タイトル:空の石――ターコイズマスター:水乃

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/12/31 12:08

●オープニング本文


 とある小さな手芸店。
 そこの正社員‥‥という訳ではないが、暇な時に『ビーズアクセサリー講師』として働いているのは、本業建築士の一般人白石ルミコ(gz0171)だ。
 彼女は趣味が高じてこのようなアルバイトをしているが、何よりその手芸店へとやってくる若い女の子と話をするのが楽しみの一つとなっていた。

「ねぇ、モモちゃんはクリスマスは誰と過ごすのかな」
「ん、えっとね‥‥お友達とクリスマスパーティーするの」
「ふーん、じゃあこのストラップはお友達にあげるの?」

 ルミコと、モモちゃんと呼ばれた14歳くらいの少女は、ワックスコードでマクラメ編みをしながら、クリスマスを話題に会話を楽しむ。
 二人は携帯用ストラップを作っているのだが‥‥『誰にプレゼントするのか』と尋ねた途端、モモの頬に朱がさした。
(「‥‥そっか。なるほどね〜」)
 モモはその後すぐに「うん、そうだよ」と答えたが、この反応を見るに『好きな異性』にあげるのだろう。
 微笑ましいというか、羨ましいというか、初心な少女を見ていると『私にもこんな時代があったのよねぇ』とぼんやり思い出してしまうルミコである。
 最近のクリスマスといえば、弟と妹にケーキとプレゼントを渡して自分はワインをひっかけて寝てしまうとか、クリスマス関係なく仕事をしていたとか、そんな色気の無い思い出ばかりだ。

 ルミコはモモに笑顔を向けると、作業机の上へ小瓶に入った天然石を並べた。色とりどりの天然石は、マクラメ用に穴を大きく開けビーズに加工してある物だ。

「この世に一つの手作りプレゼントですもの、とびっきり素敵なのを作りましょ。 で、ストラップに使う石なんだけど‥‥どの石がいい?」
「選んでいいの? じゃあ、この青い石をお願いします」
「‥‥『ターコイズ』っていうのよ、この石は。ヒーリングの力があったり、災難を知らせ身代わりになってくれるって昔から言い伝えられてるの。それも、人から貰ったものは人一倍効果があるっていうわ。プレゼントには最適ね」

 12月の誕生石、幸運を呼ぶ石――少女は知っていて選んだのだろうか、それとも知らずに選んだのだろうか。
 薄茶色のワックスコードとはよく合う、素朴で優しい空色の石だった。 

「あ、ごめんなさい。もう帰らなきゃ‥‥白石先生、また明日!」
「うん、また明日ね。気をつけてね!」

 モモはその日ストラップを一つ仕上げると、御揃いのもう一個は明日作ると約束して店を出た。


 ‥‥しかし次の日、モモは手芸店へやって来なかった。
(「どうしたのかな‥‥」)
 モモは連絡も無しに休むような娘ではなく、ルミコは心配して携帯に連絡を入れた――応答が無い。

 ――胸騒ぎがする。

「あ‥‥」

 その時、昨日の続きをする為にと準備していた『ターコイズ』の石が一つ、ルミコの目の前で音をたてて割れた。

●参加者一覧

ロジー・ビィ(ga1031
24歳・♀・AA
アンジュ・アルベール(ga8834
15歳・♀・DF
オブライエン(ga9542
55歳・♂・SN
ティル・エーメスト(gb0476
15歳・♂・ST
シン・ブラウ・シュッツ(gb2155
23歳・♂・ER
八葉 白雪(gb2228
20歳・♀・AA
神凪 久遠(gb3392
15歳・♀・FT
橘川 海(gb4179
18歳・♀・HD

