タイトル:春の遊園地戦マスター:水乃

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 9 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/04/04 21:38

●オープニング本文


 戦火の激しさが増す九州だが、まだ普段どおりの生活が出来る地域も少なくはない。
 例えば南九州の学校は一部春休みに突入し、ある遊園地は春休みを満喫する学生で賑わっていた。
 しかし、その遊園地が突如休園の知らせを出す。――キメラが出現したのだ。

 UPC本部では、オペレーターのシャオラ・エンフィード(gz0169)が依頼内容の説明を始めていた。

「九州の遊園地にキメラが現れました。皆様には、キメラの殲滅をしていただきます。
 数は3体。1体は、頭の大きなライオンのきぐるみをかぶった様な人間型をしています。
 体当たりの他に、遊具を殴ったり蹴ったりしている様子が目撃されています。
 もう2体は、動物の乗り物型です‥‥子供が跨って乗り、お金を入れると動くタイプですね。
 外見はファンシーなライオンですが、猪のように突進し体あたりをします。
 突進中のカーブは出来ないようですが、動きは速いので注意して下さい。
 キメラが現れてから遊園地は休園してますので、一般客やスタッフの方はいらっしゃいません。
 一刻も早くキメラを退治して、皆で遊べる平和な遊園地を取り戻して下さい。お願い致します」

●参加者一覧

UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
最上 憐 (gb0002
10歳・♀・PN
岩崎朋(gb1861
17歳・♀・HD
佐倉・咲江(gb1946
15歳・♀・DG
都築俊哉(gb1948
17歳・♂・HD
八葉 白雪(gb2228
20歳・♀・AA
水無月 春奈(gb4000
15歳・♀・HD
七市 一信(gb5015
26歳・♂・HD
夜坂柳(gb5130
13歳・♂・FC

●リプレイ本文

「‥‥ん。遊園地。食べ放題の為に。頑張る」
 遊園地に建つレストランを見つめ、最上 憐 (gb0002)が呟く。
 そう、依頼が終われば、遊び放題&食べ放題が約束されているのだ。
(「ここが遊園地。初めて見たけど、お城みたいね」)
「早く依頼終わらせれば遊ばせてくれるみたいだよ?」
 と、心の中で姉『真白』と会話をするのは白雪(gb2228)。
(「! ‥こほん。まあ、早く終わったら程々にね」)
 『真白』はアトラクションに興味を持った模様‥‥その姉の様子に思わず微笑む白雪だった。
 そして夜坂柳(gb5130)は挨拶を。
「俺ぁ夜坂柳ってんだ。今日は宜しく頼むぜ♪」
 遊園地で遊ぶ姿が絵になりそうな元気少年だ。
「ははは、遊園地で、僕と握手!」
「おお、パンダだ、すげー!」
 柳の前で手を差し出すパンダの着ぐるみ――とりあえず握手はしておこう。
 ちなみに、パンダの中身は【OR】そっくりパンダを装備した七市 一信(gb5015)である。

  ――世界に蔓延る組織『らいおんさん』
  その魔手が遊園地にも伸びていた。
  立ち向かうは右手が美味しいと評判のパンダマン。
  ‥‥食べられる前に、いくぞパンダマン@味噌味!

「‥今ナレーションが聞こえたような」
「気のせいではないか、ね」
 UNKNOWN(ga4276)は試作した餡入りパンダ焼きを皆に配り、作戦の最終確認を行う。
 たとえ場所が遊園地であれ、シックな色で統一されたスーツに咥え煙草というダンディズムな雰囲気は崩さない。
 そしてパンダ焼きに噛り付きつつ、
「撮影用のカメラ、カメラ‥」
 佐倉・咲江(gb1946)はスタッフを探し、ビデオカメラを借りておく。
「撮影は任せて‥。だから、戦闘はお任せしますね‥‥」
 咲江の言葉に『何の話だろう』と首を傾げる一信の横で、UNKNOWNが深く頷いていた。


 徘徊するキメラを発見する為に、能力者は四方からキメラを探索する作戦を立てる。
 UNKNOWN・咲江・一信は北側から、憐・柳は西側からと決めていたが、残る者はその場でペアを組む。
「東側を担当すれば良いんだな。了解した。朋の奴と一緒に行動することにする」
「んじゃ、がんばろ〜!」
 都築俊哉(gb1948)は岩崎朋(gb1861)と共に、覚醒を遂げる。それぞれバハムートとミカエルという新しいAU−KVの性能を試す戦いだ。
 そして、水無月 春奈(gb4000)はバイク形態のバハムートに乗り、
「あんまり荒い運転はしませんけど、振り落とされないよう注意してくださいね」
 振り返り、後ろの白雪へ声をかけた。着物の為に横座りだったが、彼女ならば振り落とされまい。
 それぞれ、戦場へと駆け出していく。



