タイトル:橋の上の騎士+マスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/06/22 07:34

●オープニング本文


 日本国が四国のとある競合地帯の半要塞化された田舎の町。
 軍の能力者の兵士達が雄叫びと共に刀槍を手に橋の上を駆けてゆく。
 向かう先にいるのは三体の人型サイズのキメラ。
 一体はずんぐりとした体格の古風な板金鎧に身を固めた中世騎士風のキメラ。三メートルはあろう鉄棍を流星の如くに突きだし踏み込んで来た兵士をカウンターで打ち倒す。
 一体は和風の頭巾と甲冑を身に付けた大男。二間程度の長さの大薙刀を旋風のように振り回し、兵士を薙ぎ払いその首を刎ね飛ばす。
 一体は白いスーツを身に付けた恰幅の良い白ヒゲの老人。手に持つステッキで兵士の顔面を『射撃』した後、疾風の如くに踏み込むと何処からか取りだした骨つきチキンで兵士を滅多斬りにして鮮血の海に沈める。
 数秒の後には橋の上にはUPC軍兵の屍で溢れかえっていた。
「‥‥なんたる事だ!」
 その様を見ていた大隊長が嘆きの言葉を発した。
 彼が率いる隊はこの橋を突破して敵の側面に回り込む事を任務とされていたが、この三体の異様なコンビネーションの前に前進を止められてしまっていた。
「大隊長! このままでは‥‥」
 副官の一人が焦りの声をあげる。このままでは本隊は支援を受ける事が出来ず、苦境に立たされる事になってしまうだろう。大隊長は唸る。友軍が心配だし彼自身の今後の進退も心配だ。
「迂回路はないし、通常兵器では強化FFの前には埒があかんし、橋をふっ飛ばそうにも頑強なメトロニウム合金造り‥‥く、こんな所で切り札を出したくなかったのだがやむをえまい」
 大隊長は無線を取りだすと指揮下の一隊を呼び寄せた。
 彼はやってきた傭兵達に向き直ると言った。
「先生方! どうか、あいつらをやっちまってくだせぇ!」
 どうにも微妙に小物臭のする大隊長であった。

●参加者一覧

ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
六堂源治(ga8154
30歳・♂・AA
植松・カルマ(ga8288
19歳・♂・AA
ディッツァー・ライ(gb2224
28歳・♂・AA
守剣 京助(gc0920
22歳・♂・AA
如月 芹佳(gc0928
17歳・♀・FC
御鑑 藍(gc1485
20歳・♀・PN
犬彦・ハルトゼーカー(gc3817
18歳・♀・GD

