●リプレイ本文
「よぉっし、今日も元気に記者活動頑張るわよっ!」
土浦 真里(gz0004)は自分を奮い立たせるように編集室内で叫び、能力者の休日を取材する為に出て行ったのだった。
●にゃんこ大好きなゴッドの休日!
「えぇと、最初の取材者は〜‥‥」
取材メモを見ながらマリが呟く。
最初の取材者は神無月 翡翠(
ga0238)と書いてあり待ち合わせ場所はペットショップとなっていた。
「少し遅れちゃったけど大丈夫かな〜‥‥」
マリは呟きながら、ペットショップ付近に立っている人間の中で神無月の姿を探す。
「よお、お久♪」
結局マリは見つけきらず、神無月の方から声をかけてくれた。
「ゴッド! お久っす! いつ以来だっけ‥‥?」
「確か、新年会以来だな? 元気だったか?」
神無月の言葉に「もちろん!」とマリは笑って答える。
「あの時は悪かったな? どうも、俺の場合無理しすぎると体調崩すみたいでさ」
神無月の申し訳なさそうな言葉に「全然気にしてないッスよ」と答え、神無月の取材に取り掛かった。
今日の休日、神無月はペットショップで猫用のおもちゃとトイレ砂を買いにきたのだと店に入る前に教えてくれた。
「今日の用事は本当にこれだけだから、この後は家に帰るんだが‥‥」
「そういえばゴッドの家ってどんな所なの?」
マリが聞いた事を忘れないように取材メモを取りながら問いかけると「本が多いな」と短く言葉を返してきた。
「本?」
「あぁ、月華書房っていう本屋だからさ」
自宅が本屋だという事を聞いてマリが驚いたように目を丸くした。
「何かゴッドが本屋って少し意外だったなぁ。何時から開店してるの?」
「‥‥開店時間は遅いな」
「や、だから何時から「開店時間は遅いんだ」」
神無月はマリの言葉を遮り『開店時間は遅い』と強調する。
「じゃあ、今後確実に開いていそうな時間にお邪魔するね」
マリが苦笑しながら呟くと「あぁ」と神無月は短く言葉を返した。
ペットショップでの用を終えた後、マリは神無月の自宅にお邪魔することになった。
もちろん店は閉まっている。
「ゴッドって暇な時とか何してるの?」
マリが問いかけると、神無月は少し考え込み「猫と遊んでいる――かな?」と一匹のペルシャ猫を抱きかかえながら答えた。
その猫は茶色の毛に緑の瞳が映える可愛い猫だった。
「本当はもう一匹いるんだが、兄貴の部屋で寝ているな、多分」
「お兄さんがいるんだ!」
そう、神無月には双子の兄が存在する。
「あぁ、後は‥‥親戚の姉ちゃんもいるんだが、会っていないからな〜」
「そうなんだ〜。あれ? お父さんやお母さんは‥‥?」
マリが問いかけると神無月は困ったように頭を掻きながら「両親は、いねえよ」を短く呟いた。
「え?」
「俺が子供の頃に死んだ」
そう答える神無月に「ごめん」とマリが俯きながら謝罪する。誰でも大切な人を失った事なんて語りたくないだろうから――と考えたからだ。
「構わねえよ、気にすんな」
その時、神無月の両耳につけられている雫型のピアスに気がつく。
「ん? このピアスか? 兄貴とお揃いで親から貰ったんだが、他に形見と呼べるモンがろくに残ってないんだ」
話した後に「取材ってこんな感じでいいのか?」と神無月が問いかけてくる。
「もちろん、良い取材出来てうれしかったよ。ね〜?」
マリは猫の喉を擽りながら答える。
「さて、次の取材地に行こうかな。ゴッド、お兄さんを大事にしてあげなきゃだめよ〜?」
そういい残し、マリは次の取材者の所へと向かっていったのだった。
●太陽のような少年の休日!
