タイトル:奇跡×軌跡マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/05/11 23:35

●オープニング本文


普通ではあり得ない『奇跡』の力を用いて戦う者――能力者達。

そして能力者達が切り開いたおかげで作られる『軌跡』の道。

※※※

「おにいちゃん、おねえちゃん、いつもありがとう」

ツインテールの少女が小さな花を能力者に渡しながら、笑顔で話しかけていく。

その少女が住む街には、過去に幾度もキメラが現れており、そのたびに能力者が撃退してきた。

「何か、あの子の笑顔って癒されるのよね」

花を受け取った後、別な能力者に花を渡していく少女・華子(かこ)を見ながら小さく呟いた。

「あ、それ分かる。能力者やってて良かった――って思えるよな」

男性能力者が言葉を返す。

しかし、事態が急変したのはそれから一週間後のことだった。


「え――――あの子が、死んだ?」

本部に届けられたのはキメラが現れたという事と、被害者が一人出たという報告だった。

――被害者 森村・華子(もりむら・かこ)

「キメラは、男の人型らしくて‥‥能力者と間違えたんだろう‥‥って」

男性能力者も唇を強くかみ締めた後、途切れ途切れに呟いて言葉を返してきた。

「‥‥これから、あんな子が生きていかなきゃいけないのに‥‥全てが終わった後にこそ、あの子みたいな人間が‥‥」

ポツリと女性能力者は呟き、報告書の紙をぐしゃりと握り締めたのだった。

●参加者一覧

神無月 紫翠(ga0243
25歳・♂・SN
ケイ・リヒャルト(ga0598
20歳・♀・JG
リゼット・ランドルフ(ga5171
19歳・♀・FT
オーガン・ヴァーチュス(ga7495
40歳・♂・BM
レイアーティ(ga7618
26歳・♂・EL
櫻杜・眞耶(ga8467
16歳・♀・DF
狭間 久志(ga9021
31歳・♂・PN
音影 一葉(ga9077
18歳・♀・ER

●リプレイ本文

「‥‥こんな理不尽‥‥許せない‥‥!」
 拳を強く握り締めながら、震えるように呟くのは狭間 久志(ga9021)だった。
「幼い命を‥‥奪ったんですから‥‥それ相応の報いを‥‥受けてもらいましょうか‥‥」
 くす、と笑みを浮かべながら呟くのは神無月 紫翠(ga0243)。表情こそ笑みを浮かべているが、心の中はどす黒い感情が渦巻いている。
「えぇ‥‥華子ちゃんの事は、痛ましすぎて‥‥何と言っていいのか‥‥」
 リゼット・ランドルフ(ga5171)が表情を曇らせながら小さく呟く。能力者に感謝と心からの笑顔を見せていた華子は男性型キメラによって殺されてしまった。
 罪もない華子の死を悼む者は多く、会った事のない今回の能力者達でさえも胸が痛んでいた。
「能力者と間違えた‥‥かぁ。バグアもやるようになったなぁ‥‥」
 オーガン・ヴァーチュス(ga7495)が感心したように呟く。もちろん彼はバグアを誉めている訳ではない。人間と見間違えるほどのキメラが存在し始めたのならば、人間の中に紛れて動くキメラも出てくるのではないか――と感心しているのだ。
「華子君の事件、世界各地で起きている事件がただ目の前で起きただけだと頭では分かっているんですが‥‥能力者に関わらなければこんな事にはならなかったと思うと‥‥」
 やりきれないです、レイアーティ(ga7618)は瞳を伏せながら誰に言うでもなく呟く。
「さて、私の頭脳が実戦で通じるか試すにはちょうどいい相手ですね」
 音影 一葉(ga9077)が湧き上がる好奇心を抑えながら呟いた。音影も華子の資料は目を通した。悲しい出来事とは思っているが、それ以上に湧き上がる好奇心を抑えられなかたのだ。
「さて、問題は何処で戦うか――ですね。海にさえ近づかなければ、どうにかなりそうですね?」
 櫻杜・眞耶(ga8467)が呟くと「まずは目撃情報を集めてからになるわね」とケイ・リヒャルト(ga0598)が言葉を返す。
「キメラの目撃情報、現れる時間帯――手札は多いに越したことはないわ」
 ケイが呟き、能力者達は情報を集めるべく街の中を歩き出したのだった。

