タイトル:【AA】灼熱大地の補給隊マスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/06/03 11:41

●オープニング本文


 青い空で馬鹿みたいにぎんぎらぎんに輝く太陽が恨めしい。
 周囲を見れば白と黄ばかりが目につく荒野。ここは北アフリカの海岸に近い街道。灼熱と砂の通り道。
「こういう時、いつも思うんだけどさ」
 トラックのエンジン音が耳障りに響く助手席で女が唐突に言った。名をコルデリア=エルメントラウドという。他にはコルデリアドラグーンとかリトルドライバーとかいった名前で呼ばれてる。カンパネラの学生だ。
「なんだ?」
 クーラーもろくに効いていない、熱さで万物に対してくたばれと言いたくなる車内でハンドルを握りつつ聞き返す。
「なんで補給隊って固まってがーっと一気にいかないのかしら? 小分けにして守るよりも一塊にして皆で守った方が手っ取り早いと思うんだけど」
「敵にとっても手っ取り早くなるだろうが。そこさえ潰せば良いんだからな」
 よく考えずに思いつきで言ってそうな台詞にうんざりと言葉を返し、俺は続ける。
「リスクは分散しなけりゃなるまいよ。特にアフリカはバグアのもんになっちまってる土地だしな」
 ついでを言えば補給を必要としてる連中だって一つの場所に固まってる訳でもなし、自然ある程度は別れる事になるってもんだ。
「でもさヘルマン・セプテンフォー・セプテス・ステッペンウルフ」
「ステッペンと呼べ」
 なげぇよ。妙な名前ばかり増えてゆく。本名? 忘れちまったよそんなもん。
「沢山に分けるって事は、護衛の戦力も細分化されるって事でしょう? 襲う側にとってはやりやすくなるんじゃないかしら。各個撃破っていうのは基本でしょ?」
「だからまぁある程度って事だな。それに敵が集中するならそんだけ攻められる箇所自体は減るんだからそこが喰われてる間に他は目的地に辿りつける」
「犠牲になれって事? なんかヤね、そういうの」
「大抵のもんはそんなもんだろ。イワシの群れだってそんなもんだ。そうやって生き延びて来たんだよ俺達は」
 他が喰われている間に逃げ延びる。獣であれ魚であれ喰われる側の者達が群れるのはそういう理由だ。
「ふぅん、まぁ概念としちゃ解るけどさ。いざ自分がそれになったら嫌よね」
「だからまぁ編成には護衛増やせーだの、このルートは嫌だーだの、色々あるんだろうよ」
 まこと世の中というのは面倒くさい。
「ま、でもそんな事いってられないのが兵士って奴であり――」
「私達みたいな傭兵って訳ね」
 行けと言われれば行くのが兵士らしい。一方の傭兵は依頼を選ぶ自由はあるが一旦契約を結んじまったらそれは守らなければならない。
 特に身体の中に厄介な金属埋め込まれてる能力者はそうだ。メンテ受けなきゃやがて死ぬ。人類の希望たる能力者? だがそういう側面もある。
「なんか人数、少ないわよねぇ、運ぶ荷物の量から考えると‥‥」
 俺達は現在、三両の軍用トラックと一両の装甲車両で一団を組み味方の前線陣地へと向けてかっとばしてる最中だ。装甲車両は十五人乗りで同業の傭兵達が搭乗しているのだが、中に搭乗している傭兵はその半数にも満たない。軍から出ている兵士も運転手のみで各車両に一人づつ。俺が乗っているトラックにいたってはその人員もいないので、俺がハンドルを握っている始末だ。
「手が足りねぇんだろうな。きっと他の隊も似たようなもんだろうよ」
「襲われるとキツイわよねぇ」
「そうだな。きっと籤引きだ」
 頭に『貧乏』と名前がつくような。どこの隊がその籤をひくのか。あるいは全員が引き抜くのか。
「あたしさ、運には自信があるんだけど」
「ほう」
「でもその運って、割と結構、当たりを引く方なのよね」
 俺は嘆息を洩らすと。
「コル嬢。そういう台詞を吐くんじゃねぇよ。そういう事を言ってるとだな――」
 不意に運転席の無線からノイズの入った声が洩れた。隊の後方を守っている僚車からの報せだった。
 内容はこうだ『後方上空より竜型キメラ急速接近。速力四百。数三。至急停車し迎撃されたし』
「――こういう事になるんだよ!」
 俺は吐き捨てブレーキを踏みトラックを急停止させた。
 お約束の展開すぎる。くたばれ運命。
 まぁ、高い確率で起こる事だからお約束になるのだろうが‥‥
 うんざりしながら銃を片手に車のドアを蹴り開け熱気に満ちたアフリカの地に降り立ったのだった。

