タイトル:作業員救出マスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/06/20 09:08

●オープニング本文


 グリーンランドの内陸深く。
 近年、レアメタルが豊富に眠る事が解ったこの島では採掘計画が多く立ち上がり、そして実際に現在、あちこちで採掘が進められていた。
 雪山の麓に作られた採掘現場。黒々と大きく開いた穴の前に銃を手にした男達が無数に倒れている。真っ赤な液体が雪を鮮やかに染め上げ、湯気をたて、あるいは凍りついて、吹く雪に埋もれゆこうとしていた。
 周囲では太刀を手にした銀色の人狼が吼え声をあげている。
「くそっ、デニスもアルマも皆、やられちまった‥‥!」
 地下の坑道奥深く、万が一の時に備えて作られた避難所の中で男は呟いた。防寒着の袖が肩口から切れて落ち、夥しい量の血液で腕を染め上げている。
「軍に連絡は‥‥」
 真っ赤に染まった腹を片手で抑え、岩の壁に背を預けている女が言った。
「デニスの奴が入れてくれた筈だが‥‥」
 あの混乱の中だ、無事に救援を請えたのかどうか疑わしい。ジャミングが強くなっていて通常の通信機では連絡が取れなくなっていた。地上の作業現場にある備えつけの大掛かりな奴でなければ繋がらない。
 確認しようにもデニスは既にあの世に旅立っていた。地下へ撤退する最中、逃げ遅れた彼の頭部が豚鬼の斧に粉砕されたのを彼は確かに見た。
 地下をくりぬいて作られた避難所、その入り口を塞ぐメトロニウムの扉が突然轟音をあげはじめた。鋼と鋼のぶつかる音、豚鬼と人狼がこの場所をかぎつけ斧と太刀を叩きつけているのだ。
 避難所の隅に固まっている作業員の男女が頭を抱えて悲鳴をあげた。
「これまでか‥‥」
 女が虚ろな目をして言った。
「諦めるな‥‥この扉は頑丈だ‥‥破られる前に、きっと、助けが、来て、くれ、る‥‥‥‥!」
 それが、最後の希望だった。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
ノエル・アレノア(ga0237
15歳・♂・PN
御山・アキラ(ga0532
18歳・♀・PN
八葉 白雪(gb2228
20歳・♀・AA
蒼河 拓人(gb2873
16歳・♂・JG
殺(gc0726
26歳・♂・FC
赤槻 空也(gc2336
18歳・♂・AA
クライン・ユゴー(gc3330
27歳・♂・CA

●リプレイ本文

 バグアの襲撃で大事な人を全て亡くした。
 友や弟が死ぬ所も見た。
「あんな地獄を‥‥作ろうってのかよ!?」
 ふざけるな、と赤槻 空也(gc2336)は激昂した。また似たような事が起こっているというのか。
「襲撃を受け坑道内の避難所に逃げ込んだ、か‥‥防御の備えはあるようだが、袋の鼠か」
 白鐘剣一郎(ga0184)が言った。
「破られるのは時間の問題でしょう。急いだ方がよさそうです」
 ノエル・アレノア(ga0237)が言って傭兵達は急ぎ氷の島へと飛ぶ。最寄りの駐屯地で降りると雪上車に乗り採掘場へと向かった。
「クソッ! まだ着かねぇのかよ!」
 白に埋め尽くされた平原を走る車内。赤槻は苛々とした様子で叫び座席を叩いた。
「焦るな。もうすぐだ」
 ハンドルを握る御山・アキラ(ga0532)がぶっきらに答えた。赤槻と同様に焦りを覚えている者は多い。だがここで氷の裂け目にでも車を落としてしまってはそれこそ取り返しのつかない事になる。
「く‥‥!」
 彼もそれは解っているのか、呻き、座り直す。
「これ以上、誰も死なせたくねぇ‥‥いや‥‥死なせねぇ‥‥! 作業員は全員助ける‥‥! 電光石火で救助に向かって、キメラをビビらす気合で護りきる‥‥!」
 それを現実に出来るかどうか。全ては万象が決定する。傭兵達の立ち回りは流れを変える事が出来るのだろうか。