●リプレイ本文


 街中に突然現れた凶暴な姿の二匹のキメラは、我が物顔で公園を徘徊していた――。
 事態は一刻を争う。
 能力者等は移動艇から降りるとすぐさま行動を開始した。

 公園の様子を伺う白石ルミコ(gz0171)の元へ、ロジー・ビィ(ga1031)が駆けつける。
「‥‥大丈夫。絶対に助けますわ」
 柔らかい口調で言葉を交わし、礼を言うルミコに微笑みを見せた。
 そして、覚醒を遂げた白雪(gb2228)は紅い瞳でキメラを睨みつける。
「‥‥また、キメラは悪戯に人を殺めるのね」
 覚醒により表に出た人格、『真白』が呟いた――白雪の姉だ。
 彼女は婚約者を惨殺された過去を思い出し、少女の姿に昔の自分を重ね合わせた‥‥沸々と、キメラに対する憎しみが強くなっていく。
(「お姉ちゃん‥‥」)
「二度と‥‥誰にも同じ想いはさせないから」
 内に響く白雪の声に返答し、『真白』はルミコに駆け寄るとその肩をポンと叩いた。
「白石さん、あとは任せて」
 驚くルミコ―しかし再会を祝う暇などあるはずが無い。白雪は疾風のように、公園内へと駆けて行く。
 そしてもう一人、ルミコにとって見覚えある人物。
「‥‥以前お会いした時とは随分と印象が異なりますね」
 シン・ブラウ・シュッツ(gb2155)の言葉に、ルミコは苦笑いで返した。
 過去に幼き弟がキメラに襲われ、子供を助けることに拘りがあるというシン――再会できたのは偶然であろうか。


 傭兵達が公園内に入る。東側と西側に一体ずつ居るウィザードビーストと、公園の中央で遊具に隠れ、動けなくなっているモモの姿が確認できた。
「もうすぐですわ! モモ‥‥頑張って下さいませ」
 その言葉と共に、ロジーは覚醒を遂げた。
「急ぎましょう。まだ間に合います」
 アンジュ・アルベール(ga8834)も刹那に覚醒する。そして親しき仲のオブライエン(ga9542)とティル・エーメスト(gb0476)に視線を送り、頷く。
「ええ、クリスマスを脅かす悪者は許してはおけません!」
 ティルが叫ぶ。手には、橘川 海(gb4179)から借りたラッパ銃‥‥発砲と同時に轟音が鳴り響くという秘密兵器だ。
「その銃すごい音がするから、びっくりしないでねっ」
 明るい声で笑う海。彼女はバイク形態のリンドヴルムに跨り、いつでも救出に向かえる体勢だ。
 オブライエンは、そんな若者達を見守るように、静かに覚醒を遂げると銃を手にする。
(「あの子達と同じくらいの年の子が危険に晒されておるとはのう」)
 放っておける訳がない。
「今なら注意を惹けそう。みんな、がんばろ!」
 そして神凪 久遠(gb3392)が皆に声をかけ、覚醒を遂げた。
 ――こうして、少女の救出作戦が開始された。
 
「皆様、それとモモ様ー! 耳をふさいでくださいませー!」
 キメラを惹きつける為、ティルは大声を張り上げた。
 少年のよく透った声に、遊具の影で震えていたモモが咄嗟に耳を塞ぐ。
 そして運動会のピストル音とは比べ物にならぬくらいの、大気を劈く轟音が響いた――ラッパ銃が発砲されたのだ。
 まるでその音がスタートの合図だというように、キメラも能力者達も一斉に動き始める。

 能力者達はキメラとの戦闘を乙班と甲班に分け、乙班にはロジー、アンジュ、ティルが、そして甲班にはシン、白雪、久遠‥‥と左右二手に分かれた。
 先程の轟音にも物怖じしなかったウィザードビーストは、咆哮と共に神弾を放つ。
 放たれたエネルギーの塊は、鈍い音と共に弾け大地を抉った。
「あれが神弾―!」
 非物理攻撃である神弾は、受けた時のダメージが予測できない。
 シンは先手必勝を活用し、牽制に入る。命中率の高い番天印を構え、キメラの体を狙った――二発、三発と射撃が命中する。
(「一度動きを止めてしまえば追撃も容易い」)
 というシンの思惑通り、進攻を止められたキメラの前に白雪が踊り出た。
「‥‥犬風情が。すぐに黄泉路へ送ってあげるわ」
 『真白』はそういい捨て、月詠と血桜で後ろ足を狙い流し斬りを放った。
「八葉参の型‥‥乱夏草」
 三連の流し斬りは後ろ足に命中し、血飛沫を上げながらキメラの体が傾く。反撃の噛み付き攻撃を、横に飛びかわす白雪。続いて繰り出された前足の引っ掻きが肌を掠ったが、構わず体勢を整える。
 続いて久遠が、白雪とは逆サイドの後ろ足を狙った。
「追いかけられたら面倒だから、ねっ!」
 月詠と短刀の素早い連撃で、二度キメラを斬りつける。
「もう、神弾を撃つ隙は与えないよ」
 久遠がそう宣言し、三人は連携をとりながらキメラの機動力を殺いでいった。