〜華子の仇・調査〜

 今回の男性型キメラを効率よく倒すために、能力者達は班を二つに分けた。
 A班・ケイ、音影、櫻杜、リゼットの四人。
 B班・神無月、レイアーティ、狭間、オーガンの四人。

〜A班〜

「華子ちゃんね‥‥能力者に関わるのはやめなさいって何度も言ってたのに‥‥」
 聞き込みを開始して、最初に話しかけた中年女性が返してきた言葉だった。
「関わるな‥‥どういう事かしら?」
 ケイが首を傾げながら問いかけると「でも‥‥」と中年女性は言い難そうに能力者達の顔を見る。
「何でも話してください、何故‥‥関わるなと‥‥?」
 音影が問いかけると「怒らないで聞いてね」と中年女性は呟き、話し始めた。
「能力者って言ったら所詮は一般人の私らとは違うわけだろ? ‥‥怖いんだよ、だから華子ちゃんにも関わるなって街の大人達は口をすっぱくして言ってたんだ」
 中年女性は呟き「実際に能力者に関わらなければ死なずにすんだんだから」と言葉を付け足した。
「‥‥そう、ですか。き、キメラについての情報‥‥何かありませんか?」
 中年女性の言葉に少しのショックを覚えながらも、リゼットは男性型キメラについての情報がないかと問いかける。
「キメラがいる場所なら、華子ちゃんが殺されてしまった場所近くに廃屋がある、そこにいるみたいだよ」
 中年女性は呟くと、少し遠くの方を指差しながら言葉を返してきた。中年女性から話を聞き終え、能力者達は言いようのない感情が胸に渦巻いている事に気がついた。
「能力者とバグア、どちらも『普通ではない能力』を持つ事から畏怖されるんは分かるけど、こう‥‥あからさまに言われると気分悪いわぁ」
 櫻杜がため息混じりに呟き、中年女性が言っていた場所へと向かい始める。
 幸いにもその場所は男性型キメラを誘導しようとしていた広場がある近くであった。

〜B班〜

「出現時間に決まった規則性はないようですね。潜んでいる場所は‥‥広場を抜けた奥の廃屋‥‥A班も同じ情報を仕入れているようです」
 レイアーティが通信機を見ながら呟くと。
「ですが‥‥その廃屋の先は海――海があるので気をつけなくてはいけませんね」
 狭間も住人に借り受けた地図を見ながら呟く。
「華子は首を折られた――って話だったな、小さい子供に惨い事をするもんだ‥‥キメラはよほど自分の力に自信があるんだろうなぁ」
「そう、ですね―――もしかして、アレでしょうか」
 神無月が指差した場所には古ぼけた小さな廃屋があった。
「キメラは―――‥‥」
 呟いた瞬間、木の上から一人の男性‥‥いや、男性型キメラが降りてきて能力者たちを襲う。
「危ない!」
 叫んだのは狭間で、レイアーティとオーガンは男性型キメラからの攻撃を受けてしまい、少し後ずさる。
「奇襲――か、使える頭は持っているようだな? 覚悟は出来ているだろうな?」
 神無月が覚醒を行いながら呟いて長弓『黒蝶』を構える。
「油断はしたけれど‥‥大丈夫です」
 レイアーティは痛みを堪えるように呟き『月詠』を構えて、男性型キメラに攻撃を仕掛けた。
この攻撃より数分後にA班も合流し、華子の仇を取るため、そしてこの街に平和を戻すために能力者達は武器を取ったのだった。

