タイトル:妹と南瓜頭マスター:水乃

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/10/30 11:24

●オープニング本文


「ね、にーさん。夏にスイカ頭のキメラに襲われたんだよね?」
「ああ、そうだけど? なんだよニキ、それがどうかしたのか?」

 生憎今日は曇り空な九州地方のとある田舎町。
 延々と畑と田圃だけが続く一本道を、自転車を押しながら歩く一人の青年‥‥マモルと、その隣を歩くニキと呼ばれた少女。会話から察するに、ニキはマモルの妹の様だったが、この二人は全く似ていない。それどころか、妹の方は日本人でもないようだ。これには複雑な家庭事情があるようだが、今は措いておこう。

「あのさ、わたし今度能力者の適性があるかどーか調べてもらおうと思うんだ」

 上目使いにマモルの顔色を伺い、そして目を逸らさずにニキはハッキリとした口調で告げる。それを聞き、マモルは口にしていた飴玉を「‥‥ぶっ」と噴出してしまった。‥‥いきなりだ、いきなりすぎて心の準備が出来ていない。

「わ、きたないなっ。何してんのにーさん!」
「‥‥ダメだ、にーさんは認めないからなっ」

 マモルが反対するのも当然だろう―――彼は一度、いくらスイカ頭とはいえ‥‥実物のキメラと、能力者達の戦いを目の当たりにしているのだ。しかし、ニキは実際のキメラを見ていない‥‥だから思いつきでこんな事が言えるのだろうと、マモルは思ったのだが。

「だって、いくらここは比較的安全な町だっていっても、この前みたいに突然キメラが現れることはあるでしょ? 隣県は殆ど戦闘地域っていうし。だからさ、自分の故郷にキメラが出たときくらい、戦いたいとか思うでしょ」

 どうやら、両親や兄弟が認めなかろうと、ニキは適性検査を受ける覚悟を固めているようだった。これはもう、妹に能力者としての適性が無い事を祈るしかないのだろうか?―――と、マモルは天を仰ぐ。
 二人はそのまま無言となってしまった‥‥ちょっと気まずい田舎道。

 暫く歩くと、既に収穫を終えた田圃の中に怪しい人影が見える。
 その人型はオレンジ色の南瓜頭が二つ、そして黒色の南瓜頭が一つ‥‥それぞれ頭とは異なる色のマントと、黒いタイツを装着していた。そして田圃の中を走り回っては、烏を追っ払っている。何がしたいのだろう?

 奇妙な姿が徐々に近づいてくる―――ニキはその人影を指差し、マモルに問いかけた。

「にーさん、アレ何? こすぷれ??」
「ん、あれか? ああ。まだ早いけど、ハロウィンの仮装じゃないかなぁ」

 そう答えながらも(「どこかで見たことあるような格好だなぁ」)とぼんやり考える。

「うーん、なんか夏に見たスイカ頭に似てるような‥‥」
「え、それってキメラじゃん!?」

 妹に突っ込まれて、マモルはやっと気づいた。
(「そうだ、キメラだ―――!」)
 状況判断能力も鈍ってしまうほど、妹の先ほどの話がショッキングだったわけだが。
 斯くしてマモルは慌ててULTに連絡を入れると、状況を説明しはじめるのだった。

●参加者一覧

リディス(ga0022
28歳・♀・PN
香原 唯(ga0401
22歳・♀・ER
辰巳 空(ga4698
20歳・♂・PN
シン・ブラウ・シュッツ(gb2155
23歳・♂・ER
ディッツァー・ライ(gb2224
28歳・♂・AA
八葉 白雪(gb2228
20歳・♀・AA
ルチア(gb3045
18歳・♀・ST
ハイン・ヴィーグリーズ(gb3522
23歳・♂・SN

