タイトル:ハロウィンと果物王マスター:水乃

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/11/18 17:47

●オープニング本文


「ちょっと出かけてくるわねー」
「あれ‥‥姉さんどこに行くの‥‥合コン? ‥‥な訳ないか」
 その日マモルは、奇妙な姿で外出しようとする姉の姿を見て訝しげな顔をすると、しまったと口を噤んだ。言ってから気づいたが、姉の衣装は魔女のような帽子に黒いローブ‥‥と、どう見ても合コン向けではない。
「この衣装で!? ‥‥な訳ないじゃない。ハロウィンパーティーの衣装に決まってるでしょ」
「パーティー? そんなの近所であったっけ」
「ふふふ、近所であるのよ。ハロウィンっぽく仮装して行けばスイーツ食べ放題! ‥‥まぁ連れが居ないのがちょっと残念なんだけど」
 妹は丁度旅行中だしねー‥と、白石ルミコ(gz0171)は笑う。

 ――ハロウィンパーティーに女一人で出席するのはいいとしよう。だが衣装は家から着ていくものなのか?
 せめて会場に到着してから着替えて欲しい‥‥とマモルは思ったが、姉にしてみればエプロンをつけたままスーパーに買物に行くような感覚なのだろう、と、あえて突っ込まないことにした。
「行って来ます! 沢山食べてくるわね!」
「‥‥いってらっしゃい」


 こうしてルミコは、ハロウィンパーティー会場に到着する。
 入口で衣装チェックを受けて食べ放題代金を払い、扉をくぐる――と、そこは甘く良い香りが漂っていた。そして、自分より身長の低い沢山の仮装っ子達がいる。
「わ‥‥子供が沢山! ‥‥そりゃそうよね」
 会場の半数は子供達で埋め尽くされ、たまに保護者らしき大人と、女性グループの姿も見える。とりあえず自分だけが大人じゃなくて良かった――とホッとし、ルミコは早速チョコレートタワーに向かった。

 ――その時。
「きゃぁぁ!」
 ガシャンと窓が割れる音と共に、少女の悲鳴が響く――!
 会場が騒然とする。
 幸いガラスで怪我をした者は居なかったが、その割れた窓からは‥‥何人もの『カボチャ頭』が侵入してくるではないか。しかもそのカボチャ頭、頭身はどう見ても子供サイズだ。
「‥‥何? あのコ‥‥仮装?」
「お客様‥‥入口で受付を――!」
 客が騒ぎ、スタッフは恐る恐る侵入者と接触をする。
 ――だが侵入した『カボチャ頭』は、そんな人々には目もくれずテーブルのお菓子に一直線、子供とは思えぬ速さでテーブルを荒し、お菓子を食べ始める――!
「いやぁぁぁぁぁ! 私のスイーツがぁぁ!」
 少しぽっちゃりした女性のヒステリックな悲鳴が響く‥‥そんなにお菓子が惜しいのか。

 その状況で、ルミコは気づいた。
「気をつけて! あれは――キメラよ!!」
 冷静すぎる自分が嫌になる‥‥だがこの中では数少ないキメラ遭遇経験者だろう。ULTへ連絡出来ないかスタッフを呼び止めるルミコ。
 しかし簡単にはいかない、そこに新たな敵が現れた!
「‥‥っ、ハロウィンだけじゃなくドリアンまで!?」
 窓ではなく、入口側から現れたのは――何度か目にした『ドリアン頭』の人間キメラ。割ると臭いが強烈な果物王だ。

 混乱を極める会場。
 逃げまとう子供達。

 ――だが安心してほしい、このパーティー会場にはあらかじめ『警備』として雇われた傭兵達が、ハロウィン仮装をして紛れ込んでいるのだ!

 さぁ傭兵達よ、今こそその姿を現す時――‥‥!

