●リプレイ本文
「全く‥‥相変わらずのいのししさんなんだから‥‥」
ため息混じりで呟くのはナレイン・フェルド(
ga0506)だった。
今回も事の発端はクイーンズ記者・土浦 真里(fz0004)が『天使と悪魔』のキメラがいる場所へと飛び出していった事が始まりだった。
「やれやれ、相変わらず(ムダに)アグレッシブな方ですねぇ‥‥」
ナレインの言葉に玖堂 鷹秀(
ga5346)も苦笑しつつ呟く。
「真里さんらしいと言えばらしいですが‥‥真里さんの行動力にはいつも驚かされます」
ナオ・タカナシ(
ga6440)もマリの危機と聞きつけて呆れながらもマリ救助に向かう事になったのだ。
「確か、キメラは天使と悪魔らしいですね。架空の生物をモチーフにキメラを作り出す意味はあるのでしょうか‥‥?」
ミンティア・タブレット(
ga6672)が首を傾げながら呟くと「作りやすいから‥‥でしょうか?」と神無月 紫翠(
ga0243)がポツリと呟いた。
「それにしても‥‥また、天使ですか‥‥これで何回目の遭遇に‥‥なるんでしょうか‥‥」
神無月はげんなりとした表情で呟く。彼は過去に何回か天使型キメラと遭遇した経験があるらしい。
「‥‥真里さん‥‥おとなしく、していないんでしょうね‥‥弟から聞いた性格だと」
神無月の弟はマリと面識があり、マリの性格も熟知しているようだ。
「天使と悪魔‥‥それも気になりますけど、マリ様の身に危険が及んでいないか、そちらの方が大事ですわ」
どうか無理をなさらないで下さいませ、絢文 桜子(
ga6137)は言葉を付け足しながら小さく呟いた。
「確かにキメラが二匹もいるんだし、マリに怪我がないか心配だね‥‥無茶をしてなきゃいいんだけど」
キョーコ・クルック(
ga4770)が呟き、能力者達はマリを救出&保護すべく『天使と悪魔』がいる場所へと向かい始めたのだった。
〜マリを探せ&連れ帰れ〜
翔太からの情報によると『天使と悪魔』がいる場所は森の中だという。
そして肝心のキメラ情報については『天使と悪魔』と外見を現すもの以外は何もなく、能力者達は苦戦を強いられる事になる事は間違いなかった。
「ここからは二手に分かれましょう」
ナレインが呟き、ここに来るまでに決めておいた班で行動をすることになった。
A班・ナレイン、玖堂、ミンティアの三人。
B班・神無月、絢文、ナオ、キョーコの四人。
「何かあったら通信機で連絡を取り合いましょう」
ナレインが借りてきた通信機をB班に渡し、森の中へと入っていったのだった。
〜A班〜
「天使と悪魔、物語の中なら好きなんだけどね‥‥」
小説や漫画などに出てくる天使と悪魔を想像しながらナレインがポツリと呟く。
「でも此方の想像通りの姿ではないでしょうね‥‥それでは迷い込んだ『アリス』を探しましょうか」
玖堂が苦笑しながら呟き、アリスことマリの捜索を開始したのだった。
「しかし‥‥暴走という言葉がこれ程までに似合う人は他にいないでしょうね」
「そんなに‥‥ですか? 私はお会いした事がないので分かりませんが‥‥」
ミンティアの言葉に「会えばすぐに分かりますよ」と玖堂が言葉を返したのだった。
その時だった。
『おおおおおおおおおっ!!!』
マリの奇怪な声が森の中に響き渡った。
「今のは‥‥マリちゃん!?」
ナレインが耳を澄ませながらマリの居場所を探ろうとするが、マリの声はA班からは結構遠い場所なのか残響のようなものしかない。
「向こうの班に連絡をいれてみますね」
ミンティアが呟き、通信機でB班に連絡を入れると「悪魔との戦闘中でマリはこっちにいる」とキョーコから短い言葉が返ってきた。
悪魔との戦闘中、つまり天使と悪魔は別々で行動しているという事になる。
「えーと‥‥通信中悪いんですが、趣味の悪い天使が目の前にいますねぇ‥‥」
玖堂が前方を指差しながら呟き、ミンティアとナレインはハッとしたように戦闘態勢に入ったのだった。
