タイトル:【AP】えむえむおーマスター:MOB

シナリオ形態: イベント
難易度: 不明
参加人数: 26 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/04/15 02:46

●オープニング本文


※このシナリオはエイプリルフール専用の架空のシナリオです。CTSの世界観や設定は無視して作成されており、本編に影響を与える事はありません。

■シベリアエリア拡張のお知らせが来たのにお前らはCTSか
『ご存知、ないのですか!? かのゲームこそ、ニッコリできる動画サイトへの広告からチャンスを掴み、ユーザ数ナンバー1の座へ駆け上がっている、超時空MMORPG‥‥CTSです!』

 MMORPGというものをご存知だろうか。『多人数同時参加型オンラインRPG』などと訳され、サーバ上に用意された世界に、複数のユーザが同時にアクセスして、その一つの世界を共有して遊ぶゲームである。CTSもそのMMORPGの一つで、ユーザ数ナンバー1を目指して現在絶賛販売、稼動中というわけだ。
 キャラを作成すると、スタート地点となるラストホープと呼ばれる人工島へと到着する。まずは、ここで各施設のNPCに話かけて、施設の説明と冒険準備金やアイテムを貰う。後は基本的に行動は自由だが、まずは外のエリアへと移動して、敵を倒してある程度までLvを上げ、その後に『小隊』というゲーム内の部隊に入り、その小隊の仲間達と一緒に各エリアへと向かうというのが一般的なようだ。というのも、チーム(4〜8人で組める)を組んで敵を倒した方が獲得できる経験値が多く、チームを組んで複数人で戦わないと到底倒せないような敵が多数存在するためだ。
 各エリアへの移動は、各エリア行きの高速移動艇を利用する。移動は一瞬で完了し、各エリアの入り口に到着する。始めの内はこうして各エリアの入り口にしか移動できないが、課金アイテムであるKVを購入すると、各エリアの好きなマップまで移動できるようになる。KVには何種類かあり、高いKVであればより奥のマップまで移動できる。
 さて、小難しい話はここまでにして、後は実際のプレイヤー達の姿を見てもらうことにしよう。


■で、でたー! アクティブモンスだらけのエリアに降りて即死するシュテルン乗り!
 まずは、エリア出発前のキャラを見てみよう。

「死ぬよ」
「え!?」
「その構成じゃ死ぬ」
 人数の多い小隊になると、小隊内で複数のチームが組めるようになる。これは、高Lvのキャラが低Lvのキャラ達にそのクラス構成では、目的のマップに行っても満足に戦えない事をアドバイスしている心温まる光景である。
 説明が遅れたが、キャラにはクラスというものがあり、それぞれに応じて能力や取れる行動が違う。詳しくは下の方の説明を見てもらいたい。


 次は、外のエリアで敵と戦っているキャラを見てみよう。

『なに、こいつ』
『なんでわざわざ我々の近くのモンス狙うんだろ』
『モンス枯れてるわけじゃないのに。‥‥いやらしい』
 『 』で離されている内容はチームチャットと呼ばれ、チームを組んでいる者達の間でしか文字が見えない。つまり、この3人の会話は【こいつ】と呼ばれているキャラには聞こえていないのだ。‥‥いやらしい。
 誰かが戦っている状態のモンスターを横から殴る行為は、ノーマナーだなんだと以前に大きな問題となったため、戦闘状態にあるモンスターはそれと戦っているチームのキャラ以外は、各行動の対象にできないように修正された。‥‥いやらしい。
 そのため、戦闘状態にないモンスターは誰が攻撃しても良い、というのが公式の見解である。‥‥いやらしい。


 もう一つ、外のエリアの光景を見てみよう。

 バシバシバシ。バシバシバシ。バシバシバシ。単調なリズムで、的確に敵を倒し続けるキャラがいる。
『うっわ、またBOTだよ』
『スクショ取って通報しとく?』
『一応な。しっかし、全然減らねえよな』
 BOTとは、簡単に言ってしまえば自動で敵を狩り続けるようプログラムを使用しているキャラのことである。効率は悪いが24時間ずっと戦闘できるため、結果的に普通に人が操作するよりも多くの経験値を手にすることができる。
 こうしてレベルキャップまで成長したキャラがどんどん増えてしまうことは、ゲームの寿命に直結してしまうため、CTSも他のMMOと同じくBOTの使用は禁止しており、発見次第アカウント停止の処置が取られている。