●参加者一覧

鯨井起太(ga0984
23歳・♂・JG
佐倉・咲江(gb1946
15歳・♀・DG
八葉 白雪(gb2228
20歳・♀・AA
レイチェル・レッドレイ(gb2739
13歳・♀・DG
七市 一信(gb5015
26歳・♂・HD
キヨシ(gb5991
26歳・♂・JG
天城・アリス(gb6830
10歳・♀・DF
紅月 風斗(gb9076
18歳・♂・FT

●リプレイ本文


 まさか三度、自分の前に現れるとは‥憎き宿敵、果物王!
 子供達のピンチを前に、噂のダークヒーロー・スケルトンマスク(キャスト・鯨井起太(ga0984))が駆けつける。
 真紅のマントを翻し、全ての戦いに終止符を打つため、最後の戦いを挑む――!
「トリック・オア・ジェノサイド!」
 悪戯か、殺戮か!
 迫る怪人キメラの前に立塞がり、決め台詞と共に宣戦布告。
 一見スーパークールな全身白黒骸骨スタイルの彼は、実は熱いハートの持ち主なのだ!

 そしてヒーローは彼だけではない。

「フッフッフ‥君達がここに現れる事は1分前に予測していた!」
 『ダイエットは明日から‥を続けて既に半年、お菓子を食べられてヒステリックになっているぽっちゃりした女性』が急に余裕の声を出す。
 そう、それは仮の姿。擬態用に纏っていた【OR】雲影の衣を脱ぐと、黒スーツにコートを着込んだ白雪(gb2228)が出てくるではないか。
 驚く子供らに笑顔を振りまき、白雪はビシッとキメラを指差した。
「少年少女の夢とお菓子を守る為! 夢の国から颯爽と! べてらん刑事、華麗に参‥」
 言って、固まる。なんと視線の先には白石ルミコ(gz0171)が居るではないか。
 なんでこんな所に!
 動揺して視線を泳がせる白雪に、期待の眼差しを向ける子供達。声援が飛ぶ‥頑張れ、べてらん刑事!
「‥上!!」
 さようなら、羞恥心。この間5秒、とうとう白雪は言い切った。

 一方黄色い布で覆われた荷物の前に佇む『フランケンに仮装した大きいパンダのぬいぐるみ』‥間違いなく七市 一信(gb5015)だ。
(「パーティーを邪魔するキメラ許すまじ‥!」)
 例えマジックで悪戯されても動かなかったパンダきぐるみは、守るために立ち上がる。
 布に隠れていたミカエルを装着、華麗に変身!
 ぱんだの着ぐるみはパンダAUKVを纏いパンダマンとなる!
「ここは一歩も通さんよ。かぼちゃんに果物王?」
 体を盾にし子供らを庇う一信。
 今まで菓子に夢中だったキメラも、能力者の存在に目を向け始める。


 彼らがカメラ‥否、キメラの注意を引きつける中、
「‥はしゃぎすぎじゃないか?」
 吸血鬼衣装の紅月 風斗(gb9076)が眉を顰めた。

 ――これはほんの数十分前の事。
『何故ビリヤードキューなんだ』
『杖っぽいのがコレしかなかったんや』
 と、とんがり帽子にローブ、口には【OR】電子スモーカーの魔法使い・キヨシ(gb5991)と他愛ない話をする風斗。
 その傍らでは、ゴシック衣装に悪魔羽と尻尾を付け、
『Trick and Treat♪ お菓子くれたら(オトナの)悪戯してアゲル♪』
 クルリと回る小悪魔レイチェル・レッドレイ(gb2739)も居る。「どうかな?」と彼女が身を屈めると、思わず胸元から視線を外す男性陣。
 そして佐倉・咲江(gb1946)は、
『レイチーも流石に露出少な目だね‥。今回は普通に無難なコスプレ‥』
 狼の耳と尻尾をつけズボンを履いている。けもみみに似合う狼男衣装だ。
『可愛いでしょ〜サキも可愛い♪ あ、キミも可愛いね』
 答えるレイチェルの視線が、咲江から天城・アリス(gb6830)へと移る。
 驚いたアリスは何故か赤面しつつ、
『あ‥その、最初は雪女の仮装をするはずだったのですが‥係の人が衣装を忘れたのと思ったのか‥貸して下さったのです』
 と俯いた。黒の魔女っ子衣装にかぼちゃパンツという衣装を恥ずかしく感じてしまうアリス。
『せっかく貸していただいたのに断るのも悪いと思いましたので、その‥』
 つい事情説明をしているが、こちらも中々似合っていた。
 そんなやりとりを見て笑みを浮かべ、風斗は
『さて、パーティーは楽しみだが、はしゃぎすぎないようにしないとな』
 と、皆に注意を促した。