●参加者一覧

植松・カルマ(ga8288
19歳・♂・AA
時枝・悠(ga8810
19歳・♀・AA
霧島 和哉(gb1893
14歳・♂・HD
赤崎羽矢子(gb2140
28歳・♀・PN
杠葉 凛生(gb6638
50歳・♂・JG
黒瀬 レオ(gb9668
20歳・♂・AA

●リプレイ本文

「ちっ、面倒事が来やがったか‥‥」
 敵性体接近の報を受け杠葉 凛生(gb6638)が呟いた。
「んー‥コルデリアさんの籤運は中々。ある意味、ショップの籤引きもお願いしたいくらいだ‥‥」
 コルデリアの自称でも前に聞いていたのか黒瀬 レオ(gb9668)が嘆息し言う。ちなみに前の依頼の怪我が酷い――時期的にちょいと予想外の負傷だったのだろうか。残り生命二割は普通に十秒KILLされる――ので、コル子から渡された応急キットで自己手当て中だ。多少はマシになっている。
「本当に運のあるヤツはそもそも籤引きには参加してないと思うがな」
 時枝・悠(ga8810)が言った。さもありなん。きっと安全地帯か優勢な場所で勤務しているに違いない。
「貧乏くじ大当たり! ‥‥って感じかな。ただし、引いたのは自分達だってことをあの爬虫類に思い知らせたげようじゃない?」
 赤崎羽矢子(gb2140)が飲んでいたミックスジュースのボトルを空にして言った。甘く濃厚な味わい、糖分補給はばっちりだ。
「そうスね、俺等マジパネェんで!」
「不幸な、敵‥‥」
 植松・カルマ(ga8288) と霧島 和哉(gb1893)が頷く。今回は手練が揃っている。
「さっさと終わらせるぜ‥‥」
 杠葉が言って六名の傭兵達は装甲車の外へと飛び出した。広がる蒼い空で太陽が白灼の色に輝き、熱気が吹きつけ、大地の狭間で景色がゆらゆらと揺れている。
 見れば前方からドラグーンの二人がAU‐KVに身を包んで駆けて来る所だった。傭兵達は手早く作戦を打ち合わせる。軍兵達は輸送トラックに乗り込み、再発進させて退避に移った。道路上を西へと走ってゆく。装甲上部の機関砲座に杠葉がついた。赤埼はこんな事もあろうかと装甲車の空きスペースに積んでいたSE‐445R(クルメタルの二輪だ)を降ろしてもしもの際の足を確保する。
 その間にも三体のワイバーンが爆風を巻き起こし高速で接近してくる。
「あれが氷飛竜かなぁ‥‥灼熱地帯に映える青だ」
 黒瀬は望遠鏡を覗き込み敵影を確認しながら言った。蒼い蒼い飛竜が空に溶け込むように飛んでいる。
「情報通りなら見たままの属性、か。お仲間だな」
 時枝が呟いた。
 黒瀬は敵の位置を把握し周囲に知らせる。先頭を飛ぶのが黄色の飛竜、次いでその後方左右に青色と赤色だ。三角形の頂点の位置。三匹の飛竜は徐々に高度を下げながら西へと進んでいる。輸送車を目指して向かっているように見受けられた。とりあえず、このままゆくと傭兵達の頭上を素通りするだろう。
(「ここ一番で目がやられると怖いし、ゴーグル、ゴーグルっと」)
 黒瀬はタクティカルゴーグルをしっかりと装備する。良いチョイスである。
 傭兵達は各自得物を抜き放ち迎撃の準備を整える。
 距離が詰る。五〇〇、四〇〇、三〇〇。距離が詰る。肉眼でも蒼竜以外ははっきりと見える距離だ。