 最後に、クエスト敵と呼ばれる強敵を見てみよう。‥‥おっと残念、丁度倒されてしまった所のようだ。

「すごいなーあこがれちゃうなー」
「それほどでもない」
 先程レベルキャップという言葉を出したが、CTSでは最大で99までLvが上がるようになっている。99まで到達すると、キャラの周囲にオーラが見えそうになって貧弱一般キャラと一目で違う存在だということが分かる。こうなったキャラは、クエスト敵相手でも余裕をもって渡り合えるため、羨望の的になったりする。


■クラス情報【この世界ではこういう風に調整されています】
・ファイター
 防御力の高い防具を装備できる。スキルは単体・小範囲の敵にダメージを与えるもののみ。単調なプレイになりやすい。
・グラップラー
 ファイターに次いで防御力の高い防具を装備できる。スキルは単体にダメージと、移動力強化。危なくなったら逃げられる。
・スナイパー
 防御力の低い防具しか装備できない。唯一遠距離から攻撃できる武器とそれに応じたスキルを持つ。上手く戦えばソロでも強い相手を狩れる。
・サイエンティスト
 防御力の低い防具しか装備できない。実用的な回復スキルを持ち、チームに一人は必須と言っていいクラス。
・エクセレンター
 中程度までの防具、広く浅くなスキル。何でも出来るが、何でも他の特化クラスには及ばない。ソロ向きだが、ビーストマンに負ける。
・ビーストマン
 ファイターに次いで防御力の高い防具を装備できる。スキルは攻撃・防御・移動力強化。ソロ向きクラスの一つ。
・ダークファイター
 攻撃力の高い武器を装備でき、スキルは敵にダメージを与えるものばかり。弱体化希望スレが乱立したせいなのか、装備の性能が軒並み低下した。
・エキスパート
 防御力の高い防具を装備できる。スキルで更に防御力が強化可能なチームの盾役。攻撃面は寂しく、ソロ時の効率は絶望的。
・ドラグーン
 初期装備が他にくらべて強力。スキルも多く自身の能力を色々ブーストできるが、下手に育てると器用貧乏になる。
・フェンサー
 防具の防御力は低めだが回避能力が高く、スキルによって更に強化しての回避壁タイプ。スキルを使えば遠距離攻撃も可能。



 CTSの魅力がお分かりいただけただろうか。さあ、貴方もCTSの世界へと足を踏み入れてみようじゃないか!

●参加者一覧

/ 皇 千糸(ga0843) / グラットン・S・彩(ga1321) / 篠原 悠(ga1826) / 叢雲(ga2494) / 宗太郎=シルエイト(ga4261) / UNKNOWN(ga4276) / 葵・純(ga5462) / 緋沼 京夜(ga6138) / ラシード・アル・ラハル(ga6190) / カルマ・シュタット(ga6302) / カーラ・ルデリア(ga7022) / 不知火真琴(ga7201) / 百地・悠季(ga8270) / 鈍名 レイジ(ga8428) / レティ・クリムゾン(ga8679) / 天道・大河(ga9197) / 辻村 仁(ga9676) / シヴァー・JS(gb1398) / タルト・ローズレッド(gb1537) / リヴァル・クロウ(gb2337) / 美環 響(gb2863) / 箱守睦(gb4462) / 鈴木 天子(gb5234) / 鈴木 迎(gb5394) / 美環 玲(gb5471) / 弥谷明音(gb5578

