タイトル:らぶげっちゅ れべる2マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/04/24 23:57

●オープニング本文


ボクの何がいけなかったというんだい、ジェシー!

※※※

ボクは少し前に初恋をして、見事に撃沈してしまった‥‥。

あれからボクは仕事では失敗続き、友人からも「お前いつもに増して変だぞ」と言われる始末。

そして! ボクに二度目の初恋がやってきたんだ!

二度目の初恋の相手、彼女の名前はソニアと言って黒髪の美女!

だからボクは再び「らぶれたあ」なるものを書いて、ソニアに渡しに行きたいんだけども!

ボクとソニアを邪魔するキメラが現れた!

キメラはボクが住む町とソニアが住む町とを繋ぐ橋にいて、ソニアが住む町に移動できないんだ!

「なんてことだ、ソニアへの愛を綴った14枚の便箋‥‥これでは無駄になってしまうではないか!」

誰かどうかお願いだ!

ボクとソニアがらぶらぶハッピーエンドになるためにキメラを倒しておくれ!

※※※

「‥‥うわぁ、またこいつか。しつこい‥‥っていうか相手変えるのはやすぎー‥‥ジェシーはどうした、ジェシーは‥‥」

女性能力者は大げさなため息を吐いて「またもや見事な棒読みだな」と男性能力者が苦笑しながら呟いた。

「だってジェシーが! とか言ってたのは最近じゃない。しかも便箋が14枚に増えてるし。いったい何を書けば14枚も使うわけよ」

「しかも今回もコリオの見事な片思いなのに、相思相愛の文章に見えるのは俺の気のせいなんかじゃないよな」

「今回も‥‥苦労するんだろなぁ」

男性能力者は呟き、同行する能力者のことを思いながらため息を吐いたのだった。

●参加者一覧

藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
神無月 紫翠(ga0243
25歳・♂・SN
ミア・エルミナール(ga0741
20歳・♀・FT
ジェス・レッドフォード(ga3470
25歳・♂・SN
門鞍将司(ga4266
29歳・♂・ER
リゼット・ランドルフ(ga5171
19歳・♀・FT
オーガン・ヴァーチュス(ga7495
40歳・♂・BM
榊 紫苑(ga8258
28歳・♂・DF

●リプレイ本文

「彼女‥‥ソニアの身上は調べたんでしょうね? 彼女、フリーよね?」
 藤田あやこ(ga0204)が今回も同行するコリオに問いかけると「大丈夫さ!」と自分の胸を叩きながら自信満々で答えた。
「ボクがこんなにも好きなんだもの! ソニアがボクを嫌いなはずはない!」
(「また‥‥この人ですか‥‥今回も苦労しそうですね‥‥しかも、言っている理屈が普通じゃない‥‥」)
 神無月 紫翠(ga0243)は小さなため息を吐き、爽やかに笑うコリオを見て、頭が痛くなるような錯覚を覚えた。
「前回、なーにがいけなかったかは、あたしにはよく分かんないけどー‥‥多分何もかもがいけなかったんじゃない?」
 事情はよく知らないけどね、ミア・エルミナール(ga0741)が首を傾げながら呟く。恐らくコリオの全てがいけないというのは正解だろう。
「‥‥そういえば便箋は何枚だったっけ?」
 ジェス・レッドフォード(ga3470)がコリオが大事そうに持っている『らぶれたあ』を見ながら問いかけると「14枚さ! ボクの愛を全てこめたからね!」と空に掲げるように便箋を見せながら答えた。
「14枚も! なんというか‥‥凄い奴だなぁ」
 ジェスは少し苦笑しながら答えると「ソニアへの愛を貫くためにボクは戦うのだ!」と木刀を掲げながらコリオは叫んだ。
「えーっと‥‥コリオさんって片思いなんですよね?」
 リゼット・ランドルフ(ga5171)が門鞍将司(ga4266)に問いかけると「そのようですねぇ」と間延びした声で言葉を返してきた。
「なんか、ちょっと両想いっぽく聞こえたので‥‥春は変の‥‥いえ、恋の季節って言いますし、うまくいくといいですね」
 棒読みでリゼットは呟き「そういえば、ソニアさんの何処を好きになられたんでしょうかねぇ」と門鞍がポツリと呟いた。
「確か黒髪の美人、だったよな? 和風美女っぽくて響きはいいんだけど」
 オーガン・ヴァーチュス(ga7495)が髭を撫でながら呟いた。
「女ねぇ?」
 榊 紫苑(ga8258)がため息混じりに呟くと「おや‥‥あのクセは治ったんですか?」と神無月が問いかけてくる。
「あのクセか? 治るワケねぇだろ、酷くなってないだけまだマシな方だ」
 榊は盛大なため息と共に言葉を返し、能力者達はキメラ退治へと向かい始めたのだった。