 それが今は‥まぁ良いか。ヒーローの如く子供らに夢を与えるのも必要だろう、この状況では。


「こんなとこにまでキメラかい! 狙いは菓子かいな‥」
 菓子貪る南瓜につっこまずにはいられないキヨシ。
 一方レイチェルは、
「もう、お菓子をねだる間もなく悪戯するような悪い子にはお仕置きだよ!」
 大鎌メフィストと共にドリアンキメラに突進する。
「‥お菓子の匂いにつられたのかな? でも、それは私のです‥」
 続く咲江――その時、視界の隅にルミコの姿。
「あ、ルミルミ発見」
 渾名だから名前覚えてる。もうミルコなんて言わない。咲江はヒラヒラと手振った。
「ルミルミも食べ物目当て? 私と一緒‥」
「そうなの! そう思った結果がコレよ!」
 ‥何も言うまい。咲江は「キメラは任せて」と、一般人を守るように走っていった。
 そしてルミコを関係者だと思い、
「子供達の避難誘導を‥お願いできますか?」
 アリスがお願いする‥断れるわけがない。
 承諾するルミコに、彼女は微笑み感謝を述べた。そして子供達に声をかける。
「キメラは私たちが何とかしますから、この方の指示に従って速やかに避難してください」
「俺も避難誘導のほう手伝わせてもらう」
 風斗も子供らを宥め、出口の方へ誘導を始める。
 その間、南瓜キメラを引きつけるキヨシ。
「こっちやで〜〜」
 オーバーに手を振りつつ、南瓜を連れて逃げまとう。最初は一匹、そして二匹、それから‥
「わ〜、多い多い多い!!」
 いつのまにか背後にキメラの大行列を作りつつ、会場を慌しく駆けていく。



 戦いの火蓋は切って落とされた!

 アラスカ454で南瓜頭を狙う白雪。
「祖父直伝の精密射撃を受けてみるがいい!」
 ふっきれたのかその動きは軽快だ。連射を放ち、黒南瓜を蜂の巣にする。
 同じく南瓜を相手にする起太。
「退くわけにはいかないね」
 と、身を隠し敵をお菓子へ誘導しつつ確実な撃破を狙う。
 ――スケルトンマスクが所有すると言われる42のハロウィンウェポン。その中、今彼の手にはハロウィンキャノンがあった。
(「この武器なら奴らを倒せる! だけど‥」)
 それは諸刃の剣。最大出力で発射すると地球をも吹き飛ばす程の威力を秘めている。
 葛藤する起太。‥時間は無い。
 その凶悪な武器の封印を、今解き放つ――。
「くらえっ! ハロウィンキャノン!」
 迸るエネルギー!
 ‥その場に突っ込みが居たのなら、『ただのエネルギーガンやないか!』と言うのだろう。しかし起太はソレでガシガシ南瓜を殲滅していく。

 子供を護衛するアリスの剣術は冴え渡る。
「ハッ」
 杖に仕込んだ雲隠が南瓜を一閃。
 敵の気配が消えたところで風斗は不意に足を止め、アリスに視線を送る。
「ここまで来れば俺とルミコだけで十分だ、天城は戦闘参加のほう頼む」
「‥はい、分かりました」
 頷き、アリスはドリアンキメラに立ち向かった――狙うは、胴体。
(「気をつけないと割ってしまいそうで怖いですね‥」)
 慎重に流し斬り、パワーで押していく。
 そして無事に避難誘導を終えた風斗とルミコ。
「もう大丈夫だからねー」
 泣く子供を宥め、やっと一息。そして風斗も一先ず安堵することが出来た。
「‥俺も戦闘の方に向かってみる、ここは任せるとするよ」
 合流するという風斗に「分かったわ」と答え、ルミコは駆ける姿を見送った。

「退いた退いたあ!」
 竜の翼で駆けつけ、南瓜達を千切っては投げ、竜の咆哮でふっとばす一信。
 壁となり、避難が終わるまで彼は守りに徹していた――だが子供らの安全を確認し、真の力を発揮する。
「ココは守るべき場所! かかってこいやあ!」
 まるで修羅のような一信の戦いに、パンダさんカッコイイ! と子供達の目が輝いた。

