タイトル:【PAL】里帰りマスター:水乃

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 1 人
リプレイ完成日時:
2009/09/24 23:48

●オープニング本文


 LHでの生活にも慣れた頃、中村・恭華(gz0232)の元へ一通の手紙が届いた。
 ‥‥それはパラオに住む両親からの手紙。
 まだ家を離れてそれほど経ってはいないのに、何故か懐かしさを感じる。

「‥‥たまには帰って元気な顔を見せないと」

 顔を見せろとか、きっとそのような内容だろうと思って、恭華は手紙の封を開いた。
 ――しかしそこに書いてある内容はというと。

「‥‥ダイビングのインストラクターの仕事を手伝ってほしい‥‥? ‥‥今の時季って、そんなに急がしかったかな」

 どうも両親は仕事場の人手が足りず、娘にSOSを出しているようだ。
 ここ最近パラオに観光客を呼び込むためのアピールや、能力者向けの開発がされてきたというから、その影響で忙しいのだろうか。

 そう考え事をしながら手紙を読み進めていく恭華。
 ――その手紙の最後には、こう添えられていた。

『折角だからお友達や仕事仲間さん、パラオで遊びたい人たちも連れておいで、歓迎するよ』

●参加者一覧

鯨井起太(ga0984
23歳・♂・JG
最上 憐 (gb0002
10歳・♀・PN
美崎 瑠璃(gb0339
16歳・♀・ER
レミィ・バートン(gb2575
18歳・♀・HD
堺・清四郎(gb3564
24歳・♂・AA
織部 ジェット(gb3834
21歳・♂・GP
澄野・絣(gb3855
20歳・♀・JG
橘川 海(gb4179
18歳・♀・HD

●リプレイ本文


「恭華からの招待か、ここはお言葉に甘えさせてもらうか」
 と、堺・清四郎(gb3564)が言う通り、傭兵仲間の中村・恭華(gz0232)の招待でパラオに向う能力者達。
「恭ちゃんの育った場所、かぁ。きっといいとこなんだろーなっ」
 南国と縁があるなと思いつつ、美崎 瑠璃(gb0339)は笑った。
「思いっきり、遊ぶぞーっ!」
「前は釣りばかりしていたからな。今度はダイビングと洒落込むか」
 そう話をしている間にも、パラオへと近づいていく。
 橘川 海(gb4179)は景色を眺めつつ、
(「‥バグアの戦火にも晒されなかった島、かな?」)
 と、少し考える。
 隣には親友の澄野・絣(gb3855)の姿。
「恭華さんは海さんとは初見でした?」
 絣の紹介で、二人は挨拶。
「よろしくねっ」
 と向日葵のような笑顔の海は、涼しげなアオザイが良く似合っていた。
 そして「あたしは付き添いね」と百地・悠季(ga8270)が笑む。
「いっぱい遊ぼうねっ」
「そうですね。後‥恭華さんのご両親ともお話したいです。やっぱり、娘さんが傭兵だと心配するでしょうし‥」
「是非家にも来てくださいね」
 少し恥しいけれど、絣の提案を嬉しく思った。



「着きました!」
 パラオは以前と変わらず、平和であることの喜びを実感する。
「うーん。夏女なあたしにとってこのパラオはまさに楽園!」
 眩しい日差しを受け、レミィ・バートン(gb2575)は伸びをした。小麦色の肌に、この潮風がよく似合う。
「久しぶりだね‥遊ぶのは勿論だけど、定期的に海の方も見て回っておこう」
 Palau investigatorである以上、盛り上げるのは当然! とばかりに鯨井起太(ga0984)もやってくる。
「恭華くんにはぜひともガイドをお願いしたいところだね」
 起太の言葉に、恭華は「まかせて下さい」と強気な返事、いつもと違う表情だ。
 織部 ジェット(gb3834)も自然を堪能したあと、振り返って微笑んだ。
「はは、泳ぐのもいいが夜のバーベキューも気合入れるぜ」
「‥‥ん。食材は。私に。任せて。泥船に乗ったつもりで。任せて」
 最上 憐(gb0002)もコクリと頷く。
 彼女らしいその言葉に、
「泥船かぁ‥‥沈まないようにしないとねー」
 クスっと笑う瑠璃だった。

