●リプレイ本文
今日はクイーンズ記者の自宅で新年会!
もちろん主催は土浦 真里(gz0004)なので簡単なものではない‥‥はず?
●やってきたぞ、2008年!
「ごめんねー、手伝ってもらっちゃって〜‥‥今日はチホがいないから雑用――ごほん、手伝ってくれる人がいなくて」
さり気無くチホに対して酷い事を言いながらマリはキョーコ・クルック(
ga4770)に謝る。
キョーコは新年会開始の時間より先に来て、マリの手伝いをしてくれていた。
「クリスマスパーティーでは楽しませてもらったから、そのお礼みたいなもんだよ」
キョーコがテーブルに料理を運びながら答える。彼女はいつものメイド服でやってきたのだが、着替えとして着物を持参してきている。
「あ、手伝いはもういいから着物に着替えてきていいよ♪ そろそろ皆が来る時間だしね」
マリがキョーコに向けて話しかけると「それじゃお言葉に甘えて♪」と持って来た着物を持ってマリの自室へと歩いていった。
その時、玄関のチャイムが鳴ってマリは小走りで玄関まで向かう。
「新年あけましておめでとうございます。新年会にお招き頂き、ありがとうございます。今年も宜しくお願いしますね」
丁寧に頭を下げて新年の挨拶をするのはコー(
ga2931)だった。その隣には霞澄 セラフィエル(
ga0495)も立っていてコーと同じように頭を下げて、新年の挨拶をしてきた。
「あけましておめでとうございます。マリさんと会うのは久しぶりですね、今回はお招きありがとうございます」
最初にやってきたのはこの二人で、マリはリビングへと行くように促す。
その後に続いて他の能力者達もやってきた。
「やあ、あけましておめでとう」
爽やかな笑顔でやってきたのは国谷 真彼(
ga2331)だった。
「よう、今日はありがとな」
沢村 五郎(
ga1749)も立っていて、隣にはクレイフェル(
ga0435)もいた。
「あけおめ! コっちとキョーちゃん、かすみちゃんも来てるから中に入って入って」
能力者達の背中を押すようにリビングへと歩かせる――とシエラ(
ga3258)もやってきた。
「Ein gluckliches Neues Jahr(新年あけましておめでとうございます)Ein frohes、gesundes Neues Jahr(喜ばしい、ご健康に恵まれた新年を)」
シエラは母国のドイツ語で新年の挨拶をした―――のだが、マリはドイツ語が分からなかったので、こっそりとシエラに訳を教えてもらっていた。
「あと来てない人はー‥‥」
「私達は来ているわよ」
マリが声のする方を見ると小鳥遊神楽(
ga3319)と威龍(
ga3859)の二人が立っていた。
「二人ともいらっしゃい!」
「今回はお招きありがとう、今年も宜しく頼むわね」
小鳥遊の挨拶に続き威龍からも挨拶のついでに「新しい年になったんだから、周りを振り回すのは自重しろよ」と苦笑混じりに言われる。
「むー、失礼な! 私は振り回してなんかいないよー!」
((「「十分振り回しているけど‥‥自覚がないのが厄介‥‥」」))
小鳥遊と威龍は同じことを心の中で呟いていたのだった。
「あと来てないのはゴッドだけかな? ま、そのうち来るでしょ」
ゴッドこと神無月 翡翠(
ga0238)の姿だけはまだ見られていない。時間厳守というわけでもないので、マリは来るのを待つことにした。
●食べて飲んで騒いで、かるた遊び!
