らなかったが、今はその勝利を讃えよう。

 了