 恭華の実家では、家族が「おかえり」と再会で盛り上がる。
「よろしくお願いしますねっ」
 海の元気な声を筆頭に、自己紹介した能力者達は恭華の仕事っぷりを両親に伝えた。
「LHの生活も順調なようですよ。何度かお仕事もご一緒しました」
「恭華は俺の目から見てもよくやってくれています。彼女は強くなりますよ、もしかしたら俺よりも‥」
 絣と清四郎の口から近況が伝えられ、両親も安心したようだ。その間、恭華は照れくさそうにしていたけれど。
 その家族の光景を見て、
(「私もお母さんに会いに帰りたくなっちゃった」)
 離れて暮らす母を想う海。
 そしてふと手伝いの事を思い出し、カフェエプロンをつけ立ち上がった。
「さてお手伝いしますよっ。料理以外の家事全般は得意ですからっ」
「はは、手伝いはいいんだよ」
「ええっ、いいんですか?」
 『手伝って欲しい』と言ったのは口実。裏を返せば会いたかっただけなのだろう。


 ダイビングスポットは程近く、早速皆で潜る準備だ。
「わあ、久しぶりかもっ」
「準備体操もしないとね」
 オレンジのセパレートを着けた悠季は、焦り気味の海を見て微笑む。
「あはは、AUKVつけて沈んだ‥‥も、潜ったこともあるよ?」
「ふふ、今日は沈み過ぎないようにしませんとねー」
 つられて絣も笑った。「依頼で潜ったことがあるから大丈夫」と主張しつつ、準備を進めていく海。
「恭華の初陣の時は俺は先輩だったけど、今日は逆の立場になるんだな。よろしく頼みます、と言うところか」
 ジェットに言われ、「こちらこそ!」と戸惑い声が返る。
 一方レミィは経験は少しあるけれど、
「この機会に基礎的な所からみっちり恭華先生にレクチャーしてもらわないとね!」
 フィンを付けながら、はしゃいで言った。水泳部なだけあって、潜りのコツもすぐに覚えてしまいそう。
 早速浅い場所で、スキンダイビングを練習する。
「前に教えてもらった身としては、特訓の成果を見せる時‥!」
 意気込む瑠璃が、ジャックナイフ型で潜る‥‥なかなか上手い。
「美崎さん、ばっちりです」
「よし、次はあたしも! しっかり練習して快適に潜れるようにならないとね」
 続いてレミィの健康的な肢体が海中に消えた。意欲的に取り組んでいた彼女は、既に高度な潜りテクが有る。
「僕達は元々身体能力が高いからね、ダイビングも訓練次第では専門家以上にこなせるかも」
 その様子を眺めていた起太の言葉に、恭華も同意した。教室くらい開けそうだ。
 憐は、色とりどりの魚を見て目を輝かせ。
「‥‥ん。クジラとか。マグロとか。ジンベイザメとか。大王イカとか。居るかな」
 今すぐ捕まえたいけれど、楽しみは後にしておこう。

 続いてスキューバ・ダイビング。
「こういうダイビングは初めてだな、鎧を着けて深く潜りそれを海の中で外して浮上というのは鍛錬でやったことがあるが」
 タンクを背負い、清四郎が言う。そして水中用のマイクマスクを装着。これで水中でも会話が可能だが、残念ながら戦闘用ではない。
「どこに行きたいですか?」
「ブルーコーナーを希望するよ。パラオの魅力が詰まっているからね」
 皆にも見せたいと、起太が提案。
 じゃあ行きましょう――とエントリーしていく中、
「‥‥ん。私は。釣り船」
 憐は食材集めに、釣り場へ行く船に乗り込んだ。瑠璃が手を振って見送る。
「気をつけてね!」
「‥ダイビングは早めに切り上げて、手伝いにいくとするか」
 清四郎もやはり、漁には興味があるらしい。

 まず向ったブルーコーナー。
 この季節の見所は、マッコウクジラ等の大物や、産卵を迎えた魚の大群だろう。
「うひゃー‥当たり前だけど、TVとかで見るのとは比べ物にならないくらい素敵‥♪」
 目の前を通過する大物の姿に、瑠璃が息を飲む。
 ジェットはリーフに上がり、魚の観察だ。
「人の手の無い場所ってのは凄いな」
 呟いた後磯巾着を見つけ、「人魚を連想しちまうよ。何故だろうな」と、夢を思い出し苦笑する。
「流石に‥壮観ね」
「あれはサメでしょうか」
「ああっ!? 食べられたよっ」
 悠季と絣と海は、小魚の群れにサメが突っ込む姿を見て驚きを隠せない。正に自然の食物連鎖。 
「綺麗なだけじゃないんだ‥迫力もあるね」
 レミィは人懐こいナポレオンと泳ぎながら、自然を体感する。
「あっ‥あれがバラクーダの大群‥!」
 魚群が作る壁に圧倒され、感動するレミィ。手にした水中カメラを構え、早速撮影を試みる。
「記念撮影するよ!」
 と声をかければ、皆がポーズをとる。顔はマスクに隠れているが、きっと良い笑顔だろう。

