タイトル:週刊記者とくらげマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 4 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/09/08 01:25

●オープニング本文


痛い痛い痛い痛い!

くらげに刺されたんですけどォ―――――ッ!

※※※

「くらげ退治に行ってくる」

週刊記者、土浦 真里(gz0004)はすちゃっとバッグを肩にかけ、取材道具を持ちながら呟いた。

「待て待て待て待て! くらげ退治に行くのに何で取材道具持っていくわけ!?」

「それは、そこにくらげがいるからさ‥‥」

「意味わかんないから! 何当たり前のようにくらげがいたら取材してくる流れになってんの!?」

「ちっ、流されなかったか‥‥」

「流されないって! むしろこのままいけば流されるのはマリの方なのよ!?」

「失礼な! マリちゃんはちゃんと25m泳げますけど!?」

「25m泳げたから何なの!? 大海原で25m泳げたから何なの!?」

「いつも以上にしつこいなぁ、あんたは黙って私の帰りを待ってればいいのよ!」

「何そのドラマ的展開! 死亡フラグ立つようなセリフを吐かないでよ!」

「うるさい!」

「ぐっ‥‥」

会話の流れが面倒になってきたのか、マリは鉄拳制裁をチホに食らわしながら言葉を投げかけた。

「‥‥まさか、そのくらげってキメラじゃないでしょうね」

「‥‥ナンノコトカナー」

「ちょ、ちょっと待ちなさい! キメラなのね!? くらげキメラなのね!?」

「そうよ、キメラだから何なのよ! この前海に行ってくらげに刺された恨みを晴らしてくる!」

「刺したのはキメラじゃないでしょ!? 普通のくらげで良かったって思いなさいよ!」

「うるさぁい! ちゃんと能力者を頼んでるから大丈夫よ! そんなに強いキメラじゃないだろうし!」

「一般人のあんたがどうやってキメラの強さを測るのよ!」

「チホっては小姑みたい」

「こ、こじゅっ‥‥!?」

「あはは! いってきまーす!」

「あっ、待ちなさいってば!」

チホが呼び止めるにも関わらず、マリはそのまま楽しげに玄関から出て行ったのだった‥‥。


●参加者一覧

小鳥遊神楽(ga3319
22歳・♀・JG
玖堂 鷹秀(ga5346
27歳・♂・ER
群咲(ga9968
21歳・♀・AA
椎野 ひかり(gb2026
17歳・♀・HD

●リプレイ本文

―― キメラ退治のために集まった能力者たち ――

「さぁ! くらげキメラを退治しちゃおう! 私、刺されたし! 痛かったし!」
 拳を握りしめ、鼻息荒く話しているのは週刊記者の土浦 真里(gz0004)である。
「‥‥相変わらずマリさんてば『感性のみ?』で生きているわね‥‥」
 呆れたように呟くのは小鳥遊神楽(ga3319)だった。マリと付き合いが長いとはいえ、いい加減大人になってほしいと彼女は心から思っていたが、その思いはマリに届かない。
「マリさんが無茶するのはいつもの事とはいえ、玖堂さんの心労も考えるとそろそろマリさんに自重を覚えてもらわないとね――ってどのくらい言い続けたのかしら、この言葉」
 はぁ、と大きなため息を吐きながら小鳥遊は言葉を付け足した。
「はぁ、これぞまさしく『江戸の敵を長崎で討つ』というものですね?」
 眼鏡を光らせながら黒いオーラを発しているのは、マリの夫でもある玖堂 鷹秀(ga5346)だった。
「まぁ、長崎まで付いて行かされる身からすると何の感慨も湧きませんが、ともあれ本日もうちの妻が迷惑をかけますが、どうぞよろしくお願いします」
 そこまで頭を下げなくても、と言いたいくらいに玖堂は他の3人の能力者たちにしっかりと頭を下げる。
(苦労してるなぁ、旦那さん‥‥)
 群咲(ga9968)は頭を下げる玖堂を見ながら苦笑交じりに心の中で呟く。
(でも、今日は事前説明もしっかり、許可も取ってある。マリさんも日々成長して‥‥ってマリさん、今何歳だっけ‥‥)
 大人にしては成長が遅いような、とは群咲は口が裂けても言う事が出来ない。
「あら、お久しぶりですわね〜。マリさん」
 のほほん、と効果音でもつきそうなくらいのんびりした口調で挨拶をしたのは椎野 ひかり(gb2026)だった。
「あ、お久しぶりー!」
 ぶんぶんと手を振って応えるマリに――椎野は笑顔を張り付けたままマリの手を掴む。
「ところで‥‥ケーキバイキングの事を覚えていますか?」
 口調は丁寧なのに、どこか有無を言わさない雰囲気にマリも「え、えっ!?」と目を瞬かせながらおろおろとし始める。
「妹を泣かせたらお仕置きしますからね、と言っていましたよね? だけど今日のマリさんの事を知って、また無茶をしてと泣いていましたね、玉ねぎを切りながら」
「ちょっとぉぉぉ! それ、私のせいじゃない! 玉ねぎ切ってたせい!」
「問答無用です、ちょっとだけ皆さんはお待ちしていて下さいね。すぐに戻りますから」
 にっこりと椎野は笑顔で他の3人に告げ、マリを引き摺りながらどこかへと行く。

