タイトル:学校の怪談マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/03/04 22:23

●オープニング本文


今はもう廃校となった場所――‥‥そこには少女型のキメラが潜んでいるのだという。

※※※

今では珍しくなった木造の校舎に潜むは少女の姿をしたキメラ。

廃校となった原因も、キメラやバグアに襲われたからではなく、老人ばかりになった町で学校としての機能も意味もなくなってきつつあったからだった。

だから残った子供たちにとっては少し遠いけれど、隣町の学校へと通うようになったのだという。

「でも、何でいまさらキメラかしらね」

女性能力者はキメラ発見の報告書を読みながらポツリと呟いた。

「さぁな。キメラの考えなんて分からねぇし。分かりたくもないけどな」

男性能力者は女性能力者に言葉を投げかけ、報告書に目をやる。

発見されたキメラは少女型、被害はまだ多くはないが廃校に近い家の住人に怪我人が出たりしているらしい。

「子供たちが通っていない場所でよかったわね、子供が今でも通っている学校だったら‥‥被害はこれだけじゃすまなさそうだもの」

「そうだな、それだけが唯一の救い――か。怪我をした住人の話によれば子供の外見とは裏腹に物凄い怪力らしいぜ」

廃校に潜む少女型キメラ、能力者たちはどうやって退治する?

●参加者一覧

セシリア・D・篠畑(ga0475
20歳・♀・ER
ケイ・リヒャルト(ga0598
20歳・♀・JG
シエラ(ga3258
10歳・♀・PN
ベーオウルフ(ga3640
25歳・♂・PN
威龍(ga3859
24歳・♂・PN
雑賀 幸輔(ga6073
27歳・♂・JG
クーヴィル・ラウド(ga6293
22歳・♂・SN
要 雪路(ga6984
16歳・♀・DG

●リプレイ本文

 今回のキメラは少女型――しかも何故か廃校になった場所へと住み着いているらしい。
「古びた廃校に独り‥‥ですか。どこか、寂しいキメラですね」
 愁いた表情で校舎を眺め、ポツリとシエラ(ga3258)が呟いた。
「キメラがどんな姿だろうと、どこにいようと‥‥敵は敵だ! 割り切って戦わないといけないぜ。さもないと倒されるのはこっちだからな」
 威龍(ga3859)がシエラに向かって言うと「えぇ、分かっています」とシエラは俯きながら呟いた。
「確かにそうだな、少女の姿をしていても所詮はキメラ――‥‥キメラならば撃つしかないな」
 クーヴィル・ラウド(ga6293)が呟くと「いずれにしても情報が少なすぎるな」とベーオウルフ(ga3640)が言葉を返す。
「とりあえず、ここに来るまでに調べた事をメモして纏めておいたわ」
 ケイ・リヒャルト(ga0598)が紙切れを能力者達に渡しながら話しかける。
「‥‥襲われた場所は同じ場所ではないんですね」
 セシリア・ディールス(ga0475)がメモを見ながら呟いた。
「あ、本当だ――って事は敵の行動範囲は広いんだな」
 雑賀 幸輔(ga6073)がメモを見ながら、ため息混じりに呟く。行動範囲が広いという事は探すのにも手間がかかるという事なのだから。
「せやったら、捜索する場所とかで班分けをしようや」
 要 雪路(ga6984)が呟くと、能力者達はそれぞれの班を決め、行動する事にした。
 まずA班として行動するのがシエラ、ベーオウルフ、クーヴィル、そして要の四人である。
 そしてB班として行動するのが威龍、ケイ、セシリア、雑賀の四人であった。