「初めまして! 白鴉(
ga1240)です」
二人目の取材者・白鴉との待ち合わせ場所にやってくるとバスケットボールを持った少年が笑顔で話しかけてくる。
「ども! クイーンズ記者のマリでっす。今日は休日の取材なんだけど〜、今日は何をする予定なの?」
マリが問いかけると「へへ」と白鴉は少年特有の笑顔を見せながら話し始める。
「今日はマリさんに行きつけの公園を紹介しちゃうよ――っていってもココだけど」
白鴉の言葉にマリは公園を覗き込むとバスケやテニスコートなどが完備されているのが視界に入ってくる。
「休日はここで友達とバスケをするのが俺の日課なんだ♪」
白鴉がバスケコートの方を見ながら呟く。コートの方では白鴉の友人らしき人が数名こちらに向けて手を振っている。
「よかったらマリさんも一緒にやってみない? バスケ」
白鴉は笑顔でマリにバスケボールを渡しながら話しかける。
「バスケかぁ♪ ラフな格好で来て良かったわ」
ドリブルをしながらマリが呟く。
その後、マリと白鴉はコートに入る。
「こう見えてもマリちゃんはバスケ得意なのよ――っと!」
言いながら走り、マリはレイアップシュートをする。マリのシュートはリングに入り、地面にタンと音をたてながらボールが落ちてきた。
「まずは一点先取〜♪」
「え! これもカウントに入るの!?」
白鴉の言葉に「ブランクあるんだからハンデくれるでしょ?」と悪戯っぽく笑いながら言葉を返した。
それから暫く白鴉の友人とマリでバスケをしていた。
「そんなんじゃ俺は止まらないぜ!」
目の前を阻むマリと友人達に言い、素早くリングの元へと走りぬけ華麗にシュートを決める。
「よっしゃあっ!」
元気よくガッツポーズをして白鴉が叫ぶ。
「はー‥‥疲れたー、やっぱり年には勝てんわ」
バスケを終えた後、息を切らせながら呟く。
「あっちにシャワー室あるから、体を洗ったらお菓子タイムにしようよ。手作りクッキーとバナナ持ってきたから」
「へぇ、手作りなんだ〜。何か意外! はくちゃんって料理苦手に見えるから」
「俺、最近料理教室に通っているんだよ? 意外とかヒドイ‥‥」
「あは、ごめんごめん。じゃあシャワー室行ってきまっす」
マリはシャワー室に入り、白鴉も別なシャワー室に向かう。
それから暫くした後、二人は木陰に座り、白鴉手作りのクッキーを食べ始めた。
「美味しい♪ はくちゃん料理上手なんじゃん! でも一つだけ‥‥何でバナナ?」
バナナを食べる白鴉を見ながら問いかけると「え? おやつでしょ?」ときょとんとした顔で聞き返される。
「そ、それよりクッキー、本当に美味しい?」
白鴉が不安そうに問いかけると「美味しいよ〜?」とマリがもう一つ食べながら答える。
「そっか、よかった」
安心したように呟くと白鴉もクッキーを食べ始める。
「そういえば、はくちゃんって何で能力者に?」
マリが問いかけると「俺さぁ‥‥」と青い空を見上げながら呟きだす。
「こんな風に友達と何も変わらない日常を過ごすために能力者になったんだ。マリさんが能力者の休日って名目で取材しているけど、能力者も一般人も休日に変わりはないと思うんだよね‥‥」
白鴉は呟きマリは言葉も返さずに白鴉の言葉の続きを聞くために彼をじっと見る。
「皆が楽しんでいられる休日が一番だと思うよ。だからマリさんはこれからも皆の笑顔をバッチリ取材していってね? 応援してるから」
白鴉の言葉に嘘偽りは一つもないのだろう。まっすぐな目でまっすぐとした笑顔をマリに向けているのだから。
「うん、任せてよ。今日のクッキーのお礼――というわけでもないけど、今度編集室に遊びにおいで。マリちゃんの料理をご馳走しちゃうから」
そういってマリは片づけをして、白鴉と笑顔で別れたのだった。
●ノリノリたけるんの休日!