●リプレイ本文

(「ここは『どーれ』って出て行った方が良いんスかね?」)
 先生方と呼ばれた八人の傭兵のうち一人、六堂源治(ga8154)は胸中でそう呟いていた。
「どぃ〜れぇ〜い、俺等の出番かぁあ」
 六堂がそんな事を思っていると、まさにその通りにのっしのっしと胸を張り一人の男が現れた。植松・カルマ(ga8288)である。
「へぇ! ここは先生、一発ビシッっと決めてやってくだせぇ!」
 微妙に小物臭のする大隊長が揉み手して言う。
 それに「おう、任せろぃ」とカルマ。存外にノリが良い。
「ちょりーっす。今回は植松も呼ばれてたんスね。よろしくッス」
 ちなみに植松は六堂の友人であったりする。六堂的には共に不良系の気質なので割と気があったりするらしい。
「お、六堂サンじゃないスか。こちらこそ!」
 ハッハッハと笑って頭を掻きカルマ。
「しかし今回の敵は京の五条の橋の上‥‥にしては、随分とバラエティー豊かじゃねぇか」
 ディッツァー・ライ(gb2224)が橋の上へと視線をやって言った。
(「和、洋‥‥米? 道頓堀の恨み‥‥でしょうか?」)
 そんな事を思っているのは御鑑 藍(gc1485)である。口に出さずに小首を傾げてるだけなのはちょっと人見知りが激しいからだ。
 いずれにせよ、被害も大きいし確実に討伐したい所だと女は思う。
「弁慶みたいだね」
 というのは如月 芹佳(gc0928)だ。
「橋に弁慶たぁ随分よさげなシチュエーションじゃねーの」
 その言葉にカルマはニヤリと笑い、
「『前や後ろや右左、ここと思えばまたあちら、燕のような早業に、鬼の弁慶あやまった』ってか? やっべ俺超カッケー!」
 などと言っている。
「でも‥‥うん、そうだね。私は牛若丸の戦い方を参考にするよ」
 如月は機動力で攻める腹のようだ。
「ねぇ、白頭巾って刀回収してるんだよね? 珍しい刀を持ってたら、回収しちゃダメ、かな?」
 それには大隊長曰く、そういった拾得物は基本的にULTか軍に接収されてしまうらしい。今回は一旦軍に集められそこから元の持ち主や遺族に渡されるだろうとの事。
(「先生、か。まさか俺がそう呼ばれる日が来るとは」)
 などと思いつつ橋の上へと視線をやり遺体の位置を確認しているのは守剣 京助(gc0920)だ。戦闘中に踏まないように注意する。
(「あのキメラ」)
 一方、静かな怒りを燃やしている者がいた。ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)である。双眼鏡で戦闘の様子を眺めていた男はキメラの一匹がチキンを振るっているのを確認した。
(「‥‥食べ物を粗末にするな」)
 キメラと分かっていてもこの所業には冷たい怒りを覚える。用心棒は願い下げだが、この戦いに異存はない。
 男は僅かに目を細め、
「飢えを知らん化物め‥‥橋の奪還ついでに、刀の錆にしてくれる」
 そう、酷薄な笑みを浮かべて呟いたのだった。