「行ってくるねっ!」
「ああ、気をつけるんじゃぞ」
 戦闘班がキメラの足止めをしている間に、オブライエンに声をかけて二輪形態のリンドヴルムを発進させる海。
 オブライエンは救出に向かう海の後姿を見守りつつ、戦闘班からは離れた場所で不測の事態に備えて戦場を見渡した。
 そこではティルにアンジュ‥‥若い二人が前衛に立ち、キメラを惹き付けていた。今しがた救出に向かった海もまた若い―
「子供達を傷つけさせはせんよ」
 狙撃眼と鋭角狙撃を駆使し、キメラの脚部を撃つオブライエン。

 そして海はブーストを使い、モモの元へと駆けつけることに成功した。
「あなたがモモちゃんかなっ。私は橘川海、ルミコ先生に頼まれて助けにきたよ」
 明るい笑顔で親しげに話しかけると、モモの緊張も少し解れたようだった。
 海は少女の頭を撫で、「大丈夫? 動けるかなっ?」と問いかけた。しかし、首を横に振るモモ‥‥思うように動けぬのだ。
 すでに覚醒を遂げている海は軽々とモモを抱き上げ、リンドヴルムの後ろに乗せると防音の為の耳あてをつけた。
「大丈夫。‥目を閉じて、しっかりつかまってっ」
 リンドヴルムでの離脱――隙は大きいが、仲間のサポートがあるはずだ。皆を信頼し、海は少女を乗せて公園を駆ける。

 布陣を整えた乙班も又、キメラを迎え討っていた。
 海がモモの救出に成功した事を確認し、キメラの注意がそちらに逸れぬよう、ロジーは用意していた血布をちらつかせる。
「獲物はこちらですわよ」
 風に乗った血の香りに本能を刺激されたキメラは、ロジーへ爪先を向けた。
(「‥‥今ですわ」)
 ロジーのソニックブームがキメラの脚を掠る――しかし、傷を気にせず飛び掛るキメラ。その攻撃をロジーは盾で受け止め、流し斬りで反撃する。
 そこへ、出来るだけ目立つようにと
「と〜つ〜げ〜き〜で〜す〜!」
 ‥‥と声を上げたアンジュが飛び込んだ。速攻を狙い、二段撃を惜しまず使いながら月詠と蛍火の二刀でキメラの頭部を斬りつける。
「追撃しますっ!」
 アンジュに続くように、ティルもゼルクを振り上げキメラの胴部を狙って叩き付けた。


「モモちゃん!」
 リンドヴルムに乗せられルミコの元へ戻ってきたモモ。目には涙が浮かんでいたが、傷一つ無く無事だったようだ。
「良かった‥ありがとう」
「モモちゃんとなるべく公園から離れてね。私は加勢するからっ」
 休む暇も無く、今度はリンドヴルムを身に纏う海を見てモモは驚きの声をあげた。
「わ‥特撮ヒーローさんみたい‥‥」
 竜の翼を使い、目に見えぬ速さで去っていく海を見て呟かれたモモの言葉に、ルミコは頷き返すのだった。