「次はたけるんだ」
取材メモを見ると、三人目の取材者は須佐 武流(
ga1461)と書いてあった。
先日、休日取材をしに行くからと伝えた時「じゃあ、頑張って取材してもらおうか?」と不敵に笑んで答えたのがマリの中に引っかかっていた。
「あれ、たけるんはどこかなー‥‥た、けるん?」
待ち合わせ場所にやってくると、須佐がランニングをしている姿が視界に入ってきた。
「おう」
須佐は足を止め、マリに軽く挨拶をする。
「もうちょい待っててくれ。あと少し走ったら休憩にするからさ」
そう言って須佐は再び走り出す。
「おおぅ、何か能力者って感じだ」
いや、能力者ですよ――と誰かが一緒にいたらツッコミが入りそうな言葉をマリは小さく呟く。
それから数分経った頃に須佐は汗だくで戻ってきた。
「お疲れ、たけるん」
ポイッと持ってきていたタオルを須佐に向けて放り渡す。彼の休日がトレーニングだと聞いていたため、一応持ってきていたのだ。
「サンキュ」
渡されたタオルで汗を拭き、須佐は10分間の休憩を取る。
「次は短距離だな」
「まだするの!? 十分走っているように見えたんだけど‥‥」
マリが驚きながら問いかけると「あと短距離と筋力トレーニング、サンドバッグ打ちが残ってるな」とけろりとした様子で答える。
「すごいねぇ〜‥‥私なんかそんなに動けないよ」
苦笑しながら呟くと「後で動いてもらうけどな」と須佐が呟き、短距離ダッシュをするために走り出した。
「‥‥後で? 私が‥‥? あれ? そんな予定あったっけ?」
手帳を見ながらマリは首を傾げる。
須佐が短距離ダッシュを終えた後、トレーニング室に移動し、須佐は筋力トレーニングを始めた。
最初に腕立て伏せ、腹筋、背筋、それぞれを50回ほどだろうか、それを楽々とこなしていく須佐を見て「やっぱり能力者なんだよね」とマリはしみじみ呟いた。
「ふー‥‥疲れた」
三種類の筋力トレーニングを行った後、マリは「いつもこんなハードなことしてるの?」と休憩をする須佐に問いかけた。
「ん? あぁ、まぁな。鍛えておかないと戦えないからな」
手を強く握ったり離したりを繰り返しながら須佐が答える。
「とりあえずはこんなもんか、結構軽くしておいたぞ? さぁ、マリも一緒に動いてもらおうか」
そう言ってサンドバッグを軽く叩きながらマリに話しかける。
「え?」
「体力ありそうだからこれくらいなら全然大丈夫だろ?」
「は?」
きょとんとするマリを他所に須佐は淡々と話していく。
「まずは俺が手本だな」
休憩を終えた須佐はグローブをサンドバッグに向けてパンチと蹴りを繰り出す。須佐が叩くたびにサンドバッグは横揺れ、縦揺れをしてサンドバッグを繋ぐ金具ががしゃんと煩いほどに鳴り響く。
「ほい、次してみ」
グローブを渡され、マリが戸惑いながらサンドバッグをパシンと叩く。
「おいおい、いつものマリ節はどうしたよ。もう少し腰入れて打ってみろって。こういう感じ――にな」
須佐がばしんとサンドバッグを叩く。
「む、無理だって! 私は一般人でか弱い女の子よ? そんな風には出来ないわよ」
マリが慌てて言うと、須佐はマリをジーっと見てポツリと呟く。
「一般人は認めるが『か弱い』を認めちゃいけねえって思う俺がいるぜ」
首を振りながら須佐が呟く。その様子にマリが「な、なんだとぅ!」とグローブをつけた状態でばしばしと殴る。
「いてぇっ、それをサンドバッグに向けてやれってんだよ」
苦笑しつつ、トレーニングを終え、ヘルメットをぽいっと渡してくる。