「終わった後遊べるってのも良いよな♪」
 西側を探索する柳は、見るもの全てが目新しく楽しげにキメラを探す。
「‥‥ん。ついでに。どんな。食べ物があるかも。下見」
 一方憐は食べ物屋を探しつつ走る。――そして不意に立ち止まり、ある建物を注視した。
「‥‥ん。発見した。ドネルケバブ屋を。終わったら。行ってみよう」
 ――キメラでは無かったようだ。
 その後トルコアイス屋にも目を奪われつつ、建物へとよじのぼる憐。
 双眼鏡を覗くと、動物型乗り物コーナーが映る。
「‥‥ん。何かいた。あれかも。しれない」
「よし、行こうぜ!」
 こうして二人は、再び駆け出した。
 向かった広場には何体もの動物型乗り物が無造作に並べられ、ライオン型も数体配置されている。
 ‥‥FFの有無を確かめなければ。
 貴重な遊具を壊すわけにはいかないので、慎重に。
 柳は巨大ぴこぴこハンマーを握り、ライオン型乗り物をポクッと叩く‥‥反応が無い。
 続いて憐が小石を投げた。すると――乗り物の表面に一瞬FFが発生した。
「‥‥ん。キメラ。発見」
 すぐさま無線機を取り出し、仲間へと連絡を入れる憐。
 柳は既に壱式を握り、キメラを見据えていた。


 一方、朋と俊哉のペアは。
「子供達の夢である遊園地を壊したら大変だもんね」
「そうだな、壊さないようにしないとな」
 AU−KVを纏い、静かに園内を移動していた‥‥暫く進むと、小さな乗り物コーナーに辿り着く。
「あ、あれじゃない?」
 乗り物がライオン型なのに気づき、朋はキメラだと確信する。
「いくわよ‥‥って、トシ! 何するのよ!」
「まずは確認だ。それから連絡も」
 武器を振るおうとする所を俊哉に止められ、納得すると朋は武器を下ろす。
 朋の視線を受けつつ、俊哉は小石を拾い乗り物に投げつけた――
「やっぱりキメラじゃない!?」
 そして其処にFFが発生したことを確認し、朋が叫ぶ。
 早速武器を構え直した朋に苦笑いしつつ、皆に連絡を入れる俊哉であった。

「遊園地にキメラ‥‥バグアは何を思ってこんな風にしてるのかしら」
 呟く春奈。首を傾げる白雪。
 二人は南方を探していたが、怪しい着ぐるみの姿はない。
「リンドヴルムとは違って、取り回しが大変です‥‥」
 進行方向を変えようと春奈が苦心していると、無線から仲間の声。
 駆けつけた先では――ライオン型乗り物キメラと対峙する朋、俊哉の姿が。
 春奈は無線機を手に、加勢の連絡を入れた。
「キメラを発見しました。これから、殲滅に移ります」

 キメラは突進を繰り返している。
 俊哉は遊具と朋を庇うように、キメラとの間に割って入り楯となる。
 後ろで「トシッ!」と叫ぶ心配そうな朋の声が届いたが、大丈夫だと俊哉はバハムートの防御性能を確かめた。
(「流石に‥‥防御力だけは高い事はあるな」)
 そして夜刀神を抜き、キメラの胴へ反撃の一閃を加えた。
 俊哉の攻撃で後退したキメラに、朋は素早く詰め寄る。薙刀で二撃、三撃と斬りつけ、キメラの反撃を許さない。
 ――そこへ白雪と春奈が駆けつけた。
 素早く間合いに入り、肉薄する白雪は
「八葉流終の型‥‥八葉真白!!」
 月詠、血桜の二刀で二段撃を発動し、流し斬り。
「悪いけどさっさと消えて。今は一分一秒を争うのよ!」
 舞うように、さらに斬りつけ、キメラの反撃をヒラリとかわした。
 そして、避けた先では春奈が遊具を守るように立っていた。バハムートを装備したその身に、キメラの突進を受ける。だが‥‥
「さすがに、この程度ではびくともしませんね」
 重装甲の上に竜の鱗を使ったダメージの少なさに、春奈は微笑んでいた。
「そろそろ退場してもらいましょうか。ここは夢の国、悪夢を見る場所じゃないですから」
 キメラに言い放ち、天剣「ラジエル」を抜く春奈――反撃の狼煙はあげられた。
 4人に囲まれたキメラは、俊哉と春奈の鉄壁の守りになす術なく、動きを止められた隙に機動力を活かした朋の攻撃が次々と決まる。
 そして白雪の忍ばせた小刀が宙を舞った。
「とりあえず、いいから消えなさい!」
 唸るキメラにそう言い放つと、『真白』は両断剣に流し斬りを併せキメラの首を打つ。
 同時に、キメラの首がゴトリと地面に転がった。


