タイトル:初心者教育係募集!マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/04/23 00:15

●オープニング本文


誰にだって『始まり』はある。

そして、その『始まり』を怖がる初心者達に一歩を踏み出すための手伝いをしてほしい。

※※※

「初心者教育係? 何これ」

女性能力者が本部に貼られていた紙を見つけて、小さく呟いた。

「あぁ、何か初心者を集めて戦い方とかを教えるみたいだぜ」

しかも此処を見てみろよ、と男性能力者は紙の一番下を指差した。

「何? 取材申し込みがあったのでクイーンズ記者・土浦 真里も訓練を見学&取材する――わぁお」

「あの破天荒娘まで来るらしいから、この訓練‥‥何か起きなきゃいいけどな」

男性能力者は笑いを堪えながら呟き、それを見た女性能力者も「そうね、きっと何か無茶を言うわね」とマリの行動を予想し始めていた。

「どもーっ! マリちゃんでぇーっす。今回は取材許可をありがとうございま〜す!」

マリが本部内に響き渡るような大きさの声で叫んだ。

「噂をすれば、なんとやらね」

「相変わらず無駄に元気だよな、どんな目にあっても取材は止めないらしいし。能力者に迷惑掛けまくりな記者ってあいつくらいじゃないのか?」

取材が出来るという事でいつもよりさらに元気なマリを見て、その場にいた能力者達はため息を吐いたのだった。


●参加者一覧

神無月 翡翠(ga0238
25歳・♂・ST
アヤカ(ga4624
17歳・♀・BM
風間由姫(ga4628
17歳・♀・BM
キョーコ・クルック(ga4770
23歳・♀・GD
カルマ・シュタット(ga6302
24歳・♂・AA
番 朝(ga7743
14歳・♀・AA
乾 幸香(ga8460
22歳・♀・AA
柊 理(ga8731
17歳・♂・GD

●リプレイ本文

「初心者教育ねえ? 教えるのは、いいが‥‥自己流だぞ? 俺」
 神無月 翡翠(ga0238)が苦笑しつつ呟くと「大丈夫じゃないかニャ?」とアヤカ(ga4624)が言葉を返してきた。
「能力者の皆も最初から訓練してなった人はそんなにいないと思うしニャ〜☆」
「そうですよ、それに経験豊富な方から学ぶものは多いと思いますし」
 風間由姫(ga4628)が穏やかな笑みを浮かべて神無月に話しかける。
「そうそう、それに此処で学んでもらって新人の依頼失敗と負傷が少しでも減らせたらいいよね」
 キョーコ・クルック(ga4770)がメイド服を翻しながら笑って呟いた時「まだ遅刻じゃないよな!?」と番 朝(ga7743)が走りながら訓練場へとやってきた。
「初めまして! 俺は『番朝』だ、宜しくな!」
 元気、そして満面の笑みで挨拶をする番に「此方こそ宜しくお願いしますね」と乾 幸香(ga8460)も笑顔で言葉を返した。
「今回、俺は長柄の武器講座をする事になった、宜しくな」
 カルマ・シュタット(ga6302)が呟きながら挨拶をする。
「ボクも先日、初仕事を終えました柊 理(ga8731)です。経験は浅いですが宜しくお願いします」
 柊はぺこりと丁寧に頭を下げながら挨拶をして、訓練を受ける者が全て揃―――‥‥。
「ちょっと待ってええええっ!」
 がしゃがしゃと大荷物を抱えて入ってきたのは、今回の訓練を取材したいと申し出ていた土浦 真里(gz0004)だった。
「遅れてゴメン! 今回、みんなの取材をさせてもらうクイーンズ記者のマリでっす!」
 敬礼のような真似をしながらマリが挨拶をして、訓練を開始したのだった。