 赤崎、赤竜へと銃を構えた。考える、この距離では直撃させるのは難しい。まず外れる。ならばその性質上、やや早めに撃った方が良いか? 敵の目より後ろで炸裂させても意味が無い。相対距離二百三十程度で発砲。燃え盛る光の球が射出され、そして空で弾けた。強烈な閃光が空を一瞬真白に染める。飛竜達の視界が一瞬白くなった。速度が落ちる。多少狙いやすくなったか。しかし向かう先は相変わらず輸送車のようだ。
「待ちな、お前さんたちの相手を務めてやる‥‥来いよ」
 杠葉が鋼のグリップを両手に空を睨み呟いた。練力を全開にして機関砲の砲口を空へと向ける。狙いは黄色の竜、その腹。影撃ちを発動させトリガーを押し込む。フルオート。機関砲が重く激しく振動し猛烈なマズルフラッシュと共に弾丸の嵐が放たれてゆく。七割五分命中。雷飛竜の腹に次々に穴が空き鮮血が吹き出す。竜の目がぎろりと動き杠葉を睨んだ。首を下げ降下する角度が深くなる。標的を変えたようだ。
 雷飛竜が顎を大きく開く。相対距離九十、爆裂。天地を貫くプラズマブレス。激しく明滅する爆雷の帯が天空より杠葉へと伸び襲いかかった。
 砲座の杠葉。どうする? 砲座に居ては雷撃の帯はかわせない。敵の注意はこちらに向いているようだ。コンマ1秒以下の思考。機関砲を放棄、回避を選択。横っ跳びに宙へと身を躍らせ装甲車から飛び降りる。轟音と共にプラズマブレスが先程までいた位置を貫き薙ぎ払ってゆく。強烈な破壊力が荒れ狂った。杠葉は砂利混じりの灼熱の大地に対し手刀を斜めにつくようにして腕から肩へと接地、一回転。天地が回る。すぐ隣で二発目のブレスが爆裂、かわした。大地が焼ける。回った勢いで起き上がる。直後、視界が真っ白に染まった。反射的に障壁を展開。身を衝撃が貫いてゆく。打たれた。間髪入れずさらに強烈な衝撃が襲い来る。全身の毛が逆立ち、血液が沸騰したがの如き熱さと痛みが襲う。が、表面的な痛みだ。ダメージは深刻では無い。
 ステッペン、竜の息、瞳を発動、Sライフルを構え翼を狙って五連射。雷竜は身を横に倒し杠葉を中心点として距離九十程度を保ち旋回に入る。錐揉む弾丸、命中、直撃、三発外れ。カルマは旋回軌道を読んで前進、距離を詰めにかかる。
 コルデリア、爪を発動。氷飛竜を狙いSライフルで仕掛ける。五連射。三発の弾丸が青空を突き抜けてゆき二発の弾丸が蒼い鱗を突き破って奥までもぐりこんだ。氷竜から鮮血が吹き出し、その瞳が怒りに燃える。首を下げて角度を深く取る。降下してきた。
「あまり‥‥生身で、距離のある戦いは‥‥得意じゃ‥‥ない、けど。‥‥行かせない、よ?」
 対火竜、霧島、この辺のキメラの注意を引くにはとかくガツンと当てるのが良い。スコールSMGを構える。装甲車が西に遠く離れている為、他もそうだったが飛竜達の高度が高い。届くか? ぎりぎり届く。ゴーグルで敵の動向に注視しつつ発砲。鼻先を叩くように弾丸をばらまく。全弾命中、水属性、水は火を克する、効果は抜群だ。火竜の身から大量の鮮血が噴出する。間髪入れず、猛禽の翼の赤埼羽矢子。空を見上げる。練力を全開にし残りの全行動力を振り絞って大地を蹴る。跳んだ。