●リプレイ本文

 着飾った装い‥‥いや、彼にしてみれば普段着なのであろうが、一人の紳士が重厚な黒檀の机に置かれたパソコンと対峙していた。ダウンロードしたクライアントソフトを起動させると、そこには一つの人工島が映し出される。
(「‥‥誘われてはみたが、どうやって何をやればいいのだろうか、な?」)
 とりあえず、ログインしてみれば何か分かるだろう。そう思った男は、画面に従ってユーザIDとパスワードを入力していき、『LOG IN』のボタンをクリックする。しかし、何故かログインする事は適わなかった。画面は未だ、人工島を背景としたログイン用の画面のままだ。
「私だ。‥‥ああ、君か。今ログインをしようとしているのだが‥‥」
 携帯電話に着信。どうやら相手は彼をこのゲームに誘った人間であるらしく、彼は状況を説明していく。
「ログインゲーム? なんだそれは?」
 男の名は、UNKNOWN(ga4276)。彼は、MMORPGというものは自分の常識が全く通用しない世界であることを、これから痛感していくことになる。結局、彼がラストホープに降り立ったのは、それからしばらく時間が経過した後のことだった。


●【スダ駅駅】の場合
「そうか、悠も2回目の制限解除が要るLvになったのか」
「えへー」
 レティ・クリムゾン(ga8679)が感心したように呟くと、篠原 悠(ga1826)は嬉しそうにキャラクターの表情を変えながら言葉を返す。CTSには、こうしてキャラクターの表情を何種類かに一時的に変える機能が備わっており、中にはそれだけで会話をする者達もいる。
 そうそう、『制限解除』とはキャラクターのレベルキャップを解除するクエストのことだ。CTSでは最高で99まで上がる仕様になっているが、実はこの制限解除クエストをこなさないと65や80で一旦Lvが上がらなくなってしまう。
「ふむ、じゃあ今日は悠さんの制限解除クエストかな?」
「そのクエストなら、広場でサイエンティストさん探さなくても大丈夫ですね」
 殆ど同じ容姿をした美環 玲(gb5471)と美環 響(gb2863)が会話に加わってくる。この4人は、ここ最近よくチームを組んで各エリアに狩りに出かけていた。キッカケは『ソロでは倒せない敵からのレアドロップ品入手のため』だ、CTSの世界では結構ポピュラーな理由である。
「その、制限解除クエストってどんなのなの?」
 不安そうに悠が尋ねる。先程レティが言ったが悠は制限解除は2回目、1回目を経験済みなのだ。
「ああ、1回目と殆ど同じ内容だよ」
「クエストを開始したら、どこかのエリアのUPC基地に居るスチムソン博士を探すんです」
 その玲と響の答えに、悠は絶望した。

 エキスパート2名が前面に出て敵のターゲットを取り、そこを悠が後方から狙い撃つというスタイルでチームはマップをどんどん進んでいく。カンスト一歩手前のLvであるレティは、余程奥の方のマップでも行かない限りどんなキメラ相手でも一人で楽に倒せるので、横や後ろから迫ってくる敵の遊撃にあたっていた。
「あ、レアドロップゲット〜。今日の僕はついていますね」
 目的地である基地付近まできたところで、玲が倒したキメラから少しレアなアイテムが出た。
「無事に基地到着ですね」
「悠、当たりなのを祈ってる」
 そして、響とレティに見送られて、悠はスチムソン博士との面会用の部屋へと入っていく。このクエスト、スチムソン博士がバグアから身を隠す為に各地のUPC基地を次々と移動しているという設定を無駄に再現しており、当たりであればスチムソン博士と会え、エミタのパワーアップという名のLv制限解除を行ってもらえるのだが‥‥
「うう、もうやだぁ‥‥。こんなクエスト考えたの誰なの〜?」
 どうやら結果は空振りだったようだ。この場合、博士を探してまた違う基地へ行かないといけない。
「ええと、悠。その。次は当たりだ、きっと。だから頑張ろう、な?」
「そうですわ。次の基地へごーごー。れっつごー、ですわ」
 半ベソかきながらスチムソン博士からのメモをチームメンバーに見せた悠をレティが嗜めて、響も気持ちを切り替えて次を目指そうと励ます。何十分もかけて基地まで辿り着いたところで、UPC士官から博士は違う基地に行ってしまったということと、伝言代わりの一枚のメモを渡されるだけなのだから、悠の気持ちは良くわかる。ちなみに、メモに書かれている内容は以下だ。

