タイトル:Blade of water2マスター:水乃

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/08/15 23:58

●オープニング本文


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 能力者達の協力のもと、得ることができた『水中戦闘』のデータ――もしこの戦いが地上で行われていたならば、もっと早く決着はついていただろう。
 水中での生身戦闘は、ベテランの能力者でも地上ほどの行動力を発揮できないなど、様々な問題があるのだが――。
「やっぱり武器の種類が少ない‥‥ね」
 『生身用水中武器』の少なさを目の当たりにし、羽柴・千鶴(gz0264)はふぅと溜息をついた。

 現在LHのショップでは、剣と拳銃、2種類の生身用水中武器が販売されている。水中用ナイフが貸し出されたという話もあるが、それは一般には出回っていないものだ。
 又、水陸両用の武器というものもある。こちらも槍と銃、それぞれ一種類ずつしか確認されていない。
「これは何としても、新しい武器をつくりたいね」
 呟く千鶴自身は、刃渡り20cm程度の『水中用ナイフ』を量産に向けて設計中だった。剣や槍では入り組んだ海底や岩肌に挟まれた場所など、狭ければ狭くなるほど動き辛いに違いない。ナイフのように軽く、コストも抑えれば、新人や初心者にも手にとって貰いやすいだろう‥‥という考えもあった。
 一方で、『威力が物足りない』と思う能力者もいるだろう。高火力の水中用武器も、いくつかは欲しい。
 又、銃はリロードが不可能な為、充分な装弾数が必要だろう。弾切れに備えて控えの武器を携帯する者も居たが、エアタンク重量の関係で持てる数は限られている。
「今の武器で満足しているのか、どうなのか‥‥、新しい武器に何を求めるのか‥‥この辺も含めて、意見をきくとするか」
 独り言をいい、千鶴は再びULTへ依頼の詳細を伝えることにした。


 珊瑚礁を大規模な戦闘から守り通したい千鶴にとっては、水中のキメラは可能な限り生身で対応してもらうのが理想である。
 ――武器以外にも、水中戦での問題点は多いだろう。
 だが最初の一歩は、自分の手が届く場所から。武器研究者である千鶴は、新たな生身用水中武器を実戦に投入する為、動き出すのだった。

●参加者一覧

鯨井昼寝(ga0488
23歳・♀・PN
エマ・フリーデン(ga3078
23歳・♀・ER
遠藤鈴樹(ga4987
26歳・♂・BM
瓜生 巴(ga5119
20歳・♀・DG
クロスフィールド(ga7029
31歳・♂・SN
ルンバ・ルンバ(ga9442
18歳・♂・FT
橘川 海(gb4179
18歳・♀・HD
沖田 神楽(gb4254
16歳・♀・FC

●リプレイ本文

「羽柴さん! 引き続きお願いしますっ」
 橘川 海(gb4179)が部屋へと飛び込む。
 そこは武器研究所の会議室。一足早く会議室にいた研究者の羽柴・千鶴(gz0264)は、まだ記録媒体の準備中であった。
「おお、今回もよろしく」
 一瞬驚き、能力者達の顔を見て会釈する千鶴。
「よ、羽柴。相変わらず珊瑚のために研究室に籠ってるのか?」
 そんな彼女を見て、クロスフィールド(ga7029)は苦笑いを浮かべながら声をかけた。
「ああ、相変わらずだね。‥すまないが暫く寛いでいてくれ」
 千鶴も苦笑し、能力者達に席を勧めた。すると、
「あ、お茶、入れてきますねっ」
 答えもきかず、海は廊下へと歩いていく。戦闘以外で皆に会えることを楽しみだったのか、随分張り切っているようだ。
「‥元気だな。しかし、集まってくれて嬉しいよ」

 そして会議は始まった。
「現状の問題点も挙げとかないとな」
 とクロスフィールドも言うように、そこから意見を収集するとしよう。
「水中での対キメラ戦闘を体験してみて思ったのは‥‥やっぱり、思うように動けないこと、かな‥‥向きを変えるにも、物を振るうにも‥」
 と、抑揚無く語るのは朧 幸乃(ga3078)である。彼女のような熟練の傭兵でも、水中の行動は限られたものになってしまう。それは水圧の所為でもあり、水流の所為でもあった。
 そこで、瓜生 巴(ga5119)も発言する。
「攻撃の機会が少ないですね。更に、足場がなく安定しないので当てにくいのも問題です」
 ‥やはり、水中での手数の少なさは誰もが問題に思っているようだ。
 数々の問題点を、真剣に聞き入る千鶴。