〜コリオと書いて懲りない男と読む〜

「ジェ‥‥ソニアーーーっ、アイラブユー!!」
 コリオが住む町を出て、ソニアが住んでいる町へと向かい始めた時、コリオは狂ったかのように叫んだ。最初の『ジェ‥‥』は前回の傷が癒えていないためだと思いたい。
「おいおい、そんなモンを持ってキメラと戦う気か? 一般人にゃ無理だろ。おいら達に任せときな」
 オーガンが苦笑しながらコリオに話しかけると「違わないさ! この愛の炎でボクはキメラを倒すんだ!」と木刀を構えながら言葉を返してきた。
 自分で倒す気があるのなら、わざわざ能力者を呼ぶなよ――きっと、何人かの能力者は心の中で思ったに違いない。
「じゃあ、キメラと戦う前に腕試しだ!」
 オーガンは覚醒し、コリオにかかってこいと挑発すると「行くぞ! ボクのラブソードを受けてみろ!」と勢いよくオーガンに襲い掛かる――が、一般人の中でも貧弱に入るコリオの腕ではオーガンに傷を与えるどころの話ではなかった。
「はい、危ないから没収な」
 オーガンは木刀を白羽取りしてコリオから没収する。
「ボクとソニアの愛を邪魔するのか! なんという事だ! さてはお前もソニアを!」
 ズザッと後ずさりをしながらコリオが叫ぶと「違うって‥‥」とオーガンは相手にするのも疲れたのか、大げさなため息を吐きながら言葉を返した。
「まー、お仕事は完遂するけどね! でもキメラを倒すまでだから、玉砕アタックしてもあたし知ーらない」
 でもその熱情は遠くから見てる分には嫌いじゃないけどね、とミアが楽しそうに呟いた。
「そういえば、ソニアさんの何処を好きになられたのですかぁ?」
 門鞍がニコニコと笑みながら問いかけると「よくぞ聞いてくれました!」とコリオは門鞍の肩を強く掴みながら話し始めた。
「出会いは‥‥彼女がボクが住む町に母親と買い物に来た事が始まりだった‥‥。そしてボクと目が会って‥‥運命と感じたね! ジェシーなんぞより数倍も可愛い子供らしさを残す女性だ!」
 熱く語るコリオだったが、はっきり言って半分も聞いている能力者はいなかった。
「そうなんですか、それはどうでもいいんですけど‥‥戦闘中は危ないので前線に出ないで下さいね」
 リゼットがにっこりと笑顔でコリオに話しかけると「えぇ! それは‥‥」とコリオは焦ったように呟いた。
「怪我をしたりしたら、折角書いたラブレターが無駄になってしまうけど‥‥いいの? ソニアさんにも会えなくなるけど、いいの?」
 リゼットの言葉に「それは困る! ボクは大人しくしているよ!」と親指をグッと見せてコリオは言葉を返した。
 春という事もあり、コリオの頭の中も春満開のようだ。
「‥‥っと、もしかして人の恋路を邪魔して馬に蹴られるのはアイツかぁ?」
 オーガンが橋の前で立ち止まり、指差すと狼を大きくしたような獣型のキメラが此方を見て唸り声を上げていた。