〜訓練開始!〜

 前衛班の講師はキョーコ、カルマの二人で回避の講師としてアヤカが入っていた。

「みんな、動きやすい格好になってるニャよね?」
 アヤカが呟くと、風間や柊を含む数名の能力者達は「はい」と言葉を返した。
「まずは皆で柔軟体操をするニャ〜☆ やっぱり体が柔らかい方が回避では有利ニャからね〜☆」
 アヤカは見本を見せながら柔軟体操を始め、風間と柊も柔軟体操を始める。風間もビーストマンなので素早く動ける方なのだが、効率の良い回避を教えてもらう為に『教えてもらう』側で参加していた。
「次はダッシュやスクワットなんかをやるニャね〜☆ 基礎体力があった方が素早い動きが出来るニャからね〜☆」
 アヤカの言葉を聞き漏らす事なく、風間は覚えていき、スクワットなどをしていく。
 そしてスクワットなどの基本運動が終わった後、アヤカはテニスボールを持ち出してきて「次はコレを避ける訓練ニャ☆」と言って生徒達に向けて投げていく。
 決まった動きではないので、常に避ける動作を意識しておかないといけないため、うまくいかない能力者もいた。

「あっちはあっちでキツそうだね〜」
 キョーコは新人の指導を行いながら、アヤカ達の方を見て小さく呟いた。
「剣の握り方はこうだよ、もっと腰に力を入れないと武器に振り回されちゃうよ」
 キョーコが『蛍火』を構え、それを能力者に見せていく。同じような握り方に見えるが、少しの違いが実戦では大きな差となる。
「なるほど‥‥武器に振り回される、と」
 乾はキョーコの言葉をメモに書き写しながら納得したように呟く。
「がむしゃらに突っ込むだけじゃ、後衛が支援しづらいから時には引いてみるのも手だと思うよ」
「引いてみる、とはどういう事でしょうか」
 乾が問いかけると、 キョーコが「たとえば」と言って、一人の能力者に攻撃を仕掛ける。もちろん相手が怪我をしないように直撃する寸前で武器は止めている。
「こういう状況で暴れてても、後衛が狙いを定めづらいよね? だから後ろに下がったり、横に移動したり、後衛が支援しやすい状況にして、支援がきたら攻撃をする――とか。こっちの方が断然効率がいい戦い方だと思うよ」
「突っ走るだけが戦いではないという事ですね」
 乾が呟くと「そういう事だね」とキョーコは言葉を返した。
「習うより慣れろって言うからね〜、口でどうこう言うより実際にやってみた方がよく分かるよ」
 キョーコが『蛍火』を構えながら呟くと「手解き、宜しくお願いしますね、キョーコさん」と乾も答え『バスタードソード』を構えたのだった。
「あ! 先に言っとくけどカメラとかで撮らないでくれるか?」
 キョーコの所で訓練待ちをしている時、マリに手合わせでお願いをしているのは番だった。
「えぇぇぇ〜〜〜‥‥‥‥」
 思い切り不満そうな表情と声でマリが言葉を返すと「頼むよ〜」とさらにお願いをしてくる。
「むぅ、全く‥‥というのは無理! っていうか断る! せめて遠目くらいだったらいいよね? むしろ拒否権なし!」
 あははは、といつもの俺様性格でマリは言葉を返すと、番の返事を待たずに「訓練頑張れーーー」と言って何処かへと行ってしまった。

 続いてキョーコ達から少し離れた場所で訓練をしているのはカルマの班だった。カルマは自身の得意武器である『槍や棍棒』などの長柄の武器の扱い方、敵への対処法などを教えていた。
「基本的には剣などの武器に対して長柄の武器は有利だ。剣道三倍段とも言うしな」
 カルマに教わっている能力者達は真剣に聞き、自分が持っている槍などの武器を見ていた。
「槍での基本戦術は『突く事』ではなく『払うこと』だ」
 カルマが説明していると、柊が「槍なのに?」と言葉を返してきた。
「突く事は僅かに逸らすだけで、隙が生まれてしまうからあまり良い方法ではない。後、敵は長柄の武器を扱う者に対して狙うのは懐に入る、という事だ。故にいかに相手を近づけさせないかが重要になる」
 柊は「なるほど」と納得したように呟いた。
「敵に接近された時は後退する、もしくは柄の部分で攻撃するのもいいな」
 そしてカルマは武器の射程を円にして床に書き、円の中に敵が入ってきたら迎撃する――という練習法を提案した。
 もちろんキメラがいるわけではないので、能力者同士が交代で練習する事になった。
「怪我をしたら元も子もないから気をつけるようにな」
 カルマが呟くと「はい」と柊を含む能力者達は答え、練習を開始したのだった。

