●リプレイ本文
●南国の島
セブ島は本日も晴天、青い海に濁り無し。
キメラが出現したことで人払いも済んだ白い砂浜に能力者達は集結した。
「いやー、こっちはやっぱり暖かい‥‥ってか、あっついわねー!」
わがままボディを黒のビキニで包み、潜水用エアタンクを持った鯨井昼寝(
ga0488)は想像以上の暑さに思わず声を漏らした。
お節の為とはいえ、まさかこんな南国にきてしまうとは。
しかし有るだけでおせちのランクを一つ上げてしまいそうな豪華食材、海老ちゃんをここでしっかりと仕留めねば。と、その為の準備は怠っていない昼寝である。
「本当、良い天気ですねえ‥‥早く仕事終わらせて、遊びましょう」
「うん、早く片付けて海で遊びたいなー」
高速移動艇から降りた榊 菫(
gb4318)は太陽の眩しさに目を細めた。そして、神凪 久遠(
gb3392)も続けて移動艇を降りる。
二人はまだ水着は着ていなかったが、殲滅が終われば水着を借りて海を楽しむつもりだ。
「お迎えまではまだ時間がありますから、お節の為にも遊ぶためにも頑張りましょう」
そういいながら、この急がしい年末に無理やり休暇をとったオペレーターことシャオラ・エンフィード(gz0169)は、氷の入った発砲スチロール容器を引き摺っている。
‥‥しかし現場は、一般人の避難は終わった筈なのに一定の距離を置いて様子を伺う男達の姿もあった。
(「海…海ですねー、しかも南国。おまけにまわりは美女ばかり、素晴らしい素晴らしすぎますよ!」)
と、これは原田 憲太(
gb3450)の心情であるが、この周辺に待機している野次馬男の心情を表しているといっても過言ではない。
ここはリゾート地、水着の美女や美少女はそれほど珍しくはないだろう。
しかし武器を持った水着美女はどうだろうか――無防備なボディと武器というアンバランスさがたまらない!――と、中には双眼鏡を携える野次馬までいた。
そんなギャラリーなど気にもせず、フリルをあしらった桃色のワンピース水着を着用したレイチェル・レッドレイ(
gb2739)は緩やかな動作で麦藁帽子をかぶった。
「まさか冬に海水浴が出来るなんて思わなかったなぁ。思いっきり楽しむぞー♪」
小柄な体に幼い容貌、それに不釣合いなほどの巨乳な彼女――水着は身長にあわせた為か胸がキツイ。弾けてしまいそうな危うさが見て取れた。
「楽しむために早くやっつけちゃわないとね!」
レイチェルの隣では、負けず劣らず豊満なボディを【OR】カンパネラ学園水泳部用競泳水着で包んだレミィ・バートン(
gb2575)の姿。ここで競泳用水着を選択する辺りに気合が見え隠れしていた。
「‥‥ほら、おきておきて!」
「ZZZZzzzz‥‥はっ、寝てません。寝てません‥‥」
移動中、レミィに凭れ掛って寝ていた佐倉・咲江(
gb1946)は歩きながらも半分眠っていたようだ。レミィにつつかれハッと目を覚ます。
「え、到着? では早速水着になってレッツゴー‥‥」
そして咲江はカンパネラ学園制服をはらりと脱いだ――その下にはスクール水着。「水着はこれ一択って死んだお婆ちゃんが言ってた」と彼女は話すが、婆ちゃんはちゃんと生きている‥‥。
さて、この中で一番羽目を外してそうなのが藤田あやこ(
ga0204)である。
「セブ島と言えばグラビア撮影ですね? 一度やって見たかったのー。只で旅行できて嬉しいの〜」
ちょっとはしゃぎすぎで言動が女子大生風になっている‥‥黒のビキニ姿でくびればっちりの腰つきを野次馬達にアピールしてしまっているのだが。
これからセルフ写真撮影!という時に、
「え‥‥ええっと、藤田さん〜練成弱体の出番ですよ〜」
少し控えめに、シャオラはそっと声をかけるのだった。
●海老を狩れ!
