タイトル:吸血女〜アスワング〜マスター:水乃

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/01/27 00:18

●オープニング本文


「アスワングって、知ってる?」
「さぁ、知らないな」
「フィリピンに伝わる、女吸血鬼のことをこう呼ぶの」

 休憩中の女傭兵は、男能力者に向かってその話を切り出した。
 何故急にそんな話をし出したのか‥‥女傭兵の思惑が読めない男能力者は、頭上にはてなマークを浮かべているようだ。

「‥‥それがどうかしたのか?」
「それがね、本当にアスワングが出るらしいのよ、フィリピンで」

 昔の人の空想の産物が、似た形状のキメラとして現れる‥‥それが現実となってしまった今日。
 女傭兵が出ると言おうが、その程度では男能力者はもう驚かなかった。
 少し残念そうに女傭兵は眉根を寄せ、もう男のリアクションは諦めて話を続けることにする。

「伝承のアスワングと同じでね、夜皆が寝静まった時間帯‥‥奇声をあげながら空を飛び回るっているそうよ。空中に止まりながら、ものすごーく長い舌を垂らして、舌先で人間を突き刺して、血を啜るの。それも、『屋根に小さな割れ目を作り、舌を忍ばせて寝ている人を狙う』なんて、器用な真似をするらしいわ」

「ならば、被害者からその『アスワング』とやらの姿は確認できないのか」

「そうなるわね、屋根を隔てた上にいるんですもの。だから伝承では『吸血女』と言われているけれど‥‥人間の姿であるかどうかも怪しいわね。一説では、犬に似ているって話もあるくらいだし」

「ふーん‥‥で、君はその『アスワング』と噂されるモノの正体は『キメラ』だと言いたいんだな」

「間違いなく‥‥キメラだと思うわ。被害者も増えているみたいだから、そろそろキメラだと判って討伐依頼が来るんじゃないかしら?」



 二人がその話をしたまさに数時間後の事。『フィリピンの島に現れたキメラを退治してほしい』という依頼がUPC本部に舞い込んだ。

 モニタに表示された詳細情報を眺めて、女傭兵は
「言った通りだったでしょう?」
 と、得意げに微笑むのだった。

●参加者一覧

リュイン・グンベ(ga3871
23歳・♀・PN
月島 瑞希(gb1411
18歳・♀・SN
メビウス イグゼクス(gb3858
20歳・♂・GD
ディアナ・バレンタイン(gb4219
20歳・♀・FT
クラリア・レスタント(gb4258
19歳・♀・PN
柊 沙雪(gb4452
18歳・♀・PN
勅使河原 恭里(gb4461
14歳・♀・FC
ハート(gb4509
25歳・♂・DF

●リプレイ本文

●昼の間
 フィリピンという国の一部、観光場所もない小さな島。
 被害にあったという集落は、廃墟のような不気味な静けさを残している。
「空家がこうも多いと少し不気味ですね‥‥」
 何か身を隠せそうなものがないか、村の中を探索しながらメビウス イグゼクス(gb3858)が呟いた。
 キメラが出現するのは夜。それまでの間、能力者達はじっくり下見と下準備が出来る。彼等を妨害するものは、照りつける太陽と汗を滲ませる熱気くらいだろうか。
「吸血女キメラ‥‥蚊じゃあるめぇし、人様の血なんか吸って美味いモンなんかねぇ‥?」
 勅使河原 恭里(gb4461)は疑問を口にし、長い銀髪をかき上げた‥‥ここは、暑い。準備中まで装備をすることはなかろうと、武具を家屋内に投げる。
 能力者らは良い家屋を見つけ、そこで夜まで休息と準備をすることにした。
「羽を持ち、奇声を上げ舌を突き刺し血を啜る‥‥まるで蚊だな」
 塗料を詰め替えながら、リュイン・カミーユ(ga3871)は夏の嫌な敵を思い出していた。
「アレ、妙に苛々する声というか音を出すじゃないか」
「確かに、似ているかもしれませんね。‥‥どのような姿をしているのか」
 リュインの言葉に同意しつつ、ハート(gb4509)も塗料の詰め替えを手伝う‥‥彼もまた気だるそうだ。
「ま、ホントに蚊みたいな奴だったら、刺されたら痒くなったりしてな。‥‥んな訳ねぇか。けど『伝説の』って言われてるぐらいだし、ちょっとだけツラ見たい気もするけどよ」
 あまり目撃情報がないだけに、恭里もキメラの姿が気になるようだった。
(「アスワング‥‥昔、何かの本で読んだ事‥‥あったかな?」)
 クラリア・レスタント(gb4258)は思い出そうとするが、思い出せない。世界的に見れば、それほど有名な話ではないので仕方がない。
 彼女は草や葉を集め、それを布に縫い付けてカモフラージュ用のスーツを作る。
(「これで欺ければいいんですけど」)
 夜活動するキメラというだけあって、どれだけ夜目がきくのか不安だった。