「これからバイク乗るから後ろ乗れよ。結構ストレス発散になるぜ」
それからマリは須佐が運転するバイクの後ろに乗る。ひたすら走る爽快感に「気持ちいいーっ!」とマリが叫ぶ。
「あんまり喋ると舌噛むから気をつけてくれよな?」
苦笑しつつ視線をちらりとマリに向けるが聞いていない様子で一人きゃあきゃあと騒いでいた。
そしてバイクを十分堪能した後、須佐の提案で焼肉を食べに行く事になった。
「この店で一番高――」
「多少は奢ってやらなくもないが‥‥調子乗ってあまり高いメニューばかり頼むと‥‥ワリカンにするからな」
マリが注文をしようとした時に須佐が呟き「骨付きカルビで!」とマリはメニューを変更する。
結局、少し高いものについた須佐は「‥‥何で取材に来た奴にこんな奢ってやらなくちゃ‥‥」と一人嘆いていたのだ。
●マリ対策を連れてきた傭兵さんの休日
「やっばーい。遅れた遅れた」
四人目の取材者は橘・朔耶(
ga1980)で、待ち合わせは公園の入り口だったのだが、マリは遅れて全力で走っていた。
「ごめーん、待たせた――?」
橘の姿を見つけ、挨拶しながら近寄ったマリだったが、隣に連れている黒い犬の姿を見て「きゃー」と言いながら橘の横を通り過ぎた。
「ちょい待った待った」
橘がマリを呼び止めると「黒い犬が見えるううう」と涙声で叫ぶ。
「大丈夫だって。こいつはティエランといって凶暴じゃないはず?」
何故か疑問系で答える橘にマリは余計に不安が募る。
「少し先に休憩出来る広場があるから、そこでご飯にしようよ」
マリはティエランから少し(かなり)離れた所で「そうだね」と呟き、広場を目指す。
広場に着いた時に、橘はリュックの中からレジャーシートを取り出し、広げてその上にご飯を広げ始める。
「屋内で食べるものばかりねー」
マリが取り出されたものを見て呟くと「屋内で食べる料理を、たまにはこうして食べると楽しいんだよ♪」と橘は答えた。
タッパーをラーメンとお茶漬けの器にしてラップに巻いて持ってきたご飯やラーメンに入れるものを取り出していく。
「これがラーメンのスープね」
ポットを取り出し、橘はラーメンやお茶漬けを用意した後、マリに器を渡す。
「ありがと!」
マリは器を受け取り、ラーメンを一口食べる。
「んまーい!」
「あとオカズにホッケの粕漬け・菜の花の和え物・筍の若竹煮があるよ」
タッパーを出しながら橘が呟き、自身も食べていく。
「そういえば何で真里は犬が苦手なの?」
食べながら橘が問いかけると「実は‥‥」と俯きながら呟き始める。
「犬に追いかけられた――というのもあるんだけど犬に私の食べ物を取られたからなのよ、私のドッグフード‥‥」
悔しそうに呟くマリに橘は掛ける言葉が見つからなかった。
(「ドッグフードって事は犬の餌じゃ‥‥?」)
「そ、そうなんだ。でもティエランは食べ物取ったりしないから大丈夫だよ」
その後、ご飯を食べた後持ってきていたオヤツ『クロテッドクリームサンド』と『桃のフレーバーティー』でまったりと寛いでいた。
「きゃあああああっ!」
突然マリが叫んだかと思い、橘が視線を向けるとティエランがマリにじゃれついていた。
普通の戯れなのだろうが、マリとしては悪魔の使いにしか思えていないようだ。
「そ、それにしても‥‥結局あんまりたいした取材出来なかったわね‥‥私が食べてばっかりだったから」
「あは、ただ単に俺も食い意地が張ってるからな」
橘が苦笑し、日向ぼっこでをしながら他愛ない雑談を交わし、取材を終えたのだった。
●未来の夫婦の休日!