(「絶対に頭は攻撃したらアカンな。匂いの事考えたらシャレにならんもんなぁ」)
 チラリと果物王を横目で見ながら、キヨシは眼前に迫る黒南瓜を迎えうつ。
 杖に見立てた超機械「BC」で狙うは足元。動きを止めてやる!
「えっと‥呪文なんやったっけ? サ‥サム‥まぁ、ええかぁ、ホイっと!」
 子供らの視線を感じ『なんとなく呪文のような言葉』を唱えながら、ボールを突く動作をした。すると先端からエネルギー弾が――!
 弾はキメラの胴に命中。まるで魔法のようなアクションに、外野から歓声があがった。

 レイチェルは咲江と共に、ホール外に追い出した一体の果物王と対峙する。
「イくよっ」
 首を狙い‥大鎌で二度掻き切った。反撃を刃で受けると、続いて咲江が飛び掛る。
「がぅっ」
 狼男の如く、爪で切り裂く――咲江も本気モードだ。
 一方駆けつけた風斗は、アリスと共にホールのドリアンを追い詰める。
「――ッ」
 胴を蹴り飛ばし豪破斬撃を発動。
 風斗が紅き魔剣、禁忌「レーヴァテイン」で流し斬れば、裂かれたキメラの腕が飛んでいく。
 更にアリスの追撃。今度こそ首を狙い、一閃!
 跳ね飛ばされたドリアン頭を、アリスは広げた布で受け取った。
「‥成功です」
 ほっと一息。惨事は逃れた。

 とうとう最後の果物王。追い詰めるは一信だ。
「これで止めだよん」
 軽い口調とは裏腹に、リンドフィンガーネイルで重い一撃を叩き込む。
 床に倒れた果物王は、ピクリとも動きはしない‥ヒーロ側の完全勝利だ!
 ありがとうヒーロー達!


 歓声に沸く中、
「またせたね!」
 と、下っ端を始末した起太がやって来た。
 その目は宿敵・果物王を探している‥が、ちょっと遅い。
「ドリアンなら退治したで」
 キヨシがBCで指す方向には、果物王の胴体のみが。
「あ――! スケルトンマスクの相手を残しておいてくれなきゃダメじゃないか!」
 猛抗議。きっとマスクの下のほっぺたはパンパンだ、すっかり素に戻っちゃってる起太だが。
「あの‥頭なら無事ですよ?」
 アリスが布に包んだドリアン頭を見せようものなら、2秒でご機嫌になるお手軽さだった。

「うう‥キメラは倒れても私のスィーツは戻ってこない‥」
 そんなぽっちゃり女性の肩に手を置き、
「奴らは大変なものを盗んでいきました‥貴女の心です」
 優しく言う白雪。
 心とはすなわちタルト。意味深な言葉だが何の慰めにも解決にもなっていなかった。
 そしてコートを整え、白雪はホールを見つめる。
「この世に悪がある限り、私も不滅だ! ではさらば!!」
 最後まで役者魂を通し、会場を後にする‥さようなら、べてらん刑事!
 ――その数分後、
「‥白石さん。今日の事は忘れてください。絶対、必ず、今すぐ」
 衣装を着替えた白雪が戻ってきたとか、来ないとか。



 その後片付けられたホールでは、パーティーが再開された。

 賑わうホール、そして美人な女性達。
(「おぉ、キレーなオネーサンのグループや!」)
 キヨシのグラスがキラリと輝く‥これはチャンス!
「オネーサン、血を吸わせてくれ〜」
 と吸血鬼っぽく振舞う‥だが美女達の反応がおかしい。
「って、今は魔法使いやった‥‥クソ〜!」
 言ってから気付いた、これでは血は吸えない!
 キヨシは吸血鬼衣装の風斗を思いっきり睨むが、思いっきり八つ当たりである。
「‥睨まれても困るぞ」
 やれやれと苦笑し、風斗はルミコに改めて挨拶。
「避難誘導を手伝ってくれて有難う」
 礼を言うと、どういたしまして〜という声が返った。