 そして屋内での準備が進む中、外では‥‥月島 瑞希(gb1411)が狙撃の際に身を潜める場所を見繕っていた。
「屋根全体が見渡せる場所か‥‥」
 建物の傍に生えていた大木を見上げる瑞希。葉も茂っており、高さ的にも身を隠すには良いかもしれない。木によじ登ってあたりを見回し視界を確認すると、その場で銃を構えてみる‥‥結果この場所で納得したようだ。
 敵は、一体。しかし、準備を抜かるわけにはいかない。

 夜のみ現れ寝ている人間を襲うというアスワングのようなキメラに対し、能力者らの作戦は『空き家で囮が眠り、現れたキメラを待機班が討つ』というものだ。
「あたしは今のうちに仮眠とるわね」
 囮となる一人、ディアナ・バレンタイン(gb4219)が皆に言い、そのモデルのような肢体で伸びをする。
「襲われたときに本当に寝てたら大変だからね‥‥皆も寝ない?」
「では‥私も仮眠をとりますね。本番では‥‥本当に寝ないように気をつけましょう」
 柊 沙雪(gb4452)も夜のために、休息をとる。
 ‥‥そこへ、パンや飲み物といった軽い食事を運ぶクラリア。
 話せない彼女は手に持ったメモに、
『みなさん、食事にしましょう』
 と書いて、示した。
 皆が「ありがとう」とにこやかに受け取り、休息をとる。
 そして、クラリアは恭里にこっそりメモを見せる。そこには
『余り無理をしないで下さいね。今、出来る事を頑張りましょう』
 と、書かれていた。
「‥‥あぁ、心配すんな、無理はしねぇ」
 答える恭里の口調はぶっきらぼうなものだったが、照れ隠しにも見えるのだった。


●そして夜
 皆が交代で仮眠を取り、夜を迎えた。
 囮となるディアナ、沙雪、恭里は寝室へと向かい、最終確認を行う。
「キメラって奇声を出すのよね? 耳を澄ませば聞こえるかな」
「ええ、多分。だから『来た』ことは容易に分かると思うのですけど」
 ディアナと沙雪が話す中、恭里は無線機のスイッチを入れて足元へと設置する。
「キメラの舌が伸びりゃこれを小突きゃいい」
 それが、待機班への合図となるはずだ。ディアナと沙雪も共に無線機を設置しておいた。
「よーし俺は寝るぞー」
 棒読みだが外にも聞こえるような声で恭里がいうと、3人は寝床に入り寝たふりをはじめるのだった。


「敵の訪れは、奇声で分かるか‥‥。どんな声なんだろうな?」
「それこそ蚊の鳴く様な声?」
 待機班のリュインと瑞希も準備を進める――やはり奇声の種類が気になるらしく、出た会話がそれであった。
 リュインはフォルトゥナにペイント弾をセットし、昼に見つけた狙撃ポイントへと向かう。この弾が命中すれば、戦いを有利に進めることができる筈。
 そして瑞希は、覚醒を済ませ木の上へ‥‥やや不安定だが、ここで隠密潜行を使えば気づかれることはないだろう。屋根の上を見据え――スコーピオンを携えた手に力が入る。