「次は〜‥‥」
マリがメモを見ながら呟く。次の取材者は漸 王零(
ga2930)だった。
そしてその次の取材者である王 憐華(
ga4039)とは婚約者との間柄だと聞いていた。
「王ちゃ〜〜〜ん!」
朝も早くから走っている漸に大声で話しかける。朝が早いので誰も聞いてはいないが、呼ばれている方としては多少なりとも恥ずかしいものである。
黒いジャージで走っていた漸はマリに近寄り「何だ、汝か」とフードを取りながら言葉を返す。
「それにしても結構走っているんじゃない? 汗が凄いけど〜‥‥」
マリが問いかけると「朝の四時半から走っている」と漸は答えた。
「ひぇー‥‥私は夢の中の時間だね‥‥この後は?」
「望――実家から連れてきた子狼と散歩兼ジョギングだな」
「子狼かぁ、可愛いんだろうね。でも散歩までトレーニングみたいな事するんだ?」
マリが問いかけると「我の流派は名の通り闇を聖としている」と漸は話し始めた。
「だから、技の中には世間が言う裏の仕事用の技なんかもあるが基本的にはまっとうだ。喧嘩売ってる奴が普通じゃないがな‥‥簡単な護身の技でも教えようか?」
「え? 私にも覚えられる?」
「あぁ、体術から武器・さらには暗器によるものまであるが‥‥」
漸の話を聞いて「む、難しそうだね」とマリは苦笑気味に答えた。
「折角だから教えてもらいたいんだけど、この後にれんちゃんの取材があるんだ。だからまた後でね」
そう言ってマリは漸に簡単な挨拶をした後別れて行った。
「‥‥‥‥また後で?」
漸の呟きに答える者はすでに遠く離れていた。
「れんちゃ〜〜ん」
次の取材、それは漸の婚約者でもある王だった。
「まぁ、こんにちは、マリさん」
マリの来訪に王は丁寧に頭を下げ挨拶をしてくる。
「傭兵さんの取材をさせてもらいに来たよ♪」
「傭兵の休日ですか? 案外普通だと思うんですが‥‥」
王は答えながらマリを室内に案内する。どうやら午後の漸とのデートに着ていく服などを決めていたようだ。
「お昼ご飯はお弁当にするんだよね? 何を作るの?」
「中華系が、とマリさんが言っていましたのでチャーハンのおにぎり、海老や帆立の海鮮マヨネーズ炒め、揚げ餃子、鳥のから揚げと中華サラダにしようかと思っています。レシピを頂きましたので」
そういってレシピを取り出し、王は料理を始めた。マリは王が料理をしている間、写真を撮ったりなどして時間を潰していた。
「わ、美味しそう」
マリが料理を覗き込みながら呟くと「味見してみますか?」と王が小皿に入れてマリに手渡してくる。
「味見といえば‥‥あの人、私の料理はお団子以外に食べさせてはいけないと言っていました。なので内緒ですよ?」
王がにっこりと笑いながら話してきたので「もちろん♪」と呟き、料理を一口食べた。
「わ、美味し―――い?」
食べながら何故か疑問系になるマリに「どうですか?」と期待に満ちた表情で美味しいかを王は聞いてくる。
ここできっとマリが『美味しくない』と言ってしまったら、こんなにも一生懸命作っている王が傷ついてしまう。
そう考えたマリは「もちろん! 凄く美味しいよ! 王ちゃんが羨ましいよ♪」とばっちり笑顔で答えた。
「本当ですか? 嬉しいです!」
そういって王は先に作っていたみたらし団子を差し出してくる。
「これもどうぞ」
「ん、んんん?」
食べながらマリが唸る。先ほどまでの料理とは違い、王の作るみたらし団子は本気で絶品だった。
「美味しいっっ!」
さらにもう一つとマリが食べて、午前の取材は終わった。
その後、マリは王と一緒に漸との待ち合わせ場所までやってきた。
「‥‥さっきの言葉の意味はこれだったのか‥‥」
また後で、と言って別れたマリが何故か王と一緒にいるのを見て全て納得したように呟いた。
漸は黒を基調、王は赤を基調とした色の服を着ており、とても似合いの二人だった。
「まずは公園で昼食にしましょう」
王が呟き、近くの公園で持ってきたお弁当を広げ始める。
「今日は中華系なのだな」
「えぇ、マリさんもたくさん食べてくださいね」
「わーい‥‥いただきまあす」
マリは引きつった笑顔で料理を食べ始める。そしてその態度が漸に『味見をした』ということを知らせてしまうことになったのだった。
「れんちゃんのみたらし団子、本当に美味しい! 他の記者にも食べさせてあげたいくらい」
マリはみたらし団子を食べながら笑顔で王に話しかける。
「そうだろう、こいつの団子は絶品だからな」
漸が呟くと「ノロケちゃってぇ」とマリがからかうように言葉を返してくる。
その後、三人(といっても折角のデートなのでマリは離れている)は町の散策に出かけた。
久々のデートということもあってか、王は漸に甘え、漸も照れたような表情で町を歩いていた。
きっと二人の知り合いがいたら驚くのだろうとマリは考えながら、そっと二人の側を離れ、取材を終えたのだった。
●お嬢様な傭兵の休日!