「マリちゃんは向こう側、つまり私たちは目の前の天使と戦うだけでいいのね」
ナレインが『刹那の爪』で天使に攻撃をした。蹴りという戦闘スタイルを得意とするナレインの攻撃は簡単に避ける事は出来ず、天使キメラの腹部にダメージを与える。
ナレインが攻撃から下がると、ミンティアがすかさず『練成弱体』で天使キメラの防御力を下げ、玖堂がナレインに『練成強化』を使って武器の強化を行う。
天使キメラはナレインの攻撃を受け、警戒を始めたのか上空へと逃げるようにふわりと浮く。
しかし、それが玖堂にとって我慢ならない事だった。
「天使だ悪魔だぁ俺は信じてねぇがな‥‥その分尚更目障りなんだよ! 上から見下ろされっとよ!」
覚醒しながら玖堂が叫び『エネルギーガン』で天使キメラを攻撃する。玖堂の攻撃は天使キメラの白い翼に命中し、天使キメラは苦痛の表情で地面へと倒れこんだ。
「あなた達は‥‥何を思い生きているの? 人を殺める事だけなの?」
苦痛な表情を見せ、ナレインが『瞬即撃』で天使キメラの背後に回り、ドロップキックで攻撃を行う。
その後、ミンティアや玖堂も己の武器で天使キメラを攻撃し、なんとか無事に天使キメラを退治する事が出来たのだった。
「キメラとして作られなければ‥‥こんな死に方をせずにすんだのよね‥‥」
眠るように目を閉じたままの天使キメラに祈りを捧げ、献花には相応しくないだろうと分かりつつもナレインは自分の象徴でもある青い薔薇を捧げたのだった。
「向こうの班もまだ戦闘中なのか、連絡が取れません。戦闘音が響いていますので行ってみましょう」
ミンティアの言葉にナレイン、玖堂は首を縦に振り、B班の元へと急いだ。
〜B班〜
「こんな危険な場所にマリを一人にしておけない‥‥早く見つけないと」
キョーコが焦るように呟き、森の中でマリを捜索していく。
「真里さんを見つけたら、すぐにでも連れて退散しましょう」
ナオが呟くと「真里さんが‥‥おとなしくしてくれれば、ですね」と神無月が言葉を返す。
「わたくしもマリ様の保護最優先でしたいのですけど‥‥肝心のマリ様が見つかりませんね」
絢文が周りを見渡しながら呟くが、薄暗い森の中でマリの姿を見つける事は出来ない。
時折、鳥が羽ばたく音などが響き、絢文はハッと上を見上げた。
「‥‥鳥、ですわね」
安堵のため息を吐き、B班は再度マリ捜索を続ける。
「あの‥‥あれって‥‥」
ナオが目を瞬かせながら前方を指差す、するとマリが一心不乱に森の中を走り回っている姿が見受けられた。
「‥‥何をしているんでしょう‥‥って、後ろ‥‥」
神無月が目を凝らしてマリの姿を見るが、その後ろからとんでもないものがマリを追いかけていた。
「ちょっ‥‥キメラ!?」
黒い翼を持つキメラが楽しむようにマリを追いかけている。よくよく見ればマリの腕や足は怪我をしていて走りにくそうだった。
「おおおおおおおおおっ!!」
悪魔キメラの爪がマリに迫ろうとした時、神無月が長弓『黒蝶』で悪魔キメラの腕を射る。
絢文は怪我をしたマリに近づき「ご無事でよかった‥‥」と安心したように笑顔で話しかけた。
「さくらちゃん、ちょっとヤバかったなぁ、今回は」
能力者が現れた事で安心したのか、マリも気が抜けたようにその場に座り込んだ。
「ここからは、わたくし達と一緒に参りましょう」
絢文が優しく問いかけると「待って! 折角の取材が!」とマリが慌てたように叫ぶ。
「真里さん、怪我をしたら記事どころではないのですよ!? それに軽い怪我をしているじゃないですか‥‥」
擦り傷などの軽い傷が目立つマリにナオが少し怒ったように叫ぶ。
「そうですわ、倒れたら折角の取材が無駄になってしまいますわよ?」
二人の言葉にマリは観念したように「わかったよぅ」と渋々だったが遠くからの取材を受け入れたのだった。
そして絢文はキメラと交戦している能力者達の支援を行う為にキョーコや神無月の所へと急ぎ足で向かう。