 雪を撒きあげて車が走る。採掘場周辺に近付くと山の陰より無数のキメラが向かい来るのを傭兵達は見た。大群だ。
 御山は舌打ちすると雪上車を停止させた。扉を開き傭兵達が次々に飛び出してゆく。
(「相変わらず‥‥この冬山には縁があるわね」)
 雪原に降り立った真白は胸中で呟いた。彼女は八葉 白雪(gb2228)に宿る姉の心なのだと人は言う。
(「それだけバグアの脅威に晒されてるって事だよね」)
 脳裏に白雪の声が返って来る、
「‥‥そうね。この冬山が嫌な思い出に変わる前に道を切り開きましょう」
 長大な弓を取り出し背に負った筒から矢を取り出す。彼方に見える豚鬼へとはっしと放つ。連射。矢は空を裂き錐揉んで飛び、次々に豚鬼の顔面へ突き立った。白目を剥いて豚が倒れる。
 白の彼方から津波の如く、数十もの狼人と緑鬼が太刀を振りかざし血濡れた斧を携え積雪を爆砕しながら駆けて来る。キメラの壁だ。
 クライン・ユゴー(gc3330)は防御陣形を発動させ、車を中心に半円に展開するよう仲間に指示を飛ばした。迎撃態勢を整える。
「天都神影流・虚空閃!」
 白鐘が太刀を振るい衝撃波の嵐を巻き起こして八匹を吹き飛ばした。蒼河 拓人(gb2873)が閃光銃とリボルバーで射撃して三匹を撃ち抜き、御山もSMGで猛射して三匹を薙ぎ払う。
 それでも雪崩れ込んで来た狼人の太刀をノエル・アレノア(ga0237)は爪で払い落してかわし、光刃を振るってその首を落とす。殺(gc0726)は豚鬼の斧を突進しながらかわし、その肘内を右の忍刀でこすり斬り、左の金属筒から一際太く長大な光刃を出現させて叩き斬った。赤槻は振り下ろしの斧を籠手で打ち落とすと、腰を回して踏み込み肘を内へと捻りながら渾身の右ストレートを豚の鼻面へと叩き込んだ。乱戦だ。
「邪魔よ畜生共。迷わずあの世へと行きなさい」
 真白は弓を納め練力を全開にすると抜刀様に二刀を振るった。斧や太刀を掴んだままのキメラの腕が斬り飛ばされて宙を舞い、胴や首を両断された豚と狼の身が二つに別れて雪原に落ちてゆく。
「天都神影流・斬鋼閃っ」
 白鐘剣一郎もまた月詠とウリエルを振るって泥でも裂くように次々にキメラ達を斬り倒してゆく。黄金の暴風が荒れ狂い死体が瞬く間に量産されていった。一同は二十秒程度で全滅させる。
 しかし山の向こうにも影が見えた。まだまだいるようだ。ここは既に魔境か。
「時間が無い、行け。まとまってこなければ、この程度の連中なら私一人でも持ちこたえられる」
 御山がSMGを納めミラージュブレイドを抜き放ちながら言った。
 数が数だ。傭兵達は一人残す事に少し迷いを見せたが雪上車を放置する訳にはいかずまた時間も無い。御山に足を預けると七人の傭兵は急ぎ採掘場へと向かった。
「遅い‥‥鷹狩りの獲物の方が未だまともに動いてたわ」
 道の途中、向かい来る敵は真白が弓を連射して打ち倒し、白鐘が突っ込んで斬り伏せる。他方より迫るキメラを蒼河がエネルギーガンで消し飛ばしリボルバーで撃ち殺す。