神無月以外の能力者をリビングに向かわせたマリだったが、一人だけ立っているクレイフェルを見つけた。
「クレイやん、どうしたの?」
「や、前は此処で金タライに襲われたなー思て」
もしかしたら何か仕掛けられていると思ったのだろうか、クレイフェルは異常なほどに頭上などの警戒をしていた。
「クレイやん‥‥いくら私でも同じ場所に『は』何も仕掛けないよ〜?」
「ちょ‥‥同じ場所に『は』って‥‥」
クレイフェルがマリを呼び止めたのだが、マリは不敵な笑みを向けるだけで何も答えようとはしなかった。
「あれ? これはクレイやんから?」
花びら餅とグリュックシュバインのパンが入った袋を見つけ、マリが問いかける。
「あ、皆で食べよ―――って何でもう食べてるん!?」
一人でつまみ食いをしているマリを見て、クレイフェルは新年早々ハリセンでツッコミをする。新年からハリセンを振り回すのだから、きっと彼は一年中ハリセンを振り回すに違いない。
「マリ〜、これは何?」
キョーコが少し大きめの箱を持って来て問いかけてくる。その箱には『マリちゃん特製かるた』と油性ペンで書かれていた。
「今日の為に作っておいたかるた♪ 最初は記事のメモにしてたんだけど、上手い具合にかるたになったの」
マリ特製というのだから怪しさ100パーセントである。
「とりあえず食べよ♪ キョーちゃんも手伝いはいいから食べて食べて」
そう言ってリビングに向かおうとしたマリだったが、途中で足を止めて「キョーちゃん、着物似合ってるよ」と笑顔で答えて、リビングへと向かったのだった。
「はーい、ゴッド以外は揃ってるみたいね♪ 新年あけましてあめでとーう!」
それぞれの飲み物を少し高く上げて乾杯をし、食事タイムが始まった。
マリは皆が食べている間に取材をしようとメモとペンを用意して能力者の所へと向かう。
「国や〜ん、取材させてー‥‥って全然飲んでないじゃない!」
そう言ってお酒を勧めるマリだったが「弱いから一杯だけね」と国谷は苦笑気味に答える。
ちなみに弱いから、と言っているはずなのに飲みっぷりがいいのは気のせいだろうか?
「国やんの今年の抱負と今後のことに関して聞かせてよ♪」
マリがペンを握りながら国谷に問いかける。
「うーん‥‥バグアを倒すことが目標だから、やっぱり研究や資料集めに精を出す事ですね」
グラスを片手に答える国谷に「そっかぁ‥‥彼女とかを作る! とかじゃないの〜?」とマリが話しかけると「彼女?」と呟き、少し考え込んだ後に彼は答えた。
「無理、かな? 僕の性格だと彼女の方にかかりっきりになってしまうからね」
苦笑気味に答える国谷に「資料集めとかじゃなくて彼女優先になっちゃうんだ!?」と少し驚いた表情で言葉を返した。
マリの中では彼女よりも能力者としての仕事を優先させるイメージが国谷にはあったからだろう。
「他のクイーンズメンバーの人とかいるのかな?」
「他の? うん、チホ以外なら今日はいるよ。それぞれの仕事が終わったら顔出しに来るはず〜‥‥っと、取材させてくれてありがとね!」
マリが次の取材者の所へと向かおうとした時、玄関のチャイムが鳴った。
「あ、きっとゴッドだよ」
マリが玄関まで小走りで向かい、ドアを開けると神無月が立っていた。少し顔色が悪いのは気のせいだろうか?
