●リプレイ本文
「とりあず調べた事を突入前に言っておくな」
デル・サル・ロウ(
ga7097)が門鞍将司(
ga4266)と一緒に事前準備で調べた事を能力者達に知らせていた。
「多少危険な薬品とかを扱っていたみたいですが、今でも残っているかは不明です。あと‥‥工場自体は特に複雑な構造にはなっていないみたいです」
門鞍が呟く事に「面倒な‥‥場所‥‥には違いないな‥‥」と西島 百白(
ga2123)がため息混じりに言葉を返した。
「あと、一応薬品を扱っている工場という事だが‥‥ガス類は大丈夫だろうか?」
威龍(
ga3859)が小さく呟く。彼は今回ガスマスクを支給してもらうつもりだったのだが、確実に有害なガスがあると分かっているわけではないので、ガスマスクの支給は却下されてしまったのだ。
「こちらが不利になるような事がなければいいのだが‥‥」
威龍が不満そうにため息混じりに呟く。
「でも今の所、大丈夫だから問題ないんじゃないか?」
デルの言葉に「そうだな」と那智・武流(
ga5350)が言葉を返した。
「そういえば‥‥今回のキメラは人型と獣型だったわね」
神森 静(
ga5165)が呟くと「確か、そうだったな」と那智が言葉を返す。
「人型のキメラとは初めての接触だけど、やりづらそうだわ」
神森が呟くと「私もです‥‥」とナオ・タカナシ(
ga6440)も不安そうに呟いた。
「トレーニングでは上手くいきましたが、実践ではどうでしょうか‥‥」
「なるようにしかならない――でも正体不明の人型、ですか‥‥注意しておくべきですね」
比良坂 和泉(
ga6549)が呟き「そうですね」とナオも応える。
「さて、これから決めた班で行動して、まずは獣型を一掃して、その跡に合流して人型と戦闘――で良かったんだよな?」
確認を行うようにデルが問いかけると「あぁ、問題ない」と作業服に着替えた那智が言葉を返す。
まずA班のメンバーは威龍、門鞍、神森、ナオの四人。
続いてB班のメンバーは西島、那智、比良坂、デルの四人。
――作戦開始――
〜A班〜
「とりあえず‥‥有毒ガスはなさそうだが、安心は出来ないな」
威龍が小さく呟く。工場跡の中は結構散らかっていて、色々な薬品の瓶があちこちに割れて落ちている。
「こちら、門鞍ですぅ。そちらの調子はいかがですかぁ?」
門鞍が借りてきた通信機でB班に連絡をすると「まだキメラは発見できていない」と那智が答えた。
「結構暗いから足元に注意しましょう」
ぱきん、と瓶のかけらを踏みつけながら神森は呟く。
「―――来た、みたいですよ?」
比良坂の言葉に能力者達は前方を見る。
すると、そこには「ぐるる」と唸りながらこちらを厳しい視線で見ている獣型キメラだった。比良坂は現在の場所を見渡す、場所は大きな部屋で戦闘のしやすい場所だ。
「まずは‥‥こいつから退治、ね」
神森は呟くと『蛍火』を装備して獣型キメラに襲い掛かる。
しかし獣型の素早さが予想以上に高く、彼女の攻撃は避けられ、神森は床へと『蛍火』をめり込ませたのだった。
「次は俺が行く」
比良坂が下がると同時に威龍が動き『ディガイア』で獣型キメラを攻撃した。
「さて、手っ取り早く片付けるか?」
覚醒をして神森が呟き再び『蛍火』で攻撃をしていく。
「避けてください!」
ナオが叫ぶと、獣型キメラに接近していた能力者達は離れ、それと同時にナオが放った洋弓『アルファル』の攻撃が獣型キメラの足に命中する。
いくら素早さが高くても足を痛めてしまえば、動きは鈍る。ナオの考え通り、獣型キメラの動きが極端に鈍くなった。
そこを狙ったかのように威龍、神森は集中的に攻撃を行い、獣型キメラを一匹倒したのだった。
〜B班〜
「向こうの班は獣型キメラを倒したみたいだな、門鞍から連絡があった」
那智が通信機を切りながら能力者達に知らせる。
「‥‥‥‥ちっ」
西島が突然舌打ちをして「どうかしましたか?」と比良坂が西島に問いかける。
「‥‥‥‥」
西島は言葉を返す事なく、目の前を指差す。能力者達はその指を追うように前を見ると、獣型キメラが今にもこちらに襲い掛かってきそうな雰囲気を出しながら立っていた。
「こっちも戦闘開始、だな」
デルが『ハンドガン』を構えながら呟く、しかし彼が目にしたもので無理を出来ない事を分からされた。
獣型キメラから少し離れた所には『危険』と書かれた薬品タンクがあったからだ。暗くて視界が悪く、おまけに離れているから中身が入っているか確認する事が出来ない。
「俺の怒り、てめぇにぶつけてやる!」
那智はサングラスをかけ、手には『イグニート』を持ちながら叫ぶ。那智がキメラに向かって飛び出すと同時に反対側から比良坂も『氷雨』を構えて飛び出す。
そして正面からは西島が『コンユンクシオ』を構えて獣型キメラに向かって走り出す。前、右、左と攻められ獣型キメラは上へと飛び跳ねる。
しかしそれを待っていたかのようにデルが『ハンドガン』で獣型キメラを狙い撃つ。彼が放った弾は獣型キメラの急所に当たる事はなかったが、弾丸が腹部分をかすめ、ダメージを与えた事には変わりない。
人間でもそうだが、生きている者は傷を負ったらその場所を庇うように動くように出来ているらしい。