「止めは、任せる。毎度の事だが、当てづらいな‥‥だが、地上墜落への旅を送ってやる」
覚醒を行った神無月は口調が変り、冷たい視線を悪魔キメラに向けながら長弓『黒蝶』で悪魔キメラ向けて放った。
そこに絢文がやってきてキョーコと神無月に『練成強化』を使用して武器の強化を行う。
武器を強化したおかげで、悪魔キメラの翼をもぎ取るのにさほどの時間はかからなかった。
「次はあたしだ!」
キョーコが『蛍火』を構え、地面に落ちた悪魔キメラ目掛けて攻撃を行った。背後からナオの援護攻撃が悪魔キメラの目を射抜き、キョーコはそのまま直進して攻撃を行う。
翼を失い、そして目をも失った相手など今の能力者達の脅威になるほどではない。悪魔キメラは能力者達の総攻撃により、無事に退治することが出来たのだった。
〜マリの辞書に反省はない〜
「お疲れさまでした‥‥しかし‥‥あなたも無理をしますね」
神無月がため息混じりにマリに話しかけると「やだなぁ、ほめないでよ〜」と照れたように頭を掻く。
「‥‥ほめてません‥‥友人に心配かけて、反省してますか?」
説教のような口調なのだが、神無月の表情は常に笑顔。その笑顔の裏に黒いオーラが見えたのはきっとマリだけではないだろう。
「―――んん? 何かいつもと違くない?」
マリが神無月をじろじろと見ながら問いかけると「神無月 紫翠といいます」と神無月は自己紹介をした。
「あなたが‥‥言っているのは、きっと双子の弟のことでしょう‥‥」
「あぁ! お兄ちゃんか! よろしくぅ!」
マリが無理矢理神無月の手を掴み、握手していた時に「一時はどうなる事かと‥‥」とナオが顔色悪く呟く。
B班が戦闘をしている中、ナオはマリの護衛(という名のお守り)をしていたのだが「やっぱり近くでみるぅぅ!」と騒ぎ出してしまい、マリが暴れた結果、腹にパンチを食らったのだ。
「あは、ごめんね♪ ナオぴょん」
「マリ様、今度から危険な取材には、わたくし達をお連れ下さいね」
今までに何度も言われてきた言葉にマリは苦笑しつつ「う、うん。覚えてたら」と曖昧な言葉を返した。
「護らせて、下さいませね。頼りなくとも‥‥能力者として」
絢文の言葉に「頼りないなんて事ないよ!」とマリが慌てて否定する。
「あ、今思い出した。翔太にはちゃんとお礼言っとくんだよ?」
キョーコがマリに話しかけると「何で?」ときょとんとした表情でマリが聞き返した。
「翔太がマリを心配して救助を頼みに来たんだからさ」
「そっか、翔太が‥‥うん、帰ったらちゃんとお礼言うよ」
その時、A班が合流してきた。
「こんにちは、ご無事で何よりです」
ミンティアの言葉に「うん、ありがとね。ミンちゃん」とマリが笑顔で答える。
「‥‥‥‥みんちゃん?」
「うん、ミンティアだからミンちゃん♪ 可愛いっしょ――ってアレ? お姉さまどうしたの?」
ずぅんと沈んだ表情でそっぽを向いているナレインを見つけ、マリが首をかしげた。
「心配させられたお礼がほしいわ―――ギュッてさせてくれなきゃ‥‥怒るわ」
ナレインは本気なのかじぃっとマリを見る。
「えぇと、ごめんね? お姉さま」
むぎゅーっと抱きつくマリにナレインも「許してあげる♪」と笑顔で答えた。
「さて和やかな所を悪いんですが、土浦さん。白・黒・赤の飲み物がありますが、どれがいいですか?」
玖堂が笑顔で問いかける。
「あ、ちょうど喉が渇いてたんだ。ありがと。ん〜〜じゃあ赤で♪」
何だろ、呟きながらマリは渡された飲み物を一気に飲み干した。
「うををををををぉ‥‥な、何こ、っていうか、カラっ! むしろツラい!」
口を押さえながら涙目で玖堂を見る。彼いわく、これはお仕置きだとの事で白を選べば激甘、黒は激苦、そして赤は激辛なのだとか
「さすがはクイーンズの記者。リアクションもいいですね」
黒い笑顔でにっこりと微笑む玖堂が怖くなり「ゴメンナサイ」とマリは心から誤ったのだとか。
END