能力者達はすぐさま海老キメラ8体の位置を把握し、覚醒を遂げた。海老キメラの体は小さく、1対1で戦う形となる。
まず海老キメラが群れているところへ、サイエンティストのあやこが練成弱体を仕掛けた――今回の依頼ではキメラを酷く傷つけぬよう皆が弱めの武器を装備しており、攻撃の手助けをするには有効なスキルだ。
そして弱体化した海老キメラへと、UPCゴルフクラブを持った久遠が素早く距離を詰める。
「筧しんめーりゅー、撲殺剣! なんてね」
掛け声と共にクラブを振り上げると、海老の頭を狙って勢い良く振り下ろした。よわーい海老キメラはそれだけで跳ね跳ばされ、動きを止める。
「‥‥あれ、もしかして思ったより、弱い?」
倒したかな?と思って久遠が覗いてみると、海老キメラは再び跳ね起きた――倒しきれては無いが、かなり弱っているようだ。久遠は流し斬りも交えつつ追撃を加え、止めを刺す。
シャオラも練成弱体をかける中、秋刀「魚」を手にしたレイチェルが弱ったキメラに攻撃を仕掛けた。
「結構おっきぃねー‥‥ふふ、美味しそう♪」
お魚の形をした小太刀で、適宜力を調節しながら攻撃を繰り出すレイチェル。連撃を叩き込みながら、身への損傷が少なくなる位置を冷静に判断していった。
「止めは頭ね‥‥ちょとミソが勿体無いかな」
海老の体当たりをバックステップでかわし、キメラの頭をめがけた秋刀「魚」の一閃――体液が飛び海老キメラはそのまま砂浜に落ちる。
「上手いですね! よし、僕もいきますよー」
「がんばってね、ハラケンくん♪」
猫槍「エノコロ」を構えた憲太にレイチェルの声援が飛ぶ。
憲太はフォースフィールドが破れるくらいの力加減を探りつつ、獲物を狙う猫の如く突き攻撃を繰り返した。
単純な海老キメラは体当たりを繰り出そうとするたびに槍先に当たり、ちまちまと体力を削られていく。
――そんな攻防を繰り返す中、巨大ピコピコハンマーを手にした咲江と菫が砂浜を駆けていった。
誰も相手をしていない海老キメラに追いつくと、咲江はひたすらピコハンで殴り始める。同じく菫も手加減をしながら、ピコピコハンマーを振り下ろした。
当たりに響く、二人分のピコピコ音‥‥。
「ぴこぴこぴこぴこ‥‥くすっ」
無表情でひたすら殴っていた咲江だったが、少し楽しそうである。
キメラは飛びかかろうとするところをピコハンで叩き落され、力なくぐったり‥‥。
「ん、悪くなる前に入れ物に入れちゃおう‥‥」
咲江は皆の倒した海老も回収しつつ、発砲容器に詰め込んでいった。
一方、鬼包丁の峰打ちで浜辺の海老キメラの相手をするレミィは、ふとあやこの行動が気になって問いかける。
「藤田さん、何してるのかな?」
「ん〜『美女悶絶!エビぜめ』って感じ?」
ぴちぴちのセーラー服を水着の上に着用し無防備な姿で寝そべるあやこ。
「これで海老もいちころ〜」
「‥‥え、そう、なんだ」
無理じゃないかな、と思うレミィ。だが海老キメラはやってきた!ただの偶然かもしれないが。「きゃーウソマジ?」とあやこの方は大喜びで、バトンを使いキメラを一閃した。
皆が浜のキメラを殲滅していく中、昼寝は水中にいるとされるキメラに狙いを定めて海へと潜る。
浅瀬だけならばゴーグルとシュノーケルで充分だが、念のために潜水用エアタンクも装備した。
そして、武器は試作型水中剣「アロンダイト」‥‥水を刃として攻撃するというこの武器は、この依頼にうってつけの武器だ。
武器が持つ僅かな金物臭さ、その他材質のほんのちょっとした匂いも海老にはつけずに済む‥‥と、少し美食家を気取って選んだ武器である。
(「いたわ‥‥!」)
ゆるりと海中を見渡し、海底に固まった海老キメラを3体確認。
気づかれぬよう静かに近づくと、昼寝はキメラの脆い部分を水の刃先で狙う。
シュパン――!