 起太は魚と戯れながら、潮の流れを確認する。今は休暇だが、水中の高度な依頼に挑む事考えるとそうせずには居られない。
「ここは結構、流れが穏やかだね」
「そうなんですよ」
 かといって油断は出来ないが、是非ここで水中訓練を行いたいものだ。
(「撮影会を組み込むのも面白いかもしれないね」)
 レミィも楽しげに撮影している事だし。
 訓練には遊びも取り入れ、『指定された魚をどれだけ早く、綺麗に撮影できるか』・『制限時間内に何種類の海の生き物を撮影できるか』を競うのも面白い。
 起太は後で恭華にさり気無く聞いてみようと思いつつ。
 それぞれが、様々な角度からパラオの海中を楽しんでいた。

 一方、釣りスポットに出発した憐。
「‥‥ん。海の中は。魚介類が。食べ放題。楽園に。出発」
 覚醒して潜ると、その海域は美味しそうな魚が沢山だ‥‥本能の赴くままに捕獲する。
 まさに質より量!
 どんどん捕まえ、すぐに両手一杯に。
「‥‥ん。魚介類らしき物。沢山捕れた」
 魚を船にあげると、船員から歓声があがった。
 そこへ、ダイビングをきりあげてきた清四郎も加わり、本格的な漁の開始だ。
「フッ!」
 清四郎の銛に、容易く捕われる魚‥こうして夕食の材料は増えていく。



「たくさん捕れた?」
「‥‥ん。大漁」
 合流した憐にレミィが問うと、コクリと頷いた。
 後は食材の買出しも含めて、恭華の案内でパラオの市街を観光しよう。

「肉や野菜だけじゃなく、果物も必要だよな」
 と、ジェットは瑠璃と共に食材店へ。
 発案者だけに買物にも力が入る‥‥手にとっては、真剣な表情で選び、
「タバスコは外せない。瑠璃、後必要なものは何だ?」
「名物のカニにタロイモ辺りはBBQの食材として使えそうだから‥‥これも買っておこうっと」
 話をふると、瑠璃も同じように真面目に悩んで選んでいた。
「後は、何か珍味とかあればせっかくだしチャレンジしたいなぁ」
 そしてチラリと店内を見回す‥‥と、コウモリを沢山手にした憐の姿。
(「あれ、全部食べるのかな?」)
 少しゾッとする光景だ‥‥見なかったことにしようか。
 その時、
「そうそう、花壇作りの依頼の時の瑠璃の作品、良かったぜ。向日葵の花、好きなんだよな」
 ジェットに突然話をふられ、瑠璃は驚きながら「有難う」とはにかんで。
「最後の浴衣の時は、色々悩んだ結果だったんだ」
 なんて、食材以外の話題にも乗りつつ、材料を揃えていく。

「‥‥ん。コウモリ。大盛りで。買って来た」
「これは‥すごい量だな」
 憐の手に有る物に驚きつつ、気を取り直してカレーの材料を揃える清四郎。
「ブランデーで海産物をフランベしないと、カレーがイマイチになるからな」
 清四郎の話をきき、出来上がりを想像しつつ憐は待ちきれない様子で頷く。
 そして恭華は、さらに大きな店へと皆を案内していった。
「ここがパラオで一番大きなお店ですよ」
「色々あるね、目移りしちゃうなぁ」
 木彫りの壁掛け、手作りの籠‥‥どれも素敵だと、あちこち見て歩くレミィはかなりのはしゃぎ様。
 そして、石のネックレスにも目を止め、
「これは何?」
「ウドウドのレプリカです」
 それを首にかけてみる。なかなか似合ってるぞ、レミィ。
「あ、これいいな」
「御揃いで買いましょうか?」
 その姿に目を惹かれ、海と絣もお互いのウドウドを選んだ。素材は珊瑚など様々で、似合う色を探すのも楽しい。
「もちろん悠季にもねっ」
「有難う、似合う?」
 お気に入りを見つけた後は、パラオの歴史が見える場所も歩く。
 そこで海は、昔統治時代があったことを肌で感じていた。
「私たちは、自分の国の歴史を、もっとちゃんと知らないといけないよね」
 誰に向って言った言葉でもなかったけれど、絣も悠季も、恭華も頷いていた。
(「私たちが持ち得る和の心。和する心。それを昔の人が持ち得なかったはずはないから」)
 恥ずることばかりじゃない、きっと。
 だから前を向いて歩こう。