「遅れて、悪い‥‥おっと最初は、新年明けましておめでとう、だな。今年も宜しく頼むぜ?」
「此方こそ宜しく! もう皆揃ってるから中に――」
マリが神無月に中に入るように促すと「いや、悪いが急用が出来た」と彼は答えた。
「え〜‥‥すぐ帰らなきゃいけないの?」
「あぁ、すぐ戻らないと、やばいんだ。この埋め合わせは、後でするから。これ、皆でな」
そう言って神無月は甘酒とつきたての餅、きなこ、あんこが別々のタッパーに入れられた袋をマリに渡す。
「そうそう、その格好、マゴにも衣装――だな?」
帰り際、神無月の言葉に「何それ〜!」と着崩れするのもお構いなしに暴れようとするマリを見て「似合っているって意味だよ」と修正する。
「何か顔色悪いみたいだけど、無理しちゃ駄目だよー」
「あぁ、じゃあな」
そう言って神無月は帰っていった。
ちなみに彼が早く帰宅した理由は風邪を引いているからだった。他の能力者に風邪を移すといけない、そして無理をすれば風邪が悪化する事を考え、神無月は挨拶だけをしにやってきたのだった。
「マリ、どうしたの? 帰ってくるのが遅いから‥‥」
緑色で鳥の刺繍をあしらった着物を着ているキョーコがマリを呼びにやってきた。
「ん、何かゴッドは用事があるから挨拶だけしに来たんだって」
「そうだったのかい、取材もまだなんだろ? 取材を終わらせてみんなで遊ぶことにしようじゃないか」
キョーコの言葉に「そうだね」と言ってマリは取材の続きを始める。
「じゃあキョーちゃん、今年の抱負と今後のことに関して聞かせて♪」
リビングに戻った後、マリはキョーコに取材を申し出た。
「今年の抱負ねぇ、う〜んとバグアを少しでも多く倒してみんなの笑顔が増えるようにしたいね〜」
やはり能力者ということだろうか、国谷に続いてキョーコもバグアを倒すことを目標にしているようだ。
「そっか♪ じゃあ今後の活動に関しては? それもやっぱりバグア退治?」
「バグア退治の仕事だけじゃなくて、人の役に立ったり、皆で騒いで楽しめるようなものをしていきたいね〜。そういう人との繋がりってのは必ず役に立つと思うし」
彼女はバグア退治の事だけでなく、人の役に立つという立派な目標を持っていて、マリはそれが嬉しいのか笑顔で「頑張ってね」と話しかけた。
「次はあたしの番かしらね」
そう言って小鳥遊が横に座る。
「小鳥ちゃんの抱負とか活動に関してはどんな事を考えているの?」
マリが問いかけると「そうねぇ‥‥」と考え込み「コンスタントに色々な仕事を受けていく事――かしらね」と答えた。
「UPCの方ではこの間の名古屋のように大規模な作戦を計画していると聞くけれど、それとは別にもっと身近な困っている人を助ける事も大切だと思うから」
小鳥遊もキョーコと同じように『だれかの役に立つ仕事』をしようと考えているらしい。
「あ、もちろん大規模な作戦に手を抜くつもりわけじゃないけどね」
少し慌てたように話す小鳥遊を見て「分かってるって♪」とマリは答える。
「戦うのはあたし達、傭兵の仕事。マリさんはマリさんにしか出来ない仕事をして欲しいわ。それがお互いにとってベターだと思うんだけど」
小鳥遊の言葉に「それも分かってる♪」と答える。
「私にはどんなに頑張ってもキメラやバグアと戦う能力はない。だからこそ、命を懸けて戦う能力者の皆のことを一般人にも知ってほしいと思うの」
それは何処かマリの信念のように思える言葉だった。
「それじゃ取材協力ありがとね♪ クイーンズ新刊に載せるから楽しみにしてて」
マリはそう言って次の取材者のところへと走っていく。早く取材を終わらせないと皆で遊ぶ時間がなくなるため、マリは結構必死だったりする。
「次は龍っちだよん、今回も美味しい料理差し入れてくれてありがとね♪」