生きたい、という思いがさせる防衛反応なのだろうか。
目の前の獣型キメラも例外ではなく、腹部分を庇うように動いているせいか、次への行動が読みやすく、能力者達は一斉攻撃で獣型キメラを退治したのだった。
「こちら比良坂です。獣型キメラの退治を行いました。引き続いて人型キメラの捜索を行いましょう」
獣型キメラを退治した事を知らせると、A・B班共に今だ息を潜めているであろう人型キメラの捜索を開始したのだった。
〜A班〜
「ひ、人型って、いったい何を仕掛けてくるのでしょうね」
ナオが少し引きつった声で問いかけると「さぁねぇ‥‥」と神森が首を傾げる。
「聞いた話だと色々なタイプの人型がいるみたいですからねぇ」
門鞍が答えると「ひ、人型キメラ!?」とナオが叫ぶ。
しかし――ナオが指差したモノ、それはキメラではなく何故か置かれたままの人体模型だった。
「ふぅ‥‥びっくりした‥‥」
ナオはほっと胸をなでおろすと「すみません」と苦笑しながら能力者達に謝った。
「だが外見とかわからない以上、どうやって対処すればいいかわからないな」
威龍が呟くと「まぁ。こんな所に一般人がいるとも思えないけれどね」と神森が呟く。
「確かにそうですねぇ‥‥向こうの班にも聞いてみましょうかぁ」
門鞍は呟きながら通信機を取り、B班に人型キメラ捜索で進展があるかを聞いたのだった。
〜B班〜
「ま〜だ、こっちは何の進展もねぇなぁ」
門鞍からの連絡に那智がため息混じりに呟く。
「‥‥いや、そうでもないみたいだ」
デルが足元を見ながら呟く。他の能力者達も続いて足元を見ると――そこには足跡のようなものがあった。
そして、その方向はB班が今から向かう方向へと続いている。
「ここは初めて通りますし、A班が調べる場所でもないですし――ということはやっぱり‥‥」
比良坂の言葉に「‥‥人型か‥‥」と西島が短く、そして小さな声で呟く。
「前言撤回、それらしい足跡見つけたんで今から向かう。一応戦闘場所としては中央会議室って事で」
中央会議室、それはまだこの工場が会社として成り立っていた頃に色々な会議などで使われた場所なのだろう。
結構広い場所で、能力者達は中央会議室で戦闘できたらいいなという話をしていた。
もちろん、中央会議室にはA・B班ともに行き着く場所である。
「危ない!」
比良坂が突然叫んだかと思うと、那智を突き飛ばす。
一方、那智は『痛い』と言う前に目の前の出来事に驚いていた。金色の髪の青年が先ほどまで那智が立っていた場所に拳をめり込ませていたのだから。
「‥‥‥‥」
西島は無言で『コンユンクシオ』を構える。
その時、偶然A班が合流して当初の目的どおりに挟み撃ちに成功したのだった。
「この場所での戦闘は、少し厳しいな‥‥」
少しだけ広い廊下での戦闘、これは能力者達にとっても予想外の出来事だった。
「ま、仕方ないな」
神森は呟き『蛍火』で人型キメラに攻撃を行う。彼女の攻撃を腕で受け止め、人型キメラはニィ‥‥と気味の悪い笑みを浮かべた。
どうやら、特別な能力は持っていない人型キメラのようで、それに安心しつつ警戒を怠らないようにしながら能力者達も攻撃を開始する。
「せぇぇのぉっ!」
那智が叫び、落ちていた薬品瓶を人型キメラに投げつける。中身は入っていなかったが、それを受け止めるので人型キメラは手で避ける。
「俺は今、猛烈に怒っているんだ!!」
レイ・バックルで攻撃力をあげ、那智は『イグニート』で攻撃を行う。
ナオは那智を援護するように『即射』と『強弾撃』を使用して人型キメラを攻撃する。
「‥‥落ち着いて、集中‥‥集中‥‥」
ナオは自分を落ち着かせるように呟きながら攻撃を行っていく。
「これは‥‥出し惜しみはしていられませんね‥‥これで倒れていただきます!」
比良坂が叫ぶと、二段撃を三回連続で使用し、合計六回の攻撃で人型キメラを攻撃していく。
能力者の武器は門鞍の『練成強化』によって強化され、他の仲間が戦っている間に『練成弱体』で人型キメラ防御力も下げられている。
この状態での攻撃を受け、さすがに人型キメラから笑みが消え、苦しげな表情へと変えていた。
六回の攻撃で疲れを隠せない比良坂に人型キメラが攻撃を仕掛けようとした時、デルが人型キメラの手の甲を撃ちぬいた。
それを合図に、能力者達は総攻撃を行って人型キメラを倒す事に成功したのだった。
「倒した――よかった」
比良坂は呟くと、糸が切れたかのようにその場に倒れてしまう。先ほどの攻撃の反動で倒れたのだろう。
門鞍が慌てて駆け寄るが、外傷はなく、疲労で倒れただけなのでどうする事も出来なかったのだとか。
「‥‥‥‥ふぅ」
西島は人型キメラを確実に倒したと知ると、彼も疲れたのかため息を吐いたのだった。
「ちぇ、もう終わりかよ。つまんねぇ、もっと楽しませろよ」
那智が面白くなさそうに呟くと「怪我人もなくてよかったじゃない」と神森が那智に話しかけた。
「はぁ‥‥怪我人がいなくてよかったんですけど、私はまだまだ未熟です。修行が足りません」
うな垂れながらナオが呟く。
「とりあえず、帰ろう。今回は無事にキメラを倒せたんだから、素直にそれを喜ぼうぜ」
デルの言葉にナオが「そうですね」と呟き、能力者達は本部へと帰還したのだった。
END