『使ってください。これでしげみに隠れましょう』
 クラリアが、そう書かれたメモをメビウスとハートに見せた。そして、昼に作ったギリースーツを二人に渡す。
「これは‥‥なかなか良くできていますね」
 草の葉が縫いつけられたそれをメビウスが手に取り、広げてみる‥‥なかなか手の込んだものだ。彼女の器用さに感心する。
「では隠れるとしますか。そろそろアスワングにお会いできそうですし」
 ハートがそう言い、二人は頷く。
 こうして準備は整った‥‥あとは、出現を待つのみ。


●吸血女
 静かな夜――能力者らは息をひそめ、キメラの襲来を待った。
 ‥‥いつ来るか分からない相手を待つのは苦痛だ。しかし、30分経過したところでようやく静かな空気を震わす声が届き始める。
――キーッ、キーッ
 と、‥‥まるで、鳥の鳴き声のような音だった。
(「――来た!?」)
 一同に刹那緊張が走る。
 ‥‥しかし、声がしてからも暫くは囮のいる民家に近づいてくる様子はなかった。
 恐らく、一軒一軒家の屋根に降りては睡眠中の人間がいないか確かめているのだろう。そしてキメラはこう思っているのかもしれない――今日は不作だと。
 さらに10分が経過し、キメラが囮の待つ民家の屋根に降りた‥‥その姿は夜闇に紛れ、いつもならば淡く周囲を照らす月光さえも、今は雲で隠れてる。
 能力者らは奇声が近づきそして止んだ事から、キメラが囮のいる屋根に降り、吸血行為を始めようとしただろうと察しをつける。
 ――しかし、今はあえて攻撃をしなかった。
 まず、キメラの形が朧げにしか見えない事。‥‥もし攻撃をはずし、その音で逃げられでもしたら。銃でしか手がだせなくなるのだ。 
 なるべく確実に、敵の機動力を殺ぐ‥‥その為にあえて危険な囮作戦に出ているのだ。

(「あれでしょうか‥‥」)
 沙雪は薄目を開け、天井から伸びる紐のようなものを見つめた‥‥いや、紐というよりは、もう少し硬さがありそうだ。
 両隣のベッドで眠る恭里とディアナが無線機を脚で小突き、キメラの吸血行為を待機班に知らせる。
 ‥‥そして、舌はゆっくりと能力者らを狙って垂れ下がってくる‥‥。ディアナはいつでも覚醒して攻撃できるよう、シーツの下でアーミーナイフを握った。
 舌はディアナの方へと降りていった――どこから血を吸うのかと思えば、その舌はディアナのふっくらとした胸元を漂い‥‥
「させないわっ!」
 舌先が肌に触れるか触れないかの時、ディアナが覚醒を遂げ飛び起きるとナイフを翻す。
 ザクッと切っ先が舌を掠め、ディアナは落ち着いて二撃目を振り上げる―! 二度目の攻撃は、確実に舌の真ん中を貫いていた――屋根の上で、キメラの悲鳴が響く。
「ふふ‥‥私の1000万パワーを見せてあげようじゃない!」
 グリ‥‥とナイフを壁に押し付けるディアナ。キメラは舌を引っ込めようと抵抗してみせたが、ディアナが力では勝っていた。
「‥‥まって、こちらにも‥‥っ」
 しかし、隣で囮となっていた沙雪もまた舌に狙われていた。
 沙雪は刹那に覚醒すると瞬天速を使い、吸血を狙う舌の攻撃を回避する。
「‥‥っち、何本も舌があんのかよっ」
 飛び起き覚醒した恭里は、舌を縫い付けて動けぬディアナが犠牲とならぬよう庇いながらも無線機を手に取った。
「キメラの舌は縫い付けたっ‥‥だがこいつ何本も舌もってやがる」
 待機班に連絡をし、携帯したアーミーナイフで2本目の舌を斬りつける恭里。しかし反撃に出たキメラの舌先がチクリと肌を掠る。
 そこへ、細長い舌へと狙いを定め、沙雪がナイフでの突きを繰り出す――!
 その一撃で的確に舌の真中を貫通させ、沙雪はそのまま体重をかけて壁に縫い付けた。
「二本目も‥‥縫い付けました」