 傭兵達はまず閃光手榴弾に細工を入れた。ピンを抜いてから五秒で発動するようにセットする。合図は『ケンタッキー』と定めた。
 準備を整えると橋へと向かう。ホアキンは弓に弾頭矢を番えた。キメラ達は傭兵達を待ち構えるように橋の彼方で待機している。
 相対距離一二〇の少し手前、六堂、如月、ディッツァー、カルマ、御鑑、犬彦・ハルトゼーカー(gc3817)が一斉に駆け出した。全速で先行するのは六堂、御鑑の二名、他は少し距離を開けてついてゆく。守剣は一二〇mラインに残った。犬彦は駆けつつ援護射撃を発動させ、六堂と御鑑の前進を援護するように拳銃で射撃を開始する。銃の射程外だがエミタサポートが発動されると威嚇効果を発揮するのだろう。
 白髪の鬼は少し狙いにくそうにしつつ手に持つステッキを動かす。向ける先は先頭を駆ける六堂だった。しかしその瞬間ホアキンが動いた。先手必勝を発動させ高速で反応すると白髪鬼がへと弾頭矢を撃ち放つ。間合い一二〇、かなり遠い。だが音速を超えて飛んだ矢は見事にステッキを直撃し爆裂を巻き起こした。爆風でその銃口(?)が逸れ、今まさに放たれんとしていた閃光が明後日の方向へと飛んでゆく。ホアキン・デ・ラ・ロサ、良い腕だ。
 攻撃を受けた白髪鬼は目標を転ずるとホアキンへと杖の先を向ける。瞬間、またもや爆裂が巻き起こる。白髪鬼は銃撃せんとステッキを構えるが、爆発によってその動きを強制的にキャンセルさせられる。白髪鬼が一動作で射撃できるのに対しホアキンは矢を番えるという動作が必要なのだがほぼ同速で攻撃準備を整えている。左利きの闘牛士は白髪鬼が構え直す度に先手必勝を連発して強引に割り込み、爆裂矢を命中させ銃撃を逸らさせてゆく。結果、弾頭矢が尽きた六発目。ようやく鬼がホアキンへと射撃する。ボロボロになった杖は暴発して砕け散った。
 他方、一連の攻防の間にも時は流れている。弾頭矢の一発目が炸裂しFFを貫いたのを見て鉄棍鬼と白頭巾は攻撃を受けた事を察知、弾かれたように傭兵達へと向かって走り出していた。キメラの知能が低いとはいっても自分達を殺せる攻撃を受けているのに棒立ちし続ける程ではない。そこで立ってたら殺戮兵器ではなく射的屋の的だ。
 キメラが走り、傭兵達が走る。キメラは傭兵達よりも出遅れている。六堂が七十m程度進み、閃光手榴弾のピンを引き抜いた所で五十m程駆けた鉄棍鬼が突っ込んで来た。
 六堂、一瞬考える。何処に投げるべきか? 目の前に放れば二匹巻きこめそうな気がするが、やはり作戦通りに白髪鬼へと投じた方が良いだろうか。打ち合わせに従う。
「ケンタッキー!」
 アメフトのクォーターバックの如く合図の言葉と共に閃光手榴弾を投擲する。五秒後に炸裂予定。鉄棍鬼が轟音と共に合金の橋を蹴り踏み込む。犬彦、後方三十五mの位置、援護射撃の範囲内。銃弾が飛んで鉄棍鬼の動きが鈍った。鬼は長さ3mの棍を六堂の頭部を狙って振り降ろす。六堂、降り抜いた態勢から体を切り返し咄嗟に受けんと刀をかざす。刀があがるよりも速く落雷の如くに激突した。首を振ってかろうじて頭部への直撃は避けたが、鎖骨部にあたり、鎧の上から猛烈な衝撃を叩きつけて来る。鉄棍鬼は間髪入れず素早く根を引くと螺旋の回転と共に突きを放った。背後から「ケンタッキー」と合図を発する御鑑の声が聞こえた。六堂、咄嗟に捌かんとするも雷光の如き突きが刀をすり抜けて身に直撃した。轟音と共に後方へ吹き飛ばされる。「フライドチキン!」と叫んでいる犬彦の声が聞こえた。それらの言葉は繋げてはいけない。鈍っていながらも鬼の突きは極めて的確だった。六堂は身を捌き足から着地。白頭巾が薙刀を振り上げて六堂へと突っ込み、鉄棍鬼が追撃に走る。六堂、態勢が崩れている。
「させねぇよコラッ!」
 後方から駆けて来たカルマがブラッディローズを構え散弾を撃ち放った。二連射。四十八発の散弾が白頭巾に命中し鮮血を噴出させ、頭巾は目標をカルマへと変更する。踵を返すカルマへと追い縋りトップスピードに乗る前に追いついて大薙刀を竜巻の如くに振るう。四連斬。カルマは咄嗟に向き直ってガラティーンで止めて、止めて、止めて、止める。鉄棍鬼よりかなり遅い。だがパワーが二枚は上手だ。凶悪な破壊力が逆巻き、剣持つ手首が砕きそうな程の衝撃が突き抜けてゆく。負傷三割三分。
「突貫、一気に間合いを潰すッ!」
 ディッツァーが吼えた。炸裂を待っていると仲間が危ないか。六堂の眼前をディッツァーの背が抜けてゆく。戦士は先手必勝を発動、炎の波紋を持つ太刀を振り上げ鉄棍鬼へと斬りかかる。鉄棍鬼は弾丸の如くに向かい来る炎の戦士に対し低く腰を落として3mの根を構えた。リーチが長い。太刀が振り降ろされるよりも前にその胸元へと閃光の如く突きが伸びて来た。ディッツァー、素早く太刀を下げ受けんとする。すり抜けた。轟音と共に男の身が駒のように回転し吹き飛ぶ。苦痛を堪え身を捻って足から着地。鉄棍鬼が追い縋り突きを繰り出す。鬼の如くに速い。連打を受けつつも身を捻り、衝撃を流しながら踏み込む。八双から袈裟に斬り込み、踏み込みんで薙ぎ払い、太刀を返し面を狙って打ちこんだ。三連斬。鉄棍鬼は一歩後退してかわし、根の柄で弾き、半身になって打ちこみをかわすと根を回転させて石突を腹部ねらって打ちつける。男は素早く身を沈め、装甲の厚い部分で受け止める。負傷二割五分。