「あ〜‥‥戦闘系は俺以外のプロに聞けよ? 詳しくないんだからさ」
 神無月は自分の所に集まってきた支援系の能力者達に向けて言葉を投げかけた。
「後衛で一番大切なのは状況をよく見ることだな、仲間が苦労しているようならサポート、援護、回復は早めにする‥‥とか。後で間に合わなくなるよりはマシだからな」
 神無月が説明をしていると「ゴッド〜、真面目じゃ〜ん」とマリが茶化すように話しかけてきた。
「何だよ、俺が真面目なのは、意外か? 仕事の時は真面目だぜ‥‥そうしないと、やばいからな、色々」
 神無月は遠くを見ながら言葉を返してきた。
「意外ってワケじゃないんだけどさ、みんな真剣だなぁって」
 マリが訓練をしている能力者達を見渡しながら呟く。
「‥‥こういうとき、能力者が少しだけ羨ましいなぁ」
 ポツリと呟くと「これ以上のじゃじゃ馬は勘弁してくれ」と言葉を残し、訓練生の所まで歩いていった。

「はい、次!」
 蛍火を振り下ろしながらキョーコが呟き、次の訓練を受ける番を呼ぶ。
「宜しくお願いします!」
 番は叫び『バスタードソード』を構えてキョーコに攻撃を仕掛ける。しかし簡単に攻撃をいなし、キョーコが隙を突いて攻撃を仕掛けた。
「力みすぎてるから攻撃をいなされた時にバランスを崩しちゃうんだよ〜」
 もうちょっと力を抜いて攻撃してみなよ、キョーコがアドバイスをするが「むー‥‥よくわかんない」と首を傾げながら番が言葉を返した。
「こんな感じ、でね!」
 キョーコが見本を見せると「あぁ、なるほど!」と呟いて番は言われた通りの動きをして見せた。
 番は口で言われると体現しにくいが、実際に見せてもらったものに関しては飲み込みが早い。よほどの集中力を持っているのだろう。
「目の前ばかりに気を取られてて、足元がお留守だよ」
 キョーコは呟くと同時に足をかけて番を地面へと転ばせた。
「あ、ズルい!」
 番が立ちながら言うと「実戦は何があるかわかんないんだよ?」とキョーコが苦笑しながら言葉を返した。
 その後も悪戦苦闘しながら番はキョーコに教われる事を全て教わり「お疲れさんでした」とその場に座り込みながら呟いたのだった。

「次は組み手ニャ〜☆」
 キョーコたちの訓練が終了した頃、アヤカが楽しげに叫ぶ姿が見受けられた。
 同じく訓練を終えたカルマもアヤカの回避講座を見ていた。
「あ、乾さん、取材いいかな〜?」
 マリが乾を呼び止めると「何でしょうか?」と振り返りながら言葉を返した。
「能力者になった事について、何か聞かせてもらえないかな〜?」
 マリが問いかけると「そうですねぇ‥‥」と少し考え込みながら呟き始めた。
「能力者になるなんて夢にも思ってなかったけれど‥‥なった以上、平和になるまでどんな事があっても生き残って、いつか本当の自分の夢を掴みたいと思っています」
 にっこりと穏やかな笑みを浮かべて乾は答えた。
「はぁ‥‥何でうまくできないんだろう‥‥」
 とぼとぼと呟きながらやってきたのは柊、表情は浮かないもので訓練が思うように出来ないのだろう。
「どしたい、若者がため息なんか吐いちゃって」
 マリが問いかけると「お手本通りには動いていたんですが、うまくできなくて‥‥」と苦笑しながら柊は答えた。
「最初はそんなもんじゃないかな? 能力者になれたんだから、頑張れば強くなれるよ‥‥って能力者じゃない私が言うのも変だけどさ」
 頭を掻きながらマリが言うと「いえ、ありがとうございます」と柊は答えて回避訓練見学に向かったのだった。
「今回の取材はどうだった〜?」
 マリが現場撮影や現場メモをしている時にキョーコが話しかけてくる。
「何かいつもと違う雰囲気だから結構キンチョー」
「はは、ああいうの見てると自分が能力者になりたてだった時を思い出すね〜。大きな作戦もあるみたいだし、役にたてていたらいいんだけど」
 キョーコが呟くと「そうだね」とマリは言葉を返した。

 その後も訓練は続き、帰る時間になった頃には新人&ベテラン含めてへとへとになった姿が見受けられたらしい‥‥。


END