 夕暮れが近づき、ショッピングと食べ歩きを楽しんでいた瑠璃とも合流して。
 恭華はパラオの歴史に触れつつ、さらに街を案内していく。



 最後は浜辺に集まり食事とBBQ。人によってはメインイベントに違いない。
「金網はともかく、鉄板は重いだろ。俺が持つぞ」
 重い器材をテキパキと運んでいくジェット。
 起太は少し疲れ気味に、近くの木に身体を預ける。
「お疲れ様。ブルーホールはどうだった?」
「素晴らしく神秘的な青だったね」
 その会話を聞くに、起太はもう一度ダイブしたようだ。

「料理補佐はまかせてくださいね」
 一応趣味なのですよと絣は三角巾を被り、手際よく食材を切っていく。エプロンをつけた海も、白いドレスの悠季もそれを手伝った。
「美崎さんはお料理しないんですか?」
「うん。たまには食べるのを優先してもいいよね?」
 恭華に問われてにゃははと笑う瑠璃は、今回は寛ぎモード。レミィと共に、調理補助へ回る。

 シーフードカレーは、清四郎が手際よく。捕まえた魚もたっぷりと仕込まれ、やがて良い香りが漂った。
「よく食べて、よく遊んで、よく寝ることが長生きのコツというものだ」
 御飯の上にたっぷりカレーを振舞って。早速食べ出すのは、もちろん憐。
「‥‥ん。海鮮たっぷりカレー。おいしいよ。凄く。良い。ノド越し。飲み易い」
「本当‥美味しいです。全部任せてしまってすみません」
 恭華が言うと、清四郎は苦笑し、
「気にするな、俺が好きでやっていることだ。子供が変に気を使うもんじゃない」
 と言う。
「それに、旨いと言ってくれればそれだけで作ったかいがあるというものだ」

 その後のBBQも、もちろん盛り上がる。
「‥‥ん。キメラは。沢山。食べたけど。コウモリは。初。楽しみ」
 炎に焼かれるその姿を、憐はじーっと見つめた。
「ほら、体の底から燃え上がるタバスココウモリの姿焼きだ」
 ジェットから焼き上がりを手渡され、早速齧り付く。こ‥‥この味は!?
「‥‥ん。フルーツバット。名前の割に。甘く無い。意外と。肉肉しい。味」
 これはココナッツミルクで煮たほうが美味しいかもしれない。

「火傷しないように、な」
 テキパキと串を配るジェット。奉行顔負けだ。
「美味しい〜」
「うん、よく味が染み込んでいる」
 その味に皆が舌鼓をうつ。
「好きなものを焼いて食べれば良いだけ、というのがシンプルで素晴らしいね」
 起太は肉魚野菜果物を片端から焼き、それを全て丼ご飯の上へ。
「ふふ、パラオの名物全てを乗せて食べる、これぞパラオ丼だよ!」
 ――御飯も沢山食べれて二度美味い。丼の見事さに沸き起こる拍手!
「‥‥ん。美味しそう。でも。少し。足りないかも」
 そのパラオ丼の上に、憐は背伸びしてコウモリの姿焼きを乗せた。
「‥‥ん。大丈夫。キメラでも。食べる事は。出来る。コウモリも食べられる」
 多分、親切心である。



 そして、日も暮れ。キッチリと後片付けして。
「‥‥今日一日で随分とお肌が焼けたなぁ」
 呟くレミィはいっそう小麦色になっていた。

「美味しかったですね」
 微笑み、絣は横笛「千日紅」で静かな旋律を紡ぐ。
「良い時間が過ごせたわ」
 静かに目を閉じ、音色に聞き惚れる悠季。
 ――その隣で、海は空を見上げた。
 視界に映る、パラオの国旗の象徴、海と月。
 ‥と、赤い月。
 自分達が戦っていることを、思い出させる月だけど。
「そういえば、なんで赤く光ってるんだろうね?」
「何故でしょうねぇ」
 海の問いに、笛を置いた絣がのほほんと答えた。
 最後は皆で空を見上げ‥‥そして、
「パラオの満月の空を、何時か出来るだろう好きな人と一緒に見てみたいぜ」
 と、ジェットは青春するのだった。

「すっごく楽しかった! また機会があれば遊びに来たいなぁ‥!」
 瑠璃の言葉に、恭華はニッコリ笑う。そして皆に、今日は楽しかったと伝えて。
「はい、いつでも来てくださいね」
 ペコリと頭を下げると、小さな鈴の音がした。