「あ、これも美味しそう‥わ、あっちもー♪」
 はしゃぐレイチェルの声。美味しいお菓子を探して回り、片っ端からゲットして咲江と食べていく。
「スィーツ一杯‥。全種類制覇しないと」
 咲江の口の端をツーっと涎が伝った。
「でも太らないかな‥」
「え、心配? 大丈夫、ボクみたいに全部胸に行くかもだし♪」
 言いながら、レイチェルは胸の果実をぎゅむっと押し付ける‥納得の感触。そしてふと思いつき、
「そうだ、キメラのスィーツって作れないかな?」
 首を傾げてみる‥それを白雪が聞いていた。

「これで最後だねん。さて煙草でも‥」
 一仕事終えた一信に、白雪の声がかかる。
「‥え、料理? あ、はいはい今行きますよん」
 料理作りに誘われた。一服はお預けである‥だが、悪くない。
 厨房には既に、キメラの頭を潰すアリスとルミコの姿。
「七市さん、ふかした南瓜を潰して頂けますか?」
「こんなもんでいいかねー?」
 そっくりパンダから素手を出し、せっせと手伝う一信。隣では、アリスが楽しげに味付けをしていた。
「天城さん、甘さはこれくらいでいいでしょうか?」
「はい、丁度良いです」
 味見をしてみると、なかなか美味しい。頬を綻ばせるアリス。
「子供たち、喜んでくれるといいですね」
「きっと喜んでくれるわ♪」
 ルミコが自信満々に言う。
「白石さん、このふきんで絞って形を整えてください」
「おっけー‥‥あ!」
 最後に不安を煽る声が響いたが、なんとか『美味しい茶巾作り』を終える4人。

 そこへ風斗が顔を覗かせる。
「これからドリアンを食べるんだが、一緒に来ないか?」
 ルミコらを誘い、別名『ドリアン部屋』へと誘う‥もちろん、ホールとは別部屋だ。
 そこで見つけた知人の顔に、ルミコが目を丸くする。
「あれ、オッキーも居たの?」
 骸骨マスクでノリノリの人が居たが、まさか起太だったとは。
「ああ、るみちょんの分も残してあるよ!」
 すっかり素で貪る起太の眼前のテーブルには、まだ2つのドリアンが。
「ドリアンは食べるの初めてだから楽しみだ」
「臭いは流石やな‥」
 好奇心擽られる風斗と、げんなりした表情のキヨシ。対照的な顔だ。
「それは慣れるよ、これが美味しいんだ」
「そうなのよ、がんばって!」
「‥いただきます」
 勧められ口にした瞬間、まろやかクリーミーな味が広がる。
「果物の王様と言うだけあってやはり美味いな」
 頷いて納得する風斗だった。

 そして茶巾は。
「まだ沢山ありますよ」
 雪女姿にチェンジしたアリスが、にこやかに振舞う。
「おいしー♪」
 と、レイチェルも満足そう。咲江に至っては口の周りにナニが付こうがお構いなしに食べる、食べる。
「サキ、付いてるよー?」
 ん? と振り向く咲江の頬に付いたクリームを、そっと舌で舐めとってみれば。
「あ、レイチー‥。私もお菓子と一緒に食べられちゃう‥」
 僅かに頬を染める咲江が可愛らしく、その耳元に唇を寄せ、
「スィーツの後は、ボクのコト目一杯食べてね‥狼男さん♪」
 レイチェルはそっと囁いた。その後どうなったかは――ご想像にお任せしよう。


 こうしてハロウィンパーティーは大好評の内に終了。
 良かったわね! というルミコに白雪は微笑みを返し、近況を尋ねつつ談笑する。
「でも驚いたわ、こんなところであんな格好の――」
「‥その話は今すぐ忘れないと呪いますよ」
 今日の話を蒸し返そうとすると、微笑んで凄む白雪が居た。『本気で呪われる』とは後のルミコ談‥そんな笑顔だったらしい。

 静かになった会場の外では、紫煙が空を漂った。
「ふぃー‥皆喜んでくれたかねえ」
 馬鹿騒ぎして会場を盛り上げ、親子に写真を頼まれ、漸く一服できた一信。
 子供達を守り、大好きな笑顔も見て、心はこの空のように晴れやかだった――。