●リプレイ本文


高速移動艇にて。
「またマモル君からの依頼だってね。‥‥マモル君、元気かな?」
 懐かしい名前を聞き、白雪(gb2228)は夏の出来事を思い出す。
(「相変わらずお姉さんにこき使われてるんじゃない?」)
 と、白雪の心に住む彼女の姉、『真白』がそう答えた。
「西瓜の次は南瓜ですか‥‥次は胡瓜あたりでしょうか?」
 シン・ブラウ・シュッツ(gb2155)も白雪と同じく、マモルと会うのは二度目だった。
「次はメロン辺りだろ。‥‥って、ねぇか」
 メロン怪人を想像しつつディッツァー・ライ(gb2224)が言うと、彼らの顔を見回したルチア(gb3045)が笑みを浮かべる。
「BLAU VOGEL、全員集合ですね」
 4人は同じ兵舎に所属している――これが初依頼となるルチアにとって、兵舎仲間が居る事は心強い。

「キメラにもハロウィンのシーズンが存在するとは‥‥」
 と、ハイン・ヴィーグリーズ(gb3522)は不思議に思う。
「南瓜頭といえどキメラはキメラ、油断はできません」
「しかし‥‥現場には子供達も居る事ですし、なるべく凄惨な戦いは控えたいところですね」
 辰巳 空(ga4698)は気を引き締め、リディス(ga0022)は穏やかな口調で言った。
 南瓜キメラに対する能力者達の思いも様々のようだ。

 間も無く現場に到着しようという頃。
 以前の依頼で行動を共にした白雪やシン、香原 唯(ga0401)の顔を見渡したディッツァー。
「そういえば、以前の任務で俺の顔に落書きしやがったのは誰だ? 酔ってて後半の記憶がまったく無いんだが‥‥」
「落書きですか?」
 小さく首を傾げる唯。
 白雪とシンは何か知ってそうだったが、答えは口にせず含み笑い。
 ‥‥まあ、酔って羽目を外す者が続出した宴の末路である、真相は闇の中ということで納得して欲しい。



 高速移動艇がキメラ出現現場へと到着した。
「マモル君、お久しぶりです。元気にしていましたか?」
「え、唯さん? それに‥‥」
 再会を喜ぶ唯の声に、他にも何人か見知った顔がある事に気づくマモル。
「あ、マモル君お久しぶり。元気だった? ‥‥そちら妹さん? 可愛らしい子ね」
 既に覚醒を遂げ、銀髪を靡かせた真白も兄妹に声をかけた。そんな能力者達の姿を、憧れを抱いた眼差しで見回す妹のニキ。
「ニキっていいます! あの、お願いがあるんです。私、適性があったら能力者になりたくって‥‥だから、キメラとの戦いがどんなものか、見ていたいの」
「無理言っちゃいけないって!」
 マモルはつい厳しい口調になる。
「能力者になりたいの? いいじゃない、見せてあげましょう」
 しかし、真白がまずあっさりと承諾した。続いて、ルチアも。
「そういう事でしたら、私も護衛します。いいですか?」
 ‥‥他のメンバーからも特に異論は出ない。
「僕も君達の近くでキメラを射撃する事にします。どうですか、マモル君」
 シンの言葉に、マモルは「‥‥護衛お願いします」と頭を下げた。一方ニキは「有難う!」と、喜びの表情だ。
「見るのはいいですが、護衛さんから離れないでくださいね」
 ニキにそういい残し、ハインは覚醒を遂げた。そして空も覚醒し、二人に声をかける。
「戦いを見たら、決意が揺らぐかもしれません‥‥それでもいいのならば」
 『修羅の道』を背負って生まれ出でた空は、ニキのように『選択肢がある』人生を少し羨ましく思う。


 そんな中、当の『キメラ』は能力者をよそに烏と大格闘を繰り広げている。
 烏が南瓜頭をつつき、南瓜頭はマントを翻し追い払う‥‥一進一退の攻防真っ只中!!