「ただでさえ暑苦しいってのに、これ以上不快指数を上げるんじゃあ‥‥‥ないっ!!」
 裂帛の気合と共に剣に爆熱の色が巻き起こる。宙で傾斜した態勢からハミングバードを振るった。剣の軌跡から黒色の衝撃波が発生し天へと向かって飛ぶ。輸送車目がけて飛行していた火飛竜と交差し激突した。渾身の一撃、水属性、凶悪な破壊力。竜の片翼が大きく裂かれその巨体が傾ぐ。
 氷飛竜が迫る。黒瀬レオ、S‐01を構える。反応速度は時枝の方が速いが武器の射程は黒瀬の方が長い。黒瀬が先攻だ。が、ここは待った方が良いだろうか? 攻撃を時枝に合わせるべく力を溜めて機を狙う。
 距離が詰る。赤火竜が曲線を描くようにカーヴしながら失速し降下してゆく。
 距離二〇。氷の竜が顎を大きく開く、時枝が抜き放った紅炎に極限までエネルギーを集中させる、黒瀬が「ブレスが来ます!」と叫んだ。直後竜から煌めく氷の息が解き放たれ、時枝が七条の剣閃を巻き起こした。氷竜のクリスタルダストブレス、直径十四メートル、傭兵達は各員の間の距離を十四メートル以上取って――は特に意識していない限りして無いか、密集している。カルマを除き全員範囲内、灼熱の大地に猛烈な冷気が荒れ狂う。四連射。ステッペンが氷刃の嵐に巻き込まれ装甲が削られ隙間から血飛沫が吹き上がった。損傷率約五割。コルデリアは竜の翼で離脱。黒瀬は氷の嵐に包まれ損傷率約九割、もう一発受けたら倒れる。敵の威力もそうだが、前のダメージが響いている。時枝の周囲の空間が断裂し衝撃波が巻き起こる。音速波の結界。爆風が吹雪を吹き飛ばしてゆく。無傷。氷飛竜の右翼に風刃が炸裂した。雷属性、水に克つ、壮絶な破壊力。翼がズタズタに引き裂かれる。赤埼、対策はあったが今は余力を残していない。吹雪に巻き込まれ損傷率三割三分。杠葉、直撃。しかし頑強、自身障壁を展開中、雷属性、弾いた。霧島、頑強無比、さらにレーザーブレードで受ける、同じく雷属性、弾いた。が、よろめいてみせる。装甲車が氷の結晶に滅多斬りにされSE‐445Rが吹っ飛んだ。
「綺麗な翼‥‥ごめんね」
 黒瀬、呟きつつ駄目押しの発砲。四連射。弾丸が宙に煌めく氷の残滓を切り裂いて飛び、氷竜の右翼へと激突する。翼が鈍い音と共に折れ、氷竜が錐揉みながら落下してゆく。
 大地を駆けつつカルマ、天空へと銃を向ける。注意は杠葉が引いている、翼を狙うか? 狙う。発砲、足を止め、続けざま五連射。唸りをあげてブリッツェンの弾が飛ぶ。初撃が空を貫き、二発目も外れ、三、四、五、と黄金の翼に突き刺さってゆく。弾丸が強靭な竜の翼を紙のようにぶち抜き、うち一発が翼を支える骨に突き刺さってそれを叩き割った。戦車砲に勝る貫通力。雷竜の身が傾ぐ。
 火竜が弧を描きながら離れた位置に着地し激震を走らせた。態勢を崩している霧島目がけて火弾を放つ。連射。霧島装甲で受ける。猛烈な爆発が巻き起こった。装甲は水属性、火に強い。無傷だが引き続き効いてるように見せている。
 雷竜が高度を下げてきている。氷竜が錐揉みながら真下に落下して大地に激突、爆砕して砂塵を巻き上げた。
「このクソ暑い場所に長居したくは無いんでな。太陽の閃光の威力、存分に味わって迅速に逝け」