「服の下にこれを着て下さい」
 椎野がマリに渡したのは――水着だった。
「はぁっ!? なにゆえ水着!? マリちゃんの天敵、水着!?」
「別に水着で歩き回れとは言っていません、目的地が海ですから念のためです」
「さすがに水着で歩き回れって言われたらマリちゃん怒るよ!?」
「‥‥‥‥」
 にっこりと穏やかな笑みを浮かべたまま、椎野は水着を差し出したまま何も言わない。
『これを着るまでは出発しません』
 何も言われていないけど、そう言われているような気がしてマリは渋々水着に着替える事にした。
(う〜〜! 何でマリちゃんがこんな目に遭ってるの!? これも全部くらげのせいだ!)
 くらげにしてみれば八つ当たりでいい迷惑である。
 マリは服の下に水着を着た後、椎野と一緒に他の3人の元へと戻り、高速艇へと乗り込んでくらげキメラのいる海へと出発していったのだった。

―― 青い海、白い雲、浮かぶくらげ ――

「さぁ、マリさん。どれを着ますか?」
「!?」
 現地に到着して、玖堂が意気揚々と取り出したのは数々の水着だった。
「‥‥あ、何故水着なのかという顔をしていますね、真里さんの水着姿を見た私のやる気がクライマックスになるからですよ?」
 何を言っているんですか、まったく――と言葉を付け足しながら玖堂がため息交じりに呟く。
「いやいやいや、そんな当たり前みたいに言われても困るよ!? それにもう着てるし!」
「‥‥‥‥」
 マリの言葉を聞いた途端、玖堂の瞳がカッと見開かれた。
「どういう事ですか? 何故私の断りもなく勝手に水着を着ているんですか? 誰に見せたんですか? 返答次第ではいくら真里さんでも許しませんよ?」
「ひかりんに有無を言わさず着替えさせられたの!」
「‥‥ご、ごめんなさい? まさか玖堂さんまで水着を用意してるとは思わなくて‥‥」
 何故か申し訳ない気持ちになりながら、椎野は玖堂に謝る。
「いえいえ、椎野さんが謝る事じゃないですよ。私は今度プライベートで真里さんに水着を着てもらうだけですから」
「えぇっ! 何その勝手な決定事項! 私に拒否権はないの!?」
「ありません」
 にっこりと笑顔で玖堂が言葉を返す。
「確か今回は複数いるんだよね? だったら全部見つけないとなー‥‥。逃がしたら、小さいくらげのキメラなんてそうそう見つけられないもん。次の被害報告なんてさせないよ」
 群咲は拳を強く握りしめた後に呟き、キメラ退治への意欲を見せた。
(アロンダイト‥‥名前負けしないように使ってあげるからね)
 群咲は愛用の武器、試作型水中剣・アロンダイトを見つめながら心の中で呟く。
「さて、そろそろキメラが現れても不思議じゃないので、服を脱ぎますか!」
 バッと椎野は着ていた服を脱ぎ、水着姿になる。椎野はマリへの精神的ダメージを狙っているのか、胸を強調させた派手な水着だった。
 もちろんそのまま戦うのではなく、AU−KVを装着して戦うのだけれど。
「さて、くらげさん? おとなしくやられてくださいね」
 ちらりと水面に見えてきたくらげを見て、椎野が呟く。
 椎野はスキルを使用し、試作型水中剣・アロンダイトを振るい、海に浮かぶくらげキメラに攻撃を仕掛ける。
「一応、砂浜側からでも狙えるけど‥‥数が多いわね、複数ってレベルじゃないわ、コレ」
 小鳥遊は苦笑しながら砂浜の所から試作型水陸両用・アサルトライフルでキメラを狙いながら撃つ。
「マリさん、チホさんから今回の事は聞いたわ」
「え?」
「今回の一件はマリさんの逆恨みだってね?」
「ぎくっ」
「マリさんに大事なかったから良かったものの、何かあってからじゃ遅いんだからね?」
「わ、わかってるわよ」
「わかってない。今回の暴走についてきちんとペナルティを受けてもらうからね」
「えぇっ! ちゃんと行先言ったのに! 無茶してないのに!」
「問答無用」
 小鳥遊はキメラに向けて攻撃を仕掛けながら、それ以上マリの反論を受け入れる事はなかった。
「この先にもキメラが発見されていた場所があるみたいですよ」
 玖堂が地図を広げながら呟く。
 その地図には予め地元の住人たちに話を聞いて、キメラが発見された場所を地図上に印をつけて分かりやすくしていた。
「数は多いけど、攻撃されても大したダメージじゃないし、何とか大丈夫かな? もちろん油断は出来ないんだけどね」
 群咲は呟きながら「アロンダイトぉぉぉ!」と叫びながら、キメラへの攻撃を行う。
 彼女は宇宙服で水面を動けるか、という実験的行動も試したい気持ちがあった。
(浅瀬ってせいもあるだろうけど、とりあえずは問題なく動けるかな?)
 群咲はキメラに攻撃を仕掛けながら心の中で呟いた。
「真里さん、もう少し下がってください」
 玖堂はエネルギーガンでくらげに攻撃を仕掛けながら、マリが前に行かないように制止する。
「きゃっ!」
 ばしゃん、と攻撃の衝撃によって水が跳ね、マリの服がびしょ濡れになってしまう。
「うあ〜、びしょ濡れだぁ‥‥」
 気持ち悪いーと言いながら、マリは服を脱ぎ始める。
「‥‥‥‥この勝負、俺たちの勝ちだな」
 玖堂は小さくガッツポーズを取り、小さな声で呟く。
「マリさん、いくら水着を着てるからって人前でそんなにぽんぽん脱がなくても――って混浴で他の人が一緒でも恥じらいのないマリさんだから仕方ないわね」
 はぁ、と小鳥遊は額に手を置き、ため息を吐きながら呟いた。
「マリさん、遅くなりましたけど水着似合いますわよ〜?」
 嫌味にしか聞こえない口調で椎野はキメラへの攻撃の手を休める事なく呟く。
「くっ、乳がすべてじゃないもん!」
 椎野の言いたい事がわかったのか、マリは胸を隠しながら顔を真っ赤にして叫ぶ。
「はいはい、もう少し下がってちょうだい。また濡れるわよ?」
 小鳥遊が制止し、近くにいるキメラをアサルトライフルで狙い撃つ。
 それから、数十分の間、能力者たちは必死にくらげ退治に勤しんでいたのだった。