次の取材者は絢文 桜子(
ga6137)だった。
「待ち合わせは街のショッピングエリアだったよね」
人込みをかき分けながら先に待っていた絢文の所へと小走りで駆け寄った。
「マリ様、こちらですわ」
絢文が少し手を上げて自分の場所を知らせる。
「ごめん、待たせちゃった?」
「いいえ、そんなことはないですよ」
今回の休日、彼女は趣味のお菓子作りの材料を買うためと可愛い物ウォッチングをするのだという。
「備品や兵装などもありますから、あまり増やせないのですけど」
苦笑しながら絢文はお菓子作りのための材料を手際よく買いそろえ、ファンシーグッズなどの店を覗いている。
「ん?」
店を覗いては首を振る、それを何度も繰り返す絢文を見て、マリは何を見ているのだろうと立ち止まった時に見ているものを覗く。
するとうさぎの可愛いぬいぐるみだった。
きっとウサギが好きなのだろう。ぬいぐるみに限らず、うさぎの可愛いグッズの所で立ち止まっているから。
「ねぇねぇ、桜ちゃん」
絢文を呼びとめると「何でしょう?」と振り返る。
「ちょっと買いたいもの思い出したから、そこの待合室で待っててくれる?」
マリが呟くと「えぇ、分かりました」と材料持って椅子に腰掛けた。
それから十分程度が過ぎた頃、マリが戻ってきて持っていた紙袋を絢文に渡した。
「え?」
「取材させてくれるお礼♪ 好きなんでしょう?」
絢文は目を瞬かせながら紙袋を開けると、先ほど見ていたうさぎのぬいぐるみが入っていた。
「こ、これは‥‥うさぎのぬいぐるみ‥‥」
うさぎのぬいぐるみとマリとを交互に見ながら「よろしいのですか?」と問いかけてくる。
「もちろん、ぜひ貰ってよ」
マリが呟くと「ありがとうございます」と丁寧に頭を下げてお礼を言う。
「さて、じゃあお菓子作っている所を取材させてもらおうかな♪」
分かりました、絢文は答え兵舎『今日の記憶』へと移動したのだった。
「マリ様はお料理がお得意とお聞きしましたわ。出来たら今日はご一緒出来ますかしら?」
きっと男性ならばどきっとするであろう笑顔で料理のお誘いに「もちろんだよ」とマリは答えた。
『今日の記憶』のミニキッチンではカントリー風のお料理グッズが機能的に並べられていて、普段から料理好きなのだという事が伺えた。
「マリ様ならどんなクッキーを作られます?」
和服に割烹着姿の絢文はマリにレースたっぷりのエプロンを渡してくる。
「ありがとう、私は〜‥‥チョコをあわせてマーブルクッキーとかよく作るかなぁ。後は梅とか混ぜて作る梅クッキーとか」
「梅、ですか?」
「意外と美味しいんだよ? さっぱりした風味がさ」
マリの言葉に「そうなんですか」と呟きながら絢文はクッキーを作っていく。
それから暫くした後にクッキーが完成して、出来立てクッキーを食べるおやつタイムをすることにした。
「はい、マリ様」
淹れたての紅茶を差し出しながら絢文もマリの前に座る。
「わたくし、クイーンズはよく拝見していますから、こうしてお話出来る機会を持てまして嬉しかったですわ」
絢文が紅茶を飲みながら話しかけてくる。
「ホント? 嬉しいな♪」
「傭兵の暮らしを長くしていると、平穏な暮らしを忘れがちになるのですけれど‥‥雑誌の記事に励まされる事も多いんですの」
「そ、そうなの? ありがとう。これからも頑張って記事書く!」
「頑張ってくださいませ」
絢文はにっこりと笑って呟き、彼女の取材を終えたのだった。
●釣りっ子傭兵の休日!
