●リプレイ本文
「キアラそっくりの敵‥‥ねぇ? 前回はキアラ本人に逃げられているからな〜‥‥リベンジしたいところだが、さてどうなるかな?」
神無月 翡翠(
ga0238)は苦笑しながら呟いた。
「キアラそっくりのキメラ――少女型キメラか‥‥色々と考えたくはなるが‥‥それでも敵は敵、油断は禁物だな」
花柳 龍太(
ga3540)はため息混じりに呟く。
やはり、相手がキメラとはいえ『人型』なのだから戦いにくいという事なのだろう。
(「バグアに味方するなんて、許せない‥‥けど‥‥何故?」)
ティーダ(
ga7172)は心の中で呟きながら、何故キアラがバグアに味方しているのか分からずに誰も答えない問いを心の中で繰り返していた。
「とりあえず必要かわからなかったけど、私も髪型とメイクを変えてみたよ」
MAKOTO(
ga4693)がいつもは流している髪の毛を括って、雰囲気を変えていた。彼女同様に神無月もキアラと面識があるため、帽子の中に長い髪を入れ、深く被っている。
「‥‥となると、キアラに面が割れていない私が囮になるわ」
熊谷真帆(
ga3826)が今回一緒にキメラ退治を行う能力者に話しかける。
彼女はスプリングコートの中に小銃『S−01』を隠し持ち、女子高生の一人歩きを装って能力者の所にキメラを誘導する――という作戦を行うつもりだ。
その為に班を二つに分け、本部から二つの通信機を借り受けていた。
A班・花柳、威龍(
ga3859)
B班・神無月・熊谷・MAKOTO・ティーダ
「地図は覚えたか?」
最終確認の為に地図を見ながら威龍が他の能力者に問いかける。
能力者達はキアラ型キメラと戦うための事前準備として、地図を要請してキアラ型キメラを追い込む為のポイントを2・3箇所見つけ、追い込む際に迷わぬように地理などを頭に叩き込んでいた。
「私は大丈夫、あとこの場所での戦闘は避けた方が良さそうだね。さっき確認してみたけど、民家が多いから戦いにくいと思いよ」
MAKOTOが地図の一角を指しながら呟く。確かに彼女が指した周辺は民家が固まっていて、いくら住人が避難しているとはいえ、戦った後の事を考えると民家が固まっている場所での戦闘は避けるべき――と彼女は言いたいのだろう。
「そうだな、一般人が避難している場所はその場所から近いんだろ? なら一般人が人質になる可能性もあるから避けるべきだな」
花柳も納得したように呟き「確かに一理あるわね」と熊谷も言葉を返した。
「私が武器――『ヴィア』『ロエティシア』『ハルバード』を隠し置いている場所は地図に赤く丸をつけているわ。どの場所で戦闘になっても私は大丈夫だから安心して」
熊谷は囮役を引き受けるため、小銃以外の武器を持ち歩くことが出来ない。
だからどの場所で戦闘になってもいいように予め武器を隠し置いていた。
「とりあえず‥‥キアラとキメラを探しにいきましょうか」
ティーダが呟き、能力者達は班で行動を行う事にしたのだった。
〜A班〜
「自分に似たキメラを出したという事は、何らかのメッセージなんだろうな。それが何かは分からないが、嫌な予感がひしひしとするぜ‥‥」
威龍はキアラとキメラを捜索する途中、ポツリと呟いた。
「俺はキアラ自体に会った事がないからな、うまくは言えないが‥‥何の目的でキアラは動いているんだろうな」
「さぁな‥‥その辺は本人しか分からないだろうな」
威龍の言葉に「違いないな」と花柳は呟き、キアラとキメラの捜索を続けた。
A班は民家や避難所周辺を捜索していたが、今の所は特に変わりはない。
むしろ住人たちが避難所の窓から見せる怯えの視線が突き刺さるような感じがして、二人は居心地悪そうに捜索を行っていた。