 そして、鯨井昼寝(ga0488)は、
「水中戦闘時は防御面が不安ね。水棲の魚キメラは突撃をすることが多いし、毒や痺れといった効果を持つ種の存在も考えられる。水着では凌ぎきれないケースが出るかもしれない」
 そう問題を挙げた上で、早速武器を提案する。
 彼女の考えた水中用武器は『巨蟹鉄鋏』。名前からある程度想像できるが、シオマネキのような巨大な鋏型の爪である。
 爪部分に水の刃をコーティングした片手爪で、装備することで防具的な役割も果たす。いわゆるKV兵装でいうディフェンダー的なものだ。
「攻撃に使える一方で、簡易盾として肩から指先あたりまでをカバーする巨大爪よ。盾に類するものがあれば便利だと思ったのが第一ね」
 と、提案した動機を語る昼寝。
「ただ水中活動ではハンドシグナルを用いたりライトを所持したりする機会が多いから、両手が塞がっていると不便極まりないわ」
「それで両手爪ではなく片手爪なのか」
「そうね」
 なるほど‥と、昼寝の意見に千鶴は関心を示した。
「だが、かなり派手な外見になりそうだねぇ」
「それは多くの人に水中戦闘に興味をもってもらう為ね。水中用ナイフは、ある程度水中で戦ったことのある者なら誰もが欲しい一品だろうけど。『これは』と思わせるインパクトに欠けると思う」
 確かに昼寝の言う通り、現在千鶴が設計しているナイフは手に取りやすさと実用性を重視したもの。インパクトは二の次だ。
「より多くの未体験者を惹き付けるためにも、少し浪漫をね」
「浪漫か‥」
 それは千鶴にとって新しいジャンルだった。
 ――続いて、遠藤鈴樹(ga4987)が発言する。
「私はナイフの製作も心待ちにさせてもらうわ」
 と、着物姿で微笑む鈴樹。千鶴は「有難う」と答えたが、目の前の人物は相変わらず男性には見え難い。
「あまり初心者向きじゃないかもしれないけれど‥‥水中用ゴム手銛なんてどうかしら」
「ゴム手銛?」
「‥センスより分かりやすさよ」
 聞き返されて、鈴樹は苦笑した。そして説明を始める。
「青ヤスみたいな仕掛けの、ゴム付きの手銛ね。見た目は槍みたいだけど投射武器だから、種別は『弓』になるかしら」
「矢の代わりにヤスを射出する、槍型の弓というところか?」
 言っていて混乱しつつも、形状イメージをメモにとる千鶴。
 鈴樹の話では命中が高く、予備動作有りで威力も補えるものを理想としているらしい。
「当たらなきゃはじまらないけれど、戦い慣れた人なら腕で補えるわよね? 少ない手数をさらに減らしている分、威力が乗って欲しいところね」
「熟練者向けの武器というわけか」
「そうなるかしら‥‥一撃必殺も浪漫よね。後もう一つ『水陸両用ニーパッド』なんてどうかしら」
 更に提案された武器は膝用のものだ。水中戦だからこぞ、膝でも有効的に攻撃できるだろう。
「動きの邪魔にならないくらい軽くて、威力も低めでいいかしら。膝用のナックルくらいのものを想像しているわ」
「膝用というのも新しいな」
 その発想が面白く、千鶴はニヤリと笑う。