『いやならやめてもいいんじゃぞ?』

 このメモの内容のせいで、噂ではクエストどころかCTS自体をやめてしまった人もいるという。


●【フフグサ+フグ】の場合。と、スナイパー
「えー、マジー。後衛ー?」
「し、しょうがねぇだろ‥‥燃費悪ぃんだから‥‥」
 茶化したように責めるカーラ・ルデリア(ga7022)の言葉に、宗太郎=シルエイト(ga4261)が縮こまる。彼等の前方では、攻撃速度重視で軽装備にしている鈍名 レイジ(ga8428)が次の敵を相手取っていた。
「お前らダベってないで戦え、効率落ちるだろうが! そら、練成パワーだ!!」
 そのレイジに、タルト・ローズレッド(gb1537)が付きっきりで回復に当たっている。
 彼等のチームにはもう二人、不知火真琴(ga7201)とリヴァル・クロウ(gb2337)が居たが、真琴はカーラと同じくグラップラーなので、基本的に不意だま疾風脚による殲滅役。リヴァルは狂戦士ポーションが使えるほどLvも高く、ステの振り方からして彼も殲滅役なので、かなりサクサクとモンスターを狩っていた。
 とはいえ、今来ているマップで盾が軽装のレイジや回避型しか居ないというのは心許ないはずなのだが、随分とゲームに慣れたチームメンバーであるらしく、先程のカーラと宗太郎のようなやり取りをする余裕があった。が、タルトはそれで時給が落ちるのが気に入らないらしい。
「あ、良い物出たわね」
 真琴が人型のモンスターからポロっと落ちた装備品を拾う。
「なんだ、芋じゃないのか」
「それだと、確か‥‥1Mぐらいだったかな?」
「業者価格だとどれぐらいだっけー」
 強敵ばかりが出現するマップには限られたキャラクターしか来れないし、レアドロップ品も希少価値だけでなく性能が良いものも多いので、かなり高額で取引されている。カーラが業者と言ったが、そういったゲーム内のアイテムをリアル話系でやり取りする不届きな輩もいるらしい。

 そんなレアドロップ入手に沸くチームを、陰からじっと見つめた者がいた。
(「いい加減でて欲しいですね‥‥」)
 彼の名は叢雲(ga2494)。このマップに篭っている時間が100時間を超えた、耐え忍ぶ猛者である。

「む、あのゴーレムは‥‥!」
 真琴が専用カラーリングをしたゴーレムを発見した。このマップに一定時間毎に出てくる、エースゴーレムだ。
「っしゃあ! やっと俺の出番だオラァ! 一撃! 必殺! アシュラ餓皇けぇぇん!」
 距離と取るレイジとは裏腹に、普段は後ろで指弾と吸気しかしてなかった宗太郎が前に出て、一撃必殺のスキルを放つ。これだけの為にステ振りやらなにやらをしている彼の一撃はエースゴーレムを捉え、その命を終わらせた。マップボスモンスターの寿命は大抵こんなもんである。
「エースゴーレム、お前に足りないのは‥‥情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ、そしてなによりもぉ! 芋が足りん!」
 阿修羅食らったら芋連打する暇無いと思います。そんなどこかの兄貴のようなセリフを吐いたリヴァルの横では、マップボスを一撃で叩きのめした感動に震えている宗太郎がいた。
「あぁ‥‥快、感‥‥!」
「用事が出来たので抜けますね^^;」
 そして、その自己陶酔っぷりにカーラはドン引きだった。
「っだー! 冗談だジョーダーーン!」

 そんなマップボスモンスター撃破に沸くチームを、彼等の画面から少し外れた位置からじっと見つめた者がいた。
(「私の○時間が‥‥」)
 彼の名は叢雲。ゴーレム相手に引き撃ちしてたらエースゴーレムが背後に沸いた、不遇なる猛者である。