‥‥という小気味良い音と共に急所突きが決まった。
「エビ獲ったどー!」
「わぁぁ凄いです!」
海老を捕獲し、笑顔で戻ってきた昼寝。
シャオラも同じく笑顔で迎えると、受け取った海老を丁寧に発砲容器に詰め込んだ。
「鯨井さん、あたしも海でサポートするね」
昼寝と同じく潜水用エアタンクを装備し、水中用拳銃『SPP−1P』へと武器を持ち替えたレミィが海へとダイブする。
「ありがと、頼りにしてるわ」
「ダイビングする時もバディとか必要だしね!」
二人は協力し、素もぐりでは到達できない深さの海底を調べていく。
レミィが手にした銃は射程こそ短いが水を固めて打ち出す特殊仕様の物‥‥これならば海老の体を傷つけにくい。
昼寝とレミィは海底で確認した海老キメラを次々と仕留めていく――。
(「綺麗な海だなぁ‥‥狩り終わったらもう一回潜ってみようかな」)
途中、透明度の高い海を泳ぐお魚さんに目を奪われつつ、胸を高鳴らせるレミィだった。
「11、12、13‥‥結構捕まえたね♪」
「頼まれた分は充分ありますね」
レイチェルが氷の中の海老キメラを数え、菫もそれを覗き込む。
けれど余分に捕まえた分は食べれるのだ、いくら捕まえても無駄ではない。
数が足りたことに安心し、久遠は試しにレイピアを使い、銛の要領でキメラを突いた。
「‥‥あ、獲れた」
案外あっさり突き刺さる海老キメラ。
久遠は気をよくして、ゴルフのスイングを真似て「そーっれ!」とキメラをかっ飛ばしてみたり、次第にやりたい放題に‥‥!
やりたい放題といえば。
「とりゃ♪ 王女様だ〜足をおなめー」
と、砂錐の爪を装備した足を振り上げキメラをツンと突付く、暇を持て余したあやこである。
「あ〜ん、濡れちゃった〜 シャオラちゃん日焼け止め塗りっこしよ〜」
「‥‥えぇ!?」
‥‥こうして時は過ぎていき、キメラ討伐開始から30分――
能力者達は様々な方法で16匹の海老キメラを入手したのだった。
●食べて、遊ぶ!
お楽しみタイムがやってきた。
「僕って海で泳ぐのは初めてなんですよねー。今までは川や湖で泳いでたんで」
打ち寄せる波に最初は恐々と、しかし慣れれば勢い良く海に飛び込む憲太。
続いて咲江は表情こそ乏しいものの、「海は久しぶりです‥‥。泳ぐぞー‥‥」と嬉しげな声でちゃぽんと海に入っていった。
「次に海に来るのはいつになるか分からないから‥‥思いっきり泳ぎまくるよ!」
と、レミィは本気モードで部活の競泳水着を着たまま再び海へと飛び込む。水泳部部員だけあって、力強い泳ぎとしなやかなフォーム、とにかく速い!
「うわ、レミィさんすごいな‥‥全然追いつけない」
なんとか追いつこうとするが、波に邪魔され思うように進まない憲太である。
「ふふふ、水泳部だからね♪」
全力クロールから平泳ぎにかえ、ふよふよ波間を漂うレミィ。そんな彼女にゆっくり忍び寄る影が一つ‥‥
「‥‥? ひゃあ!?」
「んふふー、やっぱりレミィってばハリがあっていいボディー♪」
無防備な背中に乗りかかるように、後ろから手を回してそんな張りのある胸を揉みこむ白く小さな手――レイチェルだ。
レミィがハリがあるのだとしたら、レイチェルはしっとりと柔らかそうに見える――何がとは言わないが。
二人はそのままもつれ合い、ぶくぶく‥‥と海中に沈んでしまった。それを目撃した憲太は大慌て。
「大丈夫ですか!?」
「う、うん。ちょっとびっくりしたからね、沈んじゃったよ」
「‥‥はぁ。気持ちいいねー♪」
やがて浮かんできた二人は、青空を眺めながら波に身を任せた。
そんなぷかりと浮かぶ二対の双丘を眺めつつ、
「レミりんもレイチーも体型いいね‥‥。‥‥私ももう少し大きいと‥‥」
つい自分のボディをじーっと見つめ、比べてしまう咲江だった。
一方、久遠は現地で水着をレンタルして浜辺にやってきた。
腰回りはスカートのようになっている、ツーピース型の可愛らしい水着がよく似合う。
「ふふ♪ 冬に南の島で海水浴なんて贅沢ー。私だけ悪いかな? でもお仕事だったしね」
そう‥‥楽しまなきゃ損だ!