 続いて意見を言うのは沖田 神楽(gb4254)である。
「私は刀で、って考えて見たんだけど‥‥抵抗とか考えると結構難しいかな。水中で踏み込むとかって言う動作は出来ない訳だし。でもアロンダイトみたいな剣があるなら刀もあって良いですよね?」
「ああ、かまわない」
 千鶴の答えをうけ、神楽は胸を撫で下ろす。
「ひとつは110cm位の片刃の直刀。水中専用で、高級だけど軽くて強いものを希望します」
「どれだけ高級なのかい?」
「蛍火くらいか、それ以下かな」
 と、神楽の提案した『海雪』は高価な高性能武器。確かに軽く威力のある刀は愛用者も多い。慣れた武器を使うことで、『水中で思うように動けない』状態を多少なりとも緩和することが出来るかもしれない。
「現状高価な生身水中用武器はないようだから、1〜2種程度は高価で良いかもしれないね」
 だが技術的に作れるかどうか‥‥と千鶴は困った顔をした。
 そしてもう1点、神楽は『苗刀「凪」』という水陸両用の武器を提案する。
「長さは2m程で細く軽めの刀です。後、折れたりしないように、それなりの堅さが必要かな」
「少し扱い辛そうだね」
「確かに水中向きじゃないような気がするけど、フェンサーに向いた物をと思って」
 水中での利点を突っ込まれると神楽も困ってしまうのだが、提案しないよりは良いと思っての事だ。
 意見を伝え、神楽は最後に「水中戦の経験が無くて‥‥想像だけじゃ難しいですね」と添える。だが武器を取る物は経験者ばかりではないのだから、神楽のような未経験者の意見も貴重だろうと千鶴は思った。
 神楽が話し終えると、ルンバ・ルンバ(ga9442)が武器の提案をはじめる。
「前に案がでてたけど、おいらも爪を考えてみたよ。水陸両用だから、仕様はかなり違うけど」
 彼が考えた『カナロア』という爪は、地上ではナックルなのだが水中では爪に変化するという、特殊な水陸両用武器。重量は爪にしては重く、威力に重点を置き、価格は据え置いて欲しいという希望だった。
「爪は甲の部分から、水の刃が三本射出されるんだ。こんなのもありなんじゃないかな思うんだけど子供っぽいかな」
「水の刃を水陸両用で使おうというのは面白いと思うよ」
 決して子供っぽいとは思わない、と、率直な返事をする千鶴。ただ価格は高くなるかもしれないらしい。
 さらにルンバは、「水棲キメラの攻撃は接近すること自体危険なのも多いから、遠距離攻撃可能な武器も良いと思う」と述べる。
「機体装備のBCハープンを小型化したような感じのものが欲しいかな。重量があって厳しいかもしれないけど、威力のあるものがいいな」
 と、銃のような形状の小型銛打機『ハープンショット』を提案。先に鈴樹が言ったものと、若干似ている。
「複雑な構造はどうしても重くなるからね‥‥上級者向きに考えてみよう」
 リロード可能な遠距離武器という点で価値はあるだろうと、千鶴は言い添えた。

 射撃武器の流れになったところで、クロスフィールドが問題点を出しつつ銃を提案する。
「現状では射程がSPPで1、試作ARで2と短すぎるな。距離をとって戦うのが基本のスナイパーにとってちょい厄介だ。第二に銃身の耐久が低い、連続発射ができないと急な対応が難しくなる」
 その言葉が示す通り、スナイパーである彼はやはり射程と耐久力のある水中用の銃を必要としていた。そして「両手持ちの銃が無いのが個人的には残念」だと伝える。
 そこでクロスフィールドが考え出した銃は、『ニードルライフル「水狐」』である。
 全長900〜1000mmで両手持ち。耐久性をUPする為銃身はやや太く、弾数確保の為マガジンは大きく作り、青を基調とした色合いで、形状はアサルトライフルに近い。
「射程は50m、弾数も50は欲しいところだ。弾薬を水の抵抗を受けにくいニードルに変更し、陸上でも使用可能にするのはどうだろう」
 それに対し、『技術的に難しい部分もあるが、長射程の武器は必要だと思うので熟慮する』と千鶴は答える。
「後は、連続発射可能にすることで戦闘の幅を拡げたい。既に発売中のKV用ニードルガンを参考にできるから、開発は難しくないと思うが」
「費用も抑えれるというわけだね」
「ああ。‥ま、他企業の奴らがどの程度情報提供してくれるかが心配だがな」
 苦笑するクロスフィールド。確かにその通りだと、千鶴は思った。