 その間、甲班はキメラを追い詰めていた。
 キメラの大きく開いた口へ、投擲用に作られた白雪の哭刀『八咫』が投げ込まれる。
「犬が‥‥黙りなさい」
 冷ややかな『真白』の言葉に、キメラがのた打ち回った。
 ―その隙を見てゼーレとリヒト、使い慣れた二丁のエネルギーガンに持ち替えるシン。
「これが反撃の狼煙だ!」
 言葉と共に、容赦無き二連射でキメラを狙い打つ――肉が貫かれ、血飛沫が飛ぶ。
 苦悶の咆哮を上げるキメラ‥‥苦し紛れに、白雪の投げた哭刀と共に神弾が吐かれた。
 しかし狙いの定まらぬそれを避けるのは容易く、シンは後ろに飛び退き回避、久遠も横へ飛び退くと続けて攻撃の態勢に入る。
「筧神命流・奥義――天譴!」
 『筧神命流』を駆使し、紅蓮衝撃・豪破斬撃・スマッシュを惜しまず使った懇親の一撃を与える久遠。
 大きく崩れるキメラの姿。しかし奴はまだ反撃の体勢をつくる。
「‥‥く、しぶといっ」
 見た目以上にタフな猛獣に、シンは再び銃を構えた。距離を取りながらキメラに反撃を許さぬよう、連続で射撃する。
 そこへ、白雪が流し斬りで追撃した。
「悪ふざけの代償、払わせてあげる‥‥八葉流五の型――狂紅葉」
 二段撃を発動しキメラ頭部への月詠一閃。
 ブシッと血が吹き上げ‥‥今度こそキメラはその活動を止めた。
「‥‥この力、もっと早く欲しかった。‥‥そうすれば‥‥」
 崩れるキメラを見ながら呟く『真白』の声は、寂しさと悲しみを湛えているようだった。

 一方、影撃ちを併用した鋭角狙撃で、乙班を襲うキメラを狙撃するオブライエン。
 あとはキメラを沈めるのみ‥‥!
「本気で行かせて頂きます!」
 オブライエンの援護射撃を受け、アンジュが二段撃の連撃を繰り出す。
 それを回避できず全身から血を滴らせながらも、キメラは再び神弾を吐こうと口を開け――
「‥‥甘いですわッ」
 身を屈めその隙を突くように、ロジーの一撃がキメラの顎に決まった。
 それでもキメラは、反撃の姿勢は崩さない。アンジュに狙いを定めて、その巨体で飛び掛る――!
「!」
 しかし、アンジュとキメラの間に現れた小さな影――自身障壁を使ったティルが身を挺して、アンジュを庇っていた。
 巨大な両手剣、ゼルクを地面に突き刺し、その刀身で体当たりを受け止める。
「‥‥僕の命より大切な人です。手を出さないでください!」
 赤い瞳でキメラを睨みつけるティル――武器を突き刺した無防備な体を、前足の鋭い爪が引き裂いた。
「‥くっ」
「ティルさん!? ご無理なさらないで下さい!」
 駆け寄ろうとするアンジュ。
 もう一度振り下ろされたキメラの爪攻撃が、テイルの体を抉ろうとしたその時――。
「させないっ」
 キメラの懐に潜り込んだ海が体下から喉を狙い、竜の爪で突き上げた。
 海はそのまま体を捻り、キメラの頭を薙ぐように打ち付ける――キメラにとって不意打ちとなる連撃だった。
「お見事ですわッ」
 駆けつけた海に賞賛の声をあげ、ロジーは紅蓮衝撃を発動させキメラの口内を狙う――
 ズンと埋まった刃先は喉奥を掻き切り、鮮血を撒き散らしながらキメラは絶命した。

 こうして、二頭のキメラは能力者の手によって殲滅されたのだった。


「遊具への被害は少なかったようじゃな」
 家庭用工具セットで遊具を修復するオブライエン――幸い、作業は短時間ですんだ。
 救急セットを用意したロジー、海は皆の傷の手当てをしていき、目立つような大きな傷は大方癒されていく。