 キメラの群れを薙ぎ払って採掘場に辿り着くとそこは既に鮮血の海だった。無数の作業員らしき男女がバラバラに千切れて周囲を赤く染めながら凍てついている。
「喰い荒らされているな‥‥紅と白銀、か。いっそ鮮やかだ。反吐が出る」
 ユゴーが言った。
「作業員が使っていたという小屋を探そう。状況が判るなら、通信手段もまだ生きているはずだ」
 と白鐘。
「ではそちらは頼む。自分は周囲の遺体を調べておこう。地図みたいな役に立つものがあるかもしれない」
「解った。十分に気をつけてくれ」
 蒼河は遺体の調査に残り、六名となった傭兵達は小屋を捜索する事しばし、入り口付近にそれらしき簡素な小屋を発見した。
 扉は開いていた。中に入る。机や椅子やらは倒壊し頭蓋を砕かれはらわたをぶちまけた人間が何人も倒れている。捜索すると通信機があった。寄りかかるようにして死んでいる男によって真っ赤に染まっている。手を合わせてどかす。スイッチは入っているようで時々火花が散っている。人、機械共に最後の力を振り絞った救援要請だったのかもしれない。
「うっ‥‥ゴプッ」
 赤槻が咽かえる臭気についに吐き気を催したのか顔を蒼くして口元を抑えている。
「‥‥大丈夫ですか?」
 ノエルが心配そうに問いかけた。
「ああ、大丈夫だ‥‥クソ‥‥バグアども、許さねぇ‥‥!」
 歯を喰いしばって青年は言った。さらに捜索を続け奥の壁にかけられた地図を発見。拡張中の坑道図のようだ。日付はまだ新しい。
「‥‥避難所は三つあるようだな」
 地図を眺めて殺が言った。距離で計って入口から手前に一個、中央に一個、奥に一個。
「逃げ込んだのは手前‥‥と考えるのが順当だろうか?」
「そうだな‥‥しかし、一応、別れ道で痕跡を確認した方が良いかもしれない」
 白鐘の言葉にユゴーが答えて言った。傭兵達は他にロープや毛布を見つけるとそれを持ちだす。
 一方、蒼河はキメラを蹴散らす合間に犠牲者の遺体を調べていた。半ば喰いちぎられている遺体の傍に膝をつき見下ろす。
「戦い続ける為に戦わないといけない‥‥何か、変だよね」
 見開かれた目が空を睨んでいた。手を目蓋に当てて閉じさせ、せめて何か身元が判別できそうな遺品を回収する。全ての死者に対して行うのは無理そうであったが――
 回収を続けているとやがて小屋へと向かった六名が戻って来た。傭兵達は地上キメラ掃討班と地下突入救出班に別れる事にする。
「救助は任せる。頼むぞ」
「ここは私たちに任せて道を急いで」
 白鐘と八葉が地上に残るようだ。
「ああ、こんな所で死なせない。作業員達は必ず助け出す」
 殺が二人に頷き答えて言った。五名の傭兵達坑道に突入してゆく。
 地上に残った二人はその背を見送ると、
「可能な範囲で片付けておかんとな」
「キメラも恐怖は覚えるのでしょうか‥‥」
 太刀と弓を手に周辺の掃討を開始した。