 そんなキメラに少し哀れみを感じる唯だった――しかし、自分のおニューの『【雅】烏帽子』も烏につつかれているとは気づかない。
「全く、毎年この時期に出てくるとは‥‥案外バグアのほうがハロウィンを楽しみにしていたりするのかもな」
 と、覚醒を遂げたリディスが言う。いつでも接近戦にもちこめるよう様子を伺っていたが、キメラは烏に夢中だった‥‥。

「さぁ、一気に片付けてやる! かかって来やがれ!」
 皆が覚醒を終える中、最後にディッツァーが覚醒を遂げた。
 背後で、「さて‥‥と」という言葉と共に、巨大ハリセンを取り出す真白。
 そして、彼に忍び寄り‥‥
「誰が、飲んだくれだってぇ!?」
 『両断剣』を乗せた『流し斬り』が振り下ろされた。
「‥‥甘い! 真剣白羽取‥‥へぶっ!」
 ――スパーン!!! と、小気味好い音が晴れた空の下に響く‥‥。

 すごすごとキメラ退治に向かうディッツァーの背中。
「あの、さっきのは‥‥」
「『過去の発言に対する報復』ってところね‥‥気にしないで」
 それを目撃したニキは問いかけたが、真白はにこやかにはぐらかすのだった。



「皆さん、微力ながら援護させてくださいっ!」
 ルチアは練成強化を発動すると、真白と共にすぐさまキメラとの距離をとった。キメラの動向を見守りつつ、二人の安全を確保する。

 援護をうけ、空はブラック・ランタンに狙いを定ると瞬速縮地で踏み込み一気にキメラとの距離を詰めた。
 いまだ烏との格闘を続けていたキメラは、突如目の前に現れた空の姿にやっと能力者の存在に気づいたらしい――しかし、もう遅い!
 空の繰り出した紅蓮衝撃の一閃が、見事に黒南瓜の頭を抉る。頭の一部をそぎ落とされながらもキメラは反撃に出たが、空は軽やかにバックステップするとそれを受け流した。
「逃しませんよ」
 朱鳳を構え、すぐさま反撃に移る。
 そして空が仕掛けたのと同じタイミングでリディスが瞬天速を発動、刹那にキメラの傍へ移動していた。彼女が狙うはオレンジ・ジャック。
(「すぐに勝負を決める‥‥!」)
 急所突きで頭部に狙いを定め、弱点への一撃を決めた。キメラの体が回転するようにふらつき、地に倒れる前の胴部に再び攻撃を叩き込む。
 その後方で、ハインが矢を番える。(「さっさと終わらせましょう‥‥」)と心を決め、リディスの連撃で弱ったキメラに狙いを定めた。
「そこです!」
 強弾撃で威力を増した矢が、キメラの胴部を射抜く――それはマントをも貫通し、キメラはパタリと地に伏すのだった。

 そして兄妹の傍では、シンがSchmerzと名を刻んだ『AMR MK−2』を地面に設置しオレンジ・ジャックを狙い撃つ。
 ――弾は見事に命中。
「当たったか。この達成感があるから射撃はやめられない」
 しかし威力が弱く、キメラにとって致命傷にはならなかった。
 シンの存在に気づいたキメラが、攻撃対象を変える。兄妹に近づいたら不味い――武器を二丁のエネルギーガンに変え、シンはニ連射を発動した。連射が命中し崩れ落ちるキメラ。
「この威力‥‥生涯の武器として申し分ない」
 ゼーレとリヒトの威力に、シンは満足そうに口角を上げた。

 一方ブラック・ランタンは、空の強力な連撃を受けながらもまだ倒れず逃走を試みる‥‥しかし、それをディッツァーが迎え撃つ。
「この南瓜野郎がっ! 大人しくパイにでもなってやがれっ!!」
 先手必勝を発動、側面に回って流し斬りを決める。キメラは傷つきながらも反撃をディッツァーに叩き付け‥‥お互い、ダメージ覚悟の猛攻である。
 しかしディッツァーの傷は、唯の練成治療ですぐさま癒された。治療を終えた唯はスパークマシンαで遠距離攻撃を仕掛け、キメラを押していく。
 唯のサポートを受ければますます無茶も出来るというもの。
「剣道のマイナールール、二刀流! ‥‥あんまり使う奴いないけどな」
 掛け声と共に放った二段撃をキメラに叩き込むディッツァー。いまいち決まらぬ掛け声ながらも、威力は抜群だ−−!