「ほら、あいつらを助ける側の貴方たちでさえ畏怖の対象――そんな奴らをそれでも守るなんて物好きだね」
くすくすと笑いながら一人の少女が現れる。少女らしい清楚な服装と裏腹に話している事は大人より残酷な言葉だった。
「質問、世界が平和になる為にはどうすればいいでしょう?」
少女――キアラはくすくすと笑みを浮かべたまま花柳と威龍に問いかけた。
「世界が平和になる為には‥‥? バグアがいなくなれば問題ないんじゃないの?」
花柳が低い声で答えると「ぶー、はずれ」とキアラが可笑しそうに笑う。
「バグアがいなくなれば――そういうけどさ、バグアが来るまでは同じ人間同士で争いを起こしてたじゃない? だからお兄さんの答えはハズレ」
「じゃあ、お前はどう考えているんだ? 人に問いかけるくらいだから自分の答えを持っているんだろう?」
威龍が問いかけると「簡単だよ」とキアラは言葉を返した。
「すべてがなくなっちゃえばいいんだよ。争う相手がいなければ争いなんか起きないんだから。そうでしょ?」
キアラは冷たい視線、冷たい口調で答える。キアラが話している間に花柳が通信機でB班に連絡をいれると、向こう側もキメラを発見したと言葉が返ってきた。
「キメラ、見つけたんでしょ? 早く行けば? いくら正義ぶってても貴方たちの勝利には犠牲がある。相手を倒すことで能力者達は『自分たちが正しい』って思うんだから」
キアラは言い捨てると、くるりと背を向けて花柳や威龍とは逆方向に歩き出した。
「おい、待て―――っ!」
威龍が手を伸ばし、キアラを逃がすまいとするが「早く行った方がいいんじゃない?」とキアラが呟き「くそっ」と言い残して二人はキメラが現れたポイントへと向かい始めたのだった。
〜B班〜
時は少し遡り、二つの班が分かれた場面へと戻る。
「さすがに避難しているから人の気配がこの辺にはないな‥‥」
神無月が周りを見渡しながら小さく呟いた。
「ホントだ、でも一般人がいても危険なだけだから人の気配は無い方がいいかもね」
MAKOTOが苦笑しながら言葉を返す。
「キメラの気配はありませんが‥‥油断は出来ないですね」
周りを警戒しながらティーダが呟くと「そうだな」と神無月が言葉を返した。
少し先を見れば、熊谷が周りを警戒するように歩いている。B班は囮の熊谷が一人歩きの女子高生を装い、他の三人は彼女を連れ戻しに来た能力者――という設定で動いている。
「まだ現れないかな、キメ――‥‥」
MAKOTOが呟いた時、熊谷が所持しているであろう銃の発砲音が響いた。
その音に驚き、能力者達が熊谷を見ると一人の少女に追いかけられていた。実際は追いかけられるフリをして戦闘ポイントまで誘導しているのだけれど‥‥。
「急ぎましょう」
ティーダが呟き、能力者達は今の場所から近い戦闘場所へと先回りを始めたのだった。
〜戦闘、そしてキアラの本意〜
能力者達が戦闘現場へ向かう途中、A班から通信が入りキアラ本人と接触したと伝えてきた。
「こちらも先ほどキメラを発見して、ポイントBに向かいます」
ティーダはA班に伝え、自分が所持している武器『ルベウス』を構えながらポイントへと向かった。
A班とB班の能力者が合流した時、熊谷がキアラ型キメラを連れて現れたのだった。
「さて、油断は禁物ですよ」
神無月は覚醒しながら『練成弱体』でキアラ型キメラの防御力を下げて『練成強化』で能力者達の武器の強化を行った。
最初に攻撃を行ったのは熊谷、小銃を隠し置いていた『ヴィア』に持ち換えると、『豪破斬撃』と『急所突き』を使用してキアラ型キメラの足を狙って攻撃した。
しかし離れる際にキアラ型キメラからの反撃をくらい、殴られてしまうがたいしたダメージではなく、次の攻撃を行うための準備を始めた。
