タイトル:鉄と錆色の街マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/04/11 23:02

●オープニング本文


錆色の街、隣町の住人はその街の事をそう呼んでいた。

※※※

「この街はキメラに襲われて、人が避難して‥‥現在の住人はゼロ、なのね」

女性能力者は仕事の内容を示すものを読みながら小さく呟いた。

「元々は炭鉱とかあった場所みたいだけど、廃れたせいもあって人はいないんだろうな」

「直接的な原因は過去に現れたキメラのせいみたいだけどね、今回も現れたみたいだし‥‥退治する為に能力者を集めているみたいね」

女性能力者に「何でまた現れたんだろうな」と男性能力者がポツリと呟く。

「さぁ、キメラやバグアの考える事なんて理解しかねるから分からないわ」

今回のキメラ、それは崩れやすくなった炭鉱の中に現れると報告されていた。

「報告、誰からだ?」

「偶然通りがかった能力者みたいよ。錆色の街の隣にある町のキメラ退治に向かう途中で見つけたらしいわ」

その能力者は依頼されたキメラを倒した後、今回の問題になっているキメラも退治に向かったのだが崩れやすい炭鉱の中で戦闘‥‥という事もあり、無理な戦いが出来ずに本部へと帰還してきたのだという。

「男性型のキメラみたいね、素早くて攻撃が当たらなかったとか言っているらしいわ」

女性能力者の言葉に「崩れやすい、か‥‥厄介だなー」と男性能力者は言葉を返したのだった。

●参加者一覧

九条・命(ga0148
22歳・♂・PN
神無月 紫翠(ga0243
25歳・♂・SN
威龍(ga3859
24歳・♂・PN
クラウド・ストライフ(ga4846
20歳・♂・FT
朏 弁天丸(ga5505
18歳・♀・EL
八百 禮(ga8188
29歳・♂・DF
夜十字・信人(ga8235
25歳・♂・GD
紅 アリカ(ga8708
24歳・♀・AA

●リプレイ本文

「え? キメラについて?」
 朏 弁天丸(ga5505)はキメラ退治に向かう前、最初にキメラを発見した能力者と会っていた。
「知りたい事がいくつかあるのじゃ、キメラの攻撃方法と炭鉱内の地図などあると助かるのじゃが‥‥」
 朏の言葉に、男性能力者は「うーん」と呟きながらキメラと対峙していた時の事を思い出そうとする。
「攻撃方法は簡単なモノで、殴るとか蹴る‥‥そんな感じだったな、炭鉱内については入り口付近での戦闘だったから役に立てないや、悪いな」
 男性能力者が申し訳なさそうに呟くと「いや、気にする事はない」と朏は言葉を返す。
「あ、炭鉱内に電気はあったかだけ知りたいんだけど、分かるかえ?」
 去り際に問いかけると「ライトとかはあったけど、切れているらしくて真っ暗だった」と男性能力者は答えた。


「‥‥という事でライトは必需品のようじゃな」
 借りてきた懐中電灯を配りながら、知り得た情報を、今回一緒にキメラ退治を行う能力者達に伝えた。
「宛らダンジョンの奥に潜む、怪物‥‥これで金銀財宝でもあれば、意気があがるのですが‥‥」
 八百 禮(ga8188)が苦笑しながら小さく呟くと。
「相手は素早い人間型のキメラか、相手にとって不足ナシだな」
 威龍(ga3859)も拳を作りながら深呼吸をして呟いた。
「場所は崩れやすい炭鉱か‥‥火器の無駄撃ちは避けたいな。全く‥‥中々面倒な所に現れてくれる」
 九条・命(ga0148)はため息混じりに呟くと申請した炭鉱内の地図を見て、戦闘が出来る場所を見つけていく。
「人型の男性型ですか‥‥しかも素早いですか? 厄介ですね‥‥」
 神無月 紫翠(ga0243)がポツリと呟く、今回の戦闘は無理な場所で、無理の出来ない戦闘を強いられている為、能力者達も少しだけ気が重かった。
「‥‥先発班と後発班は15分程の時間差でよかったんですよね?」
 紅 アリカ(ga8708)が問いかけると夜十字・信人(ga8235)が「あぁ」と短く言葉を返した。
 炭鉱内にいる男性型キメラが外へと逃げ出してしまわぬように、能力者達は『先発班』と『後発班』の二つに班を分け、男性型キメラを挟み撃ちにするような形で戦闘を行う事にしたのだ。
 先発班・紅、夜十字、威龍の三人。
 後発班・九条、神無月、朏、八百の四人。
「それじゃあ、行くとしましょうか」
 八百が呟き、能力者達は問題の炭鉱へと向かい始めたのだった。