〜戦闘・コリオの愛のために! 〜

「はい、練成強化と練成弱体を使うから前衛や中衛の人は頑張ってね!」
 藤田が『練成強化』と『練成弱体』を使用しながら能力者達に向けて話しかける。
「私も『練成強化』をしますねぇ、あと‥‥怪我をされた方はぁ、私が治療しますからねぇ」
 門鞍も『練成強化』を能力者に使用しながら話しかける。
「はい、お前はこっち」
 どさくさに紛れて前衛に向かおうとするコリオの襟首を掴みながら榊が呟く。
「どうやら、一体のようだな? あ〜‥‥後ろが賑やかだが無視だ。援護はしてやるから、思いっきりやれ」
 神無月が長弓『黒蝶』を構えながら低く呟く。
「突撃、いっきまーす!」
 ミアは『バトルアクス』を振り回しながらキメラへと駆け寄る。神無月の矢がキメラへと突き刺さり、動きが止まった所をミアが『流し斬り』を三連続で使用して、キメラにダメージを与えた。
「さて、一般人と能力者の違いをよく目に焼き付けててもらおうか」
 ジェスは呟くと覚醒を行い『鋭覚狙撃』『強弾撃』『狙撃眼』を使用して援護射撃を行った。
「コリオさんが手をつけられなくなる前に一気に片付けてしまいましょう」
 リゼットは呟くと『豪破斬撃』『急所突き』を使用して攻撃を行った。
「ほいっとぉ! 受けってのは防御だけじゃないんだぜぃ!」
 オーガンは叫び、自分のところに向かってきたキメラの攻撃を避け、そのまま掴んで前衛陣のところへと放り投げた。
 能力者達の所に放り投げられたキメラは、投げられた際に足を痛めたのかうまく立てず、能力者達の攻撃を避ける事も出来ずに受けてしまう。
「おおおお、早く倒してくれ! ボクとソニアのために〜〜〜♪」
 最後は歌になっているような気がするが、ここはあえて突っ込む事はしないでおこう。
「コリオさん、大人しくして‥‥私にとって貴方は大事な人なんですから‥‥」
 藤田が困ったように呟くと「ええぇ! ボクにはソニアが!」と妙な勘違いを起こして叫びだす。
 ちなみに藤田の言った『大事な人』=『報酬が支払われない』という意味であり、コリオの考えているような意味ではなかった。
 その後、能力者達はキメラを打ち倒し、ソニアの住む町へとコリオを送り届けたのだった。

〜コリオ・愛の(現実)逃避行〜

「ああああ、今回もフラれてしまったらどうしよう!」
 町に到着したものの、コリオはうろうろと歩いているだけでソニアの所に行こうとはしなかった。
「男なら‥‥当たって、砕けろ」
 神無月が背中を押しながら呟くと「この前砕けたよ!」とコリオが涙目で叫ぶ。
「男だろ、早く言って来い!」
 ジェスもじれったいのかコリオの背中をバシンと強く叩きながら後押しをしてやる。
「これをソニアさんにあげなさいな」
 藤田がぬいぐるみを渡しながら「頑張って」と言って励ます。
「わかった。行ってくるよ! ソニアーーーーッ!」
 ちょうどソニアを見かけたのか、コリオは走ってソニアの所へと向かっていった。

「そ、ソニアさんって‥‥」
 そのとき、能力者達が見たものは‥‥幼稚園の制服に身を包み、黄色い帽子を被っている立派な―――幼女だった。
「は、犯罪じゃん!」
 ミアが思わずツッコミをいれると「‥‥誰でもいいんじゃねぇの?」と榊がため息混じりに呟く。
「あー‥‥母親が何かコリオに言ってるみたいだぞ」
 ジェスがコリオの状況を能力者に伝えると「え? うそ」と他の能力者達も物陰から様子を見る。
「状況から察するにぃ‥‥『うちの娘に何してんのよ!』と言ったところでしょうかぁ」
 門鞍がにこにこと笑みを絶やさないように呟くと「笑い事じゃないんじゃない?」とリゼットが苦笑しながら言葉を返した。
 そして数十分後、すごすごと戻ってきたコリオは「うわああああん!」と大きな声で泣き始めた。
「まぁ、当然だろうな」
 榊が呟くと「別に女なんていいじゃねぇか」とコリオの肩をポンと叩きながら慰めた――のが災いした。
「榊くん、ボクを哀れに思うなら嫁にもらってえええええ!」
「はああっ!? 嫁!?」
 二度目の失恋のために頭がおかしくなってしまったのか、榊は「嫁にしてくれ!」と叫び続けるコリオに町中を追い掛け回される羽目になった。
 それを見て能力者達は誰も止めなかった。その理由は『止めた奴が次の犠牲者』だと分かっているからだ。
 それから何とかコリオをロープで縛って町まで届けると、能力者達はコリオから逃げるかのように本部へと帰還したのだった。
「疲れた‥‥。神無月、飲みにいくから、付き合えよ。久しぶりに会ったんだ。積もる話は尽きないだろう? むしろ俺の話を聞いてくれ」
 榊が神無月に問いかけると「いいですけど‥‥ざるじゃないですか、あなたは‥‥」と苦笑しながら言葉を返し、二人は飲みへと出かけたのだった。

 こうして今回、榊は『女性アレルギー』の他に『コリオアレルギー』にもなってしまったのだった。

END