 一方ニキは――
「ニキちゃん。林檎ジュースとラムネ、どっちがいい?」
 覚醒を解いた白雪が、飲み物を差し出す。ニキは林檎ジュースを受け取り礼を言った。
 そして、渡された双眼鏡から見える戦闘風景――鼓動が早くなるのを感じる。
 兄のマモルも、妹の様子を見てハラハラしているようだ‥‥。
「マモルさん、落ち着いて下さい」
 挙動不審なマモルを見てルチアがくすっと笑った。
 ルチアは万が一の時迎撃できるよう武器を構えていたが、仲間の圧倒的有利な状況に少し警戒を解く。

 全員の怒涛のような攻撃で、次々とキメラに止めが刺されていった。
「それにしても、話には聞いていましたがどうやって動いているんでしょう?」
 南瓜頭の仕組みが気になるルチア。ウズウズするのはサイエンティスト魂だろうか。



 戦い始めて十分。
 田圃には南瓜頭が三つゴロンと転がった。

「みなさん、お疲れ様です。一息つきませんか?」
 覚醒と緊張を解き、柔らかな笑みを浮かべた唯が皆に飲み物を差し出した。自分はフルーツ牛乳を手に、ほっと一息。
 皆それぞれ飲み物を手に取り、喉を潤す――そんな中、マモルは複雑な表情を浮かべていた。
「マモル君、スポーツドリンクなんていかがですか?」
「‥‥あ、ゴメン、有難う」
 唯の声に我に返り、マモルは飲み物を受け取った。

「皆さん、‥‥我侭きいてくれて、有難うございます」
 ニキが皆の顔を見上げるように礼を言う。能力者になりたいという気持ちは、一層強くなったようだ。
「わたし、やっぱり適性検査受けたい、いいよね?」
「ダメったらダメだ」
 マモルは首をブンブン横に振り、つっぱねるばかりで埒があかない。
 あわや、兄妹で口論か? ‥‥と、雲行き怪しくなってきた頃。
「傭兵になるのはいいですが、家族の皆さんと離れ離れになる覚悟をしなければなりませんよ」
 緑茶を口にしていたハインが、兄妹の顔を交互に眺めながら言った。
「二人で喧嘩をしていても、仕方ないでしょう。折角私達がここに居るんです」
 と、喧嘩にならぬようそれぞれ別の場で話をするように、ハインは勧めるのだった。


「ニキさんは、何故能力者を目指すのですか?」
「‥‥家族やお友達、守りたいから‥‥」
 リディスの問いに、ニキは答えた。
「‥‥大切な人を守りたいんだ‥‥。素敵な考えね」
 白雪が呟くように言う。
「でも、想いだけじゃ人は守れない事も覚えておいて。能力者だって万能じゃないし。大事な人を守りきれない事もあるからね」
 柔らかな表情で、現実を伝える白雪の言葉。
 リディスも頷きながら、諭すように言葉を紡ぐ。
「能力者は、決して綺麗な存在ではありません‥‥それを知って尚なりたいという強い意志があるのなら、私はあなたを応援しますよ」
 リディスの言葉が、ニキの心に染み入る。
 そして、唯もニキの隣で言葉を添えた。
「私は傭兵ってラスト・ホープの名の如く希望だと思っていますから‥‥ニキちゃんが何かの希望になりたいと強く願って、その為に必要だと感じた時に検査を受けてみるのはいかがでしょう」
「何かの希望? 唯さんは何の希望になりたいって願ったの?」
「私ですか? う〜ん、そうですねぇ‥‥『笑顔の希望』のつもりです」
 なんちゃって。と。すこしはにかみながら答える唯だった。
 そして、ルチアも。ニキが結論を急ぐ必要は無いと思う‥‥今は憧れのままでいい。
「ニキちゃんの大好きなお兄さんときちんと話して、そうして決めたなら応援するから、私っ」
 ルチアの言葉に、ニキは「ありがとう」と笑った。
「ニキさん、みなさんも言っていますけれど、今は家族との時間を大切にしてくださいね。失ってからでは遅いですから‥‥」
 最後に添えられたリディスの言葉には重みがあり、そしてどこか悲しみを湛えているようだった。