●臨公広場
(「さあ、噂に聞く世界が熱狂してるMMO〜CtS! 早速、冒険に出発よ!」)
 今高速移動艇に向かって全力疾走しているのは私は、ごく一般的なダークファイター。強いて違うところあげるとすれば、今の時期に新規登録した人に配られるナイト・ゴールドマスクを着けてるってとこかしら? 名前は、百地・悠季(ga8270)。
 そんなわけで、今高速移動艇までの通り道である広場を突っ切っているのだけれど、皆個性的な装備をしているわね。
(「あら? あの装備は確か課金の‥‥」)
 私が装備を確認するためにじっと見つめると、彼はいきなり発言を繰り出してきたの。
「おい、われの【キャラクター】か?」

「おい、われの【キャラクター】か?」
 葵・純(ga5462)が再度、悠季に問いただす。
「えっと‥‥?」
 その様子に悠季が戸惑うのも無理はない。彼女は珍しい装備をしていた人物を見つけたので、そのアイテムを調べてみたのだが、その行為は相手側のログに【調べた】というログが残るので、一部の人は過剰に嫌っているのだ。
「おい、お前何初心者に絡んでんだよ」
 その様子を見かねてか、天道・大河(ga9197)が割って入ってきた。
「お前は‥‥いい加減にしろよ粘着が!」
「まーだ葵さんに粘着しよるんか!!」
「どしたー?」
「お前ら系って複垢使ってもロールかわんねぇのはどうして?」
 それに対して、純の両隣にいたキャラクターが会話に混ざってくる。大河の方も売り言葉に買い言葉。どうやらこの者達は、旧知の間柄であるようだ。だんだんとヒートアップしていくやり取りを余所に、悠季はそそくさとその場を離れて高速移動艇から外のエリアへと移動していった。

『またやってるよあの人www』
 悠季が離れていったその場所を、遠くから眺めつつ小隊チャットで話をしているラシード・アル・ラハル(ga6190)がいた。
「はあ。さっきの猫耳フードの人、まだ小隊入ってないからイケると思ったんだけどなぁ‥‥」
 そこへとシヴァー・JS(gb1398)が外のエリアから戻ってきた。どうやら、小隊への勧誘に失敗したようだ。
(「今日はもう狩りに行く気分じゃないし、装備のトレードでもするか‥‥」)
「あ、すいません。このアイテム売りたいんですけど」
「トレード? いいよ〜♪」
 アイテムのトレードを持ちかけるシヴァーに対し、小隊チャットとは全く別のキャラで対応するラシード。
「これぐらいの値段で‥‥」
「え? それはちょっと」
「ダメですか?」
「ごめんなさい、ちょっと値段が合わなかった;;」
 残念ながら、交渉は破談に終わってしまったようだ。この後、シヴァーは外部のサイトで自分のアイテムが、ロシアエリア拡張と同時にきたドロップ率調整によって値崩れを起こしている事を知ることになる。一方、ラシードはというと‥‥
『アップデート以前の値段でふっかけられたwww』
『値崩れくやしいのうwwwくやしいのうwww』
 絶好調だった。


●クエストボスモンスター・ラインホールド
「なんなんですか? ここ、どこですか? なんであたし連れてこられたんですか?」
「いや、あなたがポタ踏んだからでしょーよ」
「折角だし、沸くまで炬燵入ってたらー?」
 会話ログの順に弥谷明音(gb5578)、鈴木 天子(gb5234)、箱守睦(gb4462)。
「沸くまで‥‥って、ラインホールドはクエストボスではなかったか?」
「そうだよ、すり鉢の底でイベント起こすとここらに沸く。沸いたら俺らがタゲを取る」
 事前にクエスト情報をネットで調べておいた鈴木 迎(gb5394)が、皇 千糸(ga0843)の疑問に答えた。
 彼等はクエストボスモンスターであるラインホールドのドロップ品を目当てに、今現在一時的にチームを組んでいる。元々は明音はチームに入ってはいなかったのだが、転送スキルで出したポータルに勝手に入ってしまい、ここに来てしまったので、チーム人数多い方が経験値補正もかかるという理由からチームに入れられてしまった。