〜A班〜
 能力者達は古い校舎でキメラを捜索するにあたって、役場から学校内の見取り図を借り受けていた。
「面倒だから前衛は任せるわ。俺は後ろから着いていくからさ」
 ベーオウルフは校舎内を捜索する前にシエラ達に向かって呟く。こう言いながら、彼が後ろに着く理由はきちんと存在していた。
 ここはキメラが住み着いている場所、つまり地の利はキメラにあるわけだ。背後から奇襲された場合、クーヴィルや要がキメラに狙われないようにする為――だった。
「分かりました。後ろはお任せします」
 シエラは呟き、校舎内に入っていく。
「シエラはんは目が見えへんのやろ? うちが誘導したるな」
 要がにっこりと笑顔で話すと「ありがとうございます」とシエラが笑って答える。
「あ、そこ足場悪いで。気ィつけや?」
 そう要が呟いた瞬間だった――彼女自身がシエラに注意した段差に自分自身がこけてしまったのだ。
「大丈夫か?」
 クーヴィルが手を差し出しながら問いかけると「問題ないわ」と要が答える。
「しかし、ここでボケはいらんのに‥‥しっかし、古い建物やなぁ」
 要が校舎内を見渡しながら呟く。こんな所でキメラと戦ったら、校舎が無事に残っているかも分からない。
「戦う場所は選ばな、アカンな」
 要が呟き「そうだな、うまく誘導できればいいが‥‥」とベーオウルフが呟いた。
 キメラをA班とB班で外に追い出し、校舎から出たところを挟み撃ちにして倒す――これが能力者達がたてた作戦だった。
 相手がパワー型の為、古い校舎内で戦ったら負けてしまうのはこちらだと感じたからだろう。
「‥‥私は――自分達が負けるから、というよりは‥‥この校舎を壊したくありません。キメラに壊されたら‥‥ここにある思い出も、壊れてしまう気がするから‥‥」
 シエラがポツリと呟いた言葉に「そうだな」とクーヴィルが言葉を返す。
 体が病弱で学校に通った事のないシエラにとって、この古い校舎は新鮮であり、それでいてここで勉強を習っていた子供達を羨ましくも思っていた。
「――足音」
 シエラが呟き、他の三人の能力者も耳を澄ませる。
 すると確かに何者かの足音がひたひたとこちらに向かって近づいてきているような気がする。
「B班――やろか?」
 要は自分で呟き「それはないやな」と首を振りながら呟いた。足音は単体であり、B班は別の場所にてキメラを捜索中なのだ。
 この付近にいるはずがない。
 廊下を曲がってきたと同時に視界に入ってくる少女型キメラに能力者達は校舎を壊さないように攻撃を開始する。
 だが、あくまでこれは威嚇攻撃のようなもので実際に本気で戦うのは校舎から出た後になる。
「こちらA班、キメラを発見した」
 クーヴィルは通信機を使ってB班に連絡を行い、予め決めていた場所へとキメラを誘導し始めた。


〜B班〜
「学校、ね‥‥さしたる郷愁がないのが、救いなのか、空しいのか‥‥」
 雑賀が軋む廊下を歩きながら小さく呟いた。
「まだ多少は明るいから探しやすいけど、夜間まで及ぶなら厳しいわね」
 ケイが呟き、窓の外から橙色に染まった夕日を見ながら呟いた。
「確かにな、明るいうちに見つけ出して倒さないと――地の利が向こうにある以上、危険だろうな」
 威龍も呟き、能力者達はキメラを探す足を少しだけ速める事にした。
「‥‥この辺は危険ですね」
 セシリアがポツリと呟き、役場から借りてきたペンで赤い丸をつける。足場が悪い場所などはチェックしておき、あとからキメラと戦う際にこの場所は避けなければならない。
「はー‥‥パンを銜えた美少女と、曲がり角でおでこゴチーンなら大歓迎なんだけどなー」
 雑賀が盛大なため息を吐きながら呟く。
 そして、その時だった――A班からキメラを見つけたという連絡が入ったのは。