「囮は上手くいったようだな」
 恭里らの報告を聞き、刹那覚醒を遂げたリュインが瞬天速を発動する。一気に壁を駆け上がり、屋根の上でのたうつキメラの姿を発見した。
「綺麗に目立つよう化粧してやるぞ、吸血女」
 顔に笑みすら浮かべて、キメラが機転をきかせる前にフォルトゥナに詰められたペイント弾を放つ――! 弾はキメラの腹部に命中し、中に仕込まれていた蛍光塗料がぶち撒けられた‥これが追撃用の目印となるはずだ。
 ‥‥その時、今まで雲に隠れていた月が姿を現した――月光に照らされるキメラ。その姿は、決して女の姿ではなく――!
「醜悪だな‥」
 リュインが呟いた。
 キメラの体はこうもり羽根の生えた女性体であったけれど、その顔はまるで爬虫類のようだったのである。リュインは躊躇わず目潰しを狙ったペイント弾を放った。
 ――そこへ、瑞希の放った弾丸も飛ぶ。
「逃がさない‥‥当たれ――!」
 飛び立とうとばたつかせる羽根を、影撃ちを使用し死角から狙い撃つ。
 ギャアとキメラが鳴いた‥‥瑞希の弾は蝙蝠のような羽を貫通していたのだ。そのままニ撃、三撃と撃ち込んでいく瑞希。
 二発目は外れたが、三発目は見事羽根の付け根を射抜いていた。
 瑞希の攻撃と連携をとり、リュインが追撃を行う――キメラの注意が逸れた間に鬼蛍に持ち替え、今度は羽根を狙った急所突きだ。そして‥‥
「そら、とっとと落ちろ!」
 刀身を翻してキメラの体と舌を切り離すと、蹴りでキメラを屋根から叩き落すのだった。