「お、沸いたぞ!」
「出たわねラインホールド! てんこが一人、てんこが二人‥‥ファイナル分身!」
 敵の姿を確認すると、天子は回避用のスキルを使用して突撃していく。とりあえず一撃入れれば、このモンスターは自分のチームとの戦闘状態になるので、他のチームに横取りされることはなくなる。

【ラインホールドは連装プロトン砲を使用!!】

 だが、上手く一撃は入れたものの、天子の頭の上に『MISS!』の表示がいくつか出た後、ダメージの数値が飛び出た。
「オウフ」
「うわ、いきなり一番マズイスキルきた」
 体力ゲージが一瞬で1/4ぐらいになった天子の様を見て、睦の表情に焦りが浮かぶ。
 天子が使ったスキルは主に汚い系の理由で『蝉』と呼ばれるスキルで、数回まで相手の攻撃完全回避するスキル。対して、ラインホールドが使ったスキルは複数回攻撃するスキル。相性がとても悪い。
「こりゃ、すり鉢行ってるのが戻ってくるまで持たないか!?」
 迎は持ってきた回復用アイテムの数を再確認したが、『炬燵にはみかんだろ』とか言って沸き待ちの間に無駄に消費してしまっていたので、ウダーチナヤパイプでイベントを起こしたサイエンティストが戻ってくるまで保ちそうにない。
「誰でもいいからはやくきて〜はやくきて〜」
「もうダメ、時既に時間切れ‥‥」
 千糸が叫ぶ。彼女の様子は、ズタズタにされかけた黒髪ロングが可憐な雑魚だ。明音が既に諦めてしまっているように、この5りぜいいんが極寒の地でひっそり幕を閉じることになるのは確定的に明らかだった。だが‥‥

「それほどでもない」

 そんな声がどこからか聞こえた気がした。


●シンクノソラー
 一人のファイターが颯爽と戦場に駆けつけ、戦況は一変した。彼女の名はグラットン・S・彩(ga1321)。
 過剰精錬装備によるその強固な防御力は『純粋なメトロニウムの塊で出来ているファイターが、皮装備のクラスに負けるはずがない』という名言とともにCTS中に響き渡っており(メトロニウムは『合金』です)、同小隊のエキスパートからも盾役のお手本として毎日3回じっと見つめられている。
「ラインホんルドとの戦いで私は集合時間に遅れてしまったんだが、丁度沸き始めたみたいでなんとか耐えているみたいだった。私はラストホープにいたので急いだ、ところがアワレにもフェンさんが崩れそうになっているっぽいのがチーム会話で叫んでいた。どうやらフェンさんが頼りないらしく『はやくきて〜はやくきて〜』と泣き叫んでいるチームメンバーのために私は普通ならまだ着かない時間できょうきょ参戦すると」
「もうついたのか!」
「はやい!」
「きた! 盾きた!」
「メイン盾きた!」
「これで勝つる!」
「‥‥と大歓迎状態だった。フェンさんはアワレにも盾の役目を果たせず死んでいた近くですばやくスキルを使い盾をした。フェンさんからチャットで『勝ったと思うなよ‥‥』と言ったが、チームメンバーがどっちの味方だかは一瞬でわからないみたいだった」
 状況説明までしていただいてありがとうございます。
「『もう勝負ついてるから』というと黙ったが、よく見ると同じ有頂天系だったので

【ラインホールドは周囲にアグリッパを召還!!】

「おいィ!? ちょとsyレならんしょこれは‥‥」
 予想外の事態に慌てふためくチームメンバー。なんとこのクエストボスモンスターは、体力が一定以下になると自分の周囲に護衛モンスターを召還するという今までにないモンスターだったのだ。
「護衛は9体で良い」
 12体です。ラインホールドは謙虚ではありません。