そう、威龍は今回も腕をふるって料理を差し入れてくれていた。
「前回、好評だったみたいだからな。美味しく食べてもらえるなら作り甲斐あるし」
威龍の言葉に「さすが戦う料理人♪」と少しからかい気味に話しかけた。
「それじゃ、抱負と今後について聞かせて♪」
「抱負‥‥ねぇ、まだまだ俺は修行中の身だしな。自分が出来る事を一つずつこなしていくつもりだ。遠回りに見えるかもしれないが、それが俺の目指す所に辿り着く確実な道だと俺は思う」
「ふぅん、そうなんだ〜‥‥他には何かある?」
「他はー‥‥人生に張り合いが出るような『いい女』に出会ってみたいぜ」
「いい女! それはマリちゃ――」
「まぁ、マリもいい女だとは思うが、何か俺が求めているのと方向性が違っているからな」
さり気にマリの言葉をスルーしながら威龍は話し続けた。
「しっかりクイーンズに載せさせてもらうね♪」
マリは席を立ち、まだ取材をさせてもらっていない能力者を探す。するとジュースを飲んでいるシエラの姿が視界に入ってきた。
「シエラっち! 抱負とか聞かせて!」
マリが隣に座り、取材を申し出たのだが――‥‥。
「ホウフ‥‥? 大豆を原料とした、白く柔らかい食品ですか‥‥?」
「そうそう、特に湯豆腐にして食べると美味しいのよねー‥‥ってそれは豆腐!」
スパーン、とマリはクリスマスの時に貰ったハリセンで――隣で食べていたクレイフェルを叩く。
「―――‥‥なぁ、一つ聞いてもええ? 何で俺なん?」
「だって、シエラっちを叩くわけにはいかないでしょ!」
「それは分かる。分かるけども『何で俺なん?』て聞いてるんやけど」
「隣にいたから? 次は気をつけるから許してよ〜」
クレイフェルの抗議の声をスルーしつつ、マリはシエラに『抱負』の意味を教えて取材を開始したのだった。
「私のホウフは‥‥能力者になってまだ日も浅いですが‥‥色々な経験を経て、こんな私でも出来る事がありました。だから‥‥今年はもっと多くの人の助けになりたいです」
少し遠慮気味に言うシエラに「可愛い!」とマリが抱きつく。
「頑張ってね! 私じゃ役にたたないけど! 応援してるから!」
(「きっと、マリは何もせえへんほうがきっと役に‥‥」)
クレイフェルは叩かれてずきずきする頭の痛みを抑えながら心の中で呟く。
「でも‥‥私はバグアを倒すことだけが救いでは‥‥ないような気がします」
ぽつりと呟かれたシエラの言葉に「どういう事?」とマリが問いかける。
「‥‥他人の手に任せて、憎しみから逃れようなど、卑怯なのかもしれません‥‥でも、私は、バグアよりも‥‥人の憎悪が、怒りが‥‥怖い」
シエラの言葉にマリはハッとする。マリも以前、兄の仇を討ってもらったことがある。だからシエラの言う『人の憎悪、怒り』の意味が分かるのだ。
「そうだね、でも――私はお兄ちゃんの仇を討ってもらって救われた。あれ以上の憎しみに囚われずに済んだんだから。今の私があるのは、能力者の皆のおかげだと思う」
マリの言葉に「‥‥そうです、か‥‥」と少し笑むような表情で答えた。
「さて! シエラっちの取材が終わったところで! クレイやんの番だよ」
前回潰れてしまったことで酒を警戒しているのか、クレイフェルのグラスはジュースだけが注がれている。
「抱負と今後について―やったな? 抱負は『よく遊び、よく笑え!』やな」
「あー‥‥クレイやんらしいかも」
「人間、楽しんだり喜んだりして笑う心を忘れたら、そこが終わりな気ぃするねん。楽しいことをぎょーさんやって、笑って、誰かを笑わせて、楽しませて、それで俺も楽しくなって笑って‥‥そんな風にしていければなって思うわ」
クレイフェルの力説に「そうだね、笑うことが一番大事だよね」とマリが答える。
「‥‥そして今年こそは疑惑のない一年に‥‥! ま、何より皆が笑っていられる平和な世界に近づけますよーに! が本音やな」