 坑道内。ユゴーはまず手持ちの無線をチェックした。近距離なら多少繋がるようだ。しかし少し離れるとすぐに駄目になる。
「トロッコは救助の際に使えるかもしれませんね」
 ノエルが言った。線路を確認しつつ進む。蒼河は最後尾について全体の警戒を行っている。
 先に模写した地図を元に手前の最短ルートを目指して進む。中央との分岐点では痕跡を探った。手前の方へと続いている。やはりそちらへ行ったらしい。遭遇した幾つかのキメラ群を蹴散らし先を急ぐ。途中にトロッコがあったので皆で持ちあげてレア鉱石をぶちまけ空にし線路に沿って押してゆく。途中の分岐で明後日の方向へレールが流れたのでそこに安置する。
 さらに進む事しばし、薄暗い坑道の奥、武器を叩きつけているキメラ達を発見した。数は十数程度か。傭兵達が角を曲がると接近に気付いたかキメラ達は吼え声をあげ一斉に押し寄せて来た。
「来いよ‥‥テメェらが頭叩き割ったみてぇに! テメェらの頭潰してやらァ!」
 赤槻が瞬天速で加速し弾丸の如くに突っ込んでゆく。ノエルも瞬天速を発動させて追い、殺、ユゴーがそれに続き、蒼河が二丁の銃を構えた。坑道、道幅は人が五人並んで歩ける程度、味方の背に当たりそうだが――エミタサポートは不可能を可能にする。援護射撃を発動、針の穴を通すような狙撃で前衛達を援護してゆく。
 ユゴーは防御陣形を発動、隙の少ないそれを指示した。傭兵達は横一線に並び、剣と斧を振り上げ道幅一杯に固まって突っ込んで来る狼人と豚鬼と激突する。昨今では珍しいテルモピュライもかくやという密集戦だ。ユゴーは盾を構えて体当たりし狼人の突撃を止めると斬撃を盾に角度をつけて受け流す。こちらからは積極的に仕掛けず抑える事に注力する。
 赤槻は籠手で太刀を弾いて飛び来み、腰を捻り相手の脇腹めがけて左拳を叩き込む。身を折った狼の頭部めがけて右の拳で振り降ろすように打ち、斜め下方へ重心を移してから伸びあがりざま左で顔面を打ち抜いた。鈍い音と共に狼人の顎が回る。
 殺は円閃を発動、忍刀を青眼に構えると、左右天井にぶつからぬよう手首を返し、担ぐように巻いて打った。縦に弧を描きながら刃が狼人の額に炸裂する。反撃の太刀を颯颯で受け流し光柱を出現させて灼き貫く。
 ノエルは振り下ろされた斧をクローで打ち落とし、金属の筒から蒼光刃を発生させて突きの連打を放つ。四段。水月、胸、喉、眉間をぶち抜かれた豚鬼が白目を剥いて倒れる。
 四人の傭兵達はキメラの群れと押し合い圧し合いしながら蒼河の援護射撃の元に一匹また一匹と打ち倒してゆく。やがて扉の前にいた全てのキメラを打ち倒した。
「こちらULTだ。救助に来た!」
 蒼河が声をかけると分厚い合金の扉が開いた。中では二人の男女が倒れていて隅で作業員達が身を寄せ合い一人が扉の前に立っていた。
「おぉ‥‥奇跡だ!」
 扉の前の一人が喜色を満面に浮かべていった。
「まずは‥‥手当てかな」
 避難所の中の様子を見た蒼河はそう呟いた。