 時枝が二刀を構え真っ向から踏み込んだ。残る練力を全開にする。竜が牙を剥いて迎え撃つ、稲妻の剣嵐十二連、交差。閃光が走り抜け氷竜の身から血飛沫が吹き上がる。口の半ばから頭部の上半分が断たれ横にずれて落ちた。突き出された竜の首が力を失い、自らが作りだした鮮血の池に沈む。撃破。
 黒瀬は雷竜へと向かい、コルデリアは火竜へと向かった。赤埼が火竜へと剣を構えて駆け、霧島もそちらへと向かう。
 カルマ、高度を下げてきた雷竜の翼を目がけ長さ1.6mもの長大な剣を右手一本で縦横無尽に振り回した。颶風の如き斬撃と共に空間が断裂し猛烈な衝撃波が巻き起こる。ソニックブームだ。音速を超えて六連の波動が飛び黄金竜の翼を吹っ飛ばした。圧倒的なパワー。鈍い音と共に片翼が圧し折れ明後日の方向へと曲がり、雷竜が回転しながら落下してゆく。
 杠葉、風上へと駆けつつ落下する竜へ距離を詰め発砲。足を止め残りの練力を全開、左右の漆黒の拳銃で銃声を重く轟かせ猛連射を叩き込む。狙いは落下する雷竜の眉間。竜は咄嗟に首を振る。外れ、外れ、外れ、一発の弾丸が吸い込まれるように竜の眉間へと入ってゆく、火属性、ぶち抜いた。頭部に風穴があいた竜の双眸からふっと光が消える。撃破。
 地上の火竜、霧島へと向かって巨大な火球を四連射。装甲で受ける。猛烈な爆裂が巻き起こる。効いちゃいない。竜へと飛びこんだ赤埼、爆熱の色にハミングバードを輝かせ七連斬、水の刃が火竜の鱗を泥のように切り裂いてゆく。盛大に血飛沫が吹き上がった。ステッペンが射撃しコルデリアが戦槌を叩き込む。黒瀬が横手から踏み込み紅に光る四連の剣閃を巻き起こした。悪く無い破壊力。鱗が叩き割られ血飛沫が吹き上がる。
 竜が苦悶の咆哮をあげ薙ぎ払うように爪を振るう。赤埼、回避、速い。掻い潜ってカウンターの剣閃を巻き起こす。一撃が喉元を深く斬った。猛烈な勢いで血霧が噴出し火竜がよろめく、その瞳から光が消える。
 動きが止まった所に残りのメンバーから総攻撃を受け最後の竜もまた血の海へと沈んだのだった。


「クソっ、暑いな‥‥無駄な汗をかいちまった。早いところ物資を届けちまおうぜ」
 熱気に揺らぐ景色を辟易したように一瞥し杠葉が言った。
 飛竜を撃滅した一行は無線で輸送車を呼び寄せ装甲車の具合を点検する。まだなんとか動くか。
 一方、赤崎羽矢子はSE‐445Rを前に立ちつくしていた。
「あたしの‥‥バイク‥‥!」
 ちょっと涙が出て来るかもしれない。ドラグーン少女が慰めるようにぽむと肩を叩いた。
 多分、経費で修理してくれる――かどうかは赤埼の交渉力にかかっているだろう。無事に生き延びた際の第二の戦いを予約。軍の経理は手強いと何処かの眼鏡スナイパーは言っていた。武運を祈る。
 簡単な応急手当を済ませた傭兵達は車両に乗り込むと、再び大量の補給物資を満載した輸送車と共に前線陣へと向かって出立したのだった。
 

 かくて、傭兵達はUPC軍の兵士等と共に灼熱の大地を走破し無事に前線の陣へと物資を送り届けた。
 弾薬の欠乏に喘いでいた陣はその物資によって息を吹き返し、大天使作戦において期待された働きを全うする事が出来たという。


 了