●僕らの夢をかえせ
「アッー!」
 辻村 仁(ga9676)は、アワレにも装備品がくず鉄になった光景を見て、一部の人が過剰反応しそうな叫び声をあげた。
「この装備高かったのに‥‥」
 どうやら、トレードしてきたばかりの装備品らしい。南無、である。だが、こういった目に遭うのは彼だけではない。失敗確率1%であれば、大体100人に1人は失敗するのである。
「あのなぁ‥‥『1%』で大失敗とか、どんだけヘボなんだテメー!!」
 見事(?)その100人の中の1人に選ばれてしまった緋沼 京夜(ga6138)は、先程からヘビースモーカーの所長にスキルを放っている。各NPCもスキル対象になる判定があるのは仕様だが、スキルの効果が出るような事はない。だから、その後に所長に話しかけたとしても

『私が所長です』

 から始まる、アイテム強化イベントが進むだけなのである。そしてまた一つ、アイテムが壊れる音がした。

 怒り心頭の京夜へ、一人の男が話しかける。
「奇遇だね、俺もついさっき水属性の槍を折られたところだ」
「お前は‥‥! 中の人ちゃんと居たのかよ!?」
「ストレス解消のために、コレを広場を囲むように3人が位置取って折るというのはどうかな?」
 不意に話しかけてきた男からの提案を、仁と京夜は受け入れた。男の名はカルマ・シュタット(ga6302)、とあるマップでひたすら牛型キメラを駆り続ける姿から、BOT疑惑のあるファイターである。


●ラストホープ内はデスペナありません
「ふぅ。やっとログインでき‥‥!?」
 ラストホープに降り立ったばかりのキャラクターがモンスターに轢かれた。そう、その大量のモンスターの行進に触れることは、『轢かれる』というのが正しい表現なのである。
「テロ」
「ラグる」
「やめ」
 それだけしか言葉を発せないままに、シヴァーもまた轢かれた。
 その大量のモンスターは戦闘力もあることながら、もう一つ恐ろしい力を持っている。それは、大量のデータによる画面停止能力である。といっても、画面が停止するのはクライアント側のみであって、サーバ側では普通に処理が進んでいく。そのため、シヴァーのように何も出来ないまま轢かれる事も多々ある。

「テレポート! ‥‥って、アッー!」
 仁が使っていたスキルは、マップ内のどこかにランダムワープするスキルである。本来ならサイエンティストのスキルだが、特定のアイテム装備中なら他のクラスでも使える。彼はこれを利用して、モンスター召還後のラストホープを逃げ回っていたのだが、ランダムということが災いして敵の真ん前にワープしてしまったようだ。
「いや、俺じゃねえって!」
 京夜はアイテムを使用していた瞬間を他のキャラクターに見られていたため、『ラストホープで使うなんてなんてノーマナーな!』というキャラクター達に色々と捲くし立てられていた。二人とも、自業自得である。

 ちなみに、モンスター召還アイテム提供者であるカルマは、ひとしきり観察した後にドローム社に駆け込み、シュテルンでまた牛型キメラのいるマップへと飛んでいっていた。これが格差社会だ。


●個人商店実装予告がきたのにお前らはCTSか
 今日もCTSの世界に降り立った傭兵達は、時には傷つけ合い、時には手を取り合い、また新たな歴史を世界に1ページずつ刻んでいく。新しいアップデートの告知がされる度、巻き起こる論争と阿鼻叫喚は彼等が生き生きと世界を楽しんでいる証拠ではないだろうか。
「うわーなんだよー。個人商店とか実装したらまたラストホープ重くなるじゃないかよー」
「はあああああああああああ!! 黙想!!」
「全くだ。今日もログインするまでに何回パスを入力したと思っている」
「はあああああああああああ!! 黙想!!」
「ログイン鯖とゲーム鯖は別であって、ラストホープの重さとログインゲームは無関係」
「はあああああああああああ!! 黙想!!」
「今度のアップデートで、サイエンティストにムーンバスターラリアートのスキルが追加されるって」
「はあああああああああああ!! 黙想!!」
「・えちょ ちょ、アリエナスwwwブリューナク200Kとかナメてるwww」
「ミスwww」
「はあああああああああああ!! 黙想!!」
 ‥‥彼等が生き生きと世界を楽しんでいる証拠ではないだろうか!


 今後もう一度、超時空MMORPG・CTSの特集記事を組む事はありますん。

 〜おわり〜