「その足、もらうぜ」
威龍が短く呟き『瞬天速』と『瞬即撃』の重ねがけ攻撃でキアラ型キメラの片足を攻撃し、完全に使い物にならなくした。
「この世で狩りに勝る楽しみはな〜〜い!」
MAKOTOも覚醒し『獣の皮膚』で防御力を上昇させた後に『真音獣斬』でキアラ型キメラに攻撃を行った。
片足での行動を余儀なくされているためか、キアラ型キメラはMAKOTOの攻撃を避ける事は適わず、直撃で受けてしまった。
キアラ型キメラは分が悪いと判断したのか、逃げようとするがティーダが退路を断っているため逃げる事は適わない。
「素早さが高いと聞いていたが、足を失った事でその素早さは半減、いやそれ以下になったな」
花柳は呟き『豪破斬撃』を使用した後にキアラ型キメラに直進で向かい『流し斬り』で攻撃を行った。
しかし、逃げられないと判断したキアラ型キメラは自棄になったのか両腕を振るいながら反撃をしてくる。
「そのまま動かないでいてほしいわね」
熊谷は呟くと、キアラ型キメラの首を狙って攻撃する。
首を撥ねる――まではいかなかったが確実に致命傷を与え、キアラ型キメラは悲鳴のようなものを響かせながら絶命していったのだった。
「はぁ‥‥さすがに無傷、とまではいかなかったな」
威龍が呟き、傷だらけの能力者達を見渡す。
「ホントだよ、そんな傷だらけになってまで『人間』は守る価値があるのかな」
くすくすと笑いながら聞こえるキアラの声に、能力者達は声の方向を見る。
「お疲れ様」
木の上から足をぶらつかせながらキアラは楽しそうに話しかけた。
「何故、あなたはバグアに味方するのですか?」
ティーダが仕事を始めた時から疑問に思っていたことを、キアラ本人に問いかける。
「人間は卑怯だよ、自分さえ助かれば他人なんてすぐに見捨てる事が出来るんだから。世界が平和になるためには人間が皆死んじゃえばいい。そしたら争いなんか起きない」
それが答え、キアラはにっこりと笑ってティーダに言葉を返した。
外見はまだ12・3歳にしか見えないのだが話す口調は大人びていて過去に何かがあった事を能力者達に知らせる形になった。
「貴方も同じ人間でしょう? 何故同じ人間を苦しめようとするの‥‥?」
熊谷がキアラを見上げながら呟くと「一緒にしないでよ」と不快感たっぷりの表情でキアラが答えた。
「別に私は死んでもいいんだよ? 何なら此処で首切って死んで見せようか?」
暗く重い瞳でキアラが呟く。
「目の前で女の子に死なれるのは寝覚めが悪いからやめてほしいな」
花柳が呟くと「優しいんだね、おにーさん」とからかうようにキアラが言葉を返す。
「しかし、何か視線を感じると思ったら‥‥」
神無月は戦闘中に何処からか視線をずっと感じていた。
それがキアラの視線だったというのは先ほど気づいたのだが‥‥。
「さっき、世界が平和になるためには‥‥って言ってたよね。それ、本気で言ってるの?」
MAKOTOが問いかけると「世界平和を謳いながら争いでしか解決出来ないんだから滅ぶべきだよ」とキアラは答えた。
「‥‥暴力で黙らせるのは最も単純で手っ取り早く、自分に向けられると迷惑な手段――故に謳うんだよ、平和を」
MAKOTOの言葉に首を傾げながら「難しいことは分からないよ」とキアラは呟き、その場から立ち去ろうとする。
「待―――っ」
能力者の一人がキアラを呼び止めようとすると、背後から新手のキメラが現れ「ばいばい」とキアラは言い残して走っていく。
結局、キメラを倒した頃にはキアラの姿は影も形も無く、逃げられてしまった。
きっと、彼女は再び何かを仕掛けてくるのだろう。
身の内に宿る憎しみの炎をたぎらせながら‥‥。
END