〜先発班・キメラと出会い、誘導〜

「キメラを発見したり、崩落しやすい場所を見つけたらこいつで連絡する」
 威龍は手に持った呼笛を後発班に見せながら呟き、紅、夜十字と共に炭鉱内へと入っていった。
 中は暗く、渡された懐中電灯が役に立ったな、などと考えながら三人は炭鉱の中を歩いていった。
「‥‥確かに、この炭鉱の脆さは母親のワカメプリン並に曲者だな」
 炭鉱内を歩いている途中で夜十字がポツリと呟く。
(「‥‥ワカメプリン? そんなものがあったかしら?」)
 紅は心の中で呟き、威龍は目を瞬かせながら「何だ? それは‥‥」と夜十字に問いかける。
「いや、何でもない」
 夜十字はポツリと言葉を返し、歩く足を再び動かし始めた。
(「何でもない‥‥っていうか、結構気になるぞ、ワカメプリン」)
 威龍は心の中で夜十字にツッコミを入れるが、キメラを探して退治する事が先決だと考え、口から出掛かった言葉を飲み込んだ。
「‥‥ここ、崩落しやすそうですから、戦闘は控えたい所ですけど‥‥」
 紅がポツリと呟き、少し間を置いてからため息を吐いた後に「‥‥無理そうですね」と少し先を指差しながら呟いた。
 紅の指す先にいるもの、それは今回の標的である『男性型キメラ』だった。
「まずい、な――此処での戦闘はさすがにデメリットが多すぎる」
 そう呟き、威龍は地図へと視線を落とす。男性型キメラも此方の出方を伺っているのか、まだ動く様子は見せない。
「この先を少し進めば広い場所へと出る、そこは少し補強された場所みたいだから、多少の戦闘なら出来るはずだ」
 その場所に向かうためには男性型キメラの奥へと行く必要がある。三人は覚醒を行い、男性型キメラを攻撃し、奥側へと走り出した。
 攻撃された事で、男性型キメラも三人を追いかけ、奥側へと向かって一緒に走り出す。
 その途中で、後発班へ急を知らせるため呼笛を吹き鳴らし、予め打ち合わせた指定場所へと向かうのだった。