ついでに浮き輪もレンタルし、プカプカと海へと出撃した。
「‥‥あ、あれ‥‥写真撮影してる‥‥」
ふと浜辺を振り返ってみると、グラビア写真のごとくポーズをとりつつ、撮影会をするあやこの姿が‥‥。
「写真かぁ‥‥ボクは恥ずかしいし‥‥」
思わず頬を紅潮させる、初心な久遠であった。
そしてもう一人、パレオつきの黒いビキニに着替えた菫が男性の視線から逃げるように、海の方へ。
「うう、こんな姿恥ずかしいので、見ないで下さいです」
彼女も初心というか‥‥異性が苦手らしく、赤くなったり硬直したり大変な状況だ。
そして浜辺では、多めに獲れた海老の料理が始まっている。
「素材の味を活かすにはやっぱりシンプルに塩焼きよ」
と、昼寝は石で適当な台を作りその上に網を置いて海老キメラを並べ出す。
「なるほど‥‥シンプルが一番なんですね〜」
シャオラが火をつけると、海老キメラが焼かれ香ばしい匂いを醸し出し始めた。火力を強めると、瞬く間に焼けていく。
「うーん。やっぱり獲れたては最高最高」
「レモンや柚子の果汁をしぼってもおいしそうです」
海で遊ばない分、一足お先に海老を食す昼寝とシャオラ。獲れたての味は格別だ。
そこへよそいきのドレス‥‥もといチアリーディング服に着替えたあやこが加わった。
「日本人ならやっぱ生ビールに海老フライよねー♪」
「残念、海老フライはまだ無いわ」
「塩焼きも美味しいですよ」
衣装にはあえてつっこまず、塩焼きをすすめてみる二人。
海で遊んでいたメンバーも海老の元へと集まりつつあった。
「焼き、フライ‥‥どれも美味しそうです。海老フライ作りましょうか?」
「新鮮だけど、刺身は無理かな?」
菫は率先して料理を手伝い、久遠は刺身を提案してみる。そして塩焼きを口にした久遠は、驚きつつ「おいしい」と一言‥‥キメラ料理も侮れない。
それから暫くして、競泳をしたためにへとへとになった4人が戻ってきた。
「エビさん‥‥美味しそうな臭い‥‥」
思わず涎が出そうになり、口許を拭う咲江‥‥あぶないあぶない。
「いい香り〜、ねぇ、ボクも食べていい?」
「はい、みなさんもどうぞ」
菫が皿に乗せた海老料理を、レイチェルに渡す。料理はレイチェルからレミィ、咲江、憲太へと回っていった。
「うん、これはいけるよ!」
「‥‥ほんとう。おいしい‥‥」
「大きい海老でしたから、食べごたえがありますねー」
「でも何でこんなに美味しいのかな?」
それぞれ思い思いに料理の感想を述べる中、シャオラがぽつりと呟いた。
「皆さんと集まってお食事してるから‥‥美味しいのかもしれませんね」
●
食事を終えた後もそれぞれダイビングや水泳を楽しみ、最後に菫が記念撮影をした。
こうしてセブ島での一日が終わる――。
皆で持ち帰った8匹の海老は、UPC本部食堂のお節料理として生まれ変わるだろう。
それは天ぷらかもしれないし、エビフライかもしれない‥‥是非その目で確かめて、そして味わって欲しいと思う。
UPC本部食堂でしか食べることの出来ない、お節料理の味を――。