 雪原。
 御山は左、前、右より迫り来る太刀と斧を素早く後退して避け連斬を浴びせて左の狼人を打ち倒す。振るわれる斧を上体を反らしてかわし、突きだされる太刀を斜め下方へと踏み込みながらかわし、剣を横に払い、逆袈裟に振り抜き、間髪入れずに後退しながら豚鬼の受け流し七連の剣閃を巻き起こした。狼人が倒れ、滅多斬りにされた豚鬼が倒れる。
 雪上車の周囲のキメラの死体の数はかなり増えていた。御山自身に深い傷は無い。彼女も手練だ。早々には遅れは取らない。
 しばらくすると白鐘と八葉が山の方からやってきた。
「状況は?」
「数が解らなくなるくらいは倒しましたが、後から後から湧いてきます」
 御山が問いかけると八葉がそう答えた。
「だが流石に頻度は減って来たようだ。今のうちに雪上車を坑道の入口へとつけてしまおう」
「そうか、解った」
 白銀の言葉に頷くと、御山は雪上車に乗り込んで二人の先導の元に採掘場へと向かった。


「大丈夫か? 手当てを終えたら、移動する」
 殺が重症者に対し応急手当てをしている。蒼河は水筒に入れて来たポタージュを作業員達に振る舞った。健康な者から話を聞くに他に生存者はいないらしい。ユゴーは入口に立ってキメラの接近を警戒している。
「私は‥‥もう駄目だ、荷物になるだけだろう‥‥」
 腹部を赤く染めている女が言った。
「‥‥今なんつった‥‥あ?」
 赤槻がぴくりと眉をあげた。
「ッザけんじゃねぇ! 悔しかねぇのかよ! ンなクソどもによぉ‥‥! あんたが生きてりゃ皆笑えんだよ! 『自己満足』言ってる暇あんなら‥‥生きる気遣いと努力しやがれェ!」
 何やら口論になっている模様である。
「大丈夫、僕達を信じてください。必ず安全な場所まで送り届けます」
 女の両肩に手を置きノエルが励ますように言った。
 傭兵達の言葉を受けて重症者の女はこくりと頷く。
 応急手当を終えた傭兵達は脱出にでる事にした。重症者を赤槻と殺が背負い、蒼河、ユゴー、ノエルが周囲を固めトロッコを押せた地点まで移動する。
「もう少しだ、気をしっかり持て」
 殺は背負ってる女へとそう声をかけた。
 個々の力は脆弱だが、数だけはいるらしい、キメラが薄闇の奥から無数に這い出て来る。蒼河は制圧射撃を連打してまとめて押しとどめる。ノエルもまた殿に残った。
 二人が抑えている間に赤槻、殺、ユゴーの三人はトロッコに毛布をしき重症者の二人を乗せ、全力で押しながら撤退を開始する。
 蒼河は閃光弾を投擲し制圧射撃を繰り出しながら徐々に下ってゆく。やがて炸裂し、混乱が巻き起こったのを確認してから踵を返し先に行った皆の後を追う。
「話を続けるぞ、聞いているか」
 殺は意識を失いそうな重症者に声をかけている。傭兵達は坑道を駆けに駆けてゆく。走り、走り、走り、やがて薄闇の奥へ純白に輝く光を発見した。
「まだ死んでないな? なら、もう少しあの世行きは我慢しろ」
 ユゴーが言った。
――出口だ。


「お帰りなさい。首尾はどう?」
 真白が発砲しながら声をかける。前方では御山が拳銃を撃ち剣を振るってキメラを斬り倒している。
「ばっちりです!」
 ノエルが答えた。
「よくやった。撤収に移ろう」
 車にロープを結びつけていた白鐘が言った。車内へ救助者を乗せると傭兵達は三名が入り、五名が車の上や横に座りぶら下がった。
「出してくれ!」
 閃光弾を投擲し御山が言って車が発進する。御山は車両側面でロープを掴んで身を支えつつ寄って来るキメラ達へとSMGで掃射する。
 傭兵達は各々矢や弾丸を乱射しながら左右から詰めるキメラを薙ぎ払い雪原へと抜けて行った。
「何とか振り切ったか。だがまだ気を抜けないな」
 ハンドルを担当している白鐘が後方を確認して言った。
「後もう少しだ。頑張ってくれ」
 負傷者達にそう言葉をかける。
「――まったく、酷い依頼だったな‥‥」
 ユゴーがやれやれと呟いている。
「ハァー‥‥またキレちまった‥‥っつか、恥ずかしい事思いっきし叫んじまったッス‥‥」
 車両の上で赤槻は頭を抱えていた。
(「お疲れ様。‥‥大丈夫?」)
(「ええ。少し数が‥‥多かっただけ」)
 少しぐったりしながら真白は胸中の声に答える。
「‥‥こんな名を持つ俺にでも、人を助ける事が出来た」
 殺は車上で風を受けながら、遠ざかってゆく雪原の彼方の採掘場をずっと眺めていた。



 かくて傭兵達の活躍により作業員達は無事救出された。
 重傷を負っていた二人もその後の経過は順調だという――



 了