―― 任務終了 ――

「ねぇ、玖堂さん」
 キメラを退治し、見回りも終わった頃に小鳥遊が玖堂を呼び寄せる。
「はい?」
「‥‥2人の夫婦生活に口を挟むのは無粋だと思うけど、マリさんの友人としてのお願いと思って聞いてくれる?」
「はぁ、どうしたんですか?」
 いつになく真剣な表情の小鳥遊に玖堂は不思議そうに首を傾げながら、小鳥遊の次の言葉を待つ。
「‥‥あたしは、玖堂さんがマリさんの重しになってくれると思っていたけど、甘かったみたい」
「でも、いくらなんでも子供が出来たらマリさんだって自重するようになると思う」
「‥‥‥‥」
 小鳥遊の言葉は決してからかいの言葉ではなく、本気でマリを心配しての言葉だと玖堂はわかっていた。
「だから、玖堂さんも真剣に考えて欲しいの」
「‥‥まぁ、その事に関してはYESともNOとも言えませんけど、マリさんの事を本気で心配してくれている事はわかりました」
「あたしもいつまでもマリさんを守りきる事が出来ないかもしれないから‥‥」
 終戦に向け、これからはもっと激しさを増す戦いの中へ身を投じなくてはならない。
 だからこそ、小鳥遊はマリの事が心配で仕方ないんだろう。

「とりあえず、キメラも無事に退治出来て良かったね〜。数は多かったけど」
 群咲がうんざりしたように呟くと「本当ですね」と椎野が言葉を返した。
「複数とは聞いていましたけど、さすがにこんなに数が多いなんて思いませんでした」
 大きく伸びをしながら椎野が呟く。彼女も水着姿のせいか、少しだけ悩ましい姿である。
(ここにいるのが男性1人、しかも奥さんいる人で良かった)
 他にも男性、しかも独身男性だったらきっと椎野の姿を見て、色々と考えるかもしれないのだから。
「あ、そうだ。群咲さん、ちょっとそこまで付き合ってもらえませんか?」
「え? いいけど、どうかしたの?」
「ジュースを買いに行きましょう、さっきマリさんをちょっと苛めちゃいましたし、そのお詫びに。ついでというわけじゃないですけど、皆さんの分も買いましょう」
「ありがと、マリさんの事だからジュースを持っていく頃には忘れてるんじゃない?」
 そうかもしれませんね、と椎野は言葉を返しながら小さく笑った。

 その後、能力者たちはジュースを飲んで休憩をした後、高速艇に乗り込み、任務達成の報告を行うためにラストホープへと帰還していったのだった。

END