 続いて、皆の話を静聴していた巴に発言順が回る。
「私は能力者の身体や動作との調和を重視した実用面から、肯定的にどうすればより『扱いやすいか』を考えました。でも傭兵相手では使いたいと思わせる純粋な魅力も必要ですよね」
 そう前置きした上で、水中専用槍を提案する。外見はというと、三角錐のランスを寸詰まりにしたような、護拳つきの棒である。
「トリガーを引くと瞬間的に水の槍が形成される仕組みです。そうする事で使用の瞬間以外は短いので、軽くなりますよね」
「そうして、長物の取り回しにくさをカバーする訳か」
「はい。他にもレーザーポインタを付けて、命中率を上げ、攻撃機会を有効に利用できる武器が良いかと」
 巴の提案を聞き、「かなり高性能だな」と千鶴は言った。商品化するとどうしても高級品になりそうだが、巴はそれでも良いと思っているようだ。
 そして、
「ところで、武器の名称は?」
「『紅牙』ですね、レーザーポインタに由来しています。ポインタをオミットすれば『絶影』でしょうか」
 名前に至るまで、巴の拘りが見えていた。
 続いて海が武器の提案をはじめる。
「私からは、水中用の棍を提案しますっ」
 棍棒の使い手である彼女らしい。
 提案された棍の特徴だが、長さは180cm程度。棍の回りに小さな孔が並び、AIによる制御で棍の動き感知し、水を噴出することで水の抵抗を軽減出来るという物。
 さらに中央には円形の取っ手が付き、それを中心に流水によって回転させ、敵の攻撃を弾く事もしようと言う。
「この間の戦闘で、水中に盾を持っていったんですけど、やっぱり動かしにくいんですよね。棍なら水の抵抗を受けにくいし、敵の攻撃を受けるのにも適していますし」
 守りもできる武器という点では、昼寝の提案した爪と似た役割を持つのだろう。が、
「AI制御で動きを感知するのが難しそうだな」
「そこは羽柴さん、がんばってください! 名前は『流水棍【鳴門】』とかどうでしょう?」
 ――こう笑顔で言われると、頑張らないといけないような気がする。
 そして海はもう一点、超機械扱いとなる『水中練剣「海神」』も考えていた。それは普段50cm程の筒だが、練力を流す事で1m程の非物理の刃を生み出す武器。
「水棲キメラって、水圧に耐えるためか、硬い敵って多そうだから。そんな敵にサイエンティストさんの援護は必要だし、私たちと性質の違った攻撃を加えられます」
 と、海は千鶴の目を見る。
 海が話し終えると、幸乃が控えめに口を開いた。
「そういえば、超機械は空間に歪みを生じたり、電磁波を発生させるもの、でしたっけ‥」
 彼女の言葉に、「ああ」と答える千鶴。
「それならば‥銃と違って弾数をきにしないでもいいし‥。射程や威力はあまり重視しないで、とにかく『当てて動きを鈍らせられる』ものが出来そうかな」
 少し考え、幸乃は言葉を続ける。
「非物理のものも、いいかもしれません‥。橘川さんも言っていたけれど‥水中のキメラ、硬い鱗があったり、表面が滑らかだったり、水圧に耐えられるくらい、圧には強かったりするから‥」
「確かにそうだな。非物理攻撃の超機械は考えるとしよう」
 深く頷く千鶴。
 続いて幸乃はワイヤー付きのボウガンを提案する。ワイヤーをつける事で、攻撃だけでなく岩場に突き刺し身体の固定なども出来る仕様の物だ。
「それと‥吸盤や鉤爪つきのフィンとか‥」
 と、最後に足爪に類する武器の企画を出す。
 ――こうして一通り武器のアイディアを出し合ったところで、今一度幸乃が話はじめた。
「あとは‥‥私が一番私が欲しいな、と思ったのは、水中での行動をスムーズにする防具と道具、かな‥」
 幸乃の様に防御面に不安を抱くものは多く、その言葉を皮切りに次々と提案が出されていった。
「水を刃にするシステムで‥‥水の壁を作るとか‥、ダイバースーツ、過去に少しだけ商品化されてますけど、一般化して欲しいかな‥」
「ダイバースーツは欲しいよね、アーマジャケットの素材で丈夫にすると良いかな」
 ルンバは幸乃の意見に賛同し、更に海難用救急セットや音波をを利用した通信手段を提案する。
 巴からは、『フィンブーツ』という足防具が提案された。
「爪先ではなく、脛の前と横に面積調整可能な短いヒレ構造が欲しいです。能力者なら小さいヒレで足りるし、歩行に支障もないですよね」
 それは重量が重くカウンターウェイトとしても利用でき、戦闘姿勢を保ちやすくするという物だ。
 又、鈴樹も意見する。
「温度の低い水に入る為の防寒スーツも欲しいわね。後は簡易ソナーや発砲弾なんてどうかしら」
 発砲弾は煙幕の代わりに使うものらしい。確かに水中では特殊弾が使えぬ場合が多いので有効だろう。
 武器以外に疎い千鶴は「防具への希望は、そっちの開発者に伝えておくよ」と返答し、資料を畳むと会議に参加した皆の顔を見渡した。
「有難う、自分ではとても出せないようなアイディアが多く、有意義な時間が過ごせたよ。今の時点で結論は出せないが‥‥幾つかは設計や試作にとりかかってみようと思う」
 そして、少しだけ笑みを浮かべて。
「次は‥そうだな。試作品を是非使ってもらいたいところだね。一ヶ月以上は先になるだろうが‥その時はULTに依頼するだろう。今回はありがとう、又、よろしく頼む」
 と、頭を下げたのだった。

「今回はこれで解散かな?」
「そうね、お疲れ様」
 神楽が皆の顔を見回して言うと、昼寝が挨拶をし立ち上がった。すると‥‥少し遅れて。
「あ、お茶の続きしませんかっ」
 海が言った。

 武器の提案をする会議も充実したものだったけれど、折角の機会だからバグアの居ない時代の事を千鶴にも思い出してもらいたいと。
 会議の終わった部屋で珊瑚礁に思いを馳せつつ、しばし楽しげな会話が続いたのだった。