タイトル:もやしと買物日和マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2013/02/07 03:33

●オープニング本文


限定のウサギぬいぐるみが発売されるらしいわ。

だから、買い物に行きたいんだけどキメラの残党がいるらしいのよ。

仕方ないから一緒に買い物に行ってあげるからついて来なさいよね!

は? 断る? そういう権限がアンタにあると思ってンの?

ごちゃごちゃ言い訳なんかしないで、さっさとついて来なさいって言ってるのよ!

※※※

世界が着々と平和に向かい始めている頃、彼女――キルメリア・シュプールは小さくため息を吐いていた。

その手には『限定』と派手な文字で書かれた広告。

誰が見ても、彼女がそのぬいぐるみを欲している事は一目瞭然だった。

「欲しけりゃ買いに行けばいいじゃねぇか」

通りすがりの男性能力者がキリーに言葉を投げかけた時、

次の瞬間、彼は腹部に激しい痛みを訴えていた。

「買いに行け? 簡単に買いに行けたらそうしてるに決まってるじゃないの、このヘタレ男が!」

「この場所を見なさい。キメラが残っていると言われている場所にあるのよ?」

「そんな場所に1人で買いに行けると思ってるの? 可憐でか弱い私が1人で買いに行けると?」

「寝言は寝てから言いなさいよ、このヘタレクズ」

男性能力者が反論する間も与えない程、キリーは言葉をまくしたてながら、

男性能力者の額に広告をぐりぐりと押し付けていた。

「このシリーズのぬいぐるみは集めているし、どうすればいいのかしら」

●参加者一覧

土方伊織(ga4771
13歳・♂・BM
勇姫 凛(ga5063
18歳・♂・BM
百地・悠季(ga8270
20歳・♀・ER
白虎(ga9191
10歳・♂・BM
仮染 勇輝(gb1239
17歳・♂・PN
クレミア・ストレイカー(gb7450
27歳・♀・JG
ガル・ゼーガイア(gc1478
18歳・♂・HD
雁久良 霧依(gc7839
21歳・♀・ST

●リプレイ本文

―― 苦行に巻き込まれた人たち ――

(はわわ、せんそーが終わって平和を謳歌してたらエライ呼び出し喰らったですぅ)
 土方伊織(ga4771)はがたがたと震えながら、心の中で叫びをあげていた。
(しかも、限定うさぎの為にキメラ退治って、何かが間違ってる気がするんですけど〜!)
 しかし、キルメリア・シュプール(gz0278)に呼び出されて無視をしたら――そっちの方が怖い事になりそうで、土方は仕方なく嫌々泣く泣く待ち合わせ場所に来ていた。
(別に凛は限定ぬいぐるみが欲しいからここにいるわけじゃない。可愛い物が好きなんて‥‥そんな事があるはずない、キルメリアが困っているから来ているだけなんだからな!)
 勇姫 凛(ga5063)は自分の心に言い聞かせながらも、現地で販売予定とされている『限定ぬいぐるみ』の広告をしっかりと持って待ち合わせ場所に来ていた。
(とりあえずキリーのお望み通り、キメラを退治してから買い物って所かしら)
 百地・悠季(ga8270)も勇姫が持っている広告と同じ物を見つめながら、心の中で呟いている。
(‥‥まぁ、キメラ退治の方は集まるメンバーがメンバーだから大丈夫でしょ)
 百地は心の中で言葉を付け足しながら、買うべき物に印をつけ始める。
(キリーお姉ちゃんとデートなのにゃー♪ 余計な奴が大勢着いてきてるけど気にしないのにゃー♪ グギギ‥‥)
 白虎(ga9191)は心の中で呟きながら現地のマップを見つめている。気にしないと言いながらも『グギギ‥‥』と言っている事から、全然『気にしない』を実行できていないのだろう。
(またですか‥‥。また、キリーさんに振り回される日々が始まるんですねぇ)
 仮染 勇輝(gb1239)は苦笑しながら集まったメンバーを見つめている。
(‥‥このメンバーなら、また苦労するんだろうなぁ)
 だけどその『苦労』でさえも楽しむかのように、仮染は笑みを浮かべていた。
「買い物ねぇ、そのためにわざわざ皆を呼び出すなんて‥‥キリーらしいわ」
 クレミア・ストレイカー(gb7450)は苦笑しながら小さな声で呟く。
「うさぎかぁ、もやしって意外と少女趣味を持っていたよな。そういう所ももやしの魅力なんだけどな!」
「何、あんたもしかして私をそんな目で見てたの? やだ、襲われるわ‥‥!」
 ガル・ゼーガイア(gc1478)の呟きを聞きながら、キリーが恐ろしいほどの早さでガルと距離を置いた。
「ちょっ! 何で久しぶりなのにいきなり距離置かれるんだ! 俺何もしてねぇ!」
「したわよ。脳内でいやらし〜想像をしたでしょ」
「‥‥してねぇ!」
「間が空いたにゃ」
「空きましたね」
「はわわ、そ〜ゆ〜妄想はこんな公の場でするもんじゃない〜ですよー」
「どんな妄想だ! お前は俺の頭の中を覗いたのか!? 俺は人に言えねぇ想像なんかしてねぇぞ!」
「はぁい、キリーちゃん♪ 久しぶりに会えて嬉しいわぁ〜♪」
「ぎゃっ! で、出たわね! 乳魔人!」
 雁久良 霧依(gc7839)はキリーを強く抱きしめながら言葉を投げかけている。
「ちょっと待て! 弁解の途中で話を遮るのはやめてくれ!」
 結局ガルは弁解をさせてもらえないまま「いやらしいMの人」という新しいレッテルを貼られてしまった。
「今日の目的はうさぎ――‥‥じゃなくてキメラ退治よ! あんた達、しっかりと私のためにキメラを退治しなさい。そうしたら少しは褒めてやってもいいわ」
 相変わらず偉そうなキリーだったが、仲間同士で諍いを起こしても仕方ないので能力者達は『自分は大人、自分は大人』と心に言い聞かせながらキリーの言葉を受け流す。
「とりあえず買い物をするにしてもキメラが邪魔ね。早く退治して買い物を楽しみましょう」
 クレミアが呟き、能力者達は高速艇に乗り込みながら現地へと向かい始めたのだった。