 キメラを追いかけているA班はB班と連絡を取りながらキメラを誘導するポイントまで確実に追い詰めていった。
 A班が目標ポイントに到着した時、B班は既に着いていて戦闘準備万端の状態で待ち伏せていた。
 最初にセシリアが『練成弱体』で少女型キメラの防御力を下げる。
「おイタが過ぎるわ‥‥さぁ、お仕置きよ」
 可虐的な笑みを浮かべ、ケイが覚醒を行い『鋭覚狙撃』で少女型キメラが逃げぬように移動手段を潰した。
「哀しいキメラ――せめて安らぎを」
 シエラは呟きながら覚醒を行い、少女型キメラに近寄り足を狙って攻撃を行い、少女型キメラを転倒させる。
「そんなに学校が恋しかったか?」
 ベーオウルフは呟きながら『イアリス』で少女型キメラを攻撃する。足を狙われ、思うように動けないのか、少女型キメラはぎろりと能力者達を睨むと拳を振り上げて攻撃をしてくる。
 しかし、足がうまく動かせないため、その攻撃は能力者の頬を掠めるだけで能力者達に致命傷となるダメージを負わせる事が出来ない。
「そんな姿をしているからって、俺達はだまされない、手を緩めることはしないぞ!」
 威龍は『ディガイア』で少女型キメラの腹を強く殴りつける。
「ちょこまか‥‥動くなよ!」
 色々見えちゃうぞ、雑賀はおどけたように呟き『アサルトライフル』で攻撃をしていく。
 そして、雑賀が攻撃をやめると同時にクーヴィルが少女型キメラの近くまで走り『強弾撃』で攻撃を行う。
「その怪力、振るわせるのは得策ではないな」
 言いながらクーヴィルは少女型キメラの手を狙い撃つ。
 要は近くにいた能力者に『練成強化』を使い、怪我を負った能力者が出たらすぐさま治療できるように待機をしている。
 何度も狙い撃たれて少女型キメラは後ろへとよろけ、そこを狙ったかのようにセシリアが『超機械』で攻撃を行う。
「‥‥あなたは今を生きる子供達を冒涜しています」
 眉根を寄せ、セシリアは呟きながら後退し、セシリアと入れ替わりでケイが『急所突き』で少女型キメラを攻撃する。
「が―――はっ‥‥」
 少女型キメラは口から血を吐き、今にも泣きそうな顔で能力者達を睨む。
 キメラとしては泣きそうな顔をしているつもりはないのだろう。能力者たちがそう見えるだけで‥‥。
 その後、総攻撃によって少女型キメラを無事に倒し、能力者は安堵のため息を吐いた。

「哀しい少女――だったな。出来れば抱きしめてやりたかっ‥‥いやいやロリコンじゃないって」
 雑賀がポツリと呟いた言葉に能力者達は怪訝そうな顔で雑賀を見て、それに気づいた雑賀が慌てて否定をする。
「‥‥何を見ているんですか?」
 シエラがクーヴィルに問いかける。戦いが終わった後、彼は校舎を見上げ始めたのだから、不思議に思ったのだろう。
「いや、この校舎も、昔は多くの夢を育てていたのだろうな‥‥と思って」
 クーヴィルが呟くと「そう、ですね」とシエラも校舎を見上げながら呟く。
「――というか、うち‥‥トイレに行きたくなってきたわ――捜索ん時にしておくべきやったかな‥‥」
 もじもじさせながら要が呟き「ちょお行ってくる」と校舎内にあるトイレへと走っていった。
「なんと、三番目のトイレしか使えんやん。何かあるんかいな」
 要がトイレに入ると、一番目のトイレはドアが蹴破られていて、二番目のトイレはなぜか水が流れていない。
 そして「さぁ、カモーン!」と言わんばかりに三番目のトイレだけがキィキィと風にドアを揺らめかせながら要を待ち受けていた。
 少したじろぎながら要はトイレに入って、用を足すが――何もなかった。
「むぅ‥‥。これはお笑い的においしくない‥‥」
 何もなくて安心する反面、少しがっかりした自分がいることに気づき、要は苦笑しながら本部へと帰還するために能力者達の所へと走っていったのだった。


END