 直後、爆音が轟き閃光が荒れ狂った。白兵戦を行っている傭兵達以外は各々対閃光防御を取る。二連の爆裂に白髪鬼が目を眩ませ聴覚を一時的に失う。
 守剣が鉄棍鬼へと全力で駆け出し、六堂は鉄棍鬼をディッツァーに任せ白髪鬼へと向かう。御鑑とホアキンもそちらへ向かった。
 如月は迅雷を発動、宙に淡い残光を曳きながら一瞬でカルマと斬り合っている白頭巾の背後へと回り込む。ステュムの爪を用い、白頭巾の足を払うように蹴り抜いた。刃が具足に激突して火花が散る。頭巾は背後からの衝撃に横に動きながらカルマと如月を視界に入れつつ薙刀を振り上げる。如月は後退し、カルマも全力で駆け出していた。頭巾は一瞬、戸惑った様子を見せたが、攻撃してきた如月を追いかける。カルマは十歩程度間合いを外すと向き直って散弾銃を構え、白頭巾の膝裏へと発砲した。猛烈な破壊力に頭巾の脚から血飛沫が吹き上がる。頭巾がよろめきながら振り向く。如月は再び背後から突撃すると刃を寝かせて腰を突いた。甲冑の隙間に刃が滑り込む。頭巾は薙刀の持ち手をずらし中頃を掴むと前を向いたまま薙刀を回転させ弧を描いて刃を背後へと放つ。しかし如月は即座に迅雷を発動させ、横に斬りながら走り抜けながら抜けてゆく。
「どこを見てるの? こっちだよ」
 頭巾が怒りの咆哮をあげ、リロードを終えたカルマが散弾を連射する。強烈な弾丸が甲冑を穿ってゆく。頭巾が薙刀を振り上げ駆ける。カルマはまた距離を保ちにかかる。
「カルマそっち行ったで! 逃げー! あんな大きなナギナタに当たったらばらばらにされてまうわ!! よーし、芹佳、右や右に回り込め! そこや、いったれ! 挟め挟め!」
 犬彦は防御陣形を発動させて周囲の流れを計算し二人に陣形の指示を出している。指揮官というよりはセコンドな気分ではあるが。
 他方、ディッツァー・ライが鉄棍鬼と斬り合っている。
「結構な強敵じゃねぇか、熱くなってきたぜッ!」
 太刀と棍が激突し強烈な破壊力が荒れ狂う。鉄棍鬼は五月雨の如くに突きを放つ。神速六段突き。次々に太刀をすり抜けて棍が炸裂し男の身を砕いてゆく。負傷七割六分、ちょっと不味いか?
「はっはー!」
 彼方より守剣が突っ込んで来た。青年は先手必勝を発動しディッツァーへ六段突きを叩き込んだ直後の鉄棍鬼へとすれ違いざまに大剣で薙ぎ払う。鉄棍鬼は身を沈めると肩のプレートで受け止める。鋼と鋼が激突し火花が散った。直後、ディッツァーが鉄棍鬼の側面へと踏み込みながら炎の太刀で五条の剣閃を巻き起こした。刃が鉄棍鬼の頭部に炸裂し、顔面に入り轟音と共に兜を陥没させその鼻当てを圧し折って鮮血を噴出させる。強烈な打撃力に鉄棍鬼はよろめきながらも三撃目を後退しながら寸前で鉄棍で受け、四撃目を流し、五撃目を打ち払う。
 榴弾の爆発後、御鑑は小太刀を構えよろめいている白髪鬼へと突っ込む。低い態勢から体を半身に捻り太刀持つ手を左肩の上へあげ、右足で踏み込み、斜め下方へと弧を描きながら払う。狙いは足。五感を眩ませながらも白髪鬼は素早く足をあげ後退して回避する。直後、爆熱の色に輝く太刀が唸りをあげて飛び白髪鬼の腕を切り裂いた。鮮血が勢い良く吹き上がる中、流し斬りで踏み込んできた六堂は紅蓮衝撃を継続させながら白髪鬼へと再度斬りつける。笑う老人はその姿を霞ませると瞬間移動したが如き速度で後方へと飛んだ。太刀が空を切る。間髪入れず御鑑が迅雷を発動させて追走する。稲妻の速度で肉薄。老人が着地した瞬間、軸足を狙って脚爪で足払いをかける。命中。もんどりを打って白髪鬼が転倒した。彼方から雷撃飛んできて御鑑のすぐ傍を焼き焦がしながら老人に直撃する。ホアキンの雷光鞭だ。焦がされながらも横へと転がる白髪鬼へと六堂は小銃で射撃しながら再度接近し紅蓮に輝く太刀を振り降ろす。刃が鬼の腹を捉えて鮮血を噴出させた。老人は何時の間にかチキンを無事な方の腕に出現させると六堂の顔面めがけて投げつけた。腕の動きに注意を払っていた六堂は咄嗟に首を振ふる。頬を切り裂かれつつも間一髪、避けた。骨つき肉が凄まじい勢いで天空へと昇ってゆく。代わりに弓を引くように構えたホアキン・デ・ラ・ロサが落ちて来た。
「この‥‥チキン野郎があっ!」
 疾風の如く走り跳躍したホアキンは冷たい怒りの宿った瞳で笑う白髪鬼を見下ろす。練力を全開にすると落下自重の勢いを乗せ、螺旋に切っ先を捻りながら突き込んだ。