 地面に何かが落ちた衝撃。
 様子を伺っていたハートは真デヴァステイターを手に覚醒し、そして‥‥這い蹲るキメラの顔を確認し、残念そうな息を吐く。
「惜しいですね、美しい吸血女を拝見できると思ったのですが‥何も爬虫類じゃなくとも」
 冗談交じりに言い、キメラを銃撃する――逃走せぬよう、狙いは羽だ。
「蜂の巣にしてあげます!」
 ハート攻撃はかなり広範囲に渡り、羽に小さな穴が出来上がっていく。
 そして、ギリースーツを脱ぎ捨て、覚醒を遂げたクラリアが茂みから躍り出る。
 手にはサリエル‥‥それを振り上げ、やはりキメラの羽根を狙うクラリア。
「縫い付ケ!」
 スマッシュと共に、大鎌の尖端で翼を貫通させ地面へと縫いとめようとする‥‥しかし、寸での所で攻撃をかわすキメラ。
 そして反撃に移るキメラ‥‥手を振り上げその鋭い爪が、クラリアを捉える――!
 しかし、突如飛んできたソニックブームにより、キメラの攻撃は遮られた。
「‥‥お怪我はありませんか?」
 タイミングを図っていたメビウスが、キメラとクラリアの間に駆けつけた。メビウスの問いに、コクリと頷くクラリア。
 メビウスはキメラの方へ向き直り、
「貴女がこの事件の主犯のようですね。我が蒼龍を以って貴女の悪行を裁く!」
 高らかな宣言と共に、長刀・雷神器「蒼龍」にてキメラの攻撃を受け止め、そのまま反撃を繰り出す。
 スマッシュと両断剣を発動したメビウスは、武器に力を溜めつつ素早い突きでその力を解き放った。
「行きますよ‥‥奥技、雷刃閃衝!」
 強烈な衝撃が体に加わり、後方へ跳ね飛ばされるキメラ。爬虫類の顔からは表情を読み取れないが、人間の体からは大量の赤い血を滴らせ、まだ逃げようともがいていた。
 クラリアはサリエルを投げ出し、鞘に納まったシルフィードを抜いた‥‥今度こそ。
「行クよ! シルフィード!」
 キメラを数度斬りつけ、もう反撃にとらわれぬよう距離をとった。
 ――そこへ、強弾撃を交えた瑞希の銃弾が飛ぶ。
「ちょこまかと鬱陶しい‥‥さっさと堕ちろっ!」
 木から飛び降りた彼女は、距離をとりつつキメラの羽を狙い撃つ。
 瑞希の強弾撃を受けたキメラは、いよいよ飛ぶ仕草を取れなくなったようだ。
「ふふ、派手にやってるわね」
 そして舌の抵抗がなくなり、囮となっていた者達が合流する。‥‥ディアナはヴァジュラを抜くと、豪破斬撃でキメラの喉元を薙いだ。
「もう逃げないでください‥‥」
 沙雪がキメラの急所に氷雨の刃を突きたて、体重を乗せて掻き切る。
 瀕死のキメラは、それでも逃げ道はないかと辺りを見回した‥‥そこへ、至近距離へと飛び込んだ恭里の円閃がキメラの顔面を裂く。
「ハッ! なかなかいいツラしてんじゃねーか‥‥自分の血でも飲んどきな」
 顔面から血を流しのたうつキメラを笑い飛ばす恭里。
「逃げ道はない‥‥終わりだ」
 鬼蛍で切りつけるリュインも、キメラの前に立塞がった――彼女の言うとおり、吸血女を模したキメラにはもう、空にも陸にも逃げ道がない。
「浄化等と生易しいものではありません‥‥眠りなさい」
 能力者らの総戦力が集結し、血にまみれたキメラが大地に沈んだのは‥それから僅かばかりの時間であった。


●戦い終わり
「お疲れ様。‥大丈夫か?」
 瑞希は救急セットを取り出し、傷ついた者の手当てを行った。メビウスの傷口を見ると、丁寧に治療を施していく。幸い、彼を含めてみなかすり傷程度‥‥というところだろうか。
「ありがとうございます。しかし、終わりましたか‥‥初依頼でしたが何とか乗り切れましたね」
 治療の礼を言い、メビウスは初陣ということもあり先の戦い方を思い出しているようであった。
「家の方は大丈夫かな?」
「舌‥‥縫い付けましたからね」
 ディアナの言葉に、お掃除した方がよいかも‥‥と沙雪が答える。
「よーし、掃除だ、掃除!」
 恭里の言葉と共に、二人とクラリアで建物の掃除に当たった‥‥汚れはした物の、被害は少ない。

「結局のところ正体は――『女』でも『犬』でもなかったな、まるで別物だ」
 屋根についた蛍光塗料を掃除しつつ、リュインが呟く。
 伝説の吸血女アスワング‥‥と噂されたものの正体は、爬虫類の顔と長い舌、人間の体と蝙蝠の羽を持つよく分からない生物‥‥まさしく『キメラ』であった。
「次は本物のアスワングにお会いしたいですね」
 少し残念そうにハートが呟いた。仮に噂どおりの女性型であったとしても、あの長い舌を見れば美しいとは思えないだろうが。
「でもやっぱり、蚊みたいだと思うんだよなぁ」
 結局最初のイメージを拭えず、首を捻るリュインだった。