「きっと平和になるよ。クレイやん達‥‥能力者の皆がそんなに頑張ってるんだからさ」
意外にマトモな反応で返ってきた為、クレイフェルは瞳を瞬かせながら「お、おう」と答えた。
「あとはかすみちゃんとごろっち、コっちだね♪」
「じゃあ、俺から言いますね」
コーがマリの隣に座る。手には酒の入ったグラスを持って。
「もしかしてコっちって‥‥お酒強かったりする?」
「まぁ、弱くはないですね」
そう言ってグラスの中のお酒を飲み干すコー。
「羨ましいなぁ‥‥私はお酒に滅法弱いからなぁ‥‥って抱負を聞かなくちゃ!」
「俺の抱負はバグアの脅威に晒されている人々を一人でも多く救いたいです」
そう答えるコーだったが、実はこの答えは建前だったりする。
実際の抱負は‥‥『人生の伴侶、すなわち、彼女ゲット!』が本音だったりするのだ。
「おおぅ、さすがコっち。真面目だね〜‥‥でも何か建前っぽいなぁ‥‥」
じーーーっ、と見るマリに「そんな事はありませんよ、能力者として当然の抱負です」ともっともらしい言葉を並べる。
「ま、いっか」
「かすみちゃんとごろっちの取材終わったらかるた遊びだからコっちも参加してよ♪」
そう言ってマリは次の取材者である沢村の所へと向かった。
「やっほぃ、ごろっち。取材させて♪」
「そうだな、抱負とか今後についてだったよな? 年末は北米や南米あたりで地味な調査が続いたからな‥‥腕がナマっちまわねぇかってヒヤヒヤしてるな」
「でも調査だって立派な仕事じゃん。ごろっちの調査とかがなければ今後に影響が‥‥とかあったりするかもしれないんだし!」
「まぁな‥‥暫くは南北米をウロつくことになりそうだな。欲しい物があったら言っとけよ」
「何かお土産くれるの? 何でもいいよ♪ 南米とか北米とか行ったことないから何があるか分からないし!」
「‥‥着払いだぜ」
「え! 自腹!?」
ガーン、とショックを受けながら「うぅ、ごろっちの鬼。鬼ごろっち」と恨めしそうな声で呟いていた。
「かすみちゃーん、ごろっちが苛める〜!」
マリは泣きまねをしながら霞澄の所へと向かった。
「あらあら‥‥」
霞澄は困ったような顔をしてマリを迎える。
「そういえば取材ですよね? 私で最後のようですし、早く終わらせて遊びましょう」
霞澄の言葉に「だね!」とマリの機嫌は元に戻り、霞澄の取材を始めた。
「えぇと、今年の抱負でしたね。個人的には矢の練習と勉強をする時間をもう少し取りたいです。忙しくて中々練習も勉強も出来ないんですよね‥‥」
霞澄の言葉に「勉強熱心だね〜」とマリが言葉を返した。
「そういえば初詣で何かお願いした?」
「初詣‥‥ですか? ま、まぁ、普通に健康ですわ」
霞澄は少し引きつった笑顔で胸の辺りを見ながら答えた。
(「‥‥もうちょっと胸が‥‥なんて言えません‥‥」)」
「さぁーって! 取材終了! 皆も食べて飲んで盛り上がってることだし! マリちゃん特製かるた大会!」
そう言いながらマリが取り出したのはキョーコが見つけた怪しげな箱だった。
「私が読みましょうか?」
霞澄がマリに話しかけると「最初は私が読むよ♪ かすみちゃんは後からお願い」と言葉を返した。
参加する人数は全員――というよりマリに無理矢理参加させられたと言った方が正しいかもしれない。
「いっくよー‥‥『嗚呼、可愛いな、クイーンズ記者のマリちゃん』」
マリがかるたを読むと同時に能力者達はまるで何処ぞのコントのようにずっこける。
「な、何やねん! そのかるたは!」
最初にツッコミを入れたのはクレイフェルだった。
「今までに私と関わった能力者の皆でかるたを作ったの! 元々は取材メモだったんだけどね〜次いくよー! 『クレイやん、ハリセンもってセクハラ疑惑』」
すぱーーーーんっ!!
