●リプレイ本文
「榊 刑部(
ga7524)と申します。まだまだ未熟者ゆえ足を引っ張るやもしれませんが、何とぞ宜しくお願いします」
丁寧な口調、そして丁寧に頭を下げながら榊が今回の仕事を共にする能力者達に挨拶をした。
「此方こそ、宜しくね? 今回の相手はラミア‥‥だったわね。伝説の生物だと思っていたけど、厄介な相手には違いないわね?」
神森 静(
ga5165)が榊に言葉を返し、今回の敵を思ってため息を吐く。
「そういえば‥‥資料では今年の初め頃にもラミアと呼ばれたキメラが退治されたようじゃな」
思い出したように呟くのは朏 弁天丸(
ga5505)だった。
確かに今年の初めにもラミアと呼ばれたキメラが能力者によって倒されている。今回の『ラミア』と違うのは、前回のラミアは人面大蛇であり、今回のような人型部分は無かったという事だ。
「能力とかが明確にされてないから、対処に困るかもしれないな‥‥」
デル・サル・ロウ(
ga7097)が呟く。ラミアと聞くだけでもいくつかの能力の予想は出来るが、すべてに気を回していたら思うように戦えないかもしれない。
そして一番厄介なのは『魅了』の能力を持っていた場合だ‥‥。
「ラミアって確か伝説上では綺麗なおねーサンだったっけ? どのくらいの美人サンなんだろーね」
考えながら呟くのはラウル・カミーユ(
ga7242)だった。
しかし、彼には一つだけ絶対の自信が存在した。
「僕の自慢の妹が絶対勝ってると思うけどネ! 美人サン度!」
グッ、と親指を立てて満面笑顔で彼は呟く。
「ま、まぁ‥‥ラミアの美人度は置いておくとして、古代ギリシャ神話に伝わる蛇の化け物――‥‥相手にとって不足は無いな」
八神零(
ga7992)は話すと「半分とはいえ‥‥人型キメラかぁ‥‥」と不二宮 トヲル(
ga8050)がポツリと小さく呟いた。
「‥‥人型キメラとは戦いにくいのか?」
サイオンジ・タケル(
ga8193)が不二宮に問いかけると「大丈夫です、退治します‥‥必ず」と彼に言葉を返した。
「そういえば情報収集を行ったのですが、ラミアの出現地点は森の中央部分のようですね。毎回同じ場所ではないのですが、中央部分での目撃情報が多かったです」
榊が情報収集で得た情報を書いたメモを見ながら能力者達に話していく。
「なるほど、ならば行動班を二つに分けたのは正解じゃな」
朏が小さく呟く。
今回の仕事を成功させる為、能力者達は班を二つに分けて行動することを選んだ。
A班・神森、ラウル、八神、サイオンジの四人。
B班・デル、榊、不二宮、朏の四人。
お互いの班で連絡が取り合えるように、通信機を前もって借り受けてきていた。
「じゃ、ラミア退治に出発しようか」
ラウルが呟き、能力者達はそれぞれの班で行動を開始したのだった。
〜ラミアの捜索・A班〜
「ウルス‥‥という言葉を知っては‥‥いないよな、キメラだし‥‥」
ラミア捜索を開始して、B班と離れた頃にサイオンジがポツリとため息混じりに呟く。
「ウルス? それは何だ?」
八神がサイオンジに聞き返すと「俺にもわからない‥‥」とサイオンジは言葉を返した。
サイオンジは一部の記憶に障害を持っていて、自分の名前と出自、そしてウルスという言葉だけが彼の中に残っていたものだと言う。
「残念ながら私には分からないわね‥‥」
神森が呟く、そしてラウルも「僕もわからないヨ」と眉を下げながら言葉を返した。
「いや、いいんだ‥‥まずはラミアを探し、倒す事に専念しよう」
サイオンジは呟き、ラミア捜索を再開し始めたのだった。
榊の情報通り、森の中央辺りまでやってきたのだがラミアの気配は感じられない。
「中央といったらこの辺りなんだけど‥‥ラミアらしきキメラは見かけないわね」
神森が周りを見ながら呟く、確かにシンとした様子で何かが潜んでいる気配はない。
「森といっても広いからな‥‥B班側の方に潜んでいるかもしれないな」
八神が呟き、B班に連絡を入れてみたのだが向こう側もラミア発見はしていないらしい。
「奇襲攻撃とかに備えた方がいいかもしれないネ」
ラウルが呟き、周りへの警戒を更に強めたのだった。
〜ラミアの捜索・B班〜
「中央部分へ行くにはこの方角で大丈夫だ、ここをまっすぐ行けばいいだろう」
デルが予め用意していた森の地図を見て、方位磁石を使いながら前方に指示を出していく。
「向こう側の班から連絡がありましたが、ラミア発見には至っていないようです」
榊が小さく呟く。
「この森は奴の縄張りじゃろうからの、気配を隠して行動、などとしているやもしれぬ」
朏が呟き、周りを見渡す。
「ラミアと言えば、王道的な能力は魅了でしょうか、あと蛇なだけにシュルッと動きが早いとか、毒とか‥‥」
ぶる、と体を震わせながら不二宮が呟く――その時に何かがガサガサと近寄ってくる音が響いた。
「構えろ、恐らく奴だ!」