 そして、アンジュがボロボロと涙を流しながら傷だらけのティルに手当てを施していた。
「えと、僕は大丈夫ですので、泣かないでください?」
 赤くなった目元が痛々しく、ティルは困ったように眉尻を下げてアンジュの顔を見る。
「ご無理なさらないで‥と、言いましたでしょう」
 ティルの小さな傷をも丁寧に手当てしていくアンジュ。
 様子を見ていたオブライエンは、手当てが終わった頃に二人の元へ歩むと、二人の頭に手を置き優しく撫でた。
「ようがんばったのう。さすがわしの自慢の子供達じゃよ」
 オブライエンのその言葉に、ティルとアンジュの顔にいつもの柔らかな笑みが戻るのだった。


「一緒にアクセサリー作らない? モモちゃんも喜ぶわ」
 そしてルミコの誘いで、能力者達は手芸店へと訪れた。
「私は、お母さんにあげようかな。クリスマスだからね」
 父と兄を亡くし、それでも自分の道を選ばせてくれた大切な母親を想う海。
「きっと心配はかけてると思うから」
 海はターコイズを選び、革紐を通して結んでいく――可愛らしいペンダントだった。
 同じテーブルで、空色の石を手に取った久遠も二つのアクセサリを作ろうとしていた。
「ターコイズって災いから護ってくれるんだね‥‥ボクは姉さんにあげるよ」
 結び方を習いつつ、器用に作り上げられていく久遠の手作りアクセサリ。
「姉さん、喜んでくれるかな?」
 気持ちを込めて作られた物である、きっと喜ばれるはずだ。
「ふふ、綺麗♪」
 ロジーはローズクォーツをワイヤーでつなぎ、アクセサリを作っていく。
「モモもとてもお上手ですわ」
 褒められて、素直に「ありがとう」と笑うモモ。
「‥‥で、モモちゃんは誰にあげる?」
 そして、久遠はクルリとモモの方を向いて、ニッコリと問いかける。その瞬間、モモの顔が薄っすらと紅潮した。「えっと、ヒミツ!」と、初々しい反応である。
 そのモモの反応で何かを察したように、
「これ、お姉ちゃんが貴女にって」
 白雪が赤いリボンをモモに手渡した。
「頑張って。応援してるから」
 白雪が微笑むと、ますます顔の赤くなるモモであった。

「アメジストとアクアマリンでよかったっけ」
「はい、大切な人へのクリスマスプレゼントです」
 ティルは2月と3月の誕生石を、それぞれ大切な家族であるアンジュとオブライエンへ。なれぬ作業に四苦八苦しながらも、丁寧に作り上げていた。
 アンジュはティルの向かい側に座り、グリーンガーネットのネックレスをティルへ、アクアマリンのブレスレットをオブライエンへ――こちらもそれぞれ誕生石である。
 大切な人達への想いを込めたアクセサリは、
「えと‥‥メリークリスマスです」
 と、はにかんだ笑顔と共に届けられた。

「マモルとニキも世話になったみたいで‥ありがとね」
 やっと落ち着いて、ルミコは白雪とシンに礼を言う。
「そのマモル君とニキ君の近況はどうですか」
 以前『能力者になりたい』と言っていた妹のニキが気になるのか、シンが問いかける。
「ん、今のところ平和な日常を送ってるわ‥‥よく喧嘩してるけど」
 適性検査は受けていないみたいだと言い添えるルミコ。
「白石さんも、マモル君とニキちゃんにお守り作ってあげたら如何ですか?」
 手伝いますよ、と、白雪が言う。
「‥‥そうね、たまには手作りもいいかな」
 ルミコは悩んで、石の詰まった瓶を手に取った。
 ―そしてふと、シンが携帯した多機能デジタルカメラに気づく。
「あら、いいカメラじゃないの?」
「これですか? いい場面があれば撮影をと思ったのですけどね」
 戦闘時は危険で、その後は良いタイミングも見つからなかったらしい。
 ――そこへ、二つのターコイズブレスレットをもったモモがやってきた。
「これ、お兄さんとお姉さんにあげる!」
 と、シンと白雪に手作りを渡すモモ。
「いいシーンじゃない? ね、カメラ貸して。写真撮ってあげるから」
 タイミングよく現れたモモに笑いながら、シンへと手を差し出すルミコだった。