「その言葉やったら俺がハリセン持って嬉々とセクハラしてるみたいやん!」
クレイフェルがツッコミを入れている間に他の能力者達はかるたを取る。
「着物って動きにくい‥‥」
キョーコは着物の袖を邪魔そうに見て、次に備える。
「ちなみにー、言い忘れていたけれど〜‥‥一番悪かった人には罰ゲームがありま〜す!」
マリの言葉に能力者達はピクリと肩を震わせる。
「次は‥‥『龍っち、戦う料理人の武器はフライパン』」
(「‥‥俺はフライパンで戦ったことなんてないぞ」)
威龍は心の中でツッコミながらかるたを取る。
「マリさん、私が代わりますよ」
途中で霞澄が交代を申し出る。もちろん彼女には罰ゲームはナシになる。
「シエラっち、癒し系一家に一人欲しい」
「取った―――って何これ! 一回休みって何!?」
キョーコが取ったとかるたを掲げるが、それの後ろには『一回休み』と書かれている。
「人生ゲーム風にしてみました♪」
その後もかるたは続き、結局負けたのは‥‥マリだったというオチになった。
「罰ゲーム‥‥これですね」
コーが持って来たのは寿司の玉子。ちなみにシャリがご飯ではなく黄色い物体、つまりカラシになっていた。
「うぅ、自分で作ったものを自分で食べなきゃならないなんて〜‥‥」
ちくしょー、と叫びながらマリはカラシ寿司を口の中に放り込み、暫く家の中を走り回っていた。
〜暫くお待ち下さい〜
「ぐはー‥‥誰よ、罰ゲームなんて‥‥げふ」
口を押さえながらマリは呟く。
「ねぇ、マリ、次はこれやろうよ!」
キョーコが持って来たのは羽根つき(墨&筆)だった。
「よっしゃ! 羽根つきクイーンのマリちゃんをナメちゃいけないわよ!」
これも全員強制参加と言うことで最初のバトルはキョーコ&国谷だった。
「僕は他の記者さんとお話している方が‥‥」
「そんなもんは後よ! いくわよ!」
キョーコがぺしっと羽根つきを始める――暫くの攻防戦が続いたあと、勝利したのはキョーコだった。
「ふっふっふ‥‥ま〜るっと♪」
楽しそうに国谷の目の周りに丸を書くキョーコ。ちなみに他の能力者はこれを見て、少し遠ざかっていった。
「マリ、半紙はあるか?」
「ん〜? あるよ、どうしたの?」
「書初めをやらしてもらおうかと思ってよ」
「私の部屋にあるから持って来ていいよん」
沢村はマリの了解を取り、マリの自室にあった半紙を持ってくる。そして書初めとして『鋼』という文字を書いたのだった。
「何か楽しそうね♪ 羽根つき終わったら皆で書こうよ♪」
マリが叫び、因縁のクレイやんVSマリのバトルが始まろうとしていた。
「‥‥クレイフェルさん、それでするんですか?」
クレイフェルが構えているもの、それは何故かハリセン。
「やりにくいんは承知やけどな」
「そんなんでマリちゃんに勝とうなんて百年早い! 行くぞおっ!」
かこーん、と音がしてクレイフェルが打ち返そうとするが、何故かそれのスピードは速い。
「な‥‥」
スピードが速い筈だ、何故ならマリが打ってきたものは『卓球ボール』だったのだから。
「ひ、卑怯な――」
「言い訳無用〜! お髭生えたクレイやんの誕生〜!」
「‥‥俺は少し酒を飲もう――」
最初に逃げたのはコー、続いて小鳥遊や威龍も「何か食べよう」と戦線離脱をした。
「日本のはねつき、こんな感じのものだったのですね」
シエラは状況を説明してもらい『羽根つき』そのものを誤解してしまった。
その後は皆でかくし芸をしてみたり、残っていた線香花火をするなどして新年会は終わっていったのだった‥‥。
ちなみに国谷だけは他のクイーンズ記者たちと交流していたようで、マリの横暴さなどを愚痴られていたのだとか‥‥。
もちろん、それが後からマリの耳に入り、クイーンズ記者たちは更なるイジメ(という名の教育)を受けたらしい‥‥。
END