「最後の取材者は〜‥‥」
取材メモを見ながらマリは呟く。
最後の取材者は鷹崎 空音(
ga7068)だった。
「待ち合わせ場所は海沿い‥‥何するんだろ」
予め渡されていた待ち合わせの場所まで行くと、先に鷹崎が来ていた。
「はじめまして、鷹崎 空音です」
「ども、マリちゃんでっす。今日はどこに―――釣り?」
鷹崎の手に持たれていたクーラーボックスと竿を見てマリが呟く。
「ふふ、ちなみに真里さんにも手伝ってもらうよ〜‥‥その代わり夕飯ご馳走するからさ」
鷹崎の言葉に「分かった、喜んでお手伝いさせてもらうね♪」と答え、予備の竿を借り受けて鷹崎の後を着いていくことにした。
「この前、ボクが見つけたいい所があるんだ」
目的の場所に向かう途中、鷹崎が笑いながら話しかけてくる。
「そうなんだ? 私、釣りはしたことないからなぁ」
「そうなの? 意外とハマるよ。今日は日没まで粘ってみるつもり」
「この辺は何が釣れるの?」
マリが問いかけると、鷹崎は少し考えた後に「カサゴとかかな」と答えた。
「後メバルなんかも釣れるはずなんだけど‥‥釣果0って事もあったし‥‥運次第、かな?」
鷹崎は苦笑しながら呟き、目的の場所にたどり着いた。
「あ、そういえばソウダガツオみたいな大物もたま〜‥‥‥‥にとれるから、なんていうか‥‥やめられないんだよね」
そう話す鷹崎の表情はどこか楽しそうに思え、マリも「頑張ろうね」と呟き、二人は釣りをすることになった。
そして釣りを始めて暫く経った頃――鷹崎から欠伸が一つ漏れた。
「待っている間が‥‥ちょっと、眠くなるんだよね〜‥‥特に今日みたいに日が差している時だと、ついうとうとしちゃうし‥‥リラックスするというか‥‥」
その時、竿が引き「っと、いけないいけない」と慌てて引っ張り始める。
「だ、大丈夫?」
あまりにも眠そうなので、マリが心配して話しかけると「大丈夫です」と鷹崎は答える。
「‥‥竿を引っ張ってたらちゃんと起きますよ? たぶん‥‥」
たぶんと自分で言うあたりが物凄く不安になるマリで、釣りはもちろん、鷹崎の様子もきちんと見ておくことにした。
結局、鷹崎が後から頑張ったおかげで見事、夕飯分の魚を釣る事が出来た。
「美味しい、そらねちゃんって料理上手なんだね」
鷹崎が釣った魚で料理を行い、それを二人で食べていた。
「これでも料理にはちょっと自信があるんだ」
呟き、鷹崎もご飯を食べていく。
「誰かと一緒の食事も久々だし、余計に美味しく思えてくるね」
鷹崎の言葉に「そうなの?」とマリが問いかける。
「ん、ボクが実家を離れてからだから、久々になるかな。真里も今度また都合ついたらまた釣りに行こ?」
鷹崎の言葉に「喜んで♪」とマリが答え、今回分の取材すべてを終えたのだった。
END