 西側で戦う憐と柳も、キメラを追い詰めていた。
「‥‥ん。大丈夫。周りには。注意する」
 遊具の無い方へ移動させ、突進は小柄な体型を活かし回避する二人。
 憐は攻撃直後の隙をつき、車輪部分等にカウンターで瞬即撃を叩き込む。タバールでの一撃は威力も大きく、キメラの動きが止まった。
 そしてキメラの機動力が殺がれた隙に、円閃で胴を斬り裂く柳。
「見えたっ」
 反撃の突進を正面で受け止め、そのまま上から二刀を振り下ろす。
 次第に上手く連携がとれるようになり、何度か反撃を受けつつも二人は協力してキメラを沈めた。
 この後には、美味しい食べ物と楽しい乗り物が待っているのだから。



 遊園地の北側では、一信が複雑な思いに駆られていた。
 AU−KVで走り出す前、UNKNOWNに強く肩を叩かれ
「七市‥‥生き延びるのだよ?」
 と声をかけられたのだ。
 それ以来、UNKNOWNの姿が見えない‥‥しかし、プレッシャーは常に感じる。

 一方咲江が怪しいものに小石を投げつけていると、無線からキメラを発見したという報告が。
「後は着ぐるみキメラだけ‥‥」
 撮影の準備だと、ビデオカメラを構える。
 その頃UNKNOWNは一信に気づかれぬよう軽快に建物に上り、五感を使い周囲を警戒した。
 怪しい物には手にした薔薇を鋭く投げ刺し、キメラかどうか確かめていく。
(「あれは‥」)
 そしてついに見つけた――広場を徘徊するライオンの着ぐるみと、キメラへと近づいていく一信の姿。
 UNKNOWNは来るべき時に備えて隠密潜行を発動する。
 その胸には、薔薇の花を忍ばせて。

 そんな周囲の様子は知らず、ライオンのきぐるみを発見した一信は仲間へと連絡を入れる。 
「こちら七市、キメラ、発見したよん」
「了解です‥」
 咲江の声が聞こえる。UNKNOWNからは‥‥返事が無い。
 ――意を決し、一信はリンドヴルムを纏う。着ぐるみパンダはAU−KVに身を包まれ、パンダのよう。
 外観改造されたパンダAU−KV姿で竜の翼を発動し、一信はキメラの前へと立つ。
「どっちが最強の着ぐるみか、ここではっきりさせてやる!」
 ライオン着ぐるみに言い放つ、パンダマン一信!
 ‥‥しかし、そのパンダ頭に突如一輪の薔薇が突き刺さる!
「誰だ!?」
 と困惑する一信とキメラの間に、降り立つ一つの影‥‥
「らいおんさん、参上」
 と言うその姿は、『子供が描いた様ならいおんさんお面』を装備した謎の人物@何処からみてもUNKNOWN。
「らいおんさんだとっ!?」
「ふっ、パンダマン。良くぞ来た‥」
 マントを翻し、お面の奥から不敵に笑う声。
 しかし――気にしちゃいないキメラは突進を繰り出した。
「ふっ‥いけ、らいおんまる!」
 キメラの突進を猫槍「エノコロ」で受け流し、UNKNOWNはまるでライオンキメラを嗾けるように立ち振る舞う。
「くっ!」
 一信はライオンキメラの攻撃をその身で受け止めた。
 彼の背には、遊園地の遊具――それを守るために、身を挺して。
「着ぐるみってなガキの笑顔のためにあるんだ。それを模した時点で許せないんだよ、手前は!」
 一信の怒りが天を衝く。
 彼がキメラの胴に蹴りを入れると、キメラは後ろにふっとんだ。
 画面の中ではパンダマンがらいおんまる相手に大暴れし、映らない部分ではキメラの足を荒縄で掬ったりエノコロで殴ったりとUNKNOWNが大暴れ。
「パンダさん、いい絵が撮れてますよ‥。もっと、熱く戦ってくれるとなおよし‥」
 戦いの様子を、咲江はひたすらビデオに収めていた。格好よく撮れるよう、角度にも拘ってみる。
 シーンの最後では、一信がファングでライオンキメラの胸を掻き斬り、勝利のポーズ。
 そして
「くっ、今日の所は見逃してやろう」
 と、コートを翻したUNKNOWNが捨て台詞を吐いていた。