「まぁ、それでも飲んでじっくり考えろ。大抵の事はコーヒーでも飲んでる間に答えは出るもんさ」
 ディッツァーがマモルにキリマンジャロコーヒーを渡し、その肩をポンと叩く。――気の利いたアドバイスは苦手だと、他の者に話は任せてディッツァーは場を離れた。
 マモルは困ったように缶コーヒーを見つめる‥‥唯に貰ったスポーツドリンクも、結局は口にしていなかった。
「押し付けるつもりはありませんが‥‥今から言う事が少しでも貴方に伝わればいいと思って話します」
 そんなマモルに、彼と同じように妹をもつシンが声をかけた。
「兄とは妹を護る存在です。その点においては貴方と気が合いそうですが、本当の意味で『護る』という事はただ頑丈な檻で囲めばいいということではないと思うのです」
「本当の意味で護る‥‥?」
「良い部分も悪い部分も見せ、それでも覚悟があるというのならば、黙って見守り応援する。それが真に妹の世界を護るということではないでしょうか?」
「‥‥‥」
「僕が話したい事は話しました。後は貴方次第です」


 キメラの残骸を片付けていた空は、場が和やかになった事に気づき、目を細める。
「なんとか、上手く話し合えたみたいですね‥‥」
 声こそかけなかったものの、空の気持ちも他の皆と似ている。じっくり考えて自分で決断して欲しい‥‥と。
 そして、空と同じくキメラの始末をするディッツァーは、南瓜頭を取り上げて又夏の出来事を思い出した。
「‥‥マジで落書きの犯人誰なんだよ?」
「落書き?何の話でしょうか」
 呟きはハインに聞こえたようだが、彼が知る筈もなく。
 ‥‥結局真相は闇の中。


「皆さん、今日はいろいろお話きかせてくれて有難うございました!」
 元気に挨拶するニキの横で、マモルが深々と頭を下げる。
「僕も頭が固かったようです‥‥家に帰って、頭冷やして、あとはゆっくり話しあってみるよ」
 兄妹はすっかり仲直り。皆が良かったと顔を見合わせる中―
「あ、そうだ。ニキちゃんにお守りを差し上げましょう」
 唯はニキの手を握ると、『鈴の髪飾り』を掌に乗せた。
「わぁ、可愛い‥‥有難うございます!」
「ニキちゃんがピンチの時は、鈴の音を聴いたマモルおにーさんや傭兵さん達がきっと駆けつけてくれますよ」
 暖かな笑顔をニキに向け、別れ際のプレゼント。
 そして白雪も、何かを思いついたようにポンと両手を合わせると、バックラーを取り出した。
「もし能力者になれたら使って。家族と相談して考え直すなら‥‥お鍋のふたぐらいにはなるかもしれないし」
「お鍋のふたには勿体ないよ。‥‥白雪さん、有難う」
「勿体無いっていうか重いよ‥‥しっかしずるいな、ニキばかり」
 マモルがニキの隣で苦笑した。


 迎えに来た高速移動艇に乗り、能力者達はラスト・ホープへと帰還する。
「ラスト・ホープかぁ‥‥」
 見えなくなるまで皆を見送り、ニキはポツリと呟いた。
 以前は漠然と『能力者』に憧れていたけれど、いろいろな話をきいて、少し心が揺らいだ。
 ‥‥けれど、焦らなくてもいい、今はゆっくりと答えを見つけよう。

「‥‥にーさん、ドラマの再放送もうはじまっちゃってるよ、先週も見逃してたでしょう?」
 話から逃げるためではなく、日常を大切にする為に‥‥
 ニキはあえていつものような話を振り、家へと続く田舎道を駆け出していくのだった。