〜後発班・男性型キメラを挟み撃ちにして退治せよ〜

「威龍の呼笛が聞こえてからだいぶ経つが――その後一向に音沙汰が無いな」
 九条が先を急ぎながら呟く。
 先発班からの呼笛がかすかに坑道内に木霊してから10分程度が経過しようとしていた。
「ほとんどが一本道なので‥‥キメラに逃げられる事はないと思いますが‥‥先発班はどうなっているんでしょうね?」
 神無月がポツリと呟くと「激しい物音はしないから‥‥どうなっているのでじゃろうな」と朏が炭鉱内を見渡しながら言葉を返す。
「‥‥しかし、住人がいなくなる事でかつての生活空間も死ぬわけじゃ‥‥物悲しいような、薄ら寒いような‥‥」
 錆色の街とはよく言ったものじゃ、朏は言葉を付け足しながら歩く足を更に少しだけ速めた。
「ですが‥‥視界が悪いですねぇ‥‥真っ暗、とまでは行きませんが、照明器具がこれだけでは少し厳しい戦いになりそうですね」
 八百が懐中電灯で炭鉱内を照らしながら呟く。ヘッドライトを借りる予定だったのだが、貸し出しが許可されず、仕方なく懐中電灯で戦いに赴く事になったのだ。
 無線機の借用も申請していたのだが却下された――地下の坑道内で普通の無線は通じないと言うことらしい。
「もうすぐ、先発班と打ち合わせていた場所なんだが――戦闘の形跡がひしひしとあるな」
 九条がランタンで地面を照らすと、不自然に存在を主張している穴がいくつか見受けられる。
「先発班は何処に――‥‥」
 八百が呟くと「危ない!」と威龍の声が聞こえる――と同時に男性型キメラが正面から攻撃してくる姿が見えた。
 八百は男性型キメラの蹴りを紙一重で避け、カウンターとして『刹那の爪』で攻撃を仕掛けるが、男性型キメラはそれを避けて少し後退する。
「形としては理想の追い込み方なんだけどな、さて‥‥どうなる事やら」
 九条は呟き『砂錐の爪』で攻撃しようと、男性型キメラに向かって走り出す。最初は拳で攻撃を行うが、それは簡単に避けられてしまう。
 もちろん、九条は避けられる事を想定して攻撃したのだから予想の範囲だった。彼が狙った本当の攻撃は――靴に取り付けた『砂錐の爪』での攻撃。
 そして九条に対して反撃を行い、一瞬だけ反応が遅れた男性型キメラは九条の攻撃をまともに受けてしまい、地面に膝を付く。
「ほら、暇そうにしている場合じゃないだろう?」
 神無月が覚醒をして、長弓『黒蝶』で男性型キメラの足を射抜く。膝をついていた分、反応が遅れた男性型キメラは避ける事なく、右足に神無月の放った矢が突き刺さった。
「同情はせぬよ、これがわらわ達の仕事じゃでの‥‥」
 朏は呟くと同時に男性型キメラに向かっていく――が、右手で朏を殴りつける。
 だが、能力者達の攻撃で力が少し弱ってきているのか、倒れこむほどのダメージではなかった。
「そのままでお願いします」
 朏が男性型キメラの両腕を封じている時に、八百が呟き『刹那の爪』で男性型キメラの背後から攻撃を仕掛ける。
 攻撃を受けると同時に男性型キメラは朏を突き飛ばし、逃げ出そうとするが7人の能力者によって退路は断たれていた。
「‥‥貴方の速さには慣れました」
 紅がポツリと呟くと『クロムブレイド』を構え『流し斬り』で男性型キメラを攻撃する。
「確かに、脆い炭鉱内での戦闘は簡単ではない――が、それなりに場数は踏んできたつもりだ」
 九条は呟き、よろけている男性型キメラに向けて蹴り攻撃を行った。
「それには同感だな」
 威龍は呟き『疾風脚』を使用して男性型キメラより早く動き『ディガイア』で攻撃を仕掛ける。
「‥‥‥‥神にでも祈れ‥‥」
 男性型キメラが地面に倒れこんだ時、夜十字が男性型キメラの頭に『フォルトゥナ・マヨールー』の銃口を押し当て、呟くと同時に発砲したのだった。


〜終わり、崩落する炭鉱からの脱出〜

「‥‥半人前の身分だが‥‥少しは役に立てたか?」
 キメラとの戦闘が終わった後、夜十字が安堵のため息を吐きながら呟いた。
「‥‥無事に倒せて何よりですね」
 紅が言葉を返した時、炭鉱内に地響きのような音が響き渡る。
「まさか‥‥崩れるんでしょうかね?」
 神無月が天井を照らしながら呟く、天井からは砂のようなものが落ちてきていて、映画やドラマの中だったらこの後で天井が落ちてきたりなどする‥‥そんな感じだった。
「落ち着け、こういう時はパニックに陥らなければ最悪の事態にはならない」
 九条が様子を見つつ呟くが、天井は今にも落ちてきそうで能力者達は慌てて来た道を戻り始めたのだった。

「ふう、危うく生き埋めになる所でしたね?」
 あれから十数分の時間をかけて炭鉱から出て、その数分後に炭鉱は入り口もろとも崩れて埋まってしまった。
「埋まって、良いお墓のようですね?」
 微笑を湛えながら神無月が呟くが、その笑顔がどこか怖いものに見えてしまう。
「その笑顔が怖いぞ、神無月」
 威龍が苦笑しながら小さく呟くと「そうですか?」と神無月が言葉を返した。
「‥‥人がいなくなれば、こんなにも脆いものなのじゃな」
 神無月と威龍が声の方に視線を向けると、朏が崩れ落ちた炭鉱を見ながら、しんみりとした表情で呟いているのが視界に入ってきた。
「無事にキメラも倒せましたし、良かったといえば良かったのですが‥‥炭鉱は崩れてしまいましたね」
 恐らく、炭鉱自体もぎりぎりの所で保っていただけのことなのだろう。多少の戦闘にも耐えられないほど、炭鉱内部は老朽化していたのだ。
「さて、カレーも食えん場所からは早々に退散するに限るな」
 夜十字が呟くと「‥‥カレー、好きなんですね」と紅がポツリと呟いた。

 その後、能力者達はキメラ退治の報告を行うために本部へと帰還していったのだった。


END