 こうして戦闘と撮影が無事終了し、遊園地にスタッフが戻ってくる。
 お礼と共に、全てのアトラクションとフードコートが解放された。

「次はジェットコースターに乗ろ?」
(「私はコーヒーカップがいいわね。可愛いし」)
 姉の意外な可愛いさに苦笑しつつ、白雪はジェットコースターへ。
 激しい高低差を高速で駆け抜ける――風を浴びていると、姉の悲鳴が聞こえたような気がした。
「迫力あったね。‥‥大丈夫?」
(「不覚。一般人がこんなにハードな鍛錬を積んでるだなんて」)
 どうやら姉は絶叫系が苦手らしい。
 独り言? と首を傾げるスタッフにお辞儀をすると、続いて白雪はコーヒーカップへ向かった。
(「粗暴な乗り物より、こういう静かな乗り物のほうが楽し――」)
「それじゃあ回すよ〜♪」
 カップに乗って一息ついたところへ、ハンドルを握った白雪が全力の回転を加える。
(「やめなさい白雪! 気持ち悪くなるでしょ!」)
 ‥‥そんな悲鳴も空しく、その日はぐるぐる回される『真白』だったとか。

 そしてコースター前では。
「‥こういうときくらい乗せてくれてもいいと思うのですけどね‥‥」
 身長制限にひかっかった春奈がしぶしぶ子供用コースターへ。思わず溜息が出てしまう。
「普通のジェットコースターに乗りたかったのですが‥‥」
 と言いつつも数度楽しみ、続いてやってきたゲームコーナー。クレーンゲームの景品が気になって仕方ない。
「ぺんぎんさん‥取れるかしら‥‥こっちのライオンさんも捨てがたいです」
 思わず夢中に。
 ぬいぐるみが引っかかっては一喜一憂。子供らしい表情を見せていた。

 朋は【Steishia】ブランドの服に着替え、俊哉を連れて乗り物をはしごする。
「んじゃ、今度はこれ乗るわよ〜☆」
 恋する乙女のような、キラキラとした笑顔で。腕を組みつつひっぱっていくその姿は恋人同士のよう。
 立て続けに乗った絶叫マシンに疲れつつも、朋が楽しんでくれているからいいか‥‥と、俊哉は思う。
(「最後は観覧車にでも乗るか‥‥な」)
 高い場所から見下ろす夜景は、きっとあの日のように綺麗に違いない。

「乗り物も食べ物も全部網羅してやっぞ〜!」
「遊園地は初めて‥。こんなところがあったんだ‥」
 見るもの全てが珍しい、と。柳と咲江はアトラクションを一通り堪能していく。
「佐倉のねーさん、ライオンとパンダの戦闘録画できた?」
「うん‥いい感じの絵が撮れた‥。パンダ怪人VSライオン怪人‥」
 遊びつつ、「見る?」と柳に問いかける咲江。無表情ながらも楽しそうに。
「見る、絶対見る!」
 ――ちなみにその映像は全員に配布され、後に遊園地のプロモーションビデオとして使われたとか。

「‥‥ん。遊園地。食べ歩きの旅に。行って来る」
 アトラクションにも目も向けず、憐はひたすら食べる。肉を削いで食べる。トルコアイスは粘る。
「‥‥ん。それと。これと。あれを。おかわり。大盛りで」
「これも食うか?」
 思わず手にしたクレープを憐に差し出す柳。
 そこには、食事をしながら「今度は友達と遊びにこよう‥」と、眠りに誘われる咲江も居た。
 そして併設されたお土産コーナー。
(「お饅頭は粒餡でしょ?」)
「漉し餡でしょ?」
 白雪が温泉まんじゅうを手に、姉と会話中。
 結局、漉し餡の勝利である。

 一方一信は、個室でジャージとサングラス姿に着替え
「そうそう、はしゃいで食べて遊んで、これが遊園地なんだよな‥‥良い笑顔だ」
 散歩をしつつ、皆が楽しむ様子を見つめる。
 しかし、ふと寂しそうな柳の姿を見つけ、再びパンダの着ぐるみに着替える一信。
「がーおー、たーべちゃーうぞー」
「あ、居た!」
 パンダマンは優しい人です。そんな一信のきぐるみに、もふっと柳の体がのしかかる。
 そして、
「さあ、食事としよう、か」
 再びパンダ姿となった一信の肩を、力強く叩くUNKNOWN。
 その視線は、右手に注がれ‥。
「パ‥パンダは美味しくないよ? 蜂蜜、掬わないし‥」
 着ぐるみの奥で笑う一信だが、何故かUNKNOWNが怖い。
 まるで、数日間かけて付け狙いそうな雰囲気だ。

「ギャー!? 食べられるー! 誰か助けてーー!」
 ‥‥平和の戻った遊園地に、叫び声が響いた。