〜決戦・華の少女の願い〜

「私の頭脳が何処まで通用するか、教えてくださいね♪」
 音影は呟きながら『練成強化』を使用して能力者達の武器を強化した後に『練成弱体』を使用して男性型キメラの防御力を低下させる。
「はぁっ!」
 最初に攻撃を仕掛けたのは櫻杜だった。彼女は『流し斬り』で男性型キメラを攻撃する。
 続いてリゼットが男性型キメラの腕を狙って攻撃を行う。これは男性型キメラの怪力を封じるためだったのだが、男性型キメラは素早く反撃を繰り出してリゼットは攻撃を受けてしまう。
「‥‥大丈夫か?」
 後衛の所まで下がってきたリゼットに神無月が援護射撃を行いながら問いかける。
「えぇ、大丈夫です。華子ちゃんは‥‥もっと痛かったんですから」
 リゼットは呟き『バスタードソード』を構えて、再び男性型キメラに攻撃を仕掛けた。
「おイタが過ぎたわね‥‥坊や?」
 ケイは加虐的な笑みを浮かべながら呟くと小銃『フリージア』で攻撃を仕掛ける。その際に『鋭覚狙撃』を使用して攻撃を確実なものとしていた。
「罪のない子供を殺しておきながら‥‥のうのうと生きるキミを僕は許せそうにないよ」
 狭間が覚醒を行いながら呟き『フロスティア』で攻撃を仕掛ける。
 だが、狭間の攻撃を掻い潜り男性型キメラが反撃を行い、狭間の体を裂く――が、それはゆらりと揺らめき消えた。
「残念だったね‥‥それはただの残像‥‥だ!」
 叫びながら狭間が男性型キメラに攻撃を仕掛ける。
 その時に出来た隙を突いてオーガンが男性型キメラを背後から掴みあげる。
「人型なら楽でいいぜぃ。投げやすくってなぁ!」
 オーガンが叫ぶと同時に男性型キメラを投げ落とした後、レイアーティが『布陣逆刃』を使用して男性型キメラの足を狙って攻撃を行った。
 足を崩せば、後の攻撃が有利になるだろうと考えての行動だ。
「考える暇も与えてはくれない‥‥これが実戦‥‥面白いですね」
 音影は呟きながら『スパークマシン』で男性型キメラに攻撃を行った。
 その後、足を失った男性型キメラはまともに攻撃を繰り出す事も出来ずに能力者達の攻撃によって倒されたのだった‥‥。


〜死者へのはなむけは‥‥〜

「ふぅ、お疲れ様でした‥‥こういう事件が続くと‥‥やりきれない‥‥ですね?」
 キメラ退治が終わった後、神無月が小さく呟いた。
 現在の場所は華子の墓の前、太陽のような少女は冷たい墓石の中で眠っている。
「手折られた花は戻らない‥‥けれど、せめて安らかに‥‥」
 ケイが悲しそうに呟き、華子の魂が安らかに眠れるようにと鎮魂歌を歌い始めた。
「この花、華子ちゃんが育てていた花なんですよ」
 華子の墓に花束を手向けながらリゼットが小さく呟く。
「笑顔という華を‥‥必ずこの土地にもう一度咲かせてあげるさかい‥‥また、この土地に戻っておいで‥‥」
 櫻杜が墓石に手を沿え、俯きながら小さく呟く。
「戦います‥‥僕らの能力は、こんな事をもう起こさせない為にあるんです」
 狭間は拳を強く握り締め、華子のような犠牲者を出させぬように戦い続ける事を墓前で誓う。
 その後、能力者達は本部へと帰還して今回の事件の報告を行った。
 しかし、レイアーティは各地の幼稚園、小学校に対してキメラへの警戒を再度呼びかけるように要請を行った。
「華子君はバグアによって未来を奪われました、ですが‥‥それだけで終わらせてしまっては華子君の死が無駄になってしまいます。少しでも悲しい事件を減らすためにも、皆さんにも一層注意していただきたいのです」
 華子の事件を知っているレイアーティだからこそ言える言葉であり、説得力があった。
 これを知って、一人でも多くの人間が助かるよう‥‥そう思わずにはいられないレイアーティだった‥‥。