 ホアキンのダウンアタックによって咥内を貫かれ橋に縫いとめられた白髪鬼は爆熱を宿した六堂と御鑑によって滅多斬りにされ、閃光の衝撃から立ち直れぬまま鮮血の海に沈んだ。
 白頭巾は、犬彦の声かけの元、機動戦を繰り広げているカルマと如月によってきりきり舞いにされている。
 守剣は鉄棍鬼の後背へと回り込まんと動き、鉄棍鬼はそうはさせじと横へと下り、その動きに呼応したディッツァーもまた逆サイドから回り込まんと踏み込む。二人の剣士は左右から挟みこむ形で猛然と太刀を振るって後退しながら捌く鉄棍鬼を押してゆく。
「俺は避けないぜ。好きなだけ打ち込んで来い!」
 守剣が青の大剣を青眼に構えコンパクトに鋭く打ち込みをかけながら言う。三連斬。しかし鉄棍鬼はダメージの蓄積しているディッツァーに的を絞ったようで鎧に猛打を受けながらも棍を繰り出し戦士へと痛打を与えてゆく。乱打戦になってきた。
「――オオッ!!」
 満身創痍の炎の戦士は練力を全開にして勝負に出た。爆熱の炎を身に宿すと流し斬りを発動させ最後の力を振り絞って踏み込む。
「全身全霊‥‥抜き胴一閃ッ!!」
 裂帛の気合と共に真紅に輝く太刀を真一文字に振り抜く。刃が閃光と化して奔り分厚い板金鎧をぶち抜き鉄棍鬼の腹へと喰い込んだ。猛烈な衝撃が炸裂し鉄棍鬼の身体がぐらりとゆらぐ。次の瞬間、鉄棍鬼は合金の橋へと右足を叩きつけ、棍を縦に風車の如く回転させてディッツァーの脳天目がけ振り降ろした。落雷の如き一撃が轟音と共に炸裂しディッツァー・ライの身が橋上に叩きつけられる。動かない。
 守剣、一対一、鉄棍鬼へと鋭く斬りかかる。鉄棍鬼は素早く半身になってすり抜けるようにかわし、踏み込み、棍の左右で六連撃を繰り出して守剣を沈める。だがその直後、背後からホアキンからの爆雷が突き刺さった。騎士は身から煙を吹き上げ、ゆっくりと前のめりに倒れる。
 最後に残った白頭巾へと六人の傭兵達は四方から取り囲んで猛攻をしかけ、それもまた沈めたのだった。



 了