デルが叫ぶと同時に2メートル弱の大きさのラミアが現れた。
能力者達が攻撃態勢に入ると同時に通信機でA班に場所とラミアを発見したことを伝えた。
最初に攻撃を行ったのはデルで『鋭覚狙撃』と『強弾撃』でラミアの腹を狙って撃つ。
もし魅了の能力を持っていた場合の事を考え、ラミアの顔を見る事は避けたのだ。
「はっ!」
榊は声と同時に『フロスティア』でラミアに攻撃を行う――が、ラミアは素早い動きで榊の攻撃を避けた。
一方の班では少し戦いにくいと不二宮が心の中で呟くと、運よくそこへA班が合流し、今回の能力者全員で戦う事になった。
「‥‥人の姿をしてても、何が相手でも戦う。大切な人を守る‥‥覚悟の為にっ!」
不二宮は『疾風脚』と『急所突き』を使用して『スコーピオン』でラミアに攻撃を仕掛ける。
「あらあら―――やはりデカイか、お呼びじゃないんだ‥‥退去願おう」
呟く途中で神森が覚醒して『蛍火』で攻撃を仕掛ける。不二宮の攻撃のあとで防御するのに間に合わなかったラミアは神森の攻撃を受け、後ろの木に強くぶつかり、苦しそうな表情を見せた。
「さて、わらわも動こうか、変な所ばかり見惚れていると生きて帰れぬぞよ」
朏はからかうように能力者達に向けて呟き『ドローム製SMG』で『強弾撃』を使用してラミアに攻撃を仕掛ける。
「おっと、やはり怪力任せでの戦闘を得意とするか‥‥しかし、そんなに隙を見せて勝てると思うかえ?」
朏はもう一撃ラミアに与え、そして下がる。
ラミアの攻撃方法としては素早さと怪力に頼った攻撃だったが、腕を大きく振り上げる攻撃のために動作が大きく、避ける事もたやすかった。
「やっぱり妹の方が美人サン!」
ラウルは呟き『鋭角狙撃』と『強弾撃』を使用してラミアに攻撃を仕掛ける。
「僕のコト、魅了したかったら妹以上に美人サンでお願いしまス――無理だろうけどネ」
ラウルは可笑しそうに呟き、攻撃を終えた後は一度下がる。
「サイオンジ! 狙われてるぞ!」
デルがメガホンを使って、サイオンジに注意を促す。
サイオンジは後方からの攻撃を行っていて、ラミアは一人離れているサイオンジへと狙いを定めたようだ。
しかし、手を振り上げての攻撃は避けやすい事が先ほど証明されたようにサイオンジはラミアの攻撃を避けて『両断剣』を使用して『ワイズマンクロック』でラミアを攻撃する。
ラミアは『ワイズマンクロック』での攻撃を避けたのだが、自動追尾機能がついているため標的をラミアから変更していない。
サイオンジの攻撃を受け、ラミアに大きな隙が出来たのを八神が確認し覚醒を行う。
「‥‥化け物、遊んでやる」
戦闘前に着用したサングラスが八神の雰囲気を変え、ラミアの尾を地面に縫い付ける為に大きく『月詠』を構え、武器に体重をかけて外れないようにする。
「‥‥‥‥おとなしくしていろ!」
八神が叫ぶと同時に、他の能力者達は地面を蹴り、ラミアとの決着をつける為に走り出した。
他の能力者達が攻撃を始めた頃に八神は『月詠』をはずし、自身も『豪破斬撃』と『流し斬り』を使用してラミアへと攻撃を行った。
結果的に八神の攻撃が致命傷となり、ラミアはズシンと森に響くような音をたてながら倒れていったのだった‥‥。
〜任務終了〜
「それにしても、ラミアという割に魅了攻撃はなかったみたいね?」
神森が少し残念そうに呟く。彼女の魅了対策としてはピンヒールで踏みつけ、正気に戻すという対策を考えていたのだ。
「ふふ、でも今回の相手のような見た目の相手には、注意ですねえ? 油断大敵ということもありますしね?」
神森が息絶えたラミアを見ながら妖しく笑う。
確かにラミアの『人型部分』は綺麗な女性の姿だった。下心のある相手なら尾でさくっと倒されていたことだろう。
「本当じゃな、特に男性諸君は気をつけた方がいいのではないかえ?」
朏がくすくすと笑いながら呟くと「大丈夫だヨ」とラウルが自信満々で言葉を返してきた。
「僕の妹以上の美人サンじゃないと無理無理!」
「‥‥俺も、そういう心配はいらないな、たぶん」
デルが呟くと「私も大丈夫、だと思います」と榊も答えた。
「しかし、私の兄者ならもっと巧くやれるものを‥‥私は未熟だ」
まだまだ修行を積まねば、と決意する榊に「頑張ろうぜ」と八神がサングラスを懐に収め、武器についた血を払いながら言葉を返す。
「でも今回は怪我人もないですし、ラミアも無事に倒せてよかったです」
不二宮が安堵のため息を吐きながら呟く。
そして、サイオンジは少し離れた場所で『ワイズマンクロック』を抱えて「今回も、記憶の収穫はなしか‥‥」と聞き取れないほど小さな声でポツリと呟いていたのだった。
その後、能力者達は本部へと帰還し、ラミアを倒した事を蛇嫌いの女性能力者に伝えた。
「蛇嫌いの人、多いケド‥‥結構美味しいヨ?」
ラウルの一言に女性能力者は卒倒し、慌てふためく姿が見受けられたという‥‥。
END