―― 相変わらず空気なキメラさんでごめんなさい ――

 今回、能力者達は班で分ける事はせずに、固まって動くという作戦を立てていた。
「キリーさん、木の枝で引っかかないようにして下さいね」
「大丈夫よ。私があんたを引っかいてあげるから」
「‥‥地味に痛い」
 仮染が優しく注意を促しただけで、何故か傷が増えてしまう。
(まぁ、こんな所もキリーさんらしいですけどね)
 にこにこと微笑みながら仮染は心の中で呟いているが、彼の腕は引っかかれたせいで赤く腫れてしまっていた。
(はわわ、ゆーきさん、それ何か違うですー! 何か感覚がマヒしちゃってるーですよー)
「もやし! 足元に気を付けろよ、転んだらせっかくの服が汚れちまうからな!」
「うるさいわね、私が汚れないようにあんたが気を付ければいいんでしょ、カスヘタレ」
「ふっふっふ! それぐらいの毒舌や攻撃なんか効かないぜ!」
「‥‥ねぇ、白虎、バカMが苛めるんだけどどうにかしてくれない?」
 キリーは嘘泣きをしながら白虎に言葉を投げかける。
「き、貴様ーっ! 何をしているかぁぁ!」
「‥‥ガルさん、覚悟は出来ていますよね?」
 何故か仮染まで参戦してしまい、その後ろではキリーがニタァ‥‥と悪そうな笑みを浮かべてガルを見つめていた。

「今日は気持ちいいくらいの晴天で良かったわね」
「‥‥そ、そうだね。絶好の買い物日和かもしれないね」
「頼むよ。俺の惨状に気が付きながら目を逸らすのはやめてくれよ‥‥」
 まだキメラは現れていないはずなのに『何故か』ガルの傷が増えてしまっている事に、他の能力者達は気づきながらも、あえて気づかない振りを選んでいた。
「くそぅ、あれは絶対泣き真似だったのに‥‥!」
「1%でも可能性があるなら見過ごせないにゃ!」
「‥‥惚れた弱味ですよ」
 白虎と仮染はさらりと言葉を返しながら、街へ続く道を急ぐ。
「相変わらずキリーちゃんってばやんちゃなんだから〜♪」
「‥‥やんちゃで酷い目に遭わされてんだよ、俺は‥‥!」
「ふん、これに懲りたら私の毒舌が効かないなんて言わない事ね」
「‥‥俺、何も悪い事はしていないはずだよな? なっ!?」
「さぁ〜、私はキリーちゃんみたいな幼女の味方だから何とも言えないわ♪」
 あっさりと雁久良に裏切られてしまい、ガルはがくりと膝が折れる。
「‥‥‥‥」
 だけどキリーが石を投げようとしている姿を見てしまい、慌てて立ちあがって能力者達と合流した。
「ちょっと待って、動かないで」
 百地が小さく呟き、能力者達に動かないようにと指示を出した。
「‥‥ギリギリ100m地点の所で私達以外の何かがいるわ、大きさ、数、今回のキメラと当てはまる」
「気をつけて! ‥‥来るっ!」
 勇姫が叫んだ直後、能力者達は襲い掛かってくるキメラの姿を確認する。
「はぅ、すごく不憫なキメラさんですけど‥‥仕方ないのですぅ」
 土方は愛用の棍を取り出し、襲い掛かってくるキメラに対して構えた。

―― 戦闘開始・今回のメンバーに勝てるはずがないよね ――

 最初に攻撃を仕掛けたのは土方。スキルを使用してキメラとの距離を縮め、愛用の棍で強力な一撃を繰り出した。
「ぬいぐるみを買う邪魔‥‥絶対にさせないんだからなっ!」
 勇姫も大鎌を振り回しながら、キメラに向かって言葉を投げかける。彼にとっては護衛よりもそっちの方が大事らしく、その呟きを聞いていた能力者は苦笑を漏らしていた。
「‥‥主婦の買い物を邪魔するなんて、良い度胸をしているわ、たっぷりと後悔なさい」
 百地はスキルを使用しながらキメラへと攻撃を行い、冷笑を湛えながら呟く。
「射撃を行うわ! 離れて!」
 クレミアの合図を受けた後、キメラの近くにいた能力者達は一斉にその場から退く。
 そして、スキルを使用しながらキメラに牽制攻撃を仕掛け始める。
「一匹の足は奪ったわ、とどめは任せたわよ!」
「‥‥ウサギの如く、首を撥ねろ、紫苑!」
「その程度の実力で俺達の足止めとは、冗談にならない冗談だ」
 勇姫と仮染は互いに連携を行い、1匹目のキメラを無事に退治する事に成功した。
「残りは1匹、このメンバーなら苦労なく退治が出来るでしょうけどね」
 百地が髪を掻きあげながら呟き、もう1匹と戦う能力者達を見つめていた。

「もう1匹の方は無事に退治されたみたいだな、お前もさっさと倒れろよ!」
「本当にね、私達は買い物を楽しみに来ているんだから時間を掛けさせないで欲しいわ」
 雁久良がスキルを使用して能力者達の武器を強化し、逆にキメラの防御力を低下させる。
「わんこタイプをボコスカ殴るのは気が引けますけど〜、仕方ないのですぅ‥‥」
 土方は言葉とは裏腹に躊躇いなくキメラを殴り、ガルもスキルを使用して攻撃態勢を取り始めた。
「キメラなんか、もうお呼びじゃねぇんだよ! 人の恋路を邪魔する奴はさっさと倒されろ!」
 逃げようと背中を向けたキメラに、ガルはスキルを使用して回り込む。
「逃がさねぇぜ! 負け組はさっさと消えろ、このスカタン!」
 土方、ガルはそれぞれ力を合わせてキメラへと攻撃を行い、2匹目のキメラも無事に退治する事が出来たのだった。

―― キメラ退治の後は楽しい買い物タイム ――

「ふぅ、やっぱりキメラ退治は疲れるわね」
 街への道を歩きながら、キリーがため息交じりに呟く。
 その言葉を聞き、8人の能力者全員の心が『何もしていないじゃないか』と1つになっていた。
「流石に街中では白衣のボタンを留めておいた方がいいわね。色々と問題あるかもしれないし♪」
 白衣のボタンを留めながら、雁久良が苦笑気味に呟く。

 そして、街に到着すると、それぞれ各々が自由行動を取り始めた。
(はわわ、限定うさぎって『限定』と言うからには個数が少なそうなのです)
 がたがたと震えながら、売り切れていた場合の『楽しい未来図』を想像して、今すぐ家に帰りたい気持ちでいっぱいだった。
(ぼ、ぼくー、売り切れていたら、何が何でもお家に帰るですぅー!)
 その時、土方の視界に白虎と仮染の姿が入り(まおー様、そろそろ生贄――じゃなかった、恋人さんを決めればいいのにー)と自分の平穏のためにも切実に祈らずにはいられなかった。

「‥‥♪」
 ほくほくとした表情で街中を歩いているのは勇姫だった。彼は街に到着すると何よりも先に限定うさぎの店へと向かい、無事に限定うさぎを購入する事に成功していた。
「あら、限定うさぎを買う事が出来たのね。私が買えなかったら奪うから覚悟しておきなさいよ。それにしてもうさぎが好きなんて良い趣味ね、褒めてあげるわ!」
「へっ、い、いや! 凛、ぬいぐるみなんかに興味はないんだからなっ!」
 キリーからの言葉に勇姫は慌てて否定するが、ぎゅっと抱きしめたままの姿が『ぬいぐるみ好き』を物語っているような気がする。
「こ、これは恋人! 恋人にプレゼントする為に買ったんだからなっ!」
 わたわたと慌てながら勇姫は言葉を返すが、キリーは「そういう事にしておいてあげるわ」と意味深な言葉を残して、限定うさぎの店へと走って行った。

「この街って可愛い子供用品も売っているのね、買って帰ろうかしら」
 百地は色々なお店を覗きながら、幸せそうに微笑んで呟いている。
(キリーがお望みの物を手に入れたら、色々とコーディネートしてあげたいわね)
(やっぱり女の子は着飾る事が出来るからいいわよね、後からの楽しみにしておかないと)

「何であんた達までついて来てるのよ」
 行列が出来ている店の前で、キリーが白虎、仮染、ガルの姿を見て眉をひそめる。
「僕もぬいぐるみを集めてるのにゃん♪」
 しかもどんな方法を使ったのか、ガルと仮染はキリーと白虎よりも随分と前の方に並んでいる。
(‥‥勇姫もそうだったけど、どんな方法で来たらあんなに早く並べるのかしら)
「うふふ♪ 私もいるわよ♪」
 後ろからむぎゅっと雁久良がキリーに抱き着きながら話しかける。
「何であんたまで並んでるのよ!」
「私もペットにプレゼントをするからよ♪ キリーちゃんと同じ歳くらいの女の子よ♪」
「‥‥凄い発言を聞いた気がするわ」
「キリーお姉ちゃんと同じ歳くらいの女の子を、ペット‥‥だとっ!?」
「‥‥何興奮してんのよ、あんた‥‥」
 やや引き気味にキリーは白虎へと言葉を投げかける。
「べ、べべべ別に興奮なんてしてないのにゃ! ぼ、僕は別に!」
「興奮して動揺までしているじゃないの。何、そういう趣味があるの? やだぁ、怖い」
「やめて! ガル君みたいに僕までいやらしい妄想の産物にしないで!」
「うふふ、今度キリーちゃんにもペットを見せてあげる♪ その時は可愛がってあげて欲しいわ、私はハァハァしながら見てるから! いえ、その時は私が纏めて可愛がるのもいいわね、最高!」
「キリーお姉ちゃん、興奮とはああいう人の事を言うのです」
「‥‥分かりやすい説明をありがとう」

「残念ねぇ、キリーちゃん達の分のきぐるみも買って来ようと思ったのに。なかったわ」
 クマのきぐるみを着ているクレミアが盛大なため息を吐いた。
 いや、きぐるみを着ているのだから詳しい事は分からないが、何となくそんな感じで。
「白虎くんは猫、キリーちゃんはうさぎ、絶対に可愛いと思ったんだけど、これしかなかったのよねぇ‥‥」
 クレミアはバニーガールの衣装を見ながら、再び深いため息を吐く。
「‥‥これは、さすがにキリーちゃんのサイズに合わないから無理よね、残念だわ」

「あら、無事に買えたのね」
 ぎゅ、とうさぎのぬいぐるみを抱きしめながら歩くキリーを見つけ、百地が声を掛けた。
「もちろんよ。買えなかったらわんこをねじ切る所だったわ」
「‥‥神様ー、ありがとうなのです、今日ほど神様に感謝した日はないのですぅー!」
「だったら新しい洋服を買ってみたら? コーディネートしてあげるから、おいで」
「えっ、ちょ、ちょっと!」
 百地は返事を聞く前に、キリーの腕を引っ張って店の中に入って行った。

「‥‥何をしているんですか、白虎さん」
「そっちこそ、何をしているのにゃ」
「俺は野暮用です」
「僕も野暮用だにゃ」
 白虎が手にしているのはうさぎがモチーフの可愛いネックレス、仮染が手にしているのは盤面にうさぎの絵が描かれている可愛い腕時計。
 どちらも『うさぎ』が使われている時点で『誰』にあげる物なのか分かっていて、お互いに苦笑せざるを得なかった。

 そして百地のコーディネートでブラウスとパンツスーツという大人っぽい格好のキリーが現れ、一部の能力者達は心の中で喝采をあげていた。
「な、なぁ、もやし? 俺をお前の専属SPにしてくれねぇか? 恋人とかじゃなくて、王女様と騎士みたいな感じでよ‥‥!」
「SP? 別にいいわよ、あんたの実力は分かっているから屋敷の人間も文句は言わないと思うし」
「‥‥よっしゃぁぁぁっ! 俺の就職先が決定したぁぁぁぁっ!」
 さらりとOKを出されガルは両手を挙げて喜び、その後、白虎と